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花咲小路二丁目の寫眞館*小路幸也
- 2022/06/26(日) 16:22:23
たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起きる花咲小路商店街。
新米カメラマンの樹里が働くのは、商店街に昔からある<久坂寫眞館>。
店主の重はカメラマンの腕がいいはずなのに、写真を撮ろうとしない。それもそのはず、重が撮影をすると、<奇妙なもの>が写真に写り込んでしまうというのだ。
写り込んでいるのが「過去」のものだとわかったことがきっかけで、昔の花咲小路商店街にタイムスリップしてしまった二人。
若かりしセイさんの力を借りて、謎に包まれたままの火事の真相を探ろうとするが、そこには大きな秘密が隠されていてーー
累計15万部突破の大人気「花咲小路」シリーズ第7弾!
とうとうタイムスリップしてしまったか、という感じだが、まったく違和感はなく、すんなり入り込めてしまった。そして、セイさんの秘密もしっかり確認することができ(わかっていたことではあるが)、商店街のアーケードにまつわる謎まで解き明かし、しかも現在との祖語もなく、ある意味ハッピーエンドで締めくくるとは。セイさんの綿密な計画のおかげもあるだろうが、重(じゅう)くんの持っている何かが確実に作用していると思われる。そして樹里さんによって補強されているものなのだろう。花咲小路商店街、まだまだ何か出てきそうで愉しみなシリーズである。
すべて神様の十月 2*小路幸也
- 2021/11/28(日) 13:22:54
シリーズ累計10万部突破!
死神、九十九神、福の神……
現代社会に溶け込むように存在している八百万の神々と、人間達とのちょっと不思議なふれあいを描いた、切なくも心温まる連作短篇シリーズ第二弾。
【内容例】
●ある消防士が出動すると、勝手に火が消えてしまう。その意外な理由とは?(「天狗さまのもとに」)
●銃で撃たれた女子高生が、死の淵で恋をした男の正体は……(「死神に恋」)
●夢遊病に悩む漫画家は、コインランドリーで美しい女性と出会うが(「眠れぬ夜の神様」)。
――など、全10篇を収録。
文庫オリジナル。
戌の日に
お稲荷さんをよろしく
天狗さまのもとに
死神に恋
眠れぬ夜の神様
笑う門には福来る
落とした物を探しています
引きこもりにおじさん
子供は風の子
七回目の神様
ちょっとだけ不思議なものが視える資質を備えもった主人公が、何気ない日々のなかで、ちょっとだけ不思議な出来事と人に出会う。そして、そのことをごく自然に受け入れて、その先も生きていく物語である。これほどあからさまに、存在として目に見える形でなくとも、生きていると、何か見えない力に守られているような気がすることは、存外あるように思う。それを意識するか、無意識のうちに何となくやり過ごしてしまうかというだけで、誰もが何者かにたぶん守られているのだろう。そんな思いを強くしてくれ、ほんの少し心強くさせてくれる一冊である。
隠れの子 東京バンドワゴン零*小路幸也
- 2021/11/17(水) 16:12:17
「東京バンドワゴン」シリーズのルーツは江戸時代にあった!?
この出会いは、愛(LOVE)を生む。
累計165万部突破! シリーズ初の傑作時代小説 いきなり文庫!
江戸北町奉行所定廻り同心の堀田州次郎と、植木屋を営む神楽屋で子守をしながら暮らしている少女・るうは、ともに「隠れ」と呼ばれる力を持つ者だった。州次郎はたぐいまれな嗅覚を、るうは隠れの能力を消す力を……。州次郎の養父を殺した者を探すべく、ふたりは江戸中を駆け巡る。それはまた隠れが平穏に暮らすための闘いだった。「東京バンドワゴン」シリーズのルーツとなる傑作時代長編小説。
著者初の時代小説とは思えないほどしっくりくる。語り口調がなんとはなしに東京バンドワゴンと通じるところがあるからだろうか。堀田家のルーツということなので、サチさんの不思議な力とは関係ないのだろうけれど、堀田の系譜も不思議な力を秘めているからこその、あの一家なのだろうと腑に落ちる。ただ、現在の堀田家にどうつながるか具体的に描かれているわけではなく、これはこれで続編がありそうな気配もなくはない。というか、ぜひ読みたい。おるうちゃんが、まだまだ活躍しそうな気がする一冊である。
明日は結婚式*小路幸也
- 2021/09/09(木) 16:08:24
覚えていますか? あの日のことを――。
家族で過ごす最後の夜、あなたに伝えたい想いがあります。
心に染みる感動の物語。
人生は、たくさんの人との繋がりで彩られていくんだね――。
明日に挙式を控えた、信用金庫勤めの井東春香と、パン屋の息子でデザイナーの細井真平。ごくごく普通に暮らす二人が、偶然の出会いから愛を育み夫婦になる。家族で過ごす最後の夜、春香の両親と弟、そして祖母には、それぞれに伝えたい想いがあった。一方、新しい家族を迎える細井家でも、実の母を早くに亡くした真平に、今だからこそ話しておきたいことがあり……。
結婚前夜を、当人たちとその家族の視点から紡ぐ感動の物語。
結婚式前夜、それぞれが実家で家族水入らずで過ごす最後の夜が、家族それぞれの目線で描かれてた物語。思いもよらないところで繋がっていたり、不思議な縁を感じたり、これまで歩いてきた道のりのしあわせと、これから歩み出す道のあたたかさを感じられる。平坦なばかりではない道程かもしれないが、この家族に育てられ、これからも周りにいると思えば、何があっても何とか先に進めるだろう。感慨深くはあるが、普通の一日でもある結婚式前夜が静かに描かれた一冊である。
グッバイ・イエロー・ブリック・ロード*小路幸也
- 2021/09/07(火) 16:30:58
古書店を営む四世代の大家族が活躍する、人気の「東京バンドワゴンシリーズ」第16弾。
4年ぶりの番外長編の舞台は、藍子とマードックが暮らすイギリス!
失われた絵と、あなたを取り戻すために――。
高校を卒業したばかりの堀田研人が率いるバンド〈TOKYO BANDWAGON〉が、ひょんなことからイギリスのスタジオでフルアルバムのレコーディングを行うことになった。我南人の引率で、藍子とマードックが暮らす家を訪れた一行。しかし、滞在中にマードックの姿が消えて……!? 東京の堀田家と現地の仲間たち総動員で、不可解な「誘拐」と「美術品盗難」の謎に迫る。
堀田家の「LOVE」は国境を越えて。大人気シリーズ第16弾!
今回は番外編ということで、東京下町を飛び出して、舞台はなんとイギリス。とは言え、サチさんは、一瞬でイギリスと堀田家を行ったり来たりできるので、両方の様子がわかる(タブレットやPCで繋がってはいるが)。さらに今回は、サチさんのことが見えて話せる人物が登場し、かなり活躍してしまうので、ちょっとこれはいいのだろうか、と思ってしまったりもする。TOKYO BANDWAGON の高校生三人組も結構大人な対応をしているが、研人のため口は父親の我南人譲りだろうか(それとも英語だから?ちょっぴり気にはなる)。マードックさんが事件に巻き込まれ、そこから発展してかなり大きなことになっていくのだが、「LOVEだねぇ」のパワーで丸く収めてしまうのがこの人たちである。現実にはあり得ない設定ではあるが、善人以外出てこないこのシリーズならではの展開だろう。堀田家の朝食風景が見られなかったのが残念な一冊でもある。
君と歩いた青春 駐在日記*小路幸也
- 2021/09/04(土) 16:30:25
「祈りなんていう非科学的なものが、誰かを救うこともあるんです」
昭和五十二年。元刑事・蓑島周平と元医者・花の夫婦の駐在生活も三年経ち、すっかり村の一員に。だが相変わらず雉子宮には、事件の種はつきないようで――。
冬 水曜日の雪解けは、勘当者
病気で倒れた村長さん。そこに勘当された娘が戻ってきた!
春 月曜日の来訪者は、スキャンダル
世間が芸能スキャンダルに沸く中、村に自称小説家の男が表れて……
夏 日曜日の幽霊は、放浪者
山で度々起きるお化け騒ぎ。その悲しき真相は……
秋 木曜日の謎は、埋蔵金
村に埋蔵金発掘のテレビが! でもそこにはとんでもないものが埋まっていた……。
家族の絆と人の優しさが胸を打つ。「東京バンドワゴン」シリーズ著者による大好評短編シリーズ第三弾。
日々のどかで、事件など何も起こらなさそうに思える雉子宮の駐在所が舞台の物語である。自然豊かでのどかなのは確かなのだが、これが結構事件が起こる。外から持ち込まれたり、お家騒動もどきだったり、昔の因縁がらみだったりと、さまざまではあるが、元刑事の駐在・周平さんの人を見る目と勘の鋭さに、妻の花さんの医師の目も加わり、その人脈の豊かさも助けとなって、八方良しの解決に導いてしまうのは、人徳とも言えるだろう。雉子宮の安寧にかなり貢献しているのは間違いない。村の人もみんないい人たちで、誰もが役に立ちたいと思って行動しているのが伝わってくる。若い人たちが、新しいことを考え始めているようなので、どんな風に変わっていくかも愉しみなシリーズである。
国道食堂 2nd season*小路幸也
- 2021/03/28(日) 18:33:00
小田原を抜けてしばらく経った頃、国道沿いに元プロレスラーが営む「ルート517」という店が見えてくる。
ドライブインというより、大衆食堂というのにピッタリなため、「国道食堂」という名もある。
この店の食事は、どれも美味しいが、ちょっと変わっているのは、プロレスのリングがあること。
さまざまな人々が集うこの店には、偶然か運命のいたずらか、とんでもないことが起きることがあって……。
好調シリーズの続篇刊行!
読み始めてしばらくは、前作の人間関係があやふやだったりもしたが、読み進めるうちに思い出してきて、そうだったそうだった、と懐かしい人たちに会えたような気分になった。山の中の田舎の学校の校舎を小さくしたような食堂で、こんなにも多彩な出会いと繋がりが生まれて、どんどん広がっているなんて、誰が思うだろうか。広いようで世間は狭い(都合よく狭すぎる気がしなくもないが、そこは敢えておいておく)。きっとそれは、十一さんを初めとして、国道食堂に集まってくる人たちが、お互いのことが好きで、それぞれに思いやっているからこそのことなのだろう。基本的に悪人が出てこない著者の物語だが、たまに心根の曲がった人が出てきたとしても、単純に排斥しないところが著者らしい。世界がこうだったら、どんなにか生きやすいだろうと思う。まだまだこの先を知りたくなるシリーズである。
三兄弟の僕らは*小路幸也
- 2020/08/18(火) 18:29:43
平凡で幸せな家庭に育ちながらも、突然の交通事故で両親を一度に失ってしまった、稲野朗・昭・幸の三兄弟。そんな彼らを助けるべく、ほとんど面識がなかった母方の祖母が家にやってくる。その暮らしの中で兄弟たちは、祖母と母の不仲の理由や父の出生の秘密など、これまで知らなかった家族の裏側を少しずつ知っていくのだが…。中・高・大学生の三兄弟の成長と、家族の絆を描いた、感涙必至のハートフルストーリー。
一般的に見えれば、ものすごく不幸でありながら、まったくそうは見えない三兄弟ではある。著者の作品には、基本的には善人しか出てこないが、本作もまた然り。三兄弟(小学生の末の弟までも)も、周りの人たちも、あまりにも人間ができすぎていて、ともすると白けてしまいそうなのだが、著者の物語はなぜかそうはならず、応援したくなってしまうのが不思議である。これ以上不運に見舞われないように、というよりも、どんな状況に置かれても、いいことを探しているような彼らなので、末永くそのまま穏やかに、と願わずにはいられない一冊である。
イエロー・サブマリン 東京バンドワゴン*小路幸也
- 2020/08/06(木) 08:04:35
四世代が同居する堀田家には、今日も不思議な事件が舞い込む。伝説の作家のアトリエに潜む秘密、紺に届いた盗作を訴える手紙、古本を定期的に買っては店に置いていくミステリアスな少女、藤島とパートナーになった美登里につきまとう過去の亡霊―。バンドワゴンの面々は「LOVE」という強い絆を持って立ち向かう。人気シリーズ待望の第15弾!
なんと第15弾!お見事である。堀田家の様子も、年々様変わりし、とうとう研人が高校を卒業する年齢に。なんとも感慨深いものがある。だが、相変わらず、厄介事とは縁が切れないようで、今回もあちこちから様々な厄介事が転がり込んでくる。我南人がふらっといなくなるのはいつものことで、最後にびしっと決めてくれるのも、いつも同様Loveである。改めて人と人とのつながりのありがたさを思うシリーズでもある。
のご挨拶*小路幸也
- 2020/06/29(月) 16:45:08
港町を見下ろす高台にある高級料亭旅館“銀の鰊亭”。一年前の火事で当主とその妻は焼死。二人を助けようと燃え盛る炎の中に飛び込んだ娘の文は怪我を負い、記憶を失った。ところが、その火事の現場には身元不明の焼死体もあった―。あの火事は“事故”なのか“事件”なのか?文の甥・光は刑事の磯貝とその真相を追うことになるのだが…。
歴史ある高級料亭旅館<銀の鰊亭>の知る人ぞ知る謎と、それにまつわる人たちの物語。もしもそれが事実だったとしたら、ものすごく大変なことなのだが、表向きのことしか知らされていない世間の人々にとっては、穏やかな日常が流れているのだろう。だが、コアなところでは、疑惑や思惑や駆け引きが繰り広げられ、まるで、川に浮かぶ水鳥の足掻きのようである。本当のところはどうだったのかは、永遠の謎だが、誰も不幸にしないところに落ち着いたのだろうと思う。仁さんのことは、残念だったが。文さんの記憶が戻ったらどうなるのか、ちょっぴり気になる一冊でもある。
国道食堂 1st season*小路幸也
- 2020/06/14(日) 16:36:26
お店の中にプロレスのリング?ちょっと田舎にあるけれど何を食べても美味しい食堂“ルート517”。そんな、ちょっと変わった店に通う人々の様々なドラマ。
ちょっと変わった人が営む、ちょっと変わった食堂が舞台。やたらとメニューが多いが、何を食べてもおいしい「ルート517」(人呼んで国道食堂)にやってくる人たちの人生と人生が出会い、元プロボクサーの店主の人生も絡み合って、好い具合に何かが生まれていく。生まれついての資質を持っている人は、それだけでなにごともうまくいく、というようなうらやましすぎるような設定もあるが、それが鼻につかず、素直に肯けてしまうところも著者ならではなのかもしれない。人はひとりでは生きられない、意識してもしなくても、必ずどこかで誰かと何らかの形で繋がり、影響を与え合っているのだということを再認識させられる一冊でもある。1st season ということは、次があるということだろうか。愉しみである。
花咲小路一丁目の髪結いの亭主*小路幸也
- 2020/02/14(金) 16:32:34
たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起きる花咲小路商店街。すらりと背の高いせいらちゃんが働く「バーバーひしおか」は、古きよき香りが漂うレトロな“理髪店”。小柄な奥さん・ミミ子さんが切り盛りし、素敵に髪を整えてくれますが、店主の旦那さんはのんきに暮らしてばかり。それもそのはず、旦那さんには思いもよらぬ“裏の顔”があって―
花咲小路商店街、ますますその筋の達人が集まっているようで、ものすごく濃密である。傍から見ればなんということのないごくありふれた商店街なのだが、その実、内情を知れば知るほど侮れない。カテゴリーは様々ではあるが、その道では一流でありながら、誰もが日々を実直に暮らしているのがなおさら格好好い。バーバーひしおかのメンバーに加わったせいらちゃんも、素敵なひらめきで、呑み込みがとても早く、鋼鉄のセーラと言われるほど口が堅い。彼女もまた魅力的である。花咲小路がこれからどうなっていくのか、いつまでも平穏でいられるのか興味深いシリーズである。
夏服を着た恋人たち マイ・ディア・ポリスマン*小路幸也
- 2020/01/18(土) 14:25:16
謎のカギを握るのは一枚のメモと高層マンション!?奈々川駅前の高層マンション“グレースタワー”最上階の部屋が暴力団の事務所になっている―。“東楽観寺前交番”に寄せられた通報を受け、赴任三年目の夏を迎えた宇田巡は捜査に向かう。一方、巡の恋人で新人マンガ家の楢島あおいは、年配の女性が不審な男に封筒を渡す場面を目撃してしまう。オレオレ詐欺事件と判断したあおいは、伝説の掏摸の祖母から受け継いだ技を使って、男の胸元から1枚のメモを掏り取る。そんな折、あおいの父・明彦は、長年行方不明だった大学時代の同級生、脇田広巳を町で見かけて…。町の仲間たちが凄ワザで謎に挑む人気ミステリー!
オレオレ詐欺、ドローン技術、SNSの波及力、などなど、現代を表す要素が満載である。だが、東楽観寺前交番の佇まいは、なんだかひと昔前ののどかさを残していて懐かしい感じである。ここに暮らす人たちの関係性も、現代の忙しなさとは遠く、つながりが濃く、その人脈故に解決されることも多々あるのである。今回も、事象そのものは現代的だが、解決のために根底を流れるものは、そんな密なつながりによるところが大きい。誰もが誰かのことを思い、誰かのためを思って動くことで、信頼関係が築かれ、それが次につながっていくのが見て取れてほっとさせられる。次も愉しみなシリーズである。
あの日に帰りたい 駐在日記*小路幸也
- 2019/11/18(月) 18:19:08
1971年。元刑事・蓑島周平と元医者・花の夫婦の駐在生活も板についてきた頃。新たな仲間、柴犬のミルも加わりのんびりした生活……と思いきや、相変わらず事件の種はつきないようで――。平和(なはず)の田舎町を、駐在夫婦が駆け回る!
語り口が東京バンドワゴンと似てきているように感じるのはわたしだけだろうか。特に食事の支度をする場面で、色濃く出ているような気がする。それはともかく、雉子宮駐在所の日々は、大方はのんびりしているものの、いざ何か起こると、結構大事になったりするので気が抜けない。だが、どんな事件であれ、住人のことを第一に考え、この先もよりよく生きて行けるように配慮する簑島巡査や花さんの対応が素晴らしい。真相は、当事者と花さんの日記でしかわからないので、読者はお得である。雉子宮に観光客がたくさん来て、町が潤ってほしいと思いはするが、こののどかさは変わらずにいてほしいと願ってしまうシリーズである。
アンド・アイ・ラブ・ハー*小路幸也
- 2019/08/23(金) 18:38:21
一進一退を続けるボンの容態に、落ち着かない日々を過ごす堀田家。しかしトラブルが起これば、すかさず助太刀参上!進路に悩む研人に、「老人ホーム入居を決めてきた」と宣言するかずみ。そして長年独身を貫いてきた藤島がついに―。それぞれが人生の分かれ道に立った家族、でもつながっているのはやっぱり「LOVE」があるから!人気シリーズ待望の第14弾!
もう14作目か、という感慨ひとしおである。小さかった人たちは大人になり、もっと小さかった人たちも小学生になり、大人たちはさらに歳を重ね、充分に歳を重ねていた人たちは、さらに老いていく(サチさんを除いて)。おめでたく明るい反面、どうしても一抹の寂しさも感じるのは、致し方のないことなのだろう。そんなすべてを受け止め見守る覚悟が、人生には必要なのだということを、本作が教えてくれる気がする。シリーズが続くほどに人間関係が広がっていくのは当然のことで、堀田家にもずいぶん新しい関係が築かれている。若い人たちが増えて、これからさらに広がっていくだろうと予想もされ、頼もしくも思われるが、読者としては、どこまで着いていけるかという不安も多少あるのが本音である。今回も厄介事が持ち込まれはしたが、それよりなにより、「ゆく人くる人」感の強い一冊だった。
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