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モーダルな事象 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活*奥泉光

  • 2018/08/21(火) 16:56:12


大阪のしがない短大助教授・桑潟のもとに、ある童話作家の遺稿が持ち込まれた。出版されるや瞬く間にベストセラーとなるが、関わった編集者たちは次々殺される。遺稿の謎を追う北川アキは「アトランチィスのコイン」と呼ばれる超物質の存在に行き着く…。ミステリをこよなく愛する芥川賞作家渾身の大作。


600ページ近いボリュームである。しかもみっしりと活字が詰まっている。さらには、導入部は、愚にもつかない桑潟幸一准教授の暮らしぶりが延々と続き、思わず本を閉じそうになること多々。だが、次第に、何が何だか判らない、いつ、どんなわけで巻き込まれたのかも判然としない、不可思議な事件の渦中に呑み込まれ、これを解き明かすのかと思えばさにあらず、クワコー自身はただならぬものを感じながらも、相変わらず愚にもつかない生活を送っていて、北川アキと諸橋倫敦という元夫婦がコンビとなって、なぜか調査に乗り出すのである。いまが一体いつなのか、どれが本当にあったことで、どれが妄想なのか、何もかもが混沌としていて、めまいがしそうなのであるが、後半は、なぜか次の展開を早く知りたくなるから不思議なものである。軽く読める物語とは言えないし、クワコーに肩入れしたくもならないのだが、なぜか惹きつけられる一冊でもあった。

夫の彼女*垣谷美雨

  • 2018/08/18(土) 07:42:19

夫の彼女
夫の彼女
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垣谷 美雨
双葉社
売り上げランキング: 420,278

夫の浮気を疑った妻が、彼の部下である相手の女性に会いに行く。言い争っていると、突然現れた老婆が「物事は相手の立場になって考えることが大切。つまらない喧嘩ばかりしていると、本当の敵を見失う」と言い、ふたりにとんでもないことをする。そのおかげで、確かに相手の立場はわかったけど、これから先、どうやって生きていけばいいの!? 想像もつかない展開と、ラストは思わず納得!の書き下ろし長編小説。


ドラマになったのを知らずに読んだので、予想外の展開にびっくりである。小説ならではの愉しみとも言える。導入部は、夫の浮気を疑う妻の、なんとも言えない心情と行動が描かれているので、この先泥沼の展開になるのかと思いきや、謎の老婆が現れてからの展開は、思わず目が点になってしまう。だが、その後のストーリーは、身につまされる部分もあり、考えさせられる要素もたくさんあって興味深かった。ラストは、無理やり無難にまとめた印象がなくもないが、それはそれで、心の安定を得られる気もして、嫌いではない。やきもきしながらも愉しく読める一冊だった。

あること、ないこと*吉田篤弘

  • 2018/08/16(木) 08:54:09

あること、ないこと
あること、ないこと
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吉田 篤弘
平凡社
売り上げランキング: 100,301

世界を繙く事典、探偵譚、他の惑星から来た友人、思い出深い食堂や音盤、長い置き手紙──虚実の出会う場所を描く美しい物語の数々。


タイトルの通り、まさしくあること、ないことがぎっしりと敷き詰められた、一枚の美しい絨毯のような印象である。あることとないこととの境も曖昧で、すべてが詩のようでもあり、心象風景のようでもある。著者の作品に触れるたびに思うことだが、一瞬で遠くへ旅して戻ってくるような心地の一冊である。

あの夏、二人のルカ*誉田哲也

  • 2018/08/13(月) 16:13:55

あの夏、二人のルカ
あの夏、二人のルカ
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誉田 哲也
KADOKAWA (2018-04-27)
売り上げランキング: 214,913

14年前、わたしは親友と歌を失った

名古屋での結婚生活に終止符を打ち、東京・谷中に戻ってきた沢口遥は、【ルーカス・ギタークラフト】という店に興味を持つ。店主の乾滉一はギターの修理だけでなく、日用品の修理もするらしい。滉一との交流の中で、遥は高校時代の夏を思い出していた。
一方、高校生でドラマーの久美子は、クラスメイトの翔子、実悠、瑠香とともにバンドをを始動させる。そこに転校生のヨウが入ってくるのだが、彼女の非凡な才能に久美子は衝撃を受ける。ある日、彼女たちのバンド「RUCAS」にプロデビューの話が持ち上がるが――。


14年前の高校三年生のひと夏と、現在とが交互に語られる。しかも、その視点は同一人物のものではない。初めのうちは、現在と過去がどうつながるのかわからないので、もどかしさ半分、早く知りたい気持ち半分で、あれこれ想像しながら読み進めることになる。途中で、現在を語る人物の謎が解けてからは、あの夏があって、どうしてこの現在があるのかという興味でぐいぐい引っ張られる。最後の最後がこの終わり方でほっとした。未来に光が灯った心地にしてくれた一冊である。

逢魔が時に会いましょう*荻原浩

  • 2018/08/12(日) 08:39:13

逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)
荻原 浩
集英社 (2018-04-20)
売り上げランキング: 12,778

大学4年生の高橋真矢は、映画研究会在籍の実力を買われ、アルバイトで民俗学者・布目准教授の助手となった。布目の現地調査に同行して遠野へ。“座敷わらし”を撮影するため、子どもが8人いる家庭を訪問。スイカを食べる子どもを数えると、ひとり多い!?座敷わらし、河童、天狗と日本人の心に棲むあやしいものの正体を求めての珍道中。笑いと涙のなかに郷愁を誘うもののけ物語。オリジナル文庫。


「座敷わらしの右手」 「河童沼の水底から」 「天狗の」来た道」 メーキング

妖怪、民俗学のフィールドワーク、変人の若き准教授、やりたいことはあるのだが進路に悩む女子学生。これらの要素が、なぜかタイミングよくかみ合ってしまい、布目、真矢コンビが誕生したのである。読者にとっては喜ばしいことだが、初めのうち、真矢には納得がいかないことが多々あったようでもある。布目准教授はといえば、研究者としては別としても、男性としては、まだいまひとつつかみどころがなく、このコンビのこれからは、そうすんなりとはいきそうにない気はするのである。真矢がどうやら引き寄せ体質ということもあり、フィールドワークに行った先々で、頻繁にこの世ならぬ者たちかもしれない者たちに出会ってしまうのだが、それを確実に実感していないところがまた面白みを増しているところかもしれない。ぜひシリーズ化していただいて、今後の二人を見守りたいと思わされる一冊だった。

5時過ぎランチ*羽田圭介

  • 2018/08/10(金) 18:28:39

5時過ぎランチ
5時過ぎランチ
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羽田 圭介
実業之日本社
売り上げランキング: 244,431

ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギー持ちの殺し屋、写真週刊誌の女性記者。日々過酷な仕事に臨む三人が遭遇した、しびれるほどの“時間外労働”!芥川賞作家・羽田圭介だから書ける、限りなく危険なお仕事&犯罪小説!


タイトルから、もっとほのぼのとした物語かと思いきや、なんとも過酷なお仕事ものがたりだった。とはいえ、ただのお仕事ものがたりと思ったら大間違い。過重労働、時間外労働、など、危ない仕事の現場がぎっしりと詰まっているのだった。GSを舞台にした『グリーンゾーン』では、著者が三か月くらい実際にバイトでもしたのではないかと思わせるような、詳細な業内容が描かれていて、車のことは全くわからないながら、その忙しさは充分すぎるほど伝わってきた。さらに、『内なる殺人者』と『誰が為の昼食』は全く別の物語かと思ったのだが、緩やかにつながっていて、最後の最後でそういう落ちになるのか、と納得させられる構成になっていて、二度おいしい気分になれる一冊でもある。

ポスドク*高殿円

  • 2018/08/09(木) 07:24:11

ポスドク! (新潮文庫)
ポスドク! (新潮文庫)
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高殿 円
新潮社 (2017-12-23)
売り上げランキング: 279,823

瓶子貴宣は、月収10万円の私大非常勤講師。博士号を持ち実力も抜群なのに、指導教官の不祥事で出世の道を閉ざされた。しかも姉が育児放棄した甥、誉を養ってもいる。貧乏でも正規雇用を諦めない貴宣の前に、千載一遇のチャンスが。だが誉を引き取りに姉が現れ、家庭問題まで勃発─。奮闘するポスドクの未来はどうなる! ? 痛快かつ心温まる、極上のエンタテインメント。『マル合の下僕』改題。


ポスドクの現状にリアリティがあるかどうかは、門外漢なので判断できないが、その大変さはしっかりと伝わってくる。加えて、姉である母親にネグレクトされた小学生の甥・誉を養育するという難題も抱え込むことになる。とはいえ、誉のいい子ちゃんぶりが半端ではないので、生活面ではかえって助かっているとも言えるし、心のオアシスであるとも言える。周りを固めるキャラクタの濃さも一興である。みんなどこか変わり者たちで、それなりにみんなあたたかい。まったくいろんなことが降りかかってくるものだと呆れながらも、ついつい貴宣を応援したくなる一冊である。

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件*倉知淳

  • 2018/08/07(火) 18:17:06

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知 淳
実業之日本社
売り上げランキング: 108,126

戦争末期、帝國陸軍の研究所で、若い兵士が倒れていた。屍体の周りの床には、なぜか豆腐の欠片が散らばっていた。どう見ても、兵士は豆腐の角に頭をぶつけて死んだ様にしか見えなかったが―?驚天動地&前代未聞&空前絶後の密室ミステリの真相は!?ユーモア&本格満載。猫丸先輩シリーズ最新作収録のミステリ・バラエティ!


表題作のほか、「変奏曲・ABCの殺人」 「社内偏愛」 「薬味と甘未の殺人現場」 「夜を見る猫」 「猫丸先輩の出張」

猫丸先輩は、相変わらずユニークでとらえどころがなく、そのくせちゃ~んと事件の真相を解き明かしてしまう。すばらしいのだが、なんだかそうは思えないところも相変わらずである。猫丸先輩はこうでなくっちゃ。それ以外の物語は、まじめに考えていいものか、いささか迷ってしまうような意表を突く愉しさ満載である。ワクワクする一冊だった。

水中翼船炎上中*穂村弘

  • 2018/08/05(日) 20:11:58

水中翼船炎上中
水中翼船炎上中
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穂村 弘
講談社
売り上げランキング: 15,238

当代きっての人気歌人として短歌の魅力を若い世代に広めるとともに、エッセイ、評論、翻訳、絵本など幅広い分野で活躍する著者が、2001年刊行の第三歌集(『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』)以来、実に17年ぶりに世に送り出す最新歌集。短歌研究賞を受賞した連作「楽しい一日」ほか、昭和から現在へと大きく変容していく世界を独自の言語感覚でとらえた魅力の一冊!


なんと十七年ぶりの歌集なのだそうである。だが、著者の場合、短歌もそのほかの文章も、そこから立ち上ってくる匂いは全くといっていいほど変わらない。ほむほむは、いつでもどこでもなにをしてもほむほむなのである。一首のどこかに、必ず彼自身が潜んでいて、隠し切れない個性を放っているのだ。小学生、中学生時代の穂村少年の後をつけてみたくなる。とても雄弁な一冊だった気がする。

道具箱はささやく*長岡弘樹

  • 2018/08/05(日) 20:03:30

道具箱はささやく
道具箱はささやく
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長岡 弘樹
祥伝社
売り上げランキング: 228,761

資産家の娘・早百合に意中の相手がいるのか。調査を依頼された探偵の木暮と菜々は、最後の候補者と早百合がスクランブル交差点ですれ違うよう仕向ける。だが、その寸前に、なぜか木暮は早百合に電話を入れた…(「意中の交差点」)。借金苦から、休暇を利用して質屋に押し入った刑事の角垣。逃走中に電柱に衝突するも目撃者はなく、無事逃げおおせた。だが、なぜか上司の南谷は、角垣が犯人だと見抜くのだった…(「ある冬のジョーク」)。とっておきのアイデアを注ぎ込み、ストイックに紡がれた贅沢な作品集。


ひとつひとつの物語はほんの短いものなのだが、その中に、必ず一度は、「ほほぅ」と思わされる要素が埋め込まれている。それはときに、はっとするようなことだったり、なるほどと合点するようなことだったり、ちょっぴり笑ってしまうようなことだったりとさまざまなのだが、それらのスパイスによって、物語が格段に魅力的になっているのは間違いない。ちょっぴり洒脱な印象もある一冊である。

悲体*連城三紀彦

  • 2018/08/04(土) 18:45:51

悲体
悲体
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連城 三紀彦
幻戯書房
売り上げランキング: 219,292

40年前に消えた母を探し韓国へ来た男の物語は、それを書きつつある作者自身の記憶と次第に混じり合う…出生の秘密をめぐるミステリと私小説的メタフィクションを融合させた、著者晩年の問題作にして最大の実験長篇、遂に書籍化。


いま自分は物語を読んでいるのか、著者の語りを聴いているのか、時々判然としなくなり、夢とうつつの間を行きつ戻りつしている心地にさせられる。父と母、そして自分。さらには母といい仲になった男。彼らの胸の芯にあっただろうものに思いを馳せ、捕まえかけたと思えばまたするりと逃げられる。自分の身体の中を巡る血は、誰と誰のものなのか、そして、どこの国のものなのか。あの時の彼、彼女の思惑はどんなことだったのか。自分は本当はどうしたかったのか。そんな取り返しのつかないあれこれが、不意に押し寄せてきて、それに駆り立てられるように韓国へ飛ぶ。謎が謎を呼び、手掛かりが見えたと思えば、またつかみ損ねるようなもどかしさと、いっそのこと知らずにいた方が幸せでいられると、わざと追わずにいたりもする。自分探しは、傷つくことを恐れていてはできないのかもしれない。もどかしく、哀しく、やるせない一冊である。

琴乃木山荘の不思議事件簿*大倉崇裕

  • 2018/08/01(水) 18:26:26

琴乃木山荘の不思議事件簿
大倉 崇裕
山と渓谷社 (2018-06-16)
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棚木絵里は、標高2200mにある山小屋「琴乃木山荘」で働くアルバイト。山荘の目の前には標高2750mの竜頭岳が聳える。生真面目で繊細なオーナーの琴乃木正美。年齢不詳・正体不明なベテランアルバイトの石飛匠。絵里は彼らと、山で起こる「不思議なできごと」の真相に挑む。「この小屋、出るでしょう?幽霊」アルバイトの斎藤まゆみは、テント場の先の林の中で人魂を見かけ、さらに男の登山者の幽霊に取り憑かれていると言う。人魂、そして幽霊は本物なのか。絵里はその正体を見破れるか―。(第一話「彷徨う幽霊と消えた登山者」)ほか、わずかな手がかりから真実を導き出す全七話を収録。気鋭のミステリ作家が挑む「山岳×日常の謎」の新機軸!


琴乃木山荘の周りで起こる七つの事件の物語である。山に登る人、山小屋を訪れる人、山小屋で働く人、それぞれに理由があり、下界に置いてきた何かがあるのかもしれない。山の日常は、愉しいが、真剣で、些細なことが命にかかわることもあるのを思い知らされる。山の知識や洞察力で目の前の謎を解き明かしてしまう石飛が、格好いい。そんな彼もまた、下界でのことは多くを語らない。アルバイトで入った絵里もまた、下界に屈託を置いてきたのだが、それさえも解き明かされることになる。この先ももっと見ていたい一冊である。ぜひシリーズ化してほしい。

さしすせその女たち*椰月美智子

  • 2018/07/31(火) 10:47:29

さしすせその女たち
さしすせその女たち
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椰月 美智子
KADOKAWA (2018-06-22)
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39歳の多香実は、5歳の娘と4歳の息子を育てながら、デジタルマーケティング会社の室長として慌ただしい毎日を過ごしていた。仕事と子育ての両立がこんなに大変だとは思っていなかった。ひとつ上の夫・秀介は「仕事が忙しい」と何もしてくれない。不満と怒りが募るなか、息子が夜中に突然けいれんを起こしてしまう。そのときの秀介の言動に多香実は驚愕し、思いも寄らない考えが浮かんでいく―。書き下ろし短編「あいうえおかの夫」収録。


働く女性の子育て奮闘記と夫との確執、夫への不満・憤りの数々、という物語である。著者の書く家事育児のドタバタは、実にリアルで、おそらく体験した人にしかわからないだろうという些細なことまで、みっちりと描かれているので、通り過ぎた後で読むと、思わず苦笑いしてしまうこと多々である。そして夫の子の無神経ぶりも、これはもう人間としての作りの差、とでもいうほかないのかもしれない、と思わされる。ラストに、『あいうえおかの夫』という、夫側から描かれた短いものがのせられているのだが、ほんの少し救いにはなるものの、家事育児に対する、圧倒的な認識の違いは如何ともしがたく、火に油を注ぎかねない気もしてしまう。現在奮闘中のお母さんには、ぜひめげずに潜り抜けてほしいと応援するばかりである。イライラむかむかカリカリしながら、ちょっぴり笑ってしまう一冊でもある。

魔力の胎動*東野圭吾

  • 2018/07/29(日) 20:19:23

魔力の胎動
魔力の胎動
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東野 圭吾
KADOKAWA (2018-03-23)
売り上げランキング: 3,093

自然現象を見事に言い当てる、彼女の不思議な“力”はいったい何なのか――。彼女によって、悩める人たちが救われて行く……。東野圭吾が価値観を覆した衝撃のミステリ『ラプラスの魔女』の前日譚。


『ラプラスの魔女』の前日譚ということだが、羽原円華にはまだ謎の部分が多いし、父の羽原博士の研究にも、もっと掘り下げる要素があるように思えるので、続編もあるのだろうという印象である。円華の能力には、生まれつき備わった特殊能力というだけではない何かがあるはずである。彼女にぴったり張り付いている秘書とボディーガードの存在のこともある。ただ、今作では、円華の能力を借りなければ解決できないことがほとんどであり、彼女の年齢やキャラクタも相まって、円華への興味が尽きないのである。さらに、彼女といいコンビになれそうな、工藤那由他(京太)に内在する鬱屈まで解きほぐしてしまうという、人間味も垣間見られ、今後の展開もぜひ見てみたいと思わされる一冊だった。

おやすみ、東京*吉田篤弘

  • 2018/07/28(土) 18:30:56

おやすみ、東京
おやすみ、東京
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吉田篤弘
角川春樹事務所
売り上げランキング: 24,983

この街の夜は、誰もが主役です。都会の夜の優しさと、祝福に満ちた長篇小説。


内容紹介には、長篇小説とあるが、濃密につながった連作短編のような趣である。描かれるのは、午前一時辺りの出来事である。人々が寝静まる深夜に、働く人たちがいて、それぞれにさまざまな思いを抱えて、何かを探している。そんな人たちが、次々につながり、誰かを、何かを見つけて、あるいは見つけられて、つながっていくのを見るのは、とても興味深く、なんだかページのこちら側でもうれしくなってしまう。夢なの現なのか、次第に曖昧になってくるようでもある一冊でもある。