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短編宇宙

  • 2021/04/16(金) 16:24:32


最近、夜空を見上げていますか? 個性豊かな人気作家陣が「宇宙」をテーマに描くのは、無限の想像力がきらめく七つの物語。石垣島を旅する父娘に、コロナ禍でステイホーム中の天文学者。銀河を舞台に戦う殺し屋に、恋する惑星!? じんわり泣ける家族小説から、前衛的SF作品まで、未知との遭遇を約束する傑作アンソロジー。鬱屈した日々に息苦しさを覚えたら、この一冊とともに、いざ宇宙へ!


加納朋子「南の十字に会いに行く」  寺地はるな「惑星マスコ」  深緑野分「空へ昇る」  西島伝法「惑い星」  雪舟えま「アンテュルディエン」  宮澤伊織「キリング・ベクトル」  川端裕人「小さな家と生きものの木」

宇宙が主題の物語たちなのだが、扱い方はそれぞれで興味深い。割と普通のストーリーだと思っていると、唐突に宇宙感が出てきたり、まるっきり宇宙が舞台なのにも関わらず人間の営みのようだったり、遠い宇宙と自分の身の回りを知識と想像力とで行ったり来たりしていたり。さまざまな宇宙を愉しめる一冊だった。

ショートショートドロップス*新井素子編

  • 2021/02/20(土) 16:42:06


女性作家による珠玉のSSアンソロジー!
ほら、不思議な味がするでしょう?
新井素子が編む、短くて、ずっと心に残る15の物語
【収録作家および作品】(五十音順)
新井素子「のっく」  上田早夕里「石繭」  恩田陸「冷凍みかん」  図子慧「ダウンサイジング」  高野史緒「舟歌」  辻村深月「さくら日和」  新津きよみ「タクシーの中で」  萩尾望都「子供の時間」  堀真潮「トレインゲーム」  松崎有理「超耐水性日焼け止め開発の顛末」  三浦しをん「冬の一等星」  皆川博子「断章」  宮部みゆき「チヨ子」  村田沙耶香「余命」  矢崎存美「初恋」


編者も初めに言い訳しているが、ショートショート言うにはいささか長いものもある。だが、充分に愉しめるので吉、である。どれもが、短い時間で、いろんなテイストのワクワクドキドキを体験できるのは、まさに缶入りドロップを振って、次にどんな味のドロップが出てくるかを楽しみにするような気持を味わえる。味わっては満足し、また次が欲しくなる。病みつきになる一冊だった。

ドクターM 医療ミステリーアンソロジー

  • 2020/12/13(日) 16:25:44


非合法組織の歯科医師。相手の嘘を必ず見抜く内科医。深夜の病棟で魔女を探す看護師。老女に人格再編手術を施す脳外科医。医療現場で起きる事件や不思議な出来事を、様々な角度から紐解いていく―。8人の人気作家が描く、医療にまつわるミステリーアンソロジー。


「エナメルの証言」 海堂尊  「嘘はキライ」 久坂部羊  「第二病棟の魔女」 近藤史恵  「人格再編」 篠田節子  「人魂の原料」 知念実希人  「小医は病を医し」 長岡弘樹  「解剖実習」 新津きよみ  「厨子家の悪霊」 山田風太郎

馴染みのキャラクタが登場する物語もあり、嬉しく懐かしく愉しんだ。ひと口に医療ミステリと言っても、取り上げる要素は様々で、スポットライトが当たる人物も、切り口もさまざまなので、どの物語も新鮮に愉しめる一冊である。

その境界を越えてゆけ

  • 2020/11/08(日) 07:27:35


「物語の力が、私たちを少しだけ前に進ませてくれる」


世界中にはびこるさまざまな境界。たとえばジェンダー、たとえば人種。積もり積もった差別の実態は、一朝一夕に乗り越えられるものではない。境界線のこちらとそちらには、想像を絶する格差があったりするものである。そんな不毛な境界を、物語世界で越えて行こうという試みである。極個人的には、この雑誌的な作りは、何となく集中できない気がして苦手ではあるのだが、内容自体は興味深く読める一冊ではあった。

不連続な四つの謎 このミステリーがすごい!大賞作家傑作アンソロジー

  • 2020/09/26(土) 07:53:00


加納&玉村刑事が巻き込まれた寝台特急での密室殺人、リサイタル後に起きた有名ピアニストの服毒死の謎、元特撮ヒーローを襲う不可解な誘拐事件、猛吹雪からの首都脱出―テレビドラマと連動したコラボレーションも話題を呼んだ、『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家4名が贈る傑作ミステリー短編集、ついに文庫化!それぞれ独立した4つの物語を各作家が繋いだ、書き下ろし幕間つき。


海堂尊、中山七里、乾緑郎、安生正という、このミス大賞作家がのリレー形式の連作である。タイトルにあるように、つながりは極ごく弱いが、書き下ろされた幕間の巧みな誘導によって、まとまりのある印象になっている。作家それぞれの持ち味もいかんなく発揮されているので、読み応えもあって、愉しめる一冊である。

アンソロジー 隠す*アミの会(仮)

  • 2020/07/28(火) 16:26:13


誰しも、自分だけの隠しごとを心の奥底に秘めているもの―。実力と人気を兼ね備えた11人の女性作家たちがSNS上で語り合い、「隠す」をテーマに挑んだエンターテインメントの傑作!多彩な物語全てに、共通の“なにか”が隠されています。(答え掲載の「あとがき」は、最後にお読みください)これが、本物の短編小説集。


作家のみなさんご自身が、愉しんで原稿用紙に向かわれているのが伝わってくるので、読者も、構えることなく物語に迎えるように思う。そして、裏切られることなく愉しみとおすことができるのである。「隠す」、タイトルだけで魅惑的な響きである。隠されれば覗きたくなるのが人情だろう。その欲求を見事に満たしてくれる一冊である。

明日町こんぺいとう商店街--心においしい七つの物語

  • 2020/07/14(火) 18:33:44


ようこそ!すこし不思議で、どこかなつかしい「明日町こんぺいとう商店街」の世界へ―。マスコットの「招きうさぎ」が目印の商店街を舞台に、七名の人気作家が描く、ほっこりおいしい物語。人気アンソロジー、待望の第4弾!


 一軒目――「サクマ手芸店」 寺地はるな
 二軒目――「ツルマキ履物店」 蛭田亜紗子
 三軒目――「川平金物店」 綾瀬まる
 四軒目――「~中古レコードの買取・販売~しゑなん堂」 芦原すなお
 五軒目――「インドカレー ママレード」 前川ほまれ
 六軒目――「カフェ スルス」 大島真寿美
 七軒目――「おもちゃ屋「うさぎ屋」」 山本幸久


シリーズ一冊目の後、二作目三作目が出ているのに気づかず、読まないままで四作目である。でも、まったく違和感なく、すんなりとこんぺいとう商店街を散策している気分に浸れる。一作目でも書いたが、アンソロジーとは思えないような統一感のある物語集なので、どのお店にも入ってみたい気持ちになりながら愉しむことができる。若い人たちがどんどん新しいことを始めていきそうな気配もあり、これからも愉しみなシリーズである。

特別ではない一日 kaze no tanbun

  • 2020/02/16(日) 18:21:35


この本はあなたの本棚のために特別に作られました──。
西崎憲がプロデュースする短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第一弾。現代最高の文章家17人が「特別ではない一日」をテーマに、小説でもエッセイでも詩でもない「短文」を寄せました。作品同士が響き合い、まるで一篇の長編作品のようにも読めるかつてない本です。

我妻俊樹/上田岳弘/円城塔/岡屋出海/勝山海百合/小山田浩子/岸本佐知子/柴崎友香/高山羽根子/滝口悠生/谷崎由依/西崎憲/日和聡子/藤野可織/水原涼/皆川博子/山尾悠子(50音順)


短編でも掌編でもなく短文、というだけあって、ひとつひとつの物語はとても短く、隙間時間にちょこちょこと読める。とはいえ、内容は気軽に読めるものばかりではなく、少々難しいものもあり、じっくり読みたいものも多い。特別ではない一日というキーワードに則って書かれているが、どれも特別感のある物語だと思わされる一冊だった。

嘘と約束*アミの会(仮)

  • 2020/02/11(火) 16:53:26


破られない約束はない。ばれなければ嘘ではない──。これは、人生のスパイス。様々なアレンジで、お目に掛けます。実力派女性作家集団による書下ろしテーマ・アンソロジー。毒が含まれています。少しずつ、お読みください。


「自転車坂」松村比呂美 「パスタ君」松尾由美 「ホテル・カイザリン」近藤史恵 「青は赤、金は緑」矢島存美 「効き目の遅い薬」福田和代 「いつかのみらい」大崎梢

どの物語もとてもよかった。誰もが持ち得るうしろめたさや、負の感情が、さりげなく練り込まれ、表面からはうかがい知れない深いところへ直に届くような心地がする。ひとつ物語を読み終えるたびに、悪だくみを共有した気分で「ふふっ」と笑みがこぼれたりもする一冊である。

沈黙の狂詩曲

  • 2020/02/08(土) 16:12:37


ミステリーの協演を味わい尽くす!最旬15作家による魅惑のアンソロジー上巻。青崎有吾、秋吉理香子、有栖川有栖、乾ルカ、大山誠一郎、織守きょうや、川崎草志、今野敏、澤村伊智、柴田よしき、真藤順丈、似鳥鶏、葉真中顕、宮内悠介の作品を収録。


既読のものもいくつかあったが、粒ぞろいで愉しめる。どれも、どこか、何か、心に引っかかるものがある物語で、軽いタッチではないものの、一遍一遍が短いので、臆せずに読み始めることができる。どこから読んでも間違いない一冊でもある。

ショートショートの宝箱Ⅲ

  • 2020/01/29(水) 18:09:27


スマホで手軽に読めるのも魅力なのか、ショートショート人気が再燃しています。でも本で読むのは、格別な味わいがあると思いませんか?どうぞ目次を開いてみてください。収められているのは、愛すべき小さな物語たち三〇作。どこから読んでもだいじょうぶ。クスリと笑えたりちょっぴりゾッとしたり、ほっこりしたり―。ひとときの別世界旅行をお楽しみください。



さまざまなテイストのごく短い物語が詰まっていて、まさに宝箱である。いつでもどこでも気軽に手軽に読めるというのは、忙しい現代にはぴったりなのかもしれない。一遍一遍が短いので、もう一作、もう一作、とついつい読み進めてしまう一冊でもある。

あとは 切手を、一枚貼るだけ*小川洋子 堀江敏幸

  • 2019/08/14(水) 07:58:46

あとは切手を、一枚貼るだけ (単行本)
小川 洋子 堀江 敏幸
中央公論新社
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かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。


かつては誰よりも近しく過ごしたにもかかわらず、いまは触れることもできず、見ることもできない「私」と「ぼく」の、長い隔たりの後にやっと可能になった手紙のやり取りが、そのまま物語になっている。なぜ、どうして、と、謎や疑問が頭のなかを渦巻くが、反して二人のやり取りは研ぎ澄まされ、無駄なことなど何ひとつないようでいて、二人以外の人にとってはなくて何ら構わない事々で成り立っている。私とぼくの親密さがそこからも察せられ、いまの状況を思うとき、切なさに押しつぶされそうにもなるのである。だがそれに反して、二人のやり取りのなんと静謐でありしかも情熱的なこと。視えるということは、もしかするとさほど大切なことではないのではないかとすら思わされる、胸打たれる一冊である。

トロイメライ*村山早紀+げみ

  • 2019/07/03(水) 16:49:35

トロイメライ (立東舎)
村山 早紀 げみ
立東舎
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大人気作家・村山早紀の書き下ろし作品を含む3つの短編に、数多くの装幀で知られるイラストレーター・げみの世界観に寄り添うやさしいイラストが彩る、華麗な1冊。『春の旅人』に続くコラボレーション第2弾。
オールカラー・全イラスト描き下ろし。

あなたの心に寄り添う、3つの物語——。
「トロイメライ」:近未来、ロボットがぐっと身近になった世界。愛美ちゃんはお父さんと、ロボットのお兄ちゃんと暮らしていたのだけれど……。
「桜の木の下で」:大晦日、久しぶりにゆりちゃんが帰ってきた。同じ年にうまれた猫と女の子の物語。
「秋の祭り」:山奥に捨てられてしまった古いお雛様とお内裏様、三人官女。そんなお人形たちに、ある夜魂が宿ります。


全編に漂う世界観はとてもやさしく穏やかなのだが、その内容には、胸をふさがれるものもある。だが必ず、遠くても希望の光が見えていて、目を逸らさずにいようと思わせてもくれる。諍いのない穏やかなあしたへの道を閉ざしてはいけないと思わされる一冊である。

平成ストライク

  • 2019/05/26(日) 20:15:26

平成ストライク
平成ストライク
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青崎有吾 天祢涼 乾くるみ 井上夢人 小森健太朗 白井智之 千澤のり子 貫井徳郎 遊井かなめ
(株)南雲堂 (2019-04-23)
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激動の昭和が終わり、バブル経済の熱冷め止まぬうちに始まった平成。
福知山線脱線事故、炎上、児童虐待、渋谷系、差別問題、新宗教、消費税、ネット冤罪、東日本大震災――平成の時代に起こった様々な事件・事象を、九人のミステリー作家が各々のテーマで紡ぐトリビュート小説集。

「平成」という言葉を聞いて 感傷的になっちゃってる自分を照れくさく感じるような人たちへ。
「加速してゆく」青崎有吾
「炎上屋尊徳」井上夢人
「半分オトナ」千澤のり子
「bye bye blackbird...」遊井かなめ
「白黒館の殺人」小森健太朗
「ラビットボールの切断」白井智之
「消費税狂騒曲」乾くるみ
「他人の不幸は密の味」貫井徳郎
「From The New World」天祢涼



まったく好みではないものもあったが、平成という時代を振り返り、その長さと変化の激しさを改めて感じられる物語たちである。現在とは、小説に登場する小道具が違い、言葉遣いが違い、生活の周囲の空気感が違う。「平成」とひとくくりにしてしまうと、橋のない水路を飛び越して、新しい時代である現在(いま)に立っているような心地になる。だが、昭和から平成、そして令和、すべてが地続きなのだと、ふと気づいたりもする。時代の空気ってどうやって作られるのだろう、などと考えたくなる一冊である。

ショートショート美術館 名作絵画の光と闇

  • 2019/03/17(日) 16:26:35

ショートショート美術館 名作絵画の光と闇
太田 忠司 田丸 雅智
文藝春秋
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ショートショートから作家としてのキャリアをスタートした太田忠司と
新世代ショートショート作家として人気を集める田丸雅智の二人が
ゴッホ、ムンク、マグリットなどの名画をテーマに競作。
絵画の世界に引き込まれる一作です。


10の絵画作品を題材に、田丸雅智氏と太田忠司氏がそれぞれの感性で物語を創っている。同じ絵を見ても、それぞれ受け取るものが微妙に違っているのが興味深く、その表し方もそれぞれで愉しめる。太田氏の方が、どちらかというと想像力を遠くまで飛ばしているような印象であるが、それも含めて愉しめる一冊になっている。