1Q84 BOOK3<10月-12月>*村上春樹

  • 2011/02/11(金) 11:28:20

1Q84 BOOK 31Q84 BOOK 3
(2010/04/16)
村上 春樹

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そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。


青豆と天吾の章に牛河の章が加わって物語りは進む。前仁作よりは、どこかにあるはずの着地点を目指して進んでいるように見える。ミステリのなぞが解き明かされるときに向かうような高揚感もある。だがいつしかそれさえも錯覚だったのかと思わされるようにもなるのだった。さきがけとはなんだったのか、老婦人の思惑とはなんだったのか、そんなあれこれがことごとく霧消してしまうような結末であると感じたのはわたしだけだろうか。言ってみればこれはただの、長い長い再会までの物語である。わたしにとっては、コースターに乗り込みじりじりと上昇したが頂上の先にはレールがなかったような心地の一冊である。

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1Q84 BOOK2<7月-9月>*村上春樹

  • 2010/09/19(日) 16:36:56

1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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Book 2
「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。


引き続き、青豆の章と天吾の章が交互に現れそれぞれに進んでいく。BOOK1のラストでは、青豆の物語はもしかすると天吾が書いている長い物語なのではないか、とチラッと思いもしたが、そうでもないようである。ふたりの物語は遥か遠くに離れているようでいて手を伸ばせば届きそうなところまで近づいたりもする。そして相変わらずに普遍的なことが語られているようでもあり、いたって具体的なことが語られているようにも見える。着地点があるのかどうか、いささか心許なくなってきてもいる。

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1Q84 BOOK1<4月-6月>*村上春樹

  • 2010/09/18(土) 11:11:09

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。

Book 1
心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。


図書館に予約して一年以上待ってやっとである。ただ正直、個人的に著者の作品とはあまり相性がよい方ではないので期待はまったくしていなかった。
スレンダーな女性・青豆の章と、がっちりした男性・天吾の章が交互に現れる構成になっている。まずは青豆。冒頭からすでに世界は捻れ歪んでいる。読者には理由は判りようもないがなにか時空の隙間のようなところに入り込んでしまった感覚に陥る。そこからはもう、現実か虚構かはどうでもいい。BOOK1はどこかにたどり着くまでの長い長い導入部のようにも思われ、早くその場所にたどり着きたい心地にさせられるが、もしかすると着地点などはどこにもないのかもしれないとも思わされる。また、具体的なあるものを暗示しているようでもあり、まったくの夢物語のようでもある。Amazonのレビューでは散々な言われようだが、少なくともわたしにとっては、プラスの期待はずれではあった。

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はじめての文学:村上春樹*村上春樹

  • 2007/04/19(木) 17:16:04

☆☆☆・・

はじめての文学 村上春樹 はじめての文学 村上春樹
村上 春樹 (2006/12/06)
文藝春秋

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小説の面白さ、楽しさを味わうために、著者自身が用意したスペシャル・アンソロジー。はじめてのひとも、春樹ファンも欠かせない一冊。「シドニーのグリーン・ストリート」「かえるくん、東京を救う」など全17編を収録。


村上春樹に初めて接する若い人たちに向けて著者自身の手によって選ばれた短編・掌編の数々である。
「かえるくんのいる場所」と題されたいわゆるあとがきには、それぞれの作品が生まれた背景のようなものにも触れられていて興味深い。
わたしがいちばん好きだったのは「沈黙」という人間関係の不条理、いじめ、処世術といったキーワードで語られる物語だった。著者の言葉によると、ご自身の作品の中ではいささか特殊だという。ご自身の体験を下敷きにして生まれた物語なのだとか。沈黙の意味が重い。
バラエティに富んだ作品たちなので、まさに「はじめての村上春樹」にはうってつけではないだろうか。

東京奇譚集*村上春樹

  • 2005/12/18(日) 17:39:41

☆☆☆・・



5つのちょっと不思議な短編集。
解釈を読者に委ねている――意識的なものなのかどうかはよくわからないが――ので、読み手の数だけ解釈があり いろいろな印象が持たれるのだろうと思われる。偶然というには少しできすぎていて しかし不思議というにはささやかすぎる物語たちである。どの物語もきっちり解決されていないので、想像が広がるといえばそうなのだが、消化不良のようなあと味でもある。

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ふしぎな図書館*村上春樹

  • 2005/08/12(金) 21:00:13

☆☆☆・・



佐々木マキさんの絵とのコラボ作品。共著の作品のカテゴリに入れるべきだったかも。
文庫本ほどのサイズなのにハードカバーで澄ました子供みたいな姿。

ぼくは、オスマントルコの税金の集め方に ふと疑問をもってしまったばっかりに、何の変哲もない市立図書館のふしぎな地下の世界に引き入れられてしまう。
大きな鉄の球を足につけられ、地下牢に閉じ込められて一ヶ月の間にオスマントルコの税金に関する三冊の本を暗記しなければならない。
地下牢の見張り役は本物そっくりの羊の皮をかぶった羊男。
美味しい三度の食事とおやつや夜食まで出してくれる。
羊男が自ら粉を練って作ってくれるドーナツは揚げたてでかりっとしていてなんとも美味しそうなのだ。
作品中でぼくも言っているが、一体どこまでが本当にあったことなのだろう。
そして、何を暗示しているのか あるいは何も暗示などしていないのかよく判らないが、とにかくふしぎだらけの一冊だった。

象の消滅*村上春樹

  • 2005/06/22(水) 17:29:49

☆☆☆・・


短篇選集 1980~1991

 ニューヨークが選んだ村上春樹の初期短篇17篇。
 英語版と同じ作品構成で贈る
 Collected short stories of Haruki Murakami

 これら17の短篇は、わたしが当初期待していた通りのものとなった。
 作家として多くの引き出しを持つ、驚異的なハルキの才能は、
 国境を越えても揺るぎない。
               ゲイリー・L・フィスケットジョン
               (クノップフ社副社長/編集次長)

                         (カバーより)


原書のような体裁に透明のカバーが掛けられ、そこに日本語版のタイトルその他が載っている。ニューヨークの書店に並んだものを手に取ったような気分に少しだけさせられる。
英訳されたものばかり、という思いがあるせいなのか、どの短篇も翻訳調の語り口がちょっぴり鼻についた。わたしが翻訳物が苦手なせいもあるかもしれないが。

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海辺のカフカ 上下*村上春樹

  • 2005/03/10(木) 13:53:50

☆☆☆☆・



  [データ1]
  15歳
 彼は長身で、寡黙だった。金属を混ぜ込んだような強い筋肉を持ち、
 世界でいちばんタフな15歳の少年になりたいと思っていた。

  [データ2]
  中野区
 東京都中野区にもしある日、空から突然2000匹の生きた魚が
 路上に落ちてきたら、人々は驚かないわけにはいかないだろう。

  [データ3]
  ネコ
 多くのネコたちは名前を持たない。多くのネコたちは言葉を持たない。
 しかしそこには言葉を持たず、名前を持たない悪夢がある。

  [データ4]
  図書館
 古い図書館の書架には秘密が満ちている。
 夜の風がはなみずきの枝を揺らせるとき、
 いくつかの想いは静かにかたちをとり始める。

  [データ5]
  四国
 県を越えて陸路で四国を移動するとき、
 人々は深い森と山を越えることになる。
 いちど道を見失うと、戻るのは困難だ。

 十五歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。

                         (帯より)


時間のループと空間のループが複雑に絡み合い交じり合っている。
15歳の少年カフカはどこか遠いところへ行こうとしながら、そのループの内側にいる。
行くべき場所、会うべき人、するべきことが初めから決まっているように。
彼は結局求めていたものを失うと同時に、それを手に入れたのだろう。

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ノルウェイの森 上下*村上春樹

  • 2004/07/29(木) 13:13:39

☆☆・・・


高校生のときに事故で亡くなった たった一人の友人、心を病み安心してすべてを委ねられる場所を求めるその恋人、大学の最初の2年間を過ごした寮で出会った独特の価値観を持つ男、大学で時に同じ科目を取り次第になくてはならないものになる女友達。
決して多くはない人間関係の中での埋められない喪失感や無力感は 力の入らない流されるような雰囲気の中に感じることはできる。そして その感じは この年頃ならではのものかもしれない とも思う。
・・・が、しかし、自分のこととして感情移入できるかと問われれば 即「否」である。著者自信があとがきに記しているように
 (前略)この小説はきわめて個人的な小説である。
 (中略)たぶんそれはある種のセンティメントの問題であろう。
 僕という人間が好まれたり好まれなかったりするように、
この小説もやはり好まれたり好まれなかったりするだろうと思う。(後略)

そんな風に読まれることを著者自身も望んではいないのだろう。
とはいえ 何も救われない気分の読後感に包まれた。