ムカシ×ムカシ*森博嗣

  • 2014/08/31(日) 06:52:56

ムカシ×ムカシ (講談社ノベルス)ムカシ×ムカシ (講談社ノベルス)
(2014/06/05)
森 博嗣

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「やっぱり、河童の祟りですか?」大正期、女流作家の百目一葉を世に出した旧家・百目鬼(どうめき)家。当主の悦造・多喜夫妻が、広大な敷地に建つ屋敷で刺殺された。遺された美術品の鑑定と所蔵品リストの作成依頼がSYアート&リサーチに持ち込まれる。河童が出るという言い伝えがある井戸から、新たな死体が発見され、事件は、異様な連続殺人の様相を呈し始めるのだった。百目鬼一族を襲う悲劇の辿りつく先は?


シリーズものだが、ほかは読んでいない。一応一話完結のようなので、物語は愉しめるが、ラストのやり取りが、やはり初めから読んでいないと判らないようである。莫大な遺産を巡る連続殺人の様相を呈する物語であるが、実は殺人の動機はそんなところには全くないのであった。凡人には理解しがたいが、譲れないことというのは人それぞれだと思わされる。ラストの女性が気にはなるが、著者のシリーズを追いかけるととんでもないことになるので、ぼつぼつ、ということにしておこう。人間関係が絶妙な一冊でもある。

相田家のグッドバイ*森博嗣

  • 2012/09/16(日) 16:38:50

相田家のグッドバイ相田家のグッドバイ
(2012/02/24)
森 博嗣

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普通の家庭だったけれど、ちょっと変わった両親。
最後に息子がしたことは破壊か、それとも供養だったのか?

彼の母の第一の特徴は、ものを整理して収納することだった。それくらいのこと、綺麗好き整頓好きなら誰でもする。が、彼女の場合、完全に度を越していた。母は、父と結婚して以来、燃えるゴミ以外のゴミを一度も出したことがない。たとえば瓶、プラスティックの容器、ビニルの袋、空き箱、缶、紐に至るまでけっして捨てない。きちんと分別をし収納した。包装紙はテープを取りアイロンをかけて皺を伸ばし正確に折り畳み、輪ゴム一本でさえ太さ別にそれぞれ仕舞った。空き箱の蓋を開けると少し小さい箱が中に収まっていて、その蓋を取るとさらに小さな箱が幾重にも現われた。円筒形のお茶や海苔の缶も同様。家の至るところにそういったものが高密度で収納されていた。七歳年長の無口な父はときどき「こんなものは捨てれば良い」と言ったが、基本的に妻の収納癖に感心していた。平凡な家庭の、60年に及ぶ、ちょっと変わった秘密と真実とは? 森博嗣の家族小説!


小説というよりも、家族史とでも呼びたいような淡々とした調子で終始する一冊である。そしてこれは、親類縁者との付き合いが希薄で、語り手である相田家の息子・紀彦の祖父母とさえ頻繁に交流を持たなかった相田家の在り方の特徴と、両親の考え方によるところが大きいのだろうとも思われる。そうした生い立ちの中から、紀彦自身が感じ、学び取り、考えて自らの自立やその後の生活に役立てようとした様子は、一見薄情のようにも見えて、実のところは両親の影響力が強く及んでいる証しでもありそうだ。ひとりの人間の生き方の模索であり、親離れ、子離れの一例でもあり、連綿と続いてゆく家族の形の在りようということをも考えさせられる一冊でもある。

タカイ×タカイ*森博嗣

  • 2009/03/12(木) 19:00:59

タカイ×タカイ (講談社ノベルス)タカイ×タカイ (講談社ノベルス)
(2008/01/11)
森 博嗣

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「あんな高いところに、どうやって死体を上げたのでしょう?」有名マジシャン・牧村亜佐美の自宅敷地内で発見された他殺死体は、奇妙なことに、地上約十五メートルのポールの上に掲げられていた。被害者は、前夜ファンと牧村の会食中に消えたマネージャだった。事件関係者の調査依頼を受けた“探偵”鷹知祐一朗は、複雑に絡み合う人間関係の糸を解きほぐし、犯人の意図と事件の意外な真相に迫る。ますます好調Xシリーズ第三弾。


今回も、ミステリ的には弱い、というか物足りない。
ただ、椙山探偵事務所(SYアート&リサーチと名前を変えたが)アルバイトのような留守番のような真鍋くんの着想の鋭さと、まったくそうは見えない亡羊としたキャラクターは、回を追うごとに育ってきているように思われる。たのしみなキャラである。
西之園萌絵は、今回は登場人物の一覧に名を連ねており、事件にも顔を出すが、椙山との直接の絡みはまだない。Xシリーズという別物にはなっているが、S&Mシリーズからつづく物語、ということなのだろうか。

キラレ×キラレ*森博嗣

  • 2009/03/11(水) 18:15:21

キラレ×キラレ (講談社ノベルス)キラレ×キラレ (講談社ノベルス)
(2007/09)
森 博嗣

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「この頃、話題になっている、電車の切り裂き魔なんだけれど―」三十代の女性が満員の車内で、ナイフのようなもので襲われる事件が連続する。“探偵”鷹知祐一朗と小川令子は被害者が同じクリニックに通っている事実をつきとめるが、その矢先、新たな切り裂き魔事件が発生し、さらには殺人事件へと―。犯行の異常な動機が浮かび上がるとき、明らかになるものとは…。Xシリーズ第二弾。


ミステリとしての筋そのものは軽めである。犯人はすぐに想像ができてしまう。
ただ、第一弾同様、最後の最後に現れる彼女のこのシリーズとの関わり方を早く知りたいと思うばかりである。
ミステリを愉しむというより、人の関わり方や、登場人物のやりとりを愉しむ物語として読むのがいいかもしれないとも思う。

イナイ×イナイ*森博嗣

  • 2009/03/11(水) 07:30:09

イナイ×イナイ (講談社ノベルス)イナイ×イナイ (講談社ノベルス)
(2007/05/10)
森 博嗣

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「私の兄を捜していただきたいのです」美術品鑑定を生業とする椙田事務所を訪れた黒衣の美人・佐竹千鶴はこう切り出した。都心の一等地に佇立する広大な佐竹屋敷、美しき双子、数十年来、地下牢に閉じ込められているという行方不明の兄・鎮夫。そして自ら“探偵”を名乗る男が登場する。旧家で渦巻く凄惨な事件の香り…。新章開幕、Xシリーズ第1弾。


シリーズを通して登場するのは、探偵・鷹知祐一朗、美術品鑑定業・椙田康男、芸大生で椙田事務所の留守番・真鍋瞬市、椙田の助手・小川令子 のようである。
わたしが未読の別のシリーズに登場した人物がいるようである。わたしが既読の別シリーズの登場人物もラスト近くちらりと姿を見せる。前者に関するなんらかの鍵を握っているような雰囲気で、シリーズ第二弾を心待ちにさせる森テクニックである。
物語自体は、シリーズ第一弾ということで、登場人物紹介の意味合いもあるせいか、さほど込み入ってはいないが、とんでもないところへ視点をもっていかれる、という意味では奇想天外とも言えると思う。

銀河不動産の超越*森博嗣

  • 2008/11/08(土) 16:50:55

銀河不動産の超越銀河不動産の超越
(2008/05)
森 博嗣

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“毎日が気怠い”省電力青年・高橋君の人生は、銀河不動産に入社して一変した。次々に訪れる変わった客、ついには運命の女性までが現れ…。奇妙な「館」、衝撃の連続。究極の森エンターテインメント。


表題作のほか、「銀河不動産の勉強」 「銀河不動産の煩悩」 「銀河不動産の危惧」 「銀河不動産の忌避」 「銀河不動産の柔軟」 「銀河不動産の捕捉」 「銀河不動産の羅針」

地元の国立大学にどういうわけか受かり、卒業を控えた就職活動はことごとく失敗し、最後の最後でなければ誰も行かない、と言われた「銀河不動産」に就職することになった高橋君の物語である。
高橋君、躰の半分が蒟蒻に占領されたように日々疲れており、どうにもこうにもやる気が出ない青年なのだが、何とか銀河不動産の日々の業務をこなしていくうちに、一風変わった出会いを経験するのである・・・・・。

主人公があふれるエネルギーとは無縁なので、物語はゆるく進むのだが、出会う人々、起こる出来事はどちらかと言うと刺激的である。それも高橋君の人徳ゆえかもしれない。奇妙な状態の数々を、一瞬いぶかしみながらもさほど重大に受け止めもせず受け容れてしまう高橋君が、親しみ深く、可笑しくもある。
こんな人生もしあわせかもしれないと、ちょっぴり羨ましくもあるが、高橋君だからこそのしあわせなのだろう。

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λに歯がない*森博嗣

  • 2008/01/31(木) 18:20:43

λに歯がない (講談社ノベルス)λに歯がない (講談社ノベルス)
(2006/09/06)
森 博嗣

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密室状態の研究所で発見された身元不明の4人の銃殺体。それぞれのポケットには「λに歯がない」と記されたカード。そして死体には…歯がなかった。4人の被害者の関係、「φ」からはじまる一連の事件との関連、犯人の脱出経路―すべて不明。事件を推理する西之園萌絵は、自ら封印していた過去と対峙することになる。ますます快調Gシリーズ第5弾。


このシリーズで初めて犀川先生が謎解きに有効な考えを提示したのが目新しかったくらいだろうか。真賀田四季に至る道筋はまだまだ全く見えてもこないし、密室殺人事件の方もまだ解決されるべき余地を残している。シリーズ最後の一作ではすっきりすることができるのだろうか。次作では何かはっきりするだろうかと期待しても、さらなる謎が現れるばかりでもどかしいことこの上ない。

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ηなのに夢のよう*森博嗣

  • 2008/01/22(火) 07:31:34

ηなのに夢のよう (講談社ノベルス)ηなのに夢のよう (講談社ノベルス)
(2007/01/12)
森 博嗣

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地上12メートルの松の枝に首吊り死体が!
遺されていたのは「ηなのに夢のよう」と書かれたメッセージ。
不可思議な場所での「η」の首吊り自殺が相つぐなか、
西之園萌絵は、両親を失った10年まえの
飛行機事故の原因を知らされる。
「φ」「θ」「τ」「ε」「λ」と続いてきた一連の事件と
天才・真賀田四季との関連は証明されるのか?
Gシリーズの転換点、森ミステリィ最高潮!


Gシリーズ第六弾。
『λに歯がない』を抜かしてしまったことに「η」を読み終えてから気づいた。
だが、本作もまだ目的地からは程遠い旅の途中の感じである。たどり着きたいのはどこなのだろう。真賀田四季?だとしたら、結末などないのではないだろうかという思いも頭をよぎる。深い深い森の奥にずんずんと迷い入ってしまう心地でもある。

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εに誓って*森博嗣

  • 2008/01/19(土) 16:35:10

εに誓って (講談社ノベルス)εに誓って (講談社ノベルス)
(2006/05/10)
森 博嗣

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山吹早月と加部谷恵美が乗車していた東京発中部国際空港行きの高速バスがジャックされた。犯人グループは、都市部に爆弾を仕掛けたという声明を出していた。乗客名簿には《εに誓って》という名前の謎の団体客が。《φは壊れたね》から続く不可思議な事件の連鎖を解く鍵を西之園萌絵らは見出すことができるのか?最高潮Gシリーズ第4弾。


山吹早月と加部谷恵美が乗った高速バスがジャックされるといういやがうえにも緊張感が高まる展開の今作である。いちはやく警察関係者から情報を仕入れた探偵・赤柳初朗が山吹の部屋にいる海月のもとに知らせに行き、西之園萌絵も加わってもどかしい一夜を過ごすのである。バスジャック犯は組織立っているようで犯人も至極丁寧であり、乗客たち――インターネットのサイト「εに誓って」の元に集まった人たちらしい――もとても落ち着いていて加部谷は少し訝しく思ったりもしている。
携帯電話の使用は禁止されていないので、折に触れてバスの中の二人と萌絵たちとがやり取りすることもでき、それがよけいに錯覚を深めることにもなったのだろう。とにかく大掛かりな仕掛けに見事引っかかってしまった。トンネル内での犯人の呼びかけの場面まで、錯覚にまったく気づかずにいたのである。やられた、という感じ。森ミステリには珍しい趣向かもしれない。

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τになるまで待って*森博嗣

  • 2008/01/13(日) 17:14:16

τになるまで待って (講談社ノベルス)τになるまで待って (講談社ノベルス)
(2005/09/06)
森 博嗣

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森林の中に佇立する《伽羅離館》。超能力者神居静哉の別荘であるこの洋館を、7名の人物が訪れた。雷鳴、閉ざされた扉、つながらない電話、晩餐の後に起きる密室殺人。被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは『τになるまで待って』。ミステリーに森ミステリィが挑む、絶好調Gシリーズ第3弾!!


Gシリーズ第三弾。
シリーズの中盤に位置する本作は、中継ぎのような趣である。これ一冊では消化不良を起こす読者も少なくないのではないだろうか。人里離れた館の密室で殺人事件が起き、トリックは犀川によってあっけなく解かれるが、犯人はまだ特定されていないのだから・・・・・。
謎の宗教団体MNIや真賀田四季の影が、シリーズの回を追うごとに色濃くなってはくるのだが、どこでどう繋がってくるのかもいまのところまだはっきりしない。
著者の作品は、全体として「森ワールド」とも呼ぶべきもので、もしかするとすべてが何かしらの繋がりを持っているのではないかと思わせられもする。
それにしても、萌絵ちゃんの叔母・佐々木睦子さんもなかなか見過ごせない人物かもしれない。

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θは遊んでくれたよ*森博嗣

  • 2008/01/12(土) 10:02:05

Θ(シータ)は遊んでくれたよ (講談社ノベルス)Θ(シータ)は遊んでくれたよ (講談社ノベルス)
(2005/05/10)
森 博嗣

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飛び降り自殺とされた男性死体の額には「θ」と描かれていた。半月後には手のひらに同じマークのある女性の死体が。さらに、その後発見された複数の転落死体に印されていた「θ」。自殺?連続殺人?「θ」の意味するものは?N大病院に勤める旧友、反町愛から事件の情報を得た西之園萌絵らの推理は…。好調Gシリーズ第2弾。


Gシリーズ第二弾。
「θ」でなければならない必然性がいまひとつな気はするが、キャラクターが粒ぞろいなので読み物としては面白い。
犀川先生は、彼を主に描いたS&Mシリーズでもあの掴みどころのなさなので、脇役に過ぎないこのシリーズではなおさらよく判らない人物になっている。このシリーズから読み始めた読者は、きっと犀川先生を好きになれないだろう。
萌絵ちゃんも、大人になったこともありなにかをふっきってなにかを諦め、違う段階に進んだ感があり、当然犀川先生との関係も別次元に移行した感じである。あまり面白くないなぁ・・・。
今作で興味深いのはやはり海月君。彼がしゃべるとき、物語は動く。目が離せないのである。

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φは壊れたね*森博嗣

  • 2008/01/03(木) 16:51:01

φは壊れたね (講談社文庫 も 28-34)φは壊れたね (講談社文庫 も 28-34)
(2007/11)
森 博嗣

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おもちゃ箱のように過剰に装飾されたマンションの一室に芸大生の宙吊り死体が!
現場は密室状態。死体発見の一部始終は、室内に仕掛けられたビデオで録画されていた。
タイトルは『φは壊れたね』。
D2大学院生、西之園萌絵が学生たちと事件の謎を追及する。


Gシリーズの一作目。
著者のシリーズ物は読み始めるのに多少パワーがいるので、しばらくご無沙汰していたのだが、やっとGシリーズに取り掛かってみることに。
まず感慨深いのは、あの萌絵ちゃんが大学院生になってすっかり大人になっていること。犀川先生とのその後はどうなっているのかにも興味は向くのだが、それほど進展があった様子もなく、今作で犀川先生は電話の応対のみの登場であり、ちょっぴり物足りなくもある。そもそも、萌絵ちゃんも登場はするものの、警察と学生たちとの橋渡し的な役割でしかなく、大学生時代の奔放な活躍が見られなかったのも残念。
事件自体は、現場の状況の特異性には目を引かれるが、面白みはいまひとつといったところ。
いちばんの注目は、海月くんだろうか。

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カクレカラクリ*森博嗣

  • 2007/08/02(木) 19:00:57

☆☆☆☆・

カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep カクレカラクリ?An Automaton in Long Sleep
森 博嗣 (2006/08)
メディアファクトリー

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廃墟マニアの郡司朋成と栗城洋輔は、同じ大学に通う真知花梨に招かれて鈴鳴村にやって来た。その地にある廃墟施設を探検するためだ。だが彼らを待ち受けていたのは奇妙な伝説だった。鈴鳴村にはかつて天才絡繰り師が住んでいたが、120年後に作動するという絡繰りを遺してこの世を去った。今年はまさに絡繰りが作動するその年にあたるというのだ!2人は花梨と妹の玲奈の協力を得て、隠された絡繰りを探し始めるのだが…。


物語の中で花梨の妹の玲奈がやたらとコカ・コーラを飲むと思ったら、コカ・コーラ120周年記念作品なのだそうである。去年ドラマ化もされていたらしい。ちっとも知らなかった。
「隠れ絡繰が120年後に動き出す」というのも120周年に掛けてあるのだろうか。
鈴鳴の大地主のお嬢様である花梨の印象が、工学部の一大学生としてだけ知っていたときと、故郷の村にいる彼女としての姿とで少し変わっているのが巧みである。場の持つ力を感じられる。そしてその場である鈴鳴とそこに住む人々の独特の雰囲気が物語をはじめから不思議な空気で満たしている。言い伝えとか一族同士の諍いとか、120年の長きにわたる絡繰伝説とか・・・。古さと新しさが渾然一体となって時間の感覚を失わされるようでもある。
ミステリであり、ファンタジーでもある一冊だった。

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少し変わった子あります*森博嗣

  • 2006/11/30(木) 19:10:15

☆☆☆・・

少し変わった子あります 少し変わった子あります
森 博嗣 (2006/08)
文藝春秋

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上品で美味しい孤独をどうぞ。

失踪した後輩が通っていたのは、いっぷう変わった料理店。予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるという…。謎めいた料理店で出会う「少し変わった子」たちが、あなたを幻想的な世界へと誘う物語。


8つの「変わった子」の連作物語。
なんて不思議な物語なのだろう。やっていることといえば、初対面の若い女性と食卓を囲み 美味しい料理を食べているだけなのだが...。
その店には名前もなく、決まった店舗もなく、メニューもない。ただ電話をすれば いつも違うどこかに店が設えられ、料理が供される。そして、オプションでお相伴してくれる女性を頼むこともできるのである。少し変わった子、というのはこの女性のことである。彼女たちも店と同じようにその場限り、一度限りで 二度と会うことはできないのである。とりとめのない話をしたり、ただ黙って雰囲気に酔いしれたり、心地好いときを過ごして また日常へと帰るのである。
大学教授の小山にこの店を紹介したのは、後輩の荒木だった。その後 彼は失踪し、彼についての手かがりを得たいという思いも手伝って、小山はその店に通うようになったのであった。――のだが・・・・・。
このラストは・・・・・!? 背筋がぞくっとしたのは気のせいだろうか。

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奥様はネットワーカ*森博嗣

  • 2006/04/02(日) 17:12:40

☆☆☆・・



小説とも劇画ともひとあじ違う、新しい形といえるかもしれない。
コジマケン氏のイラストが随所にかなり大胆に主張しているし、登場人物もイラストによって 視覚的にイメージが固定される。

主な登場人物は6人。
某国立大学工学部科学工学科の秘書、スージィこと内野智佳、28歳。
同科学工学科の助手、ホリこと堀江尚志、26歳。
同化学工学科教授、イエダこと家田恒雄、57歳。
同化学工学科助教授、サトルこと遠藤学、38歳。
同情報工学科助教授、サエグサこと三枝洋侑、34歳。
同化学工学科図書室の司書、ルナこと鈴木奈留子、25歳。

この6人が、入れ替わり立ち替わり語り手になることで、起こった事件に形を与えていこうとしている。
そして、6人の語り以外に差し挟まれる短い呟きのようなもの。ときとして主体を変えているようにも見え、犯人の裡なる言葉――別人格として?――のようでもある。これが不気味なのだ。
話の筋としては、別段どうということもなかったが、新しい試みとして愉しんだ。