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ののはな通信*三浦しをん

  • 2018/12/12(水) 18:59:01

ののはな通信
ののはな通信
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三浦 しをん
KADOKAWA (2018-05-26)
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最高に甘美で残酷な女子大河小説の最高峰。三浦しをん、小説最新作。

横浜で、ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。
庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、
外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。
二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。
しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。
それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。
不器用にはじまった、密やかな恋。
けれどある裏切りによって、少女たちの楽園は、音を立てて崩れはじめ……。

運命の恋を経て、少女たちは大人になる。
女子の生き方を描いた傑作小説。


昭和59年、ののとはなのミッション系の女子高時代の手紙やメモのやり取りから始まる往復書簡形式の物語である。文章のやり取りだけで、彼女たちの日々がくっきりと浮かび上がってくるのは不思議な感覚である。女子高独特の人間関係や異性間、そこにはまり切れない彼女たちの甘酸っぱく秘めやかな思いの数々。強いようで傷つきやすい少女時代の心と身体。そんなあれこれが、赤裸々につづられていく。そして別れ。大人になった彼女たちの立場や生き方はそれぞれでも、少女時代に共有した時間と感情は、何物にも代えがたいものだったのである。まさに、お互いにお互いを作りあった印象である。キラキラふわふわとした少女時代はそれとして、大人になるということは、わが身だけでなく、周囲の状況や、もっと広く世界の状況にも思いを致さなければならなくなるということでもあるだろう。心の芯に持った誇りに恥じない生き方ができる人はそう多くはないと思うが、自分で考えることを辞めなかった彼女たちなら、きっと毅然と生きていくことだろう。はなの消息も心配だが、信じるしかない。さまざまな要素がぎゅうっと詰まった一冊だった。

愛なき世界*三浦しをん

  • 2018/11/15(木) 07:54:39

愛なき世界 (単行本)
愛なき世界 (単行本)
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三浦 しをん
中央公論新社
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恋のライバルが人間だとは限らない!
洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――
本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。


植物の研究をしている、大学の研究室が主な舞台なので、専門的な用語や描写が多数登場する。苦手分野なのだが、そんなことを忘れさせるほど、物語の世界に吸い込まれていく心地になる。この一冊のなかには、さまざまな愛が詰まっている。もちろん恋愛もあるのだが、それだけではなく、料理や食材に対する愛、師弟間の愛や、同僚たちに対する愛、そして研究対象である植物へのとめどない愛。読むごとに満たされていく感覚に包まれる。タイトルとは裏腹に、温かな愛にあふれた一冊である。

あの家に暮らす四人の女*三浦しをん

  • 2015/11/02(月) 16:57:47

あの家に暮らす四人の女
三浦 しをん
中央公論新社
売り上げランキング: 50,139

謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。いつしか重なりあう、生者と死者の声―古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。谷崎潤一郎メモリアル特別小説作品。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』。


細雪と雰囲気は全く違うが、鶴代と佐知が実の母娘である以外は、雪乃も多恵美も希薄なつながりの人々である。それぞれの事情で、杉並にある佐知親子の邸で一緒に暮らすようになるのだが、そのことで何かが劇的に変わるわけでもなく、鶴代と佐知の暮らしは、それまでとあまり変わらずに淡々と続いている。ただ、佐知が生まれてすぐ家を出たまま行方知れずの父のことを考えるきっかけになったり、雪乃や多恵美がもたらす外の世界のあれこれを、佐知なりに受け止めたりはするようになり、自分の行く末のことに思いを致したりもするのである。不思議な共同生活ながら、なんとなくお互いの気配を感じ、頼りあうこともありながら上手くいっているのが、読みながら次第に心地よくなっていく。途中、父の魂が活躍(?)する辺りに多少の違和感はあったが、読み終えてみれば、現代版細雪かもしれないと思えてくる一冊である。

まほろ駅前狂想曲*三浦しをん

  • 2013/12/22(日) 19:19:13

まほろ駅前狂騒曲まほろ駅前狂騒曲
(2013/10/30)
三浦 しをん

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まほろ駅前で起きる、混沌と狂乱の大騒ぎ!
まほろ市で便利屋稼業を営む多田と行天。ある日多田は行天の元妻から子供を無理やり預けられて困惑する。待望のシリーズ第三弾。


行天はもはや松田龍平で脳内に登場し、多田はもちろん瑛太だが、まぁそれもありか、とも思う、多田便利軒最新作である。行天の元妻の娘で、遺伝子上は行天の娘でもあるはるを預かることになったり、無農薬野菜を作る団体の胡散臭さや、横中バスの横暴に憤る老人パワーに翻弄されたりと、相変わらずヘンに忙しい多田便利軒であるが、今回はそれだけでなく、多田の恋愛話があったり、行天が過去の傷と対決したりと、ふたりの真髄に迫る場面もあって、読み応えがある。ラスト前は、多田と一緒にほろりと寂しい気持ちにもなったが、ラストは今後の波乱を予感させつつもめでたしめでたしで、続きを期待させる一冊である。

政と源*三浦しをん

  • 2013/10/16(水) 19:03:48

政と源政と源
(2013/08/26)
三浦 しをん

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東京都墨田区Y町。つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。どうやら、昔の不良仲間に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが―。弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居しひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!


73歳の幼馴染の老人二人が主人公である。性格も境遇もまるで違う二人だが、どういうわけか離れずにこの年までつき合ってきた。もはや気心が知れているなどというものではない。それでも相手には言えない屈託はそれぞれに(たぶん)あり、相手も口には出さずとも、そのことはちゃんと承知しているのだ。そういうわけで、二人のお約束のような掛け合いの息もぴったりで絶妙なのである。ある意味究極のBLかもしれない。そこに、源二郎の弟子の二十歳の若者・徹平がこれまたいい具合にスパイスになって、二人のいい味をなお引き立てている。シリーズ化してほしい味わい深い一冊である。

舟を編む*三浦しをん

  • 2012/03/08(木) 17:20:47

舟を編む舟を編む
(2011/09/17)
三浦 しをん

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玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく―。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか―。


タイトルからはどんな物語が繰り広げられているのか想像もできずにページを開いたのだが、冒頭からすでに言葉好きにはたまらない。最初の一ページでもう心を掴まれ、これからなにがどう展開していくのかとわくわくさせられる。辞書編集という地味で時間と根気がこの上なく必要とされる現場で、言葉好き、辞書好き(な変人)たちが、一冊の辞書を作り上げるまでの顛末である。作業の様子はもちろん、編集部の面々の偏執狂的といってもいいほどの個性的なキャラクターがとてもいい。いささか向きは変わっているが、愛にあふれた職場なのである。直に定年を迎える荒木の後継者として白羽の矢を立てられた馬締くんがどうなることかと思ったが、なかなかどうして立派なものである。辞書が愛おしくなる一冊である。

小暮荘物語*三浦しをん

  • 2011/03/15(火) 16:58:10

木暮荘物語木暮荘物語
(2010/10/29)
三浦しをん

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小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、安普請極まりない全六室のぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。一階には、死ぬ前のセックスを果たすために恋を求める老大家・木暮と、ある事情から刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。二階には、光子の日常を覗くことに生き甲斐を見いだすサラリーマン・神崎と、3年前に突然姿を消した恋人を想いながらも半年前に別の男性からの愛を受け入れた繭。その周りには、夫の浮気に悩む花屋の女主人・佐伯や、かつて犯した罪にとらわれつづけるトリマー・美禰、繭を見守る謎の美女・ニジコたちが。一見平穏に見える木暮荘の日常。しかし、一旦「愛」を求めたとき、それぞれが抱える懊悩が痛烈な哀しみとしてにじみ出す。それを和らげ、癒すのは、安普請であるがゆえに感じられる人のぬくもりと、ぼろアパートだからこそ生まれる他人との繋がりだった……。


「シンプリーヘブン」 「心身」 「柱の実り」 「黒い飲み物」 「穴」 「ピース」 「嘘の味」

おんぼろアパート木暮荘とその住人をめぐる七つの連作物語。
薄っぺらい壁一枚で隔てられた木暮荘の住人たちの生活音――要するに艶っぽい声とかテレビの音などである――からほかの住人のことを思う人がいたり、まったく無関心だったのにある日大家の爺さんと親しく話す人がいたり、悩みを抱えながらも恋人と過ごす人がいたり、ごく普通の人たちの物語なのだが、木暮荘という場所ゆえにつながる何かがあるようにも思えてくる。住人たちとそれぞれの周りの人々とのかかわりがまたなんともいえない味わいを醸しだしている。木暮荘の前までいって覗き込んでみたくなる一冊である。

天国旅行*三浦しをん

  • 2010/11/05(金) 17:14:47

天国旅行天国旅行
(2010/03)
三浦 しをん

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そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。


「森の奥」 「遺言」 「初盆の客」 「君は夜」 「炎」 「星くずドライブ」 「SINK」

「心中」を共通テーマとする短編集である。にもかかわらず、くすりと笑ってしまう場面あり、ほのぼのと胸をあたたかくさせる場面あり、じめじめと暗いばかりではないのである。もちろんざらざらとした感触もあるが、心中という行為そのものよりもその向こう側に焦点を当てているからだろうか未来の明るさを感じられる一冊なのである。

秘密の花園*三浦しをん

  • 2010/06/30(水) 18:38:54

秘密の花園 (新潮文庫)秘密の花園 (新潮文庫)
(2007/02)
三浦 しをん

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私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう?カトリック系女子高校に通う、三人の少女、那由多、淑子、翠。性格の異なる三人の「私」は、家族、学校、男たちの中にあって、それぞれが遠いはるかを、しずかに深くみつめている。「秘めごと」をかかえる彼女たちの微笑の裏側の自由。甘やかな痛みの底に眠る潔くも強靱な魂。自分を生き抜いていくために「私」が求めていたことは―。記念碑的青春小説。


  洪水のあとに
  地下を照らす光
  廃園の花守りは唄う



章ごとにそれぞれ、那由多、淑子、翠(すい)が主人公である。カトリック系女子高と聞けば、女同士のどろどろした日常を想像される向きもあろうかと思うが、本作は集団としての女子というよりも、そのなかにある個としてのそれぞれを描いている。幼いころのトラウマや、自分自身の存在に対する自信のなさ、プライドの裏返しの劣等感など、さまざまなものを抱えた彼女たちが、誰をどのように信頼し、どのように繋がっていくのかが興味深い。そして、大人にもなりきれていないが子どもというには知りすぎている彼女たちの怜悧な残酷さにもドキリとさせられる。目を離せない心持ちにさせられる一冊である。

星間商事株式会社社史編纂室*三浦しをん

  • 2009/12/12(土) 16:46:37

星間商事株式会社社史編纂室星間商事株式会社社史編纂室
(2009/07/11)
三浦 しをん

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川田幸代。29歳。独身。腐女子(自称したことはない)。社史編纂室勤務。彼氏あり(たぶん)。仕事をきっちり定時内にこなし、趣味のサークル活動に邁進する日々を送っていた彼女は、ある日、気づいてしまった。この会社の過去には、なにか大きな秘密がある!……気づいてしまったんだからしょうがない。走り出してしまったオタク魂は止まらない。この秘密、暴かずにはおくものか。社史編纂室の不思議な面々、高校時代からのサークル仲間、そして彼氏との関係など、すべてが絡まり合って、怒濤の物語が進行する。涙と笑いの、著者渾身のエンターテインメント小説。幸代作の小説内小説も、楽しめます!


社史と同人誌とを同列に並べてしまったところが著者らしい一冊である。そこに、50年代後半から60年代初頭の日本のめざましい経済発展期における、星間商事株式会社の歴史の穴の謎解きを絡め、社史編纂室のメンバーたちの独特のキャラクターと出自来歴の秘密(?)を絡めて、愉しい一冊に仕立てられている。

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まほろ駅前番外地*三浦しをん

  • 2009/11/17(火) 13:27:30

まほろ駅前番外地まほろ駅前番外地
(2009/10)
三浦 しをん

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第135回直木賞受賞作『まほろ駅前多田便利軒』での愉快な奴らが帰ってきた。多田・行天の物語とともに、星、曽根田のばあちゃん、由良、岡老人の細君が主人公となるスピンアウトストーリーを収録。


「光る石」 「星良一の優雅な日常」 「思い出の銀幕」 「岡夫人は観察する」 「由良公は運が悪い」 「逃げる男」 「なごりの月」

なるほど「番外地」である。多田と行天にスポットを当てるというよりは、前作に登場した人物たちの日常に多田と行天が関わる形の物語になっている。そうは言っても、彼らふたりの関係には変わりはなく、相変わらず相性が良いのか悪いのか、依りかかっているのか依りかかられているのか判らないような、なし崩し的でありながら必然的とも言えるような関係性のままである。それがもどかしいような気もするが、心地好くもある。このまま安定せずに、安定して欲しい(?)ものだなどと、身勝手に願いたくなる。

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神去(かむさり)なあなあ日常*三浦しをん

  • 2009/07/08(水) 16:42:37

神去なあなあ日常神去なあなあ日常
(2009/05)
三浦 しをん

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美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。


高校卒業が間近になっても、進路も決まらずふらふらしていた平野勇気は、親や担任に乗せられて林業の村・神去村に送り込まれることになってしまった。
この物語は、繁華街もコンビニさえもなく、若者すらほとんどいず、携帯は山の天辺以外はほとんど圏外、という信じられないような環境に放り込まれた勇気が、奇跡的に見つけた、インターネットにも繋がっていない埃をかぶったパソコンで綴った神去村での暮らしの記録である。
腰の定まらない勇気でなくとも厳しい林業の現場に、それでも少しずつ慣れてくるにつれ、雑音の多い都会にはない自然の営みの素晴らしさや、人々の関係のあたたかさに気づきはじめ、心持ちが変化してくるのだった。
閉ざされた、と言ってもいいような山奥の村で、代々伝わっている行事や信仰と密接に接しながら生きている人々との暮らしと、それが勇気に及ぼす効果がとても興味深かった。もっとずっと読んでいたいと思わされる一冊である。

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むかしのはなし*三浦しをん

  • 2009/06/17(水) 07:24:46

むかしのはなし (幻冬舎文庫)むかしのはなし (幻冬舎文庫)
(2008/02)
三浦 しをん

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三カ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れると決まったとき、人はヤケになって暴行や殺人に走るだろうか。それともモモちゃんのように「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」と諦観できるだろうか。今「昔話」が生まれるとしたら、をテーマに直木賞作家が描く衝撃の本格小説集。


「ラブレス」 「ロケットの思い出」 「ディスタンス」 「入江は緑」 「たどりつくまで」 「花」 「懐かしき川べりの町の物語せよ」

それぞれの物語の冒頭に、桃太郎やかぐや姫といったほんとうの昔話のあらすじが掲げられているが、物語自体は、その昔話を下敷きにしてはいるが、単なるパロディではない。趣向を変えて、まさにいま生まれるむかしばなし、という形になっている。
特定の人を介した連作ではないが、どの物語も「誰か」に向かって語られており、もはや立派な昔話であるという点で、見事な連作である。

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光*三浦しをん

  • 2008/12/22(月) 10:51:06

光
(2008/11/26)
三浦 しをん

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暴力はやってくるのではない。帰ってくるのだ。

理不尽をかいくぐり生きのびた魂に、安息は訪れるのか。
三浦しをん、渾身の最新長編。

天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた――。


何故「光」というタイトルをつけたのだろう、と訝しくなるほど、明るさとは無縁の物語である。
島という閉鎖的な場所で生まれ、限られた中ですべてを賄わざるを得ない少年期を過ごし、津波という不可抗力によってそれさえも奪われたわずかな者たちは、開かれた場所に出てもやはり自分という鎧の内側に閉じこもっているのだった。
読書中も、読後も、頭の中にはどうどうと押し寄せてくる津波の轟きが低く唸っているようで、島中を埋め尽くした泥に胸の中まで埋め尽くされたような重苦しさが残るのだった。

仏果を得ず*三浦しをん

  • 2008/12/05(金) 07:49:19

仏果を得ず仏果を得ず
(2007/11)
三浦 しをん

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“好き”が過ぎるとバカになる。でも、そんなバカならなってみたい。文楽に賭ける若手大夫の熱い青春。直木賞作家が愛をこめて語ります。


仏果:仏道の修行によって得た仏の境地。

     演目
 一、幕開き三番叟
 二、女殺油地獄
 三、日高川入相花王
 四、ひらかな盛衰記
 五、本朝廿四考
 六、心中天の網島
 七、妹背山婦女庭訓
 八、仮名手本忠臣蔵


やんちゃだった高校時代に、文楽に出会って衝撃を受け、それから一途にのめりこんでいる健(たける)の物語である。
どこかスポーツ根性物とも通じるところがあるのは、ひたすら稽古稽古でなにかを悟るという心の持ちようが似ているからかもしれない。
そして、それぞれの演目ごとに健に降りかかる難題に答えを見つけ出す過程は、さながらミステリの謎解きのようである。
田中啓文氏の「笑酔亭梅寿シリーズ」を思い出させる雰囲気もある。

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