宿命と真実の炎*貫井徳郎

  • 2017/07/26(水) 07:17:14

宿命と真実の炎
宿命と真実の炎
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貫井 徳郎
幻冬舎 (2017-05-11)
売り上げランキング: 29,774

幼い日に、警察沙汰で離れ離れになった誠也とレイ。大人になって再会したふたりは、警察への復讐を誓い、その計画を着実に遂行する。一方、事故か他殺か判然としない警察官の連続死に、捜査本部は緊迫する。事件を追う所轄刑事の高城理那は、かつて“名探偵”と呼ばれた西條の存在を気にしていた。スキャンダルで警察を去り、人生が暗転した男。彼だったらどう推理するのか―。


殺人を繰り返す二人、所轄刑事と捜査一課の刑事の捜査を通して深まる信頼関係、かつてスキャンダルで警察を追われた元名刑事との出会い、などなど、展開が愉しみな要素が盛りだくさんで、序盤からページを繰る手が止まらない。だが、中盤以降、ほんの小さな引っ掛かりを見過ごさずに地道な捜査を続け、警察官連続殺人の真犯人にじりじりと迫っていくようになると、さらに興味を引き付けられる。そして、小さな蟻の穴から一か所が崩れ始め、雪崩を打つように真実に向っていく様子は、読むだけで興奮してくる。さらにラストで触れられた犯人の一人の胸の裡の思いを知って、背筋がぞくぞくする思いになったのはわたしだけではないだろう。じわじわと迫り、あっさりと裏切る手法は著者ならではだと思う一冊である。

血縁*長岡弘樹

  • 2017/07/23(日) 19:05:54

血縁
血縁
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長岡 弘樹
集英社
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誰かに思われることで起きてしまう犯罪。誰かを思うことで救える罪。

コンビニの店長が男にナイフを突きつけられる中、電話の音が響いた。【でていいか】店長の差し出したメモを見ても、男は何も答えなかった――「文字盤」
父親の介護に疲れた姉は七年ぶりに妹と再会し、昔交わしたある約束を思いだす。親を思う姉妹の気持ちの行方は――「苦いカクテル」
自首という言葉を聞くと、芹沢の頭をあの出来事がよぎる。刑務官が押さなければならない、死刑執行の三つのボタン――「ラストストロー」
ほか、七つの短編を通して、人生の機微を穿つ。
バラエティに富んだ、長岡ミステリの新機軸。


誰かの思惑が、別の誰かの思惑と一致し、あるいはすれ違い、それがある物事の結果を変えてしまうことがある。人生はなかなか思い通りにはいかないものである。だが読者にとっては、それこそが面白いところである。さまざまな関係の人たちの人生の道筋が、誰のどんな思惑、どんなきっかけで変わっていくのかが興味深い一冊である。

ひとめぼれ*畠中恵

  • 2017/07/22(土) 16:28:10

ひとめぼれ
ひとめぼれ
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畠中 恵
文藝春秋
売り上げランキング: 8,078

札差の娘と揉めて上方へ追いやられた男。その思わぬ反撃とは(「わかれみち」)。盛り場で喧伝された約束が、同心一家に再び波紋を呼び起こす(「昔の約束あり」)。麻之助の亡き妻に似た女にもたらされた三つの縁談の相手とは(「言祝ぎ」)。火事現場で双子を救った麻之助は、新たな騒動に巻き込まれる(「黒煙」)。行方不明の男を探すため、麻之助は東海道へと旅立とうとする(「心の底」)。沽券が盗まれた料理屋から、一葉が消えてしまったのは何故か(「ひとめぼれ」)。いつの世も思い通りにならない、人の生死と色事。泣きたいときほど泣けない、「まんまこと」ワールド、慟哭の第六弾。


相変わらずにお気楽者ではあるのだが、町名主見習いとしてのお役目をしっかりやろうという自覚は増々確かなものになっているように見える麻之助である。そのときはっきり判らなくとも、何か心に引っかかるものをそのままにせず、さまざまな方向から考えを巡らせる知恵もあり、なかなかに頼もしいところもあるのである。今作では、清十郎の妻・お安や、丸三の女房・お虎、そして吉五郎の許嫁・一葉といった女性陣が知恵を働かせて活躍する機会が多かったのも嬉しいところである。みんな少しずつ大人になり、一人前の仕事をするようになっていくのだとなにやら感慨深い。麻之助にもしあわせがやってきますように、と祈らずにはいられない。次も愉しみなシリーズである。

がん消滅の罠*岩木一麻

  • 2017/07/19(水) 19:04:47


日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、不正受給の可能性があると指摘を受けた。
夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金3千万円を受け取った後も生存しており、
それどころか、その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが4例立て続けに起きている。
不審を抱いた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。
一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。
その病院は、がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。
がんが完全に消失完治するのか? いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。


がんで余命診断された患者が、湾岸医療センターにかかると、病巣が消え去り、がんが寛解するという事実が多発していることに気づいたがんセンターの医師・夏目は、友人で同センターに勤務する羽島と調査を始める。がんと診断されたときに保険金が支払われる保険のリビングニーズ特約も絡み、突然退職した夏目の恩師の消息も絡み、事態は厭な感じに複雑になっていく。がんが治るという願ってもないことにもかかわらず、なにやら喜べないことが裏で行われていることは初めから判るものの、それが何を目的に企てられ、どんな手順で進められているのか、そのトリックに興味はそそられる。さらにそれだけではなく、夏目の恩師・西條の個人的な事情も絡み、思わぬ事実が明らかにされる。がん寛解の手順については腑に落ちたが、その目的に関しては、いささか消化不良な印象もぬぐえない。興味深い一冊であることは間違いない。

犬の報酬*堂場瞬一

  • 2017/07/17(月) 13:27:09

犬の報酬
犬の報酬
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堂場 瞬一
中央公論新社
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「企業の〈失敗〉に対し、男たちは如何に動いたか」
大手メーカーのタチ自動車は、自動運転技術の開発に取り組んでいた。政府の自動運転特区に指定されている千葉・幕張での実証実験中、実験車両が衝突事故を起こす。軽微な事故ということもあり、警察は発表しなかった。ところが数日後、この事故に関するニュースが東日新聞に掲載される。東日新聞社会部遊軍キャップの畠中孝介に情報を流したのは、いったい誰なのか? トラブル対応時の手際の見事さから社内で「スーパー総務」と揶揄されるタチ自動車総務課係長・伊佐美祐志を中心に、「犯人探し」のプロジェクトチームが発足するが……。 「事故隠し」を巡る人間ドラマ――話題の「自動運転」のリアルに迫る、最新で渾身の経済エンタメ長篇。


自動運転の開発中の事故、事故隠し、警察と企業との癒着、内部告発、社内の対策の方向性、取材する新聞記者の立場、などなど、要素が盛りだくさんである。自動車会社の総務課の伊佐美には、情報提供者がおり、新聞社の畠中にも当然ネタ元がいる。内部告発者を探し出すことを第一義としたタチ自動車と、同社の方針を良しとしない東日新聞の対決の様子が描かれる。畠中のネタ元が誰かは、割と早い段階で薄々想像がつくが、それが最後にこう言う展開になるとは想像ができなかった。ただ、そこの掘り下げ方がもう一段階深かったら、もっと興味をそそられたかもしれないとも思ってしまう。なんとなく尻切れトンボで終わってしまった感が無きにしも非ずなのである。個人の持つ価値観について、改めて考えさせられた一冊でもあった。

あきない世傳金と銀 三 奔流編*高田郁

  • 2017/07/14(金) 18:27:47

あきない世傳 金と銀〈3〉奔流篇 (時代小説文庫)
髙田 郁
角川春樹事務所 (2017-02-14)
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大坂天満の呉服商「五鈴屋」の女衆だった幸は、その聡明さを買われ、店主・四代目徳兵衛の後添いに迎えられるものの、夫を不慮の事故で失い、十七歳で寡婦となる。四代目の弟の惣次は「幸を娶ることを条件に、五代目を継ぐ」と宣言。果たして幸は如何なる決断を下し、どのように商いとかかわっていくのか。また、商い戦国時代とも評される困難な時代にあって、五鈴屋はどのような手立てで商いを広げていくのか。奔流に呑み込まれたかのような幸、そして五鈴屋の運命は?大好評シリーズ、待望の第三弾!


幸の身がどうなるのかと気を揉んだが、今作では、納まるところに納まり、いよいよこれから本領発揮、というところである。後添えとなった五代目徳兵衛の惣次は、商売に関してはやり手であることに間違いはないのだが、その本質がまだいまひとつ呑み込めずにいるのも確かである。幸の功を立ててくれればいいのだが、なかなかそう上手くはいきそうもない。五鈴屋のこれからが少し見えてきたように思えたのだが、その惣次のやりようで台無しにしかねない状況である。ここを、幸がどう切り抜けていくのか、この先が愉しみなシリーズである。

風とにわか雨と花*小路幸也

  • 2017/07/11(火) 10:49:17

風とにわか雨と花
風とにわか雨と花
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小路 幸也
キノブックス
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僕が九歳、風花(ふうか)ちゃんが十二歳になった四月にお父さんとお母さんは、リコンした。どうしてかって訊いたら「今は説明してもわからないと思うので、言わない」ってお母さんは言った――

専業作家を目指す父、仕事に復帰した母、小学生の姉と弟。
父が暮らす海辺の町を舞台にした、心温まる家族物語。
親子四人の心情の変化を、それぞれの視点から鮮やかに描く!


両親が離婚した一家四人の物語である。大人の都合――この場合主に専業作家を目指す父の我儘――で離ればなれで暮らさなければならなくなった父と姉弟、母と姉弟、そして喧嘩別れしたわけではない夫と妻、それぞれの関係や思いが、それぞれの視点で描かれている。家族以外の周りの大人たちにも示唆を得て、子どもたちはその年齢なりに自分の置かれている状況や父と母の生き方を理解しようとし、父と母も、お互いを、そして子どもたちを大切に思いながらも、それぞれの道を前を向いて歩こうとしている。こんなに互いを思いやってしあわせそうなのに、なぜ?とどうしても思ってしまうが、それはこの家族の問題なのだろう。離婚という悲しい題材を扱いながらも、胸のなかがあたたかさで満ちてくる一冊である。

校長、お電話です!*佐川光晴

  • 2017/07/10(月) 07:22:34

校長、お電話です!
校長、お電話です!
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佐川 光晴
双葉社
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シバロクこと柴山緑郎は、問題が頻発していた中学の校長として赴任。
母校でもある学校を建て直すべく奮起した矢先、休職中の教師が自殺未遂を起こす。
校内からはタバコの吸い殻…。これらの問題を引き起こしたのは、元官僚の教育評論家である前校長の振舞いだった。
学校現場を、一人の校長の目を通してリアルに描きだした物語。


事務職員・福良さんの「校長、お電話です!」というひと言から展開する、新任校長・柴山緑郎(通称シバロク)の奮闘の日々の物語である。
市長の肝煎りで民間から着任した前任校長の元教育評論家・野田欣也の対応に対する不満が爆発して荒れ放題だった百瀬中を立て直すために送り込まれたのがシバロクである。着任早々、たまりにたまった厄介事が押し寄せ、問題が次々に明るみに出るが、名校長の誉れ高かった亡父に言われた言葉が折々によみがえり、偶然の成り行きにも味方されて、ひとつひとつ着実に解決していくのである。私生活も絶妙に織り交ぜ、ついつい手に汗握って応援したくなってしまう。娘や友人の支えもあり、スーパーマンではないシバロクが奮闘する姿は、見ていて気持ちが好い。何事も人間関係と誠意が大切だと改めて感じさせてくれる一冊だった。

けむたい後輩*柚木麻子

  • 2017/07/08(土) 16:55:07

けむたい後輩
けむたい後輩
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柚木 麻子
幻冬舎
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女は、みんな“自分”が大好き。
気は強いが、傷つきやすい彼女たちが欲しいのは、“自信”だった。

良家の子女が集まる女子大を舞台に
元・有名人の自意識過剰な先輩と世間知らずのダサい後輩が
繰り広げるエゴのぶつけ合い。

金持ちで、才能をもてあまし、男にのめりこむ「栞子」は、ダサくて真面目な後輩・「真実子」の憧れのひと。優越感で満たされていたはずの栞子が抱く苛立ちと哀しみ、そして次第に明かされる真実子の稀有な才能。自分の魅力に気付けない女子大生の繊細な心模様をコミカルに描いた共感度100%の成長物語。著者にしか書けない視点で、プライドや劣等感を痛切に描き、女性なら誰でも胸に突き刺さる小説です。


またまた女子の物語である。男性も登場はするが、どの男も魅力のかけらもない。女子たちは一見個性的ではあるが、それぞれが違った意味で自己認証欲求が強すぎて、痛々しくさえ思われる。若い女というものは、ここを通りすぎずには大人になれないものだろうか。だが、女の園の在りようは見事に描かれていると思う。ああ女って面倒くさい、という感じの一冊である。

BUTTER*柚木麻子

  • 2017/07/07(金) 07:11:36

BUTTER
BUTTER
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柚木 麻子
新潮社
売り上げランキング: 1,923

木嶋佳苗事件から8年。獄中から溶け出す女の欲望が、すべてを搦め捕っていく――。男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。


木嶋佳苗の事件にヒントを得てはいるが、木嶋佳苗の物語と思って読むと期待外れになるかもしれない。これは、木嶋に触発されて生まれた梶井真奈子に触れることで、押し込めていたものが濃厚なバターのように溶け、溢れ出して、自分というものの形を見失いそうになりながら、何とか立て直していく女性たちの物語なのだと思う。読みながら、時に苦しくなり、また時にはイライラし、そしてまた、鮮やかに想像できる部分もあって、人間の、ことに女の複雑さ底知れなさを思い知らされるような一冊だった。

早稲女、女、男*柚木麻子

  • 2017/07/03(月) 07:09:58

早稲女、女、男
早稲女、女、男
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柚木 麻子
祥伝社
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面倒臭くて痛々しいけど、憎めない
ワセジョと5人の女子の等身大の物語

男勝りでプライドが高くて酒豪。だけど本当は誰よりも純粋で不器用。
そんな早稲女の中の早稲女、早乙女香夏子は就職活動を終えたばかりの早稲田大学教育学部の四年生。
演劇サークルの幹事長で七年生の長津田との腐れ縁はなんだかんだでもう4年目だが、このところ口げんかが絶えない。
そんなとき、香夏子は内定先の先輩・吉沢から告白される。
女の子扱いされることに慣れていない香夏子は吉沢の丁重な態度に戸惑ってしまう。
過剰な自意識ゆえに素直に甘えることができず、些細な事にいちいち傷つき、悩み、つまづく……。
そんな彼女を、周囲で取り巻く他大学の女子たちはさまざまな思いを抱えながら見つめていた――
それぞれが抱える葛藤、迷い、恋の行方は?


まったくもって面倒くさい人種である。早稲女が、というよりも、大学生から社会人として序盤の女が、といったほうがいいかもしれないが。とにかく、傾向の違うさまざまな自意識が渦巻いていて、ときおり本を投げ捨てたくなるほど面倒くさい。こんな面倒くささを通り抜けなければ大人の女になれないのだろうか、と思ってしまう。個人的には、穏やかにやり過ごしたい時期である。でもまあ、だから何だという一冊でもある。

箸もてば*石田千

  • 2017/07/01(土) 13:10:56

箸もてば
箸もてば
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石田 千
新講社 (2017-05-24)
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箸もてば、いつかの夕方、いつかの乾杯。ひとくちめのビールが、喉もとすぎる。会えなくなったひとにも会える。(「あとがき」より)
作家・石田 千による、つくる、飲む、食べる日々をつづったエッセイ。
年々歳々、食相い似たり、年々歳々、人同じからず。
時のうつろい、四季のうつりかわりととも自然の恵みとどう出合い、どう調理し、食べ、そして飲んだか。
飲食は命を養い、心を支える。食べものへの思い、そして杯を手にすれば、思いおこすあの人たちの声、姿、気配。
生まれたばかりのような繊細なことばで語られる、飲食をめぐる珠玉の掌篇集。


またまた素敵な読書タイムをありがとう、である。どんなときに何をどうやって食べるか、それはその人を如実に表すことだと思う。著者は、自らの躰の声にきちんと耳を傾け、弱ったときには弱ったなりに、元気なときには元気ななりに。そして、季節の声もちゃんと聞いて、旬のものに丁寧に手をかけて食している。それは必ずしも凝った料理というわけではなく、その部分は外の食事に任せ、却って素朴で素材を生かした食べ方で、思う存分幸せを感じながら食べていることがうかがわれて好もしい。実際に食べているわけではないのに、読んでいるだけで、滋味あふれる湯気に包まれ、太陽の恵みたっぷりの素材の滋養が、躰の芯に沁みこんでいく心地になる。至福の一冊である。

狩人の悪夢*有栖川有栖

  • 2017/06/30(金) 13:35:51

狩人の悪夢
狩人の悪夢
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有栖川 有栖
KADOKAWA (2017-01-28)
売り上げランキング: 20,064

「あなたに、悪夢を」 ――火村英生シリーズ、最新長編登場!

「俺が撃つのは、人間だけだ」
彼は、犯罪を「狩る」男。
臨床犯罪学者・火村英生と、相棒のミステリ作家、アリスが、
悪夢のような事件の謎を解き明かす!

人気ホラー小説家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、
京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。
そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。
しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、
白布施のアシスタントが住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、
右手首のない女性の死体が発見されて……。

火村英生シリーズ、待望の長編登場!


待望の火村&アリスシリーズである。個人的には、ドラマを観た後でも、役者のイメージにとらわれずに済む数少ない作品でもある(わたしの中の火村先生は、もっと複雑で深い)。そして相変わらず時に三枚目を演じるアリスとはいいコンビであり、謎解きに至る火村の思考に果たすアリスの役割を、火村自身がいちばんよくわかり、頼りにしていることが改めて判って嬉しくもある。火村対真犯人の構図のほかに、アリスが真犯人に投げかける言葉に内包される愛ゆえの怒りや哀しみが、やり切れなさを誘う。火村&アリスが誕生して25年だそうだが、まだまだふたりを見続けられそうなのがなにより嬉しいと思うシリーズである。

短編少女

  • 2017/06/26(月) 16:31:06

短編少女 (集英社文庫)
三浦 しをん 荻原 浩 中田 永一 加藤 千恵 橋本 紡 島本 理生 村山 由佳 道尾 秀介 中島 京子
集英社 (2017-04-20)
売り上げランキング: 14,107

恋に恋する女の子のささやかな成長。家出した少女の冒険と、目の当たりにした社会の現実。早熟な少年が抱く不安と、それをほぐす少女のやさしさ。人気作家が「少女」をキーワードに綴った傑作短編9編を収録。多感な時期の憂しやときめき、ときに切ない気持ち。そしてそれらの先にある成長を、思い出のアルバムをめくるように楽しんでください。それぞれの作家の魅力も体感できる贅沢な一冊。


「少女」と呼ばれる一時代は、女性にとって特別な時なのではないかと思う。人生の中で、あまりにも変化に富み、自分自身は変わらないつもりでも、取り巻く状況が目まぐるしく変化し、変わりたいと思いながらも変わらずにいたいと願い、大人の真似をしてみたり、子どもぶってみたりと、何かと不安定で忙しい。とりとめのない時間を同級生と過ごしながら、さまざまな駆け引きもあったりして、一瞬も気を抜くことができない時代でもある。そんな途轍もなく穏やかで激動の少女をこのラインナップで読めるのは贅沢以外のなにものでもない。瑞々しい少女を満喫できる一冊である。

ミステリ国の人々*有栖川有栖

  • 2017/06/25(日) 16:14:19

ミステリ国の人々
ミステリ国の人々
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有栖川 有栖
日本経済新聞出版社
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これぞミステリ!と膝を打ついかにも“らしい”52人。あの名探偵から、つい見逃してしまう存在まで、名編の多彩な登場人物にスポットライトをあて、世相を織り交ぜながら、自在に綴ったエッセイ集。作家ならではの読みが冴える、待望のミステリガイド!


ミステリ国に住む人々に焦点を当てたエッセイ集である。名探偵や、その相棒、たまには脇役、そして彼らを生み出した作者や、その作品が生まれた背景にまで及ぶこともある。紹介されている作品を読んだことがあってもなくても、とても魅力的であり、未読の作品はついつい読みたくなって、メモを取ってしまったりもする。愉しくわくわくするひとときをもたらしてくれる一冊である。