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くっすん大黒*町田康

  • 2005/09/27(火) 17:18:02

☆☆☆・・



 一生遊んで暮らしたい
 賞賛と悪罵と二つながら浴びた戦慄のデビュー作!

 爆発する無意味さ、闊達極まりない言葉の震えと語りの変奏、
 倦怠と迂回の果ての笑いの横溢。
 町田康のデビューは、唐突に文学の可能性を切り開いて見せた。
 だがまたその仕様もない、益体も無い、甲斐性もない、
 身も蓋もなく遣る瀬ない世界は、岩野泡鳴、葛西善蔵以来の
 正統に立つものでもある。
 十五年前、『メシ食うな』で日本にパンク・ロックを実在させた町田町蔵が、
 今作家町田康として、日本近代の言葉を清算し、破天荒な建設を始めて、
 新たな戦慄を蔓延させている。    福田和也(文芸評論家)

                               (帯より)


表題作のほか、河原のアパラ。

三年前のある日、ふと、働くのが嫌になり、その瞬間に仕事を辞め、何をするでもなくぶらぶらと暮らした結果、大黒様のようなぶよぶよと醜い顔になり、妻にも逃げられてしまった男・楠木の物語である。

だらだらぶらぶらとしては酒を飲んで酔っ払い、金が底をつきかけると誰かを頼って動き出す、というどうしようもない暮らしをしている楠木だったが、この頃その辺に転がっている大黒様に腹が立って仕方がない。
自分がしょうもないのもあれもこれも何もかもがこの大黒のせいのような気がしてくるのである。しかもこの大黒は自立できず、背負った大袋のせいかほんの少しの刺激で後ろに転がるのである。ますます腹が立つ。
そんなわけで、この大黒を棄てるために出かけた楠木だったが...。

言い様もなく怠惰で益体もない楠木なのだが、変なところで正しい道徳観念を持っていたり、論理的でないことはできなかったり、一目を気にして気弱だったりするので、妙に憎めないのである。
何なんだこの本は!?と思いながらも、読後感が思いのほか清々しいのを訝しんでみたりもするのである。

告白*町田康

  • 2005/04/25(月) 20:36:16

☆☆☆・・



 人はなぜ人を殺すのか
 河内音頭のスタンダードナンバー<河内十人斬り>をモチーフに、
 町田康が永遠のテーマに迫る渾身の長編小説!

                        (帯より)


676ページの大作である。
評判もずいぶんいいらしい。
でも、わたしはあまりのめり込めなかった。

主人公である熊太郎は極度に思弁的なその性癖ゆえに、子どもの頃から 心の奥で考えていることをそのまま言い表す言葉を持たずに育つ。よって、周囲の評価と自らの胸の裡とのギャップに悩み、それによって更に、物事を不必要に歪めて先読みするようになり、かえって何事も上手く行かぬようになる。

熊太郎の思弁性は 極端なものかもしれないが、多かれ少なかれ誰にでもある要素ではないだろうか、と思うとき、全面的に熊太郎に肩入れする気持ちにはなれないのである。ある場面では共感し同情的にもなるのだが。

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