不時着する流星たち*小川洋子

  • 2017/04/05(水) 18:14:43

不時着する流星たち
不時着する流星たち
posted with amazlet at 17.04.05
小川 洋子
KADOKAWA (2017-01-28)
売り上げランキング: 1,881

たくらみに満ちた豊穣な世界文学の誕生!
盲目の祖父は、家中を歩いて考えつく限りの点と点を結び、その間の距離を測っては僕に記録させた。足音と歩数のつぶやきが一つに溶け合い、音楽のようになって耳に届いてくる。それはどこか果てしもない遠くから響いてくるかのようなひたむきな響きがあった――グレン・グールドにインスパイアされた短篇をはじめ、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー、ローベルト・ヴァルザー等、かつて確かにこの世にあった人や事に端を発し、その記憶、手触り、痕跡を珠玉の物語に結晶化させた全十篇。硬質でフェティッシュな筆致で現実と虚構のあわいを描き、静かな人生に突然訪れる破調の予感を見事にとらえた、物語の名手のかなでる10の変奏曲。


さまざまな場所のさまざまな時間を束の間旅する心地に浸れる物語たちである。ひとつの物語が終わる度に、物語が生まれるのに影響を与えた人物が紹介されているのだが、その影響の受け加減がまた絶妙で、思わずうなる。物語のエッセンスが胸に沁みこんでくるような一冊である。

琥珀のまたたき*小川洋子

  • 2015/11/23(月) 16:51:34

琥珀のまたたき
琥珀のまたたき
posted with amazlet at 15.11.23
小川 洋子
講談社
売り上げランキング: 25,126

魔犬の呪いで妹を失った三きょうだいは、ママと一緒にパパが残してくれた別荘に移り住む。そこで彼らはオパール、琥珀、瑪瑙という新しい名前を手に入れる。閉ざされた家の中、三人だけで独自に編み出した遊びに興じるなか、琥珀の左目にある異変が生じる。それはやがて、亡き妹と家族を不思議なかたちで結びつけ始めるのだが……。


アンバー氏と私のふれあいのなかで、アンバー氏が過ごしてきたいささか浮世離れした不思議な日々が語られる。常軌を逸した母親の児童虐待の話し、と言ってしまえば身もふたもないのだが、そのひどく外界から隔絶された毎日の中で、三姉弟は母の留守中に自分たちで遊びを作りだし、豊かな情感を育んでもおり、世間的に見れば歪んだ形ではあるが、母から愛情も注がれて暮らしていたのである。彼らがしあわせだったのか不幸せだったのかは、他人には何とも言えず、彼らにしかわからないことなのだろう。なにもないがとても豊かで、冷え冷えとしながらあたたかな印象の一冊である。

いつも彼らはどこかに*小川洋子

  • 2013/07/27(土) 16:45:30

いつも彼らはどこかにいつも彼らはどこかに
(2013/05/31)
小川 洋子

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この世界が素晴らしいのは動物たちがいるから――震えるような感動を呼び起こす連作小説。たてがみはたっぷりとして瑞々しく、温かい――ディープインパクトの凱旋門賞への旅に帯同することになる一頭の馬、森の彼方此方に不思議な気配を残すビーバー、村のシンボルの兎、美しいティアーズラインを持つチーター、万華鏡のように発色する蝸牛……。人の孤独を包み込むかのような気高い動物たちの美しさ、優しさを、新鮮な物語に描く小説集。


「帯同馬」 「ビーバーの小枝」 「ハモニカ兎」 「目隠しされた小鷺」 「愛犬ベネディクト」 「チーター準備中」 「断食蝸牛」 「竜の子幼稚園」

動物でつなぐ連作短編集。どんなふうにどんな動物が登場するのか、ちょっぴりどきどきする。なにせ、著者の世界に棲む動物たちなのだから。生身の動物とは限らず、動物が主体であるわけでもないのだが、それは見事に、まさに「いつも彼らはどこかに」圧倒的な存在感を持っているのである。懐かしいような、切ないような、愛しいような、哀しいような、近しいような、理解しがたいような、不思議な感覚とともにある一冊である。

ことり*小川洋子

  • 2013/01/15(火) 17:07:36

ことりことり
(2012/11/07)
小川 洋子

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12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。
親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、
そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。
小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。
兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。
青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。
弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。
静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。
そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、 弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。
世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作。


人知れずひっそりと――鳥籠を両腕で抱くように――亡くなっていた「小鳥の小父さん」の描写で物語は静かに幕を開ける。その後に続くのは、5歳のときから、家族と暮らし、ポーポー語と彼が名づけた言葉でしか話さない七歳年上のお兄さんと暮らし、小鳥の小父さんと呼ばれるようになり、静かであたたかな生を終えるその日までのあれこれが、丁寧に語られているのである。それは、お兄さんが毎週水曜日に決まって買っていたポーポーキャンディーの包み紙を、一枚一枚根気よく糊付けして作った小鳥のブローチのように、さまざまな色の層が重なり合ってできたひとつの形のようにも思われる。こんなしあわせの形があってもいいな、と一抹の寂しさ哀しさとともに、ほっと安堵の息をつくような一冊である。

最果てアーケード*小川洋子

  • 2012/08/18(土) 16:34:02

最果てアーケード最果てアーケード
(2012/06/20)
小川 洋子

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ここは、世界でいちばん小さなアーケード―。愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語。


とてもとても著者らしい物語である。これぞ小川洋子の世界、という趣。どことも知れぬ最果てにある見過ごしてしまいそうなアーケードの入り口を潜ると、そこには、きらきらと煌めくような大切なあれこれがぎゅっと凝縮されて詰まっているのである。大切な時間、大切なもの、大切な気持ち、大切な人、それらのかけがえのない思い出が、とても丁寧に扱われているのである。ここにある一風変わった店のチョイスも、なんと著者らしいことだろう。それらがなんと普通にひっそりとそこにあることだろう。心がしんとするような一冊である。

人質の朗読会*小川洋子

  • 2011/04/27(水) 18:36:16

人質の朗読会人質の朗読会
(2011/02)
小川 洋子

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遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。


何より設定が突飛である。地球の反対側のとある国で遺跡めぐりをしていた日本人観光客が反政府ゲリラの襲撃を受け人質になった。救出作戦もむなしく人質は全員犯人が仕掛けたダイナマイトの爆発によって死亡した。そんな哀しい事件のあとで公開された、人質たちが自ら書いた話を朗読する声による彼らの物語なのである。年齢も性別も立場もばらばらな人質たちの語る話は、ごく個人的なことでありながら静かで深いところへと分け入るような共通の雰囲気を持ち、聴く者の胸にまっすぐに入ってくるのである。語られる題材も語り口もさまざまなのに、人質であるという運命の下で語られるからなのかどれもとても大切なことのように思われて、胸がしんとするのである。静かで厳かで滋味深い一冊である。

原稿零枚日記*小川洋子

  • 2010/09/08(水) 16:39:14

原稿零枚日記原稿零枚日記
(2010/08/05)
小川 洋子

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「あらすじ」の名人にして、自分の原稿は遅々としてすすまない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースにこころ騒ぎ、子泣き相撲や小学校の運動会に出かけていって幼子たちの肢体に見入る…。とある女性作家の日記からこぼれ落ちる人間の営みの美しさと哀しさ。平凡な日常の記録だったはずなのに、途中から異世界の扉が開いて…。お待ちかね小川洋子ワールド。


全篇に渡り、至るところ隅々まで小川洋子が敷き詰められている。それはまさに光の届かぬ森の奥のしんと湿った冷たい場所に人知れず増えつづける苔のようである。著者の紡ぎ出す物語はどうしてこうも、匂いや手触りまでありありと感じさせるのだろう。自在に大きさを変えて小川洋子ワールドに潜りこんだような読書タイムである。ページを閉じても現実に戻るのに一瞬の間が生じる一冊である。

カラーひよことコーヒー豆*小川洋子

  • 2010/05/06(木) 16:39:34

カラーひよことコーヒー豆カラーひよことコーヒー豆
(2009/11/26)
小川 洋子

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連載分24本+書き下ろし5本から一貫して伝わってくるのは、スポットライトが当たる人の周縁で密やかに、でもしっかりと生きる人々への、深い愛と感謝の気持ち。装丁・装画は『ミーナの行進』も手がけた寺田順三氏


とてもやさしい一冊だった。著者のお人柄と心持ちのやさしさが、ページのいたるところからゆらゆらと立ちのぼってきて、何度もじんわりと目頭を熱くさせられた。はしっこで生きる者のひとりとしてもたいそう励まされる一冊でもある。

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猫を抱いて象と泳ぐ*小川洋子

  • 2009/09/12(土) 14:03:25

猫を抱いて象と泳ぐ猫を抱いて象と泳ぐ
(2009/01/09)
小川 洋子

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伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。触れ合うことも、語り合うことさえできないのに…大切な人にそっと囁きかけたくなる物語です。

もしどこかで、8×8のチェック模様を見かけることがあったら、
その下をのぞいてみて下さい。
猫を抱いた青年が一人、うずくまっているかもしれません。
とても小さな青年です。でも彼の描く詩は、象のように深遠です。
あなたがその詩を読み取り、繰り返し胸によみがえらせてくれたとしたら、
これほどうれしいことはありません。
そのことが何より、彼の生きた証となるのですから。
                    小川洋子


あるひとりの小さなチェスプレーヤーの物語である。
唇の皮がつながったまま生まれてきたので、産声を上げることもできず、切り離されたときに移植された脛の皮膚のせいで、成長するにつれて唇に脛毛が生えてきたが、それ以外は11歳のままの大きさの青年の物語である。
彼は広い外の世界をほとんど知らず、一生をチェスと共に生き、狭い場所にいながらにして、チェスを通して宇宙よりも広いところへ旅をしつづけたのだった。登場人物のひとりひとりが、とても素晴らしく尊敬するに値する人々であるのに、みな一様に謙虚なのが尚素晴らしい。
とても静かで、包容力があり、無限の広さと自由があり、そしてとてもひっそりとして寂しく、愛にあふれた一冊だった。

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夜明けの縁をさ迷う人々*小川洋子

  • 2007/11/18(日) 17:10:25


夜明けの縁をさ迷う人々夜明けの縁をさ迷う人々
(2007/09)
小川 洋子

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風変わりな曲芸師と野球少年の友情、放浪の涙売りの恋、エレベーターで生まれたE.B.の生涯、作家だった祖父の形見をめぐる老嬢の話…。世界の片隅に息づく人々に灯りをともす9つの物語。『野生時代』掲載を単行本化。


「曲芸と野球」「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」「涙売り」「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」「銀山の狩猟小屋」「再試合」

実にピンポイントな視点で対象を見つめる物語たちである。クラフトエヴィング商會が紡ぐ物語にも似た匂いを持つが、そこはやはり小川さん、もっともっと核心を突く冷たさに満ちている。しかも、その冷たさには比類ないほど熱い思いが籠められていたりするのである。読み始めると目が離せなくなる。

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深き心の底より*小川洋子

  • 2007/07/12(木) 17:06:42

☆☆☆☆・

深き心の底より 深き心の底より
小川 洋子 (2006/10/03)
PHP研究所

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『博士の愛した数式』の著者、小川洋子の作家デビューから10年の間に綴られた初期エッセイ集。金光教の教会の離れで暮らした子供時代、学生時代の思い出、アンネ・フランクへの思い、子育て、そして家族、取材や旅行で訪ねた町の思い出…。何気ない日常生活を描く静謐な文章のなかに、作家が生み出す不思議な世界観を垣間見ることができる。言葉の石を一個一個積み上げたような珠玉の54編。


小川作品の底に常に流れるひんやりとした厳かさの源流にほんの少し手を差し入れて触れることができた心地がする。
死を、生の対極に位置づけるのではなく 生きているがゆえの死であるという死生観は、小川作品を読み解く鍵になるのだと思う。

小川洋子対話集

  • 2007/06/22(金) 07:00:23

☆☆☆☆・

小川洋子対話集 小川洋子対話集
小川 洋子 (2007/01)
幻冬舎

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ひっそりと暮らす人びとへ――――。

田辺聖子*作家/日本 岸本佐知子*翻訳家/日本 リー・アン*作家/台湾 藤井省三*文学博士/日本 ジャクリーヌ・マールセン*作家/オランダ レベッカ・ブラウン*作家/アメリカ 柴田元幸*翻訳家/日本 佐野元春*音楽家/日本 江夏豊*野球家/日本 清水哲男*詩人/日本 五木寛之*作家/日本

心に残る言葉の詰まったとっておきの対話集。


さまざまな人びとと語ることによって、その人のこともわかるが、小川洋子さんご自身の人となりがとてもよくわかる対話集である。
そして、彼女の小説の成り立ちやそこにこめられたものがふわりと立ち上ってくるようでもある。言葉という道具を使い、小説という形を使って小川さんが目指すところに読者も少し近づけるような。彼女の作品に登場する動物の役割にもなるほどと思わされた。

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海*小川洋子

  • 2006/12/09(土) 17:04:25

☆☆☆☆・

海
小川 洋子 (2006/10/28)
新潮社

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キリンはどんなふうにして寝るんだろう-。
『新潮』掲載の表題作ほか、「博士の愛した数式」の前後に書かれた、美しく奥行きの深い全7作品を収録する。この世界の素晴らしさを伝えてくれる短編集。


両親と九十歳のおばあさんと、十歳年下(二十一歳)の小さな弟が暮らす泉さんの実家の海辺の町へ 結婚の承諾を得るために出かけたときのことが綴られる表題作のほか、「風薫るウィーンの旅六日間」「バタフライ和文タイプ事務所」「銀色のかぎ針」「缶入りドロップ」「ひよこトラック」「ガイド」の七編の物語。
どれもが旅の物語であるような気がする。それは、実際の旅であったり、心の旅であったり、人生の旅であったりするのだが。そしてその 傍から見れば小さな旅で、主人公たちはいずれもなにか大きなものを手にしているのだ。慈しみだったり、愛おしむ心だったり、思いやりだったり、ときには強さだったり。人としての大切なかけがえのないなにかなのである。

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ミーナの行進*小川洋子

  • 2006/10/06(金) 17:48:22

☆☆☆☆・

ミーナの行進 ミーナの行進
小川 洋子 (2006/04/22)
中央公論新社

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美しくてか弱くて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――懐かしい時代に育まれた、二人の少女と、家族の物語。


語るのは朋子。父を亡くしたあと、母は 将来に向けて新たな勉強をするために上京し、朋子は 芦屋の洋館に暮らす母の姉一家のもとに預けられることになった。もうじき中学にあがるときだった。
お屋敷に暮らしていたのは、ドイツ人の血が四分の一入っていてとてもカッコイイ伯父さん、母の姉である伯母さん、伯父さんの母親のドイツ人のローザおばあさん、伯父さん夫婦の娘で病弱なミーナ、そしてロー竿ばあさんと同じくらいの歳で、家事を切り盛りしている米田さん、庭のことなどをする小林さん。そしてそして、庭にいるのは、コビトカバの女の子・ポチ子だった。
お屋敷の大きさやすばらしさ、伯父さんのカッコよさ、庭でカバを飼っていることなど、初めのうちは驚きの連続だったが、すぐにミーナと仲良しになった朋子は たくさんの初めてで宝物のような経験をする。

ミーナのいるお屋敷での暮らしは、あたたかさやしあわせに溢れているのだが、そこには何かしら足りないもの、欠けたものの影が見え隠れしており、それがなんとはなしに物悲しい空気になっていつもあたりを漂っているように思われる。
欠けているものとはたとえば、朋子の両親であり、ミーナの健康であり、フレッシー動物園の動物たちであり、しばしば長期に渡って姿を消す伯父の存在であったりする。
寂しいとか悲しいとか、一言も文字にはされていないのだが、スイスに留学しているミーナの兄の龍一が夏休みの帰省から戻っていく前に行った海水浴で みんなでかき氷を食べながら

全員揃ってる、と私は思った。窮屈そうに肩を寄せ合い、長椅子に座っている六人を一人一人目で追いながら、大丈夫、誰も欠けてない、と思った。


という朋子の胸のうちのつぶやきが、その寂しさを端的に現していて切なさで胸がいっぱいになる。
たのしくきらきらとした物語でありながら、失われてゆくものたちへの祈りの物語でもあるような気がする。

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犬のしっぽを撫でながら*小川洋子

  • 2006/10/03(火) 06:47:51

☆☆☆☆・

犬のしっぽを撫でながら 犬のしっぽを撫でながら
小川 洋子 (2006/04)
集英社

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『博士が愛した数式』の著者の痛快エッセイ。
数の不思議に魅せられた著者の「数にまつわる」書き下ろしエッセイのほか野球の話、本の話、犬の話などを収録。


『博士の愛した数式』執筆にまつわるあれこれや、数についてのあれこれ。そして飼い犬・ラブのことごとや ご本人にとっての書くこととは、などがろきにはイメージどおりに、またあるときには意外な発見を伴って目の前に立ち上ってくる。そして、中ほどには紙の色を緑色に変えて『アンネ・フランクへの旅』が差し挟まれている。著者にとっての大切さが窺い知れる扱いである。小川作品が常にまとっている生に対する死の雰囲気の源を垣間見た思いだった。