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北緯四十三度の神話*浅倉卓弥

  • 2006/03/29(水) 20:10:28

☆☆☆・・



心の雪解けは必ず訪れる。
雪国を舞台に姉妹の心の成長と和解を描いた感動の物語。

雪深い町で育った桜庭菜穂子、和貴子姉妹。姉の菜穂子は地元の大学に進学し、そのまま大学の助手を、妹・和貴子は東京の大学を卒業後、故郷に戻り、ラジオ局でDJをしている。姉が中学時代に淡い思いを抱いていたクラスメート・樫村と和貴子が婚約したことを発端に二人の心の溝は広がっていったが――。
  ――帯より


真っ白い雪の上に広がる青い空が似合う熱く静かな物語。
早くに事故で両親を亡くし、年子の姉妹は祖父母と共に暮らすことになった。姉の菜穂子が聞いた最後の母の言葉は「菜穂ちゃん、和貴ちゃんの子と頼むわね」というもので、菜穂子は無意識のうちにこの言葉に縛られてもいたのかもしれない。
現在の菜穂子の目から見た菜穂子と和貴子のこと、和貴子が持っているラジオ番組の様子が交互に描かれ、そして所々に両親が生きていた頃のことが差し挟まれる。
女同士だからこそ、ほとんど歳の変わらない女同士で しかも姉妹だからこその苦しさやりきれなさと、なくてはならない存在として認め合っているお互いを 最後には解きほぐし確認しあえたのだから、彼女たちはもう決して離れないだろう。たとえ遠く離れて暮らしたとしても。

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雪の夜話*浅倉卓弥

  • 2005/04/18(月) 20:23:20

☆☆☆・・


高校生の相模和樹は、雪の降る深夜、試験勉強に飽きて煙草を買いに出て 昔遊んだ公園で白ずくめの少女に出会う。
その後の8年で、彼は進学し就職し そして職を辞して故郷の町に帰って来る。そしてまた、雪の降る深夜 白い少女と再会するのだ。

白い少女の存在は、和樹が自分の存在を想うときなくてはならないものになる。しかし少女が誰なのか、彼の想像の外に実際に存在しているのかは、はっきりとはわからない。
だが、夜の闇にも白く光って見える 少女と会う公園の世界は、降る雪を見あげる時の自分の居場所が定まらない感じとあいまって、不思議な場所へと誘ってくれる。

命とは、一回限りのものではなく、さまざまな形を借り、そこを通り過ぎてゆくものなのだ、という生命感が新鮮でもあった。

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君の名残を*浅倉卓弥

  • 2004/09/09(木) 18:08:09

☆☆☆☆・


第一回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『四日間の奇蹟』に次ぐ第二作。

本を開いて目次をひと目見て「あ、失敗したかな?」と思った。各章のタイトルが 歴史小説のそれだったからである。歴史は苦手なのだ。しかし 読み始めて見ると舞台は何の変哲もない現代だった。そして主役たちは普通の高校生。
それが次の章に移るなり 時はいきなり 源平合戦の時代に巻き戻されてしまうのである。どうしたことなのか。これからどうなるのか。訝りつつ読み進むうち 少しずつからくりが解ってくる。あまりに壮大な思惑による時の歪みだったのだ。すべてが歴史があるべき様に進むために巧まれたことだったのだ。そう判った時 背筋がぞくぞくする心地がした。
「デジャヴ」というのは もしかすると こんな時の歪みによるものなのかもしれないと ふと思った。

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四日間の奇蹟*浅倉卓弥

  • 2004/01/20(火) 08:08:46

☆☆☆・・



事故で指を一本失いピアニストとしての人生を諦めた男と
図らずも その原因となってしまった少女の心のふれあいと
不思議な四日間の物語。

脳とは?躰とは?心とは?
言葉とは?真実とは?
自分に向けてたくさんの【?】が飛び交う。

物語の底に あるいは天空に漂うのは ピアノの音。
そして 苦悩の大作曲家ベートーヴェン。

「このミステリーがすごい!」大賞受賞の際
有名な作品とモチーフが似ていることが話題に上ったようだが
それはそれ これはこれ。まったく別物である。