みかづき*森絵都

  • 2016/11/26(土) 13:59:18

みかづき
みかづき
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森 絵都
集英社
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昭和36年。小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い―。山あり谷あり涙あり。昭和~平成の塾業界を舞台に、三世代にわたって奮闘を続ける家族の感動巨編!


塾業界にスポットを当てた物語。しかも、まだ塾の存在がまるで知られず、認められず、却って敵視されていた昭和の時代から、塾が工夫を凝らし、発展し、塾業界という一大ジャンルを盤石のものにした現代までの、文部省、文科省、詰め込み教育、ゆとり教育、落ちこぼれ、所得格差、教育格差といった、さまざまな要因をくぐり抜けてきた変遷とともに、小学校の用務員から、塾業界の神様のようになった大島吾郎とその一家の闘いとその関係性の変化の歴史を太い軸にして描かれている。我が家は塾のお世話になったことがないので、読み始めたころは、興味が最後までもつかと、正直不安も胸に萌したが、中盤以降は惹きこまれるように読み進んだ。どんな業界にあっても、やはりそこにいるのは人であり、人と人とのつながりなのだと、改めて胸が熱くなる思いである。467ページというボリュームを感じさせない一冊である。

クラスメイツ 前期*森絵都

  • 2014/07/07(月) 12:50:44

クラスメイツ 〈前期〉クラスメイツ 〈前期〉
(2014/05/14)
森 絵都

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日本のYA文学をきりひらいてきた森絵都が、直木賞受賞後はじめて描く中学生群像。中学1年生24人のクラスメイトたち、その1人1人を主人公にした24のストーリーで思春期の1年間を描いた連作短編集。前期・後期の全2巻。 うれしい出会いや、ささいなきっかけの仲違い、初めての恋のときめき、仲間はずれの不安、自意識過剰の恥ずかしさや、通じあった気持ちのあたたかさ。子どもじゃないけど大人でもない、そんな特別な時間の中にいる中学生たちの1年間。だれもが身にしみるリアル。シリアスなのに笑えて、コミカルなのにしみじみとしたユーモアでくるんだ作品集。


小学校を卒業し、中学に入学するというのは、子どもたちにとって特別なことだろう。知っているメンバーも多いとはいえ、きのうまでとはまるで違う世界に放り出されたような心許なさや、いままで知らなかった世界を知ることができるわくわく感が入り交じって、複雑な心持ちでいることと思う。そんな24人がバトンタッチするようにひとりずつ主人公になっていく物語である。人間関係とクラスでの立ち位置を確保するのが彼らにとってどれほど大切なことかがわかるし、クラスという世界がすべての中学生の、まだまだ子どもに見えても大人顔負け、あるいは大人以上の生存競争の激しさに目を瞠ったりもする。24人の彼らが振り返って懐かしいと思えればいいな、と思わされる一冊である。

クラスメイツ 後期*森絵都

  • 2014/06/20(金) 16:57:52

クラスメイツ 〈後期〉クラスメイツ 〈後期〉
(2014/05/14)
森 絵都

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日本のYA文学をきりひらいてきた森絵都が、直木賞受賞後はじめて描く中学生群像。中学1年生24人のクラスメイトたち、その1人1人を主人公にした24のストーリーで思春期の1年間を描いた連作短編集。前期・後期の全2巻。 うれしい出会いや、ささいなきっかけの仲違い、初めての恋のときめきや、仲間はずれの不安、自意識過剰の恥ずかしさや、通じあった気持ちのあたたかさ。子どもじゃないけど大人でもない、そんな特別な時間の中にいる中学生たちの1年間。だれもが身にしみるリアルさを、シリアスなのに笑えて、コミカルなのにしみじみとしたユーモアでくるんだ作品集。


前期で12人、後期で12人、中学一年のクラスメイトそれぞれが主役になった連作物語である。巻順の貸し出しにチェックを入れ忘れて、後期から読むことになってしまったが、クラスの生徒一人一人が主役をバトンタッチする構成なので、何の違和感もなく愉しめる。中学生の世界の広さと狭さが巧みに描かれていて、ときに痛く、ときに微笑ましい。巷間耳にする中学のクラスのなかでは、平和でしあわせなクラスなのではないかと想像する。二年生に進級した彼らの姿も追いかけてみたくなる一冊である。

漁師の愛人*森絵都

  • 2014/01/10(金) 18:15:58

漁師の愛人漁師の愛人
(2013/12/16)
森 絵都

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〈驚愕しながら、あきれながら、時に笑いながら、何度でも思う。ここはどこ?〉
妻子持ちの音楽プロデューサー、長尾の愛人だった紗枝。会社の倒産ののち漁師への転身を決めた彼の郷里へ伴われ、移り住むことになったのだが、身内意識のつよい漁師町で「二号丸」と呼ばれていることを知ったのは、やって来て、たったの十日だった。「妻」から時折かかってくる長電話に、敵意にみちたまなざしを向ける海の女たち。潮の匂いと海上にたちこめる白い霧。いつまでも慣れることのできない生活でいちばんの喜びは、東京にいたころよりはるかに生き生きとしてみえる長尾の笑顔だったが、彼が漁師仲間の喜寿祝いで紗枝を紹介する、と急に言い出した――閉塞する状況を覆す、漁を生業とする男たちと女たちの日々の営みの力強さ、すこやかさ。圧倒的な生の力を内に秘めた「漁師の愛人」。
〈問題は、私たちが今、幸せであったらいけないと感じていることかもしれない〉
震災から一か月足らず。女三人でシェアハウスして暮らす毎日があの日から一変してしまった。藤子の恋人(カフェ経営者)は、炊き出しボランティアで各地をまわり、ほぼ音信不通。ヨッシは、彼氏がホテルから妻のもとに逃げ帰って以来、微妙な感じ。眞由に至っては、大地震の三日後にこの家を出て行ったきり、帰ってこない。雨もりの修理にたびたびきてくれる63歳の小西とのなにげない会話と、豚ひき肉の新メニュー作り、ビーズ細工のストラップ作りが、余震のさなかの藤子の毎日を支えていたのだが。2011年春の、東京のミクロな不幸と混乱を確かな筆致で描いた「あの日以後」。
その他に【プリン・シリーズ】三篇を所収。


表題作のほか、「少年とプリン」 「老人とアイロン」 「あの日以降」 「ア・ラ・モード」

テイストの違う物語五編である。だが、どの物語もなんらかの鬱屈した想いが押し込められているのが感じられて胸が痛くなる心地である。少年たちも、女たちも、男たちも、愛人も妻も、誰もがままならないなにかを裡へ裡へと押し込めて、押し込めきれないものを溢れさせてぶつけているように見える。そして、そこから抜け出すためには、ある種開き直りのような潔さが必要なのかもしれない。そのとき人はきっと、ひとまわり大きく強くなるのだろう。鬱屈してもどかしくて、だが力強い一冊である。

気分上々*森絵都

  • 2012/03/24(土) 11:08:57

気分上々気分上々
(2012/03/01)
森 絵都

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「自分革命」を起こすべく親友との縁を切った女子高生、家系に伝わる理不尽な“掟”に苦悩する有名女優、無銭飲食の罪を着せられた中二男子…、人生、単純じゃない。だからこんなに面白い。独特のユーモアと、心にしみる切なさ。森絵都の魅力をすべて凝縮した、多彩な9つの物語。


表題作のほか、「ウエルカムの小部屋」 「彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日」 「17レボリューション」 「本物の恋」 「東の果つるところ」 「本が失われた日、の翌日」 「ブレノワール」 「ヨハネスブルグのマフィア」

長さも内容もさまざまな九編である。だが、根底に流れる空気には似た匂いが感じられる。自分とは何か、幸福とは何か、あるときは探し求め、あるときは逃れるようにして、時を過ごす様がどの物語にも描かれているように思われる。切なさやるせなさ、ときにあたたかさが、胸のなかにひたひたと押し寄せてくる一冊である。

異国のおじさんを伴う*森絵都

  • 2012/01/12(木) 17:02:26

異国のおじさんを伴う異国のおじさんを伴う
(2011/10)
森 絵都

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思わぬ幸せも、不意の落とし穴もこの道の先に待っている。どこから読んでも、何度でも、豊かに広がる10の物語。誰もが迎える、人生の特別な一瞬を、鮮やかにとらえる森絵都ワールド。


表題作のほか、「藤巻さんの道」 「夜の空隙を埋める」 「クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の……」 「クジラ見」 「竜宮」 「思いでぴろり」 「ラストシーン」 「桂川里香子、危機一髪」 「母の北上」

どの物語もひとひねりあっておもしろい。というか粗挽きの黒胡椒の挽ききれていない大きめの粒をうっかり奥歯で噛んでしまったようなぴりりとした驚きが病みつきになる感じなのである。表題作ももちろんだが、「母の北上」もわたしはかなり好きである。あぁ、「藤巻さんの道」もいいなぁ。ともかくひとつ選ぶのがむずかしいおもしろさの一冊である。

この女*森絵都

  • 2011/06/27(月) 19:20:17

この女この女
(2011/05/11)
森 絵都

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甲坂礼司、釜ヶ崎で働く青年。二谷結子を主人公に小説を書いてくれと頼まれる。
二谷結子、二谷啓太の妻。神戸・三宮のホテルに一人で住み、つかみ所がない女。
二谷啓太、チープ・ルネッサンスを標榜するホテルチェーンのオーナー。小説の依頼主。
大輔、甲坂礼司に小説書きのバイト話を持ってきた大学生。礼司に神戸の住まいを提供。
松ちゃん、釜ヶ崎の名物男。礼司が頼りにし、なにかと相談するおっちゃん。
敦、二谷結子の弟。興信所経営。結子のためなら何でもする直情型の気のいい男。
震災前夜、神戸と大阪を舞台に繰り広げられる冒険恋愛小説。3年ぶり、著者の新境地を開く渾身の長篇書き下ろし。


「この女」という小説を書いている甲坂礼司という男の物語である。男の、と言い切ってしまうにはいささか周りの人間たちについて深く描かれすぎてはいるが、それにしてもやはりこれは、依頼された小説を書こうとするために関わることになる人びとを通して自分というものの本質を見極めていくという意味で、礼司自身の物語であろう。それにしても、小説の主人公となるはずの女の生き様を探るという形式で実は書き手の生き様を描くという一見迂遠な試みがものの見事に成功しているのに唸らされる。読者の誰もがおそらく初めは結子の人生が解き明かされることを期待して読みはじめたことだろう。深く巧みで切なくあたたかい一冊である。

ラン*森絵都

  • 2009/06/23(火) 19:33:31

ランラン
(2008/06/19)
森 絵都

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越えたくて、会いたくて、私は走りはじめた。直木賞受賞第1作。


10歳のときに事故で両親と弟を失い、一緒に暮らすようになった叔母を20歳のときに病気で失って、ほんとうにひとりぼっちになってしまった夏目環、23歳。あれからずっと、自分は生よりも死に近いところにいるような気がしている。そんな環が自転車をきっかけに知り合った紺野さんに、モナミ1号と名づけられたオーダーメイドのロードバイクをもらい、モナミ1号に導かれるように冥界へたどり着き、家族と再会したのだった。その日から環は、自力で家族に会いに来るために、走り始めたのだったが・・・・・。

ファンタジーのようでもあり、スポ根もののようでもあり、青春物語のようでもあり、人間ドラマのようでもある。さまざまな要素が一体となって面白さを倍増させている。
登場するキャラクターがみな個性的で、ただはじけているだけではなく、それぞれに悩みを抱えながらも、懸命に生きている姿に励まされる。「あきらめなければならないこと」をきちんとあきらめることも、生きていく上で大切なことなのだと思わせられる一冊だった。

架空の球を追う*森絵都

  • 2009/05/13(水) 19:21:29

架空の球を追う架空の球を追う
(2009/01)
森 絵都

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やっぱり罠にはまった。そんな気がする。ふとした光景から人生の可笑しさを巧妙にとらえる森絵都マジック。たとえばドバイのホテルで、たとえばスーパーマーケットで、たとえば草野球のグラウンドで、たとえばある街角で…人生の機微をユーモラスに描きだすとっておきの11篇。


表題作のほか、「銀座か、新宿か」 「チェリーブロッサム」 「ハチの巣退治」 「パパイヤと五家宝」 「夏の森」 「ドバイ@建設中」 「あの角を過ぎたところに」 「二人姉妹」 「太陽のうた」 「彼らが失ったものと失わなかったもの」

短編よりも掌編に近い物語集である。それを知らなかったので、表題作のあまりの短さに、拍子抜けした感じでもある。つづくのかと思ったら、終わってしまったのだった。
しかし、掌編集だとわかって読めば、どの物語も切り取り方が絶妙である。ラストでひっくり返る価値観も小気味よい。

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屋久島ジュウソウ*森絵都

  • 2007/08/04(土) 16:48:40

☆☆☆・・

屋久島ジュウソウ 屋久島ジュウソウ
森 絵都 (2006/02)
集英社

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注目作家の素顔が見える、初の旅エッセイ!
皆で縄文杉を見に行こう、と楽しいグループ旅行のつもりで訪れた屋久島。そのハードさにはまだ気づかずに…。にぎやか取材旅行記と、忘れがたい旅の思い出を綴った14編を収録。著者初の旅エッセイ集。


表題作のほか、もともとメインになるはずだった「slight sight-seeing」としてまとめられた十四話が収められている。

ガイド役の細田さんはさぞご苦労去れただろうなぁ、というのがまず最初の感想だった。もちろんエッセイになりそうなネタを選んでいるのだろうし、ここに書かれていることがすべてではないだろうから、ジュウソウメンバーたちの心構えも下準備も実際はもっとしっかりしたものだったのかもしれないが、細田さんの案内がなかったら一体どうなってしまったのだろう、と要らぬ心配をしてしまった。その分、細田さんは格好よかった。
個人的には、「屋久島ジュウソウ」よりも「slight sight-seeing」の雰囲気の方が好きだった。

DIVE!! 上下*森絵都

  • 2006/10/30(月) 17:30:03

☆☆☆☆・

DIVE!!〈上〉 DIVE!!〈上〉
森 絵都 (2006/06)
角川書店

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オリンピック出場をかけて、少年たちの熱く長い闘いがはじまる!
高さ10メートルから時速60キロで飛び込み、技の正確さと美しさを競うダイビング。赤字経営のクラブ存続の条件はなんとオリンピック出場だった! 少年たちの長く熱い夏が始まる。第52回小学館児童出版文化賞受賞作。


解説:あさのあつこ


DIVE!!〈下〉 DIVE!!〈下〉
森 絵都 (2006/06)
角川書店

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夢、希望、友情。照れくさいけど、これが大事なものなんだ!
運命のオリンピック選考会を前に少年たちに襲いかかるプレッシャーや故障。自分の内定が大人達の都合だと知った要一は、辞退して実力で枠を勝ち取ると言いだしたのだが…。感動のラストへ向けて、勢いは止まらない!


解説:佐藤多佳子

ずっと敬遠していたのである。スポーツは苦手だし、飛び込みなんて注目して観たこともなかったし、高所恐怖症だし。絶賛されているレヴューをいくつも読んで興味は持ち 書架で背表紙を見て 何度も手にとっては戻していたのである。
さっさと読めばよかったと いまさらながら後悔し、思い切って読んでほんとうによかったと 思い切って借り出した自分を褒めたいくらいである。よかった。ほんとうによかった。最後の選考会の模様は いろんな意味で涙なしでは読めなかった。
そして、ダイバーの少年たちもコーチたちも、すべてのキャラクターがそれぞれ丁寧に描かれていて、どの人物もが主役になれそうなほど生きていた。
ことに、主役の三少年、要一・飛沫・知季は、まったく違う境遇 違う性格でありながら、甲乙つけ難く魅力的である。
キャラクターの魅力、飛び込みという場の魅力、魂の魅力、人間の魅力...。さまざまな魅力にあふれた一冊だった。

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風に舞いあがるビニールシート*森絵都

  • 2006/08/23(水) 18:28:02

☆☆☆・・

風に舞いあがるビニールシート 風に舞いあがるビニールシート
森 絵都 (2006/05)
文藝春秋

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愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。
大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語

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クリスマスも恋人も携帯電話も存在しない、ひどくかぎられた空間。
それでいてとても冴え冴とした、居心地のよいところ。
思えば遠いところまで来てしまったものだ。私も。この男も。(「器を探して」)

自分だけの価値観を守って、お金よりも大事なものを持って生きている――。
あたたかくて強くて、生きる力を与えてくれる、森絵都の短篇世界。
  ――帯より


表題作のほか、器を探して・犬の散歩・守護神・鐘の音・ジェネレーションX。
森絵都作品としては、ずいぶん異色だが、どの物語も主人公の一生懸命さがまっすぐに胸に届いて好ましい。
価値観はそれぞれ違っても、人が大切にするものに向かい合って打ち込む姿には どこかしら共通の清々しさがあって、羨ましくすらある。

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つきのふね*森絵都

  • 2006/03/02(木) 17:26:51

☆☆☆☆・



自分だけがひとりだと思うなよ!
死ぬことと生きることについて考えてた。
どっちがいいか、
どっちがらくか、
どっちが正解か。
今までずっとそういうこと、考えてきた気がする。
  ――帯より


このごろあたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい。
花もうらやましい。
草も木もうらやましい。


という中学二年のさくらのひとり語りで物語ははじまる。
四十八日前まで親友だった梨利とはある事情で友人でさえなくなり、学校に楽しいことなどひとつもなくなった今日この頃だった。
その梨利とのいきさつに無関係とは言えない事情で知り合った24歳の智さんの部屋にいるときだけが、さくらにとってうとうととまどろむように安心できる時間なのだった。だが彼は、心の病に冒されており、彼ら(・・)からの使命を受けて人類が善人も悪人もみんな乗れる宇宙船を設計しているのだった。

自分だけがひとりぼっちだと思いつめている人、自分のことだけしか考えられない人、逆に人のことばかり考えて自分を追いつめてしまう人。子どもでも大人でも 自分のなかのさまざまな自分にあるときは翻弄され、またあるときはそれらと折り合いをつけて 何とかより良くあろうともがいているのだろう。登場人物のひとりひとりからそんな気配が感じられて、胸が締めつけられることもあったが、ラストの幼い智の手紙には思わず涙があふれた。

ぼくわ小さいけどとうといですか。
ぼくわとうといものですか?

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いつかパラソルの下で*森絵都

  • 2005/07/10(日) 17:12:21

☆☆☆・・



児童文学の森絵都さんの一般向けの作品。

森絵都さんの児童書はただ無闇に明るいだけではなく、明るさが陰を際立たせるような雰囲気を持つので、それがそのまま一般向けになったとも言える一冊である。
ただ、タイトルから想像していたものよりももっとずっと屈折していた。

≪パラソルの下≫は、この物語の主人公・柏原野々にとっての安らぎの場所の象徴なのだろう。
上手く行かないことごとをすべて亡くなった父のせいにすることで、現実から逃げ、父のせいでなどないことなどとっくに知りながらも知らない振りをして逃げつづけ、そんな自分に嫌気が差しながらもそれにさえ目を瞑って見えない振りをする。
いつまでも続くはずのない、現実に生きながらの逃避行のなかで、思い浮かべられる唯一しあわせな自分が≪パラソルの下≫にいる自分だったのだ。
兄・春日、妹・花とともに父の足跡を求めて渡った佐渡での三日間は、そんな意気地のない気持ちを再確認させられる旅だったのかもしれない。

誰かを赦すということは、きっと弱い人間にはできないことなのだろう。
春日・野々・花、そしてその母は、少しだけ強くなって 少しだけ父のことを赦したのではないだろうか。

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ゴールド・フィッシュ*森絵都

  • 2005/02/27(日) 13:34:13

☆☆☆・・


 透明な時代 最後のゆらめきの中で
 自分の夢をさがしはじめた
 かがやく女の子たちへ
   (帯より)

『リズム』の続編。
リズムでは13歳だったさゆきの 15歳の物語。

バンドを組んで唄う真ちゃんを自分の夢にしていたさゆきだったが、真ちゃんの挫折によって、自分までもが光を見失ってしまうのだった。

大人になるにしたがって、自分の身の程を見極め、純粋な夢を捨てていく周りの人びとを哀しく眺める15歳のさゆきの目に、自分自身が実現していく夢として現実が映りはじめる新たな春の訪れは、とてもあたたかなたくさんの人たちの想いにあふれている。

ひと回り大きくなったさゆきのこれからが愉しみである。

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