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みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない*若竹七海

  • 2022/03/06(日) 16:24:13


ベストセラー「葉村晶」シリーズ著者の、
もうひとつの人気シリーズ!
葉崎市の超個性豊かな面々と、
最高に不運な17歳のココロちゃんが織りなす、
一気読み必至のコージーミステリー!

葉崎FMで放送される「みんなの不幸」は、リスナーの赤裸々な不幸自慢が人気のコーナーだ。そこに届いた一通の投書。「聞いてください、わたしの友だち、こんなにも不幸なんです……」。
海辺の田舎町・葉崎市を舞台に、疫病神がついていると噂されながら、
どんなことにもめげない17歳のココロちゃんと、彼女を見守る女子高生ペンペン草ちゃん、周囲の人々が繰り広げる、泣き笑い必至の極上コージーミステリー!


読めば読むほどココロちゃんのことが心配になる。周りの心配をよそに、本人はいたって平常心(?)なのが、なおさら心配である。そんな風だから、ラジオの「みんなの不幸」コーナーに投稿したくもなるというものである。ココロちゃんは、もはや葉崎の心配の種であると言っても過言ではないだろう。ココロちゃんに害悪を成す原因が取り除かれて安心するも、ココロちゃん自身がまったく変わることなくココロちゃんなので、葉崎と読者の心配の種も尽きそうもない。周りに心配されながら、健気に生き続けるのだろうなと苦笑を禁じ得ない一冊である。

不穏な眠り*若竹七海

  • 2020/03/27(金) 07:45:23


葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。行方を追ううちに思わぬ展開に(「逃げだした時刻表」)。相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、死んだ女の知人を捜してほしいという依頼を受ける(「不穏な眠り」)。満身創痍のタフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。


これまでに増してハードな展開になっている気がする。世界一不運な探偵・葉村晶健在、である。しかも、あまりにも命の危険にさらされる頻度が高すぎて、にもかかわらず、めげずに調査を続ける葉村晶、強くしぶとい。初めのころは、もっとドジな印象があった気がするのだが、探偵業にも磨きがかかってきたということだろうか。その割に、首を突っ込んだ事件の危険度と奥の深さは折り紙付きである。これからも、命を落とすことなく、健気に探偵業を続けてほしいものである。ドキドキハラハラわくわくしながら読める一冊である。

殺人鬼がもう一人*若竹七海

  • 2019/03/30(土) 16:30:44

殺人鬼がもう一人
殺人鬼がもう一人
posted with amazlet at 19.03.30
若竹七海
光文社
売り上げランキング: 89,056

都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。20年ほど前に“ハッピーデー・キラー”と呼ばれた連続殺人事件があったきり、事件らしい事件もないのどかな町だ。それがどうしたことか二週間前に放火殺人が発生、空き巣被害の訴えも続いて、辛夷ヶ丘署はてんてこまい。そんななか町で一番の名家、箕作一族の最後の生き残り・箕作ハツエがひったくりにあうという町にとっての大事件が起き、生活安全課の捜査員・砂井三琴が捜査を命じられたのだが…。(「ゴブリンシャークの目」)アクの強い住人たちが暮らす町を舞台にした連作ミステリー。著者の真骨頂!!


ラストにどんでん返しが待ち構えている、と言えばそうなのだが、そのどんでん返しぶりが、ちょっと普通ではない。というか、予想の斜め上を行く感じで、はぐらかされたようでもあり、まんまとしてやられたようであり、病みつきになりそうである。ガラッと視点が変わってすっきりするかと言えばそうとも言い切れないこともあり、その辺りが絶妙で、もやもや感を残しつつ、次に惹き寄せられてしまうようで、妙な魅力がある一冊なのである。もっと読みたい。

錆びた滑車*若竹七海

  • 2018/10/06(土) 16:47:46

錆びた滑車 (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋 (2018-08-03)
売り上げランキング: 5,914

女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する―。大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。


葉村晶ももう若くはない。それなのに、相変わらず不運で、巻きこまれ体質で、いつも身体中に傷を負っている。そして、その割に報われない。なんとも効率が悪くて、やるせなくなる。だが、目のつけ所、引っかかったことをうやむやにしない執念深さ、さらには若い時ほどではないとはいえ、そのフットワークの軽さと、なんだかんだで周りを巻きこみつつ情報を得る能力で、いくつも散らばっている謎を一本に束ね、最後には解き明かしてしまうのだから、もっと尊敬されてもいいのではないかと思ってしまう。今後もこの調子で探偵業を続けていたら、身体が先に音を上げるのではないかと心配してしまう。とはいえ、今回もまわりまわって真実に辿り着く過程を存分に楽しませてもらった一冊である。

御子柴くんと遠距離バディ*若竹七海

  • 2018/04/06(金) 20:37:10

御子柴くんと遠距離バディ (中公文庫)
若竹 七海
中央公論新社 (2017-12-22)
売り上げランキング: 34,507

長野県警から警視庁へ出向中の御子柴刑事。すっかり東京のペースにも慣れ、刑事としても中堅どころになり、わりあい平穏な日々を送っていた。だが、その油断がたたったのか、年末押し迫ってから行く先々で事件にぶちあたり、さらには凶刃に倒れてしまう! 相棒の竹花刑事は御子柴の死を覚悟するが……。シリーズ第二弾は波瀾の幕開け。


御子柴くん、相変わらず、厄介事引き寄せ体質全開である。しかも、大したことではないと思われている些細なきっかけが、続々と事件を発覚させ、さらには解決へと導いていってしまうのだから、もっと尊重されてしかるべきだと思うのだが、どうしたわけか、いいように使われている感が拭えない(実はそうでもないのかもしれないが……)。バディである竹花刑事と、今回は遠距離での絡みだったが、それでも信頼関係がうかがえて、思わずうれしくなった。ラストでは、次作につながる嬉しい仄めかしもあるので、さらに楽しみである。御子柴くんにはくれぐれも躰を大切にしてもらいたいと思うシリーズである。

静かな炎天*若竹七海

  • 2016/11/03(木) 20:14:04

静かな炎天 (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋 (2016-08-04)
売り上げランキング: 19,608

ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。


表題作のほか、「青い影」 「熱海ブライトン・ロック」 「副島さんは言っている」 「血の凶作」 「聖夜+1」 富山店長のミステリ紹介ふたたび

葉村晶シリーズ最新作である。二十代で出会った葉村晶だが、何と今回は四十肩を患う四十代である。仙川に住み、吉祥寺のミステリ専門書店に勤める傍ら、正式に探偵もやっている。そして相変わらず不運である。タイミングが良いのか悪いのかよくわからないが、厄介ごとに出くわす機会も多い。だがそれが事件解決につながることも多々あるので、探偵的にはグッドタイミングなのかもしれない。それで疲れ切ってしまうのも事実なのであるが。今回も、ふらふらになりながらお使いに、事件の調査にと歩き回り、躰を張って謎を解き明かしている。四十代になったと思うと、少しのんびりさせてあげたいような気もするが、これこそが葉村晶なのだろうなぁ。おばあちゃんになるまで探偵家業を続ける葉村晶を見ていたいシリーズである。

さよならの手口*若竹七海

  • 2015/01/09(金) 21:12:38

さよならの手口 (文春文庫)さよならの手口 (文春文庫)
(2014/11/07)
若竹 七海

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探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた―。有能だが不運な女探偵・葉村晶が文庫書下ろしで帰ってきた!


久々に会えた葉村晶は、十年ほど歳を取ってはいるが、相変わらずついていない感につきまとわれていて、思わずニンマリしてしまう。とは言え、今回の身体的ダメージはかなりのものである。にもかかわらず、最後まで読むと、なんだか明るい未来が約束されているような気分になってしまうのは不思議である。癌で明日をも知れない往年の名女優の依頼による娘探しが、、過去の未解決事件を掘り起し、政治家のスキャンダルを暴き、大御所俳優の狂気の沙汰をあぶり出し、かつて娘探しをしていて行方知れずになっている同業者の行方を突き止め……、と芋蔓式に事件を手繰り寄せている感もあり、危ない目に遭いながらもすべてに決着をつけているあたり、そうは見えないがやはり有能なのだろう。しかも、今回の物語の主な舞台が、思い切り私の生活圏であり、しかもかなり正確なので、ついうっかりその辺で葉村晶とすれ違ったかもしれないなどという気になったりもして、二度おいしい一冊であった。ぜひまたすぐに会いたいものである。

御子柴君の甘味と捜査*若竹七海

  • 2014/07/10(木) 21:45:45

御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)御子柴くんの甘味と捜査 (中公文庫)
(2014/06/21)
若竹 七海

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長野県警から警視庁捜査共助課へ出向した御子柴刑事。甘党の上司や同僚からなにかしらスイーツを要求されるが、日々起こる事件は、ビターなものばかり。上田市の山中で不審死体が発見されると身元を探り(「哀愁のくるみ餅事件」)、軽井沢の教会で逃亡犯を待ち受ける(「不審なプリン事件」)。『プレゼント』に登場した御子柴くんが主役の、文庫オリジナル短篇集。


「哀愁のくるみ餅事件」 「根こそぎの酒饅頭事件」 「不審なプリン事件」 「忘れじの信州味噌ピッツァ事件」 「謀略のあめせんべい事件」

タイトルには信州名物のスイーツが並ぶが、事件自体はそれらとは無関係で、どれも深刻なものであるのだが、御子柴君の人の好さと随所に出てくるおいしそうなものたちのせいで、つい気を抜いてしまいそうになる。しかも、主人公は御子柴君だが、真の探偵役は、長野にいる上司の小林警部補ではないか。御子柴君の役目はお土産を買ったりチケットを取ったりすることか、と思ってしまうが、たくさんの甘いものとお人好しのキャラで、それも良しとしたくなる。どうしてこういう仕儀になったかは、著者あとがきで明らかにされている。やっぱり御子柴君はそういう役回りだったのね、と思わされる一冊である。

暗い越流*若竹七海

  • 2014/05/16(金) 17:02:25

暗い越流暗い越流
(2014/03/19)
若竹 七海

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5年前、通りかかった犬に吠えられ飼い主と口論になった末に逆上し車で暴走、死者5名、重軽傷者23名という事件を引き起こした最低の死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた。その差出人・山本優子の素性を調べるよう依頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に失踪し、行方が知れないことをつきとめる。優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家が目と鼻の先であることに気づいた。折しも超大型台風の上陸が迫っていた…(「暗い越流」)。第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞作「暗い越流」を収録。短編ミステリーの醍醐味と、著者らしいビターな読み味を堪能できる傑作集!!


表題作のほか、「蠅男」 「幸せの家」 「狂酔」 「道楽者の金庫」

どの物語も、初めから屈折していて一筋縄ではいかない。どれも気を抜けない面白さである。だが、事件も解決、スッキリした、と安心しそうになる最後の最後に、黒い企みがちらっと顔をのぞかせるのである。その後の展開が――あるとすれば――恐ろしい。それとは別に、お馴染みの葉崎市や葉村晶が登場するものもあって、思わず懐かしい知人と再会したような心持ちにもなる。最後の最後まで気を抜いてはいけない一冊である。

ポリス猫DCの事件簿*若竹七海

  • 2011/06/01(水) 17:08:46

ポリス猫DCの事件簿ポリス猫DCの事件簿
(2011/01/20)
若竹 七海

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島に一人の駐在は、今日もてんてこまい。神奈川県の盲腸と呼ばれる葉崎半島の先、30人ほどの人間と100匹を超える猫が暮らす猫の楽園、通称、猫島。厄介ごとは次々起こるものの、対処するのは島にある派出所に勤務する七瀬晃巡査ただ一人。そして目つきの悪い巨大なドラ猫こそ、七瀬唯一の同僚、ポリス猫DC。DCの推理は今回も冴えるのか? コージーミステリの名手、若竹七海の葉崎シリーズ待望作!!


葉崎シリーズである。猫島である。猫島臨時派出所勤務のおまわりさん・七瀬晃と星章入りの首輪をつけたポリス猫DCのドタバタ大活躍である。今回も愉しい。しかしまあこの猫島、よくもこれだけ日々なにかしらトラブルが起きているものである。しかもたいていは外から持ち込まれた物や入ってきた人によってもたらされるものである。島に一人しかいないおまわりさんとしての七瀬の忙しさは並大抵ではない。お風呂には入れなかったり昼食を食べ逃したりすることは日常茶飯事なのである。そんななか、ポリス猫DCが要所要所で事件の鍵を嗅ぎ当て、ヒントを示唆してくれるのが見所である。なかなか鋭い猫なのである。そしてそのヒントを推理から謎解きにつなげる七瀬もまた目立たないながら敏腕なのである。実はすばらしいコンビなのだ。文句なく愉しめる一冊である。
ところでポリス猫DCの「DC」ってなんの略?どこかに出てきていただろうか。ドラキャット……かな?気になる。

みんなのふこう*若竹七海

  • 2010/12/31(金) 21:21:15

みんなのふこう (文芸)みんなのふこう (文芸)
(2010/11/11)
若竹七海

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田舎町のラジオ局・葉崎FMで、毎週土曜夜に放送される読者参加型番組「みんなの不幸」は、リスナーの赤裸々な不幸自慢が評判の人気コーナー。そこに届いた一通の投書。「聞いてください。わたしの友だち、こんなにも不幸なんです…」。海辺の町・葉崎を舞台に、疫病神がついていると噂されながら、いつでも前向きな17歳のココロちゃんと、彼女を見守る同い年の女子高生ペンペン草ちゃんがくりひろげる、楽しくて、ほろ苦い、泣き笑い必至な青春物語。


葉崎が舞台の一冊である。葉崎FMのコーナー「みんなの不幸」に寄せられた不幸自慢のなかに飛びぬけて不幸な投書があった。それがココロちゃんのペンペン草さんからのココロちゃんの不幸についての手紙なのだった。自分のオッチョコチョイさも一因だが、それだけではなく利用されたり巻き込まれたりと不幸を呼び込んでいるのかと思えるほどの不幸ぶりなのだった。それなのに当のココロちゃんはいたってのんきでしあわせそうにマイペースなので周りの方があたふたしてしまうのである。怪しげなカルト集団の身勝手な思惑に翻弄されながらも健気に生きるココロちゃんは疫病神なのかただの間の悪いオッチョコチョイ娘なのか…。それにしてもココロちゃんが巻き込まれるたびに、なにかしら悪事が発覚したり謎の事件が解決してしまったりするのは小気味よくさえある。いろんな意味で目が離せないココロちゃんである。葉崎FMのリスナーがこぞって気にかけるココロちゃん顛末記とでもいうような一冊である。

プラスマイナスゼロ*若竹七海

  • 2010/07/15(木) 20:28:40

プラスマイナスゼロプラスマイナスゼロ
(2008/12/03)
若竹 七海

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はじまりは、落ちてきた一匹の蛇だった―。なんか最近、アタシら死体に縁がねーか?凸凹女子高生トリオが、海辺の町・葉崎を駆け抜ける!ドタバタ×学園× 青春ミステリー。


  そして、彼女は言った~葉崎山高校の初夏~
  青ひげのクリームソーダ~葉崎山高校の夏休み~
  悪い予感はよくあたる~葉崎山高校の秋~
  クリスマスの幽霊~葉崎山高校の冬~
  たぶん、天使は負けない~葉崎山高校の春~
  なれそめは道の上~葉崎山高校、1年前の春~


葉崎町シリーズ。正真正銘のお嬢さまテンコ、番を張っているのが似合いそうなユーリ、そしてなにから何まで平均的なミサキの女子高生三人組のドタバタ騒動記である。それぞれの季節に謎の事件が起こり、三人組が解決することになる。最後の章の一年前の経緯を読むと、じんとして泣けてくる。この三人が出会えてよかったと思える。愉しくてじんとする一冊である。

火天風神*若竹七海

  • 2006/12/20(水) 17:24:33

☆☆☆・・

火天風神 火天風神
若竹 七海 (2006/08/10)
光文社

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最大瞬間風速70メートル超。観測史上最大級の大型台風が三浦半島を直撃した。電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立したリゾートマンション。猛る風と迸る雨は、十数人の滞在客たちを恐怖と絶望のどん底に突き落としてゆく。そして、空室からは死体が見つかって…。殺人なのか?そして犯人はこの中に!?謎とサスペンスに満ちた傑作パニック小説。


舞台は、三浦半島の先端・剣崎に建つ高級リゾートマンション。とはいえ、建設途中でバブルが弾け、一棟が建つのみである。しかも、持ち主は知らないが、拝金主義の悪徳建設業者が手抜きで建てた建物である。
さまざまな事情を抱えた持ち主やその関係者があちこちからやってきたとき、折悪しくも 経験したこともないほど猛烈な台風が剣崎を直撃したのである。
ひとりひとりの身勝手さが次々と連鎖し、事を大きくしていく様が、時間を追い 場所を変えて迫ってくるので、歯がゆくもあり恐ろしくもある。全体を見渡して事の重大さを判っているのは読者だけであり、当事者たちはそれぞれがそれぞれの思惑で動いたり人任せにしたりしているのである。そのうちにどんどん深みにはまっていく。
死体が現れたり、管理人が血迷ったり、火が出たり。よくもこのマンションだけにあとからあとから災難が押し寄せるものだと思うが、事件の起こり方にも不自然さがないところも著者の巧いところだろう。
一年後が描かれたエピローグが救いでもある。

猫島ハウスの騒動*若竹七海

  • 2006/08/21(月) 17:31:16

☆☆☆・・

猫島ハウスの騒動 猫島ハウスの騒動
若竹 七海 (2006/07/21)
光文社

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奇妙な事件に奇矯な人々、そして猫・猫・猫・・・・・
ユーモアとシニカルを絶妙にブレンド。
コージー・ミステリの名手、若竹七海の真骨頂!!

葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹を超える猫が暮らす通称・猫島。 民宿・猫島ハウスの娘・杉浦響子は夏休みを迎え、家業の手伝いに精を出す日々を送っている。 そんなある日、ナンパにいそしむ響子の同級生・菅野虎鉄が見つけてしまったのはナイフの突き立った猫の死体、いや、はく製だった!? 奇妙な「猫とナイフ」事件の三日後、マリンバイクで海の上を暴走中の男に人間が降ってきて衝突した、という不可解な通報が! 降ってきた男は「猫とナイフ」事件にかかわりがあるようだが・・・・・。 のどかな「猫の楽園」でいったい何が!? 真夏の猫島を暴風雨と大騒動が直撃する!


葉崎シリーズ最新刊。 事件を捜査するのはお馴染み駒持警部。
舞台は、人間よりも猫のほうが幅を利かせているような猫の楽園・猫島。
虎鉄が浜で怪しい猫のぬいぐるみを見つけたのがすべての事件のはじまりだった。 覚せい剤アレルギーの駒持警部はやたらと派手にくしゃみをしているし、響子の大叔父がかかわったという 十八年前の三億円事件までなにやら関係がありそうなのである。
新米警官の七瀬晃が、自覚しているかどうかはさておき、結果的には大活躍しているのが、なにやら微笑ましく好感が持てる。
猫も含めると登場人物(猫)のなんと多い物語であることか。
それにしても、響子と虎鉄の間に、修学旅行でいったい何があったのかが気になる。

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八月の降霊会*若竹七海

  • 2006/05/24(水) 18:47:34

☆☆☆・・



震える夜、すべての魂が・・・歪められる。
足を踏み入れたときから、いや、招待状を見たときからか。
この妙な感じは何処から来るのだろう。この家から、それともこのなかの誰かからだろうか・・・。真夏の山荘を舞台に真実と嘘がからみ合う、異色の書き下ろし長編ミステリー。
  ――帯より


富士山の近くの山荘で降霊会をするという水屋征児からの招待状を受け取ったのは、一見するとほとんど あるいは何の接点もないかに見える人々だった。だが受け取ったそれぞれが、何がしかの違和感を抱いて 結局は招きに応じて山荘に集まることになる。
そこで起きるのは、自らの過去の罪の告白であり、殺人であり、昔この山荘で起こったことの謎解きであり、いまとの関連の謎解きでもあるのだった。

舞台装置や設定は、なにやら綾辻行人テイストである。思わせぶりな台詞やあちこちに散らばるヒントなど。物語自体は綾辻作品よりもかえって不条理感が強いかもしれない。なのに雰囲気がおどろおどろしくならないのは作者の違いによるものだろう。
ミステリというよりも、ホラーやファンタジーの気配たっぷりの一冊だった。

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