- | こんな一冊 トップへ |
- 次ページへ»
はむ・はたる*西條奈加
- 2009/11/08(日) 16:37:04
![]() | はむ・はたる (2009/08/20) 西條 奈加 商品詳細を見る |
心に傷を負った若き侍と、江戸の下町でたくましく生きる孤児たちの、強い絆とままならぬ過去への思いを描く青春時代小説。
表題作のほか、「あやめ長屋の長治」 「猫神さま」 「百両の壺」 「子持稲荷」 「花童」という六つの連作物語。
『烏金』の続編である。江戸の下町を舞台に、いまではもう立派に更生した子どもたちが、金貸しのお吟婆さんや、武家の長谷部様の力を借りて、稲荷売りをして暮らしている。そんな折り、その存在も知らなかった長谷部様の弟・柾(まさき)様が放浪の旅から戻ってきた。子どもらと同じ長屋に住まい、直に彼らに頼りにされる存在になる柾様であるが、江戸に戻ってきたのには何か仔細があるようである。仲間のため、柾様のため、子どもたちはきょうも働きながら手を尽くす。幼い恋心も絡めつつ、生き生きとしたお江戸物語になっている。
シングルベル*山本幸久
- 2009/11/06(金) 17:21:47
![]() | シングルベル (2009/06/05) 山本 幸久 商品詳細を見る |
典型的な草食系男子で結婚興味なしの陽一は、父の策略で3人の女性と見合いをする羽目になる。外資系バリバリ管理職、バンド大好きOL、元人気モデルの中から彼が選んだ女性とは? ドラマでも話題の「婚活」世代に送るコメディタッチの恋愛小説。
婚活――好きな言葉ではないが――流行り(?)の今日このごろである。だが、この物語に登場する男女は、結婚を焦って自ら婚活に乗り出しているわけではない。婚活しているのは、親や伯父伯母たちナのである。「月下老倶楽部」なる親のための婚活セミナーまである始末。そして、そこで出会った親たちが、ドタバタお見合い劇を繰り広げるのだが・・・・・。
セミナーでの親たちの我が子売り込みの様子をみていると、どんな情けない子どもたちなのだろうか、と思ってしまうが、実際の子どもたち――とは言っても立派な大人である――は、それぞれが結構それなりに社会で役に立っている。いくつになっても子どもは子ども、という様子が微笑ましくもあり、情けなくもある。ドタバタ劇ではあるが、描かれ方は丁寧で、それぞれの人生がよく見える。誰もが良かれと思って手を尽くしているのが判って微笑ましくもある。
文句なく愉しい読書タイムだった。
パイの物語*ヤン・マーテル
- 2009/11/05(木) 19:29:25
![]() | パイの物語 (2004/01) ヤン マーテル 商品詳細を見る |
1977年7月2日。インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。たった一艘しかない救命ボートに乗り助かったのは、動物たちをつれカナダへ移住する途中だったインドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。ほかには後足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣ベンガルトラのリチャード・パーカーが一緒だった。広大な海洋にぽつりと浮かぶ命の舟。残されたのはわずかな非常食と水。こうして1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流が始まった…。生き残るのは誰か?そして待つ衝撃のラストシーン!!文学史上類を見ない出色の冒険小説。
覚え書きとして
第一部 トロントとポンディシェリ
第二部 太平洋
第三部 メキシコ、トマトラン、ベニート・フワレス診療所
第一部では、物語の主人公ピシン・モリトール・パテル(通称パイ・パテル)の育った環境について語られ、第二部では、沈没した船から救命ボートに乗り移り、リチャード・パーカーと共に耐え忍んだ、227日間の漂流生活について語られる。そして第三部で、奇跡的に助かったパイ・マテルの話を聞く、という構成になっている。
物語のメインとなる漂流物語は、手に汗握るものであり、強靭な精神力と工夫や決断力を興味深く読んだ。そして第三部で、思いもしないことを知らされて面食らうのである。なんということだろうか。
ただ、やはり翻訳ものは苦手で、いささか読むのに苦労した。
ifの迷宮*柄刀一
- 2009/11/02(月) 20:22:00
![]() | ifの迷宮 (光文社文庫) (2003/04/10) 柄刀 一 商品詳細を見る |
とっくに死んだはずの人物の遺伝子が、殺人事件現場から発見されたら!?遺伝子治療や体細胞移植を手がける最先端医療企業SOMONグループ。その中枢を担う宗門家で、顔と手足が焼かれた女性の死体が発見された。現場のDNA鑑定が示したのは、“死者の甦り”という肯きがたい事実だった―。読者を謎の迷宮へ誘う本格推理の真骨頂。
ほんの少し先の時代を舞台にした物語である。出生前診断で退治の遺伝子をチェックすることが、一般的になり、中絶の選択権がゆるやかになっている時代である。そんな時代に、遺伝子治療や体細胞移植をてがける宗門家の周りで殺人事件が起こるのだが、次々と奇妙な事実――とっくに亡くなっているはずの人物の遺伝子が検出されたり、被害者だと思った死体の遺伝子が加害者のものだったり――が判明するのである。
命の問題、人生の問題、幸福の問題・・・。さまざまな問題を投げかけられているような心地で読んだ。何が正しいのか、一概には言えないと思うが、安易に流されていい問題ではないと改めて思わされた。
だれかのいとしいひと*角田光代
- 2009/10/30(金) 16:59:13
![]() | だれかのいとしいひと (文春文庫) (2004/05) 角田 光代 商品詳細を見る |
転校生じゃないからという理由でふられた女子高生、元カレのアパートに忍び込むフリーライター、親友の恋人とひそかにつきあう病癖のある女の子、誕生日休暇を一人ハワイで過ごすハメになったOL…。どこか不安定で仕事にも恋に対しても不器用な主人公たち。ちょっぴり不幸な男女の恋愛を描いた短篇小説集。
表題作のほか、「転校生の会」 「ジミ、ひまわり、夏のギャング」 「バーベキュー日和(夏でもなく、秋でもなく」 「誕生日休暇」 「花畑」 「完璧なキス」 「海と凧」
すでに失ったり、失いつつあったりする恋。どうしようもないやるせなさと寂しさ、後悔や自信のなさを、どの物語の主人公もまとっており、一冊全体を物憂いぼんやりした雰囲気が流れている。憎みあったわけではないのにうまくいかない関係が絶妙に描かれている。
これでよろしくて?*川上弘美
- 2009/10/29(木) 17:23:21
![]() | これでよろしくて? (2009/09) 川上 弘美 商品詳細を見る |
上原菜月は38歳。結婚生活にさしたる不満もなく毎日を送っていたのだが…。とある偶然から参加することになった女たちの不思議な集まり。奇天烈なその会合に面くらう一方、穏やかな日常をゆさぶる出来事に次々と見舞われて―。幾多の「難儀」を乗り越えて、菜月は平穏を取り戻せるのか!?コミカルにして奥深い、川上的ガールズトーク小説。
「これでよろしくて?同好会」という、名前からはその内容が窺い知れない会に、結婚七年目、子どもなし、38歳の菜月は、なぜか昔つきあっていた人の母に誘われて入ったのである。
その会は、年齢も立場もさまざまな人たちで構成されており、決まった店にときどき集まって、いろいろなものをつまみながら、そのときに出されたり、懸案になっていたりする議題について意見を言い合う、というものなのだった。
なんとなくぼんやりと日々を送っていた菜月にも、取り立てて言葉にするほどではないが、いつの間にか抱え込んでしまっている事々があり、もやもやとした気持ちは決してよい方へとは向かわないのである。そんなとき、この会でみんなの意見を聞いていると、吹っ切れることがあったりもするのである。
菜月の日々のあれこれを、「これでよろしくて?同好会」という、ある意味夢のような会に取り込んでしまうところが、著者流であろうか。
流星さがし*柴田よしき
- 2009/10/28(水) 17:25:48
![]() | 流星さがし (2009/08/20) 柴田 よしき 商品詳細を見る |
新米弁護士・成瀬歌義は、京都の人権派弁護士の事務所から、東京の大手法律事務所に移籍してきた。武者修行してこい、というわけだ。ところが、勝手の違うことばかり。熱意は空回りし、依頼人には嫌われ、あげくには関西弁がよくない、とまで言われてしまう。しかも、持ち込まれる相談も、一風変わったものばかりで…。青年弁護士の奮闘と成長がまぶしい、爽やかな傑作青春ミステリー。
『桜さがし』の続編、ということになるのだろうか。主人公は成瀬歌義、ほかにも浅間寺先生とまり恵が登場する。シリーズ化、ということだろうか。
弁護士になった歌義は、京都の人権派弁護士事務所で働いていたが、東京の大手事務所に武者修行に出される。何かと水の合わない東京で、戸惑いながら自分の進む道を見つけ出そうとする歌義の姿が、無理なく描かれていて好感が持てる。一風変わった依頼に縁があるようで、調査も一筋縄ではいかないが、上司や同僚、事務所のスタッフのひらめきや強力もあり、なんとか答えを見つけ出し、依頼者に応えることができるのだった。
手探りながら、道が見えかかっている歌義の今後もぜひ見たい。シリーズ化されると嬉しいのだが。
刻まれない明日*三崎亜記
- 2009/10/27(火) 07:14:16
![]() | 刻まれない明日 (2009/07/10) 三崎 亜記 商品詳細を見る |
開発保留地区――10年前、街の中心部にあるその場所から理由もなく、3095人の人間が消え去った。今でも街はあたかも彼らが存在するように生活を営んでいる。
しかし、10年目の今年、彼らの営みは少しずつ消えようとしていた。
大切な人を失った人々が悲しみを乗り越え新たな一歩を踏み出す姿を描く。
『失われた町』の続編とまでは言えないかもしれないが、同じ次元に立つ物語である。前作ではあとに消化不良感が残ったが、本作ではそれはない。3095人の消えた人々の残された関係者たちが、十年前の消失を忘れずにおり、さまざまな手段や形で十年前と現在とを繋ぎ合わせているからかもしれない。
「終わりは始まり」というテーマのとおり、消えていくものを見守り見送ることと、新しく出会いはじまることが同時に描かれていて、失った哀しみだけではなく、これから生み出していく明るさも孕んでいるのがよかった。
いつもの三崎流で、現実の世界とは微妙にズレているものの、ブレてはいない一冊だった。
退出ゲーム*初野晴
- 2009/10/24(土) 20:56:46
![]() | 退出ゲーム (2008/10/30) 初野 晴 商品詳細を見る |
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者、完璧な外見と明晰な頭脳の持ち主。音楽教師・草壁信二郎先生の指導のもと、廃部の危機を回避すべく日々練習に励むチカとハルタだったが、変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」、六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」、演劇部と吹奏学部の即興劇対決「退出ゲーム」など、高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やかな青春ミステリの決定版。
上記ほのか「エレファンツ・ブレス」
ハルタとチカの幼なじみコンビが探偵役の日常の謎系ミステリ。表題作は、以前アンソロジーで読んだが、高校生とは思えない機転に唸らされた。そして、どの物語でもそうだが、謎を解くだけではなく、謎の中心にいる人物の心の闇も解きほぐし、しこりが残らないように解決しているのが好ましい。
変則的な片想い三角関係を孕みつつ、ハルタとチカの今後はどうなっていくのだろう。
パーフェクト・ブルー*宮部みゆき
- 2009/10/24(土) 08:34:44
![]() | パーフェクト・ブルー (宮部みゆきアーリーコレクション) (2008/04) 宮部 みゆき 商品詳細を見る |
地元の高校球児のスター・諸岡克彦が、謎の死を遂げた。それは、全身にガソリンをかけられ、火だるまになるという残忍で奇怪な事件だった。偶然その場に居合わせた、弟の進也、蓮見探偵事務所の加代子、そして“俺”は、その死の謎を解き明かすべく捜査を開始する。元警察犬“マサ”の視点で描く、宮部みゆきの単行本デビュー作。
元警察犬で、現在は探偵事務所の用心棒であるマサが語り手、という物語である。
将来を嘱望される高校球児の死の真相は、想像もつかない展開を見せ、タイトルの「パーフェクト・ブルー」の意味が判ると、背筋に寒気が走る。亡くなった諸岡克彦の弟・進也の存在が、とても好い。
哀しくおぞましいが、それだけでは終わらない希望も含んだ一冊だった。
ドント・ストップ・ザ・ダンス*柴田よしき
- 2009/10/22(木) 21:41:24
![]() | ドント・ストップ・ザ・ダンス (2009/07/17) 柴田 よしき 商品詳細を見る |
人気の園長兼私立探偵・花咲慎一郎シリーズの最新刊! ある園児の父親が暴漢に襲われ昏睡状態に陥ってしまう重傷を負う。花咲は失踪中の母親・並木久美を探そうとする。一方、城島事務所から若いパティシエの身辺調査を依頼され、内偵を進めると、殺人の疑いをかけられ、命を狙われているとの噂もあった。久美を追っているうちに、駅のホームから突き落とされ間一髪電車に轢かれそうになる花咲…。命懸けの追跡行が、過去の火災事故の真相を浮かびあがらせる。ラストのどんでん返しが、せつない感動を呼ぶ、著者渾身の長編ミステリー!!
花咲慎一郎シリーズ、今回はにこにこ園絡みの事件がメインになるのかと思いきや、どういうわけか裏社会と絡み合ってしまっているのである。しかもその絡み方が絶妙で、感心させられる。
事件自体は、言ってみれば素人が起こしたものなのだが、見事に巻き込まれ翻弄されることになる。事件の筋書きを作った人物もさすがだが、体を張ってその筋書きを解き明かしたハナちゃんは、やはりさすがである。にこにこ園とそこに来る園児たちへの愛情が満ち満ちているのがまたいい。だが、にこにこ園とハナちゃんに安泰が訪れる日がやってくるのだろうか。ハナちゃんにエールを送りたい。
不可能犯罪コレクション*二階堂黎人[編]
- 2009/10/19(月) 09:20:26
![]() | 不可能犯罪コレクション (ミステリー・リーグ) (2009/06) 二階堂 黎人 商品詳細を見る |
誰もいない屋上からどうやって転落死させるのか、衆人環視の舞台上でいかに刺殺におよぶのか、密室の中の他殺死体―犯人は私なのか…。実力派気鋭作家たちによる書き下ろしアンソロジー!トリックの饗宴6連発。
「佳也子の屋根に雪ふりつむ」 大山誠一郎
「父親はだれ?」 岸田るり子
「花はこころ」 鏑木蓮
「天空からの死者」 門前典之
「ドロッピング・ゲーム」 石持浅海
「『首吊り判事』邸の奇妙な犯罪」 加賀美雅之
一見不可能に思われる犯罪はどのように成し遂げられたのか。それぞれに工夫が凝らされ、意表をつくトリックが駆使されていて興味深い。やや説明的になりがちな部分があったように思われるのが残念でもある。
ねずみ石*大崎梢
- 2009/10/17(土) 13:40:47
![]() | ねずみ石 (2009/09/18) 大崎 梢 商品詳細を見る |
祭りの夜には、ねずみ石をさがせ。かなう願いは、ひとつだけ―。中学一年生のサトには、四年前のお祭りの記憶がない。恒例の子供向けイベント「ねずみ石さがし」の最中に、道に迷って朝まで行方しれずだったのだ。同じ夜、村ではひとつの惨殺事件が起こっていて、今でも未解決のまま。交錯する少年たちの想いが、眠っていたサトの記憶に触れたとき、事件は再び動き始める。瑞々しい青春推理長編の最新作。
殺人事件のあった祭の年から四年経ったいまになって、事件の真犯人捜しに新たな動きが出たのは何故なのか。そこから考え初めていたら、果たして真相に気づくことができただろうか。おそらくできなかっただろう。
中学生の少年たちの友情の物語であれば、舞台となった神支村ももっと明るく爽やかな雰囲気だったのだろうが、殺人事件にまったくの無関係ではいられない忌まわしさが、物語全体を薄暗く重苦しい空気に包みこんでいる。大人の身勝手さが子どもたちに暗い顔をさせるのはとても胸が痛む。
やるせなさはどうすることもできないが、ラストには希望も仄見える。屈託のない少年時代を取り戻せるとは思えないが、乗り越えて欲しいと節に願う。
訪問者*恩田陸
- 2009/10/15(木) 17:18:55
![]() | 訪問者 (2009/05/14) 恩田 陸 商品詳細を見る |
山中にひっそりとたたずむ古い洋館――。三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、朝霞家の一族が集まっていた。千沙子に育てられた映画監督峠昌彦が急死したためであった。晩餐の席で昌彦の遺言が公開される。「父親が名乗り出たら、著作権継承者とする」孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいる? 一同に疑惑が芽生える中、闇を切り裂く悲鳴が! 冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。数日前、館には「訪問者に気を付けろ」という不気味な警告文が届いていた……。果たして「訪問者」とは誰か? 千沙子と昌彦の死の謎とは? そして、長く不安な一夜が始まるが、その時、来客を告げるベルが鳴った――。嵐に閉ざされた山荘を舞台に、至高のストーリー・テラーが贈る傑作ミステリー!
ホラーの要素もファンタジーの要素もまったくない、ミステリ作品である。舞台は、山奥の閉ざされた山荘、不審な死を遂げた関係者、その死の真実をつまびらかにしようとする探偵役。これだけで本格の匂いがぷんぷんである。だが、著者はそれだけでは終わらせなかった。
物語はほとんど予想通りに進んでいくのだが、要所要所で僅かずつひねられていき、どんどん捻れてくるのである。そしてラスト近くで、捻れが元に戻ったと思わせて、また一気にひねりを加えられるような心地である。
次へ次へと興味が尽きず、ページをめくる手が止められなかった。
これから自首します*蒼井上鷹
- 2009/10/14(水) 19:29:48
![]() | これから自首します (ノン・ノベル) (2009/05/14) 蒼井 上鷹 商品詳細を見る |
自称映画監督の勝馬に幼馴染みの小鹿が告白した。殺人を犯し自首すると約束していた友人が急に翻意したのでかっとなったという。しかし、殺した相手というのが、かつて犯罪をおかしてもいないのに自首騒ぎを起こしたいわく付きの人物。今回の自首騒ぎにも何かいわくがありそうで…。勝馬には勝馬で正直者の小鹿に自首されては困る事情があった!?前代未聞の“自首”ミステリ誕生。
自首をめぐるあれこれの物語である。自首しようとする本人と、その周りの人たちの利害がもつれ合い、真剣にあれこれ画策する姿が、必死であるほど傍目で見ると可笑しくさえある。
映画のための「エピソード候補」として書かれたものを、あるときはなぞるように、あるときは証明するように現実の物語が進んでいくので、ときどきすべてが映画のシナリオのように思えてきて、自分がどちらの世界にいるのか判然としなくなるのも面白さのひとつの要素かもしれない。
結局何ひとつ解決していないので、釈然としない心地もするが、それも著者の意図だろうか。
- | こんな一冊 トップへ |
- 次ページへ»














