同居人*新津きよみ

  • 2015/03/26(木) 20:05:42

同居人 (角川ホラー文庫)同居人 (角川ホラー文庫)
(2003/01)
新津 きよみ

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35歳、デザイナーの麻由美は都内に新築マンションを3800万円で購入する。ローンの繰り上げ返済のためにルームメイトを募り、添乗員・乃理子との同居生活がスタートした。しかし、お互いに「秘密」を抱えているために、ぎくしゃくしはじめる2人の関係。ある日乃理子が部屋に呼び入れた女性が、2人の生活を崩壊へと向かわせた―。嫉妬、虚栄心、独占欲…。女性心理の名手が紡ぎ出す、渾身のホラー・サスペンス。


初めから怖い。冷蔵庫がキーになっていて、実は乃理子が冷蔵庫に不倫相手の妻の……、などと考えてしまったが、それは深読みだったか。だが、見知らぬ他人が住む部屋の同居人になるというだけでもかなり怖い気もする。そして、お互いの疑心暗鬼も手伝って、さらなる恐怖を引き入れてしまうのだから、どうしようもない。タイトルの真の意味がラストになって判るが、そこはまったくのホラーで、叫びだしたくなる。じわじわと怖い一冊である。

トライアングル*新津きよみ

  • 2010/12/21(火) 07:18:35

トライアングルトライアングル
(2008/09/25)
新津 きよみ

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郷田亮二は、駆け出しの刑事。医学部を卒業して医師になったが、医師を辞めて刑事になったという変わった経歴の持ち主である。亮二のこの経歴には、過去に遭遇した事件が大きく影響していた。十歳の時、初恋の少女・葛城佐智恵が誘拐され、殺されたのだ。事件から十五年が経って時効が成立した時、亮二は自ら刑事となって、この事件を追い続けることを決意した。そんな亮二の前に、「葛城サチ」と名乗る美しい女性が現れた。彼女は、殺された葛城佐智恵にあまりにも似ていた。この女性はいったい何者なのか―?亮二の心は激しく揺れ動く。


ドラマになったのはまったく知らなかったが、Amazonのレビューはいつもながら酷評である。わたしはとても面白く読んだ。巧いと思った。二分の一成人式の作文や思春期の入り口に差しかかる10歳の心情、殺人事件と母親の事情、担任教師のその後、里親、そして事件の真相。さまざまな要素がそれぞれ並び立ち、しかも思ってもいないラストである。佐智恵の母が単身中国に渡ることを決意した理由はいささか説得力に欠けるようにも思うが、それ以外はとても好みの一冊だった。

アルペジオ*新津きよみ

  • 2008/05/01(木) 16:59:09

アルペジオアルペジオ
(1998/10)
新津 きよみ

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女は拳銃に運命を、警官は音楽に人生を賭けた。
女は夢みた結婚生活が夫の暴力で破綻し、家を飛び出した。
男は警視庁音楽隊でクラリネットを吹いている。
違う道を歩んできた2人の人生が、いまアルペジオ(分散和音)を奏でる。
新境地を拓く書下ろしサスペンス野心作!

「そういえば、良介さん、いま警察にいるって知ってる?」
どきっとした。垂水良介。大学2年の夏まで、1年間あまり交際していた男だ。
「警察官なんて、意外よね。良介さん。音楽好きでもの静かな感じだったでしょう?」
あの細くてしなやかな指でクラリネットのリング・キイを押さえていた良介と、警察官という職業とが結びつかなかった。――本文より


一時期つきあい、やがて未熟さゆえの他愛のない理由で別々の道を歩いていた由布子と良介の物語である。
由布子は身長の低さによるコンプレックスから、背が高く逞しい男と結婚し、暴力を振るわれて家を出る。
良介は警察官になり音楽隊に配属されてクラリネットを吹く。
由布子は長身の逸美に世話になり、偶然拾ってそのまま持ってきてしまった拳銃を彼女に売る。
良介は上司で長身で優秀なクラリネット奏者の橋爪の豪邸に招かれ、立派なクラリネットをプレゼントされる。
ふたりは、別々の場所でそれぞれに重すぎる荷物を背負い、違う人たちと関わりながら別々に生きているはずだった。いつしか引き合うように糸が撚り合わされるまでは・・・・・。

由布子と良介それぞれ(特に由布子)の平穏とは言えない人生が悩ましく苦しくなるようである。根底にあるのが、背の低さという他人にはなかなか理解されないコンプレックスであることが、現実味を増し、胸を打たれる。途中で逸美の哀しい人生も撚り合わさって、ますます目が離せなくなる。一気に読ませる一冊だった。

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ママの友達*新津きよみ

  • 2007/10/31(水) 18:39:53


ママの友達ママの友達
(2007/03/20)
新津 きよみ

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突然届いた中学時代の交換日記が、四十代のいまを変えていく
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四十代の主婦・野島典子は、反抗的になってきた中学二年の娘・美咲との関係に
悩んでいた。そんな典子のもとに、ある日差出人不明で届いた中学時代の交換
日記。送り主は、メンバー四人の中でリーダー格だった長谷川淳子かと思われた
が、淳子は一週間ほど前に殺されていた。そのことをニュースで知り、驚く典
子。音信不通だった残りのふたり----すでに孫がいる等々力久美子と、幼い娘
を持つシングルマザーの藍川明美----の人生も、日記をきっかけに大きく動き
出す。
女性の人生に起こる様々な事件をサスペンスタッチで描き出す、感動の書き下ろ
し長編!


タイトルから受けるほのぼのとした感じとは裏腹に、物語はなにやら不穏な幕開けである。典子の元に届けられた「交換日記在中」と書かれた封筒に送り主の名はなく、宛名も定規を当てて書かれたような文字なのだった。中身は確かに典子が中学生のころ四人で回していた交換日記のノートだったのだが・・・。
突然届いた三十年前の交換日記は、典子に中学生のころのことを思い出させただけではなく、現在中学二年の娘・美咲についての悩みにまで強く意識するきっかけになる。三十年間交流が途絶えていた間、四人はそれぞれにさまざまなものを抱えながら生きていて、想いは日記をきっかけにして過去と現在を微妙に揺らす。
誰からもうらやまれる優等生だったハセジュンが殺された事件の意味というか位置づけにはもう少し重みがあってもいいような気はするが、それもひとつの人生なのだと言えばそうなのだろう。女・四十五歳の立ち位置の微妙な不安定さがよく表わされた一冊だと思う。

緩やかな反転*新津きよみ

  • 2004/08/05(木) 13:58:36

☆☆☆☆・


ショックによって 魂が別の人間に宿ってしまう。
こんな設定の小説はいくつか知っているが この作品は ただ魂が入れ替わるだけではない。
過去に遡り記憶の不確かさ身勝手さに不意を突かれる。すべてを覚えているということは なんと残酷で容赦のないことなのか。

物語は終わっても まだ終われない家族がいる。これから野田一家はどうなっていくのだろう。野田光代は 野田光代に戻れるのだろうか。

キーワードは鏡。鏡にはきっと何かが宿っている。