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妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ*小路幸也

  • 2018/07/25(水) 19:22:53

妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3 (講談社文庫)
小路 幸也 平松 恵美子
講談社 (2018-03-15)
売り上げランキング: 354,610

無神経な夫・平田幸之助の言動に、それまで一家を支えてきた嫁・史枝がついにキレた。妻として母として嫁として、いなくなって初めてわかる史枝の有難み。後悔しつつも素直になれない幸之助に、周囲の心配は募るばかり……。山田洋次監督の傑作映画を、「東京バンドワゴン」の小路幸也がノベライズ。笑いと涙で家族の愛情を描く、喜劇シリーズの総決算!


史枝さん、よくやった!という感じである。それにつけても、幸之助のなんと無神経で身勝手なことか。史枝さんがも、よくいままで耐えてきたものである。救いは、義理の関係も含め、周りがおおむね史枝さんの存在意義を大いに認めてくれているということだろう。それがなければ、個人的には、金輪際戻りたくはない。幸之助がすっかり心を入れ替えたとは、まだ信じられないが、少しずつ変わってくれることを祈るばかりである。家庭の、主婦のありがたさがよくわかる一冊である。

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン*小路幸也

  • 2018/07/22(日) 08:47:50

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 59,801

花陽の医大受験を目前に控え、春を待つ堀田家。古書店“東京バンドワゴン”の常連・藤島さんの父親が亡くなって、書家だった父親のために記念館を設立するという。すると古書をきっかけに思いがけないご縁がつながって…。笑って泣ける、下町ラブ&ピース小説の決定版!下町の大家族が店に舞い込む謎を解決する人気シリーズ第13弾!


もう13作目なのか、とまずは感慨深い思いに浸る。いい加減新しいネタもないのではないだろうか、という懸念をよそに、きょうも堀田家の面々は、誰かのためにあわただしく動いているのである。そして、あの花陽が医大受験の年を迎えたのだという感慨も深い。子どもたちの成長とともに、堀田家内の役割も少しずつ変わってきて、それもまた興味深い。人生の旅を終える人がいると思えば、また新たに堀田家や東京バンドワゴンの流れに乗る人もいて、時の移ろいは途切れることがないのだと思わせても暮れる。人間の営みのことなのだから、ネタ切れなどということは有り得ないのかもしれない。研人のふるまいが、我南人のそれに似てきたのもうれしいところである。これからもどんどん動いていく堀田家が愉しみなシリーズである。

花歌は、うたう*小路幸也

  • 2018/01/22(月) 07:29:58

花歌は、うたう
花歌は、うたう
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小路 幸也
河出書房新社
売り上げランキング: 111,632

天才的ミュージシャンだった父の失踪から9年。秘められた音楽の才能が花開くとき、止まっていた時が動き始める―。幼なじみの勧めで歌をうたうことに真剣に向き合い始めた花歌は、父親譲りの天才的な音楽の才能を花開かせていく。そんな中、父・ハルオの目撃情報が届き…。祖母・母・娘、三世代女子家庭の再生の物語―。


ストーリーはかなり劇的ではあるものの、物語自体は割と淡々とよくある日常のひとコマを切り取ったように描かれている。主人公の花歌がいちばんのほほんとして見えるのは、祖母のうたや母の花子を始めとする周りの大人たちや、親友のむっちゃんやリョーチのおかげなのだろう。そして、無自覚な才能を引き出せるということは、それもまた才能なのだろう。伝説のミュージシャンで花歌の父・ハルオの失踪に至る心の闇には、さらりと触れるだけだったので、そこももっと知りたい気はしたが、それはまた別の物語になってしまいそうではある。花歌の歌を実際に聴いてみたくなる一冊である。

駐在日記*小路幸也

  • 2018/01/03(水) 07:29:19

駐在日記 (単行本)
駐在日記 (単行本)
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小路 幸也
中央公論新社
売り上げランキング: 263,554

昭和五十年。横浜で刑事をしていた蓑島周平は、皆柄下郡・雉子宮駐在所に赴任した。ある事件で心身に傷を負った妻の花と穏やかな暮らしをするため、自ら希望した人事だった。しかし、優しくて元気な人ばかりのこの雉子宮にも、事件の種は尽きないようで……。平和な田舎の村を守るため、駐在夫婦が駆け回る! 「東京バンドワゴン」シリーズの著者が贈る、どこか懐かしい警察連作短編。


横浜の捜査一課の刑事から、田舎町の駐在さんになった簑島周平の新婚の妻・花さんの駐在所の日々の覚え書きのような日記がベースになった物語である。花さん目線で描かれているので、警官の物語で、平和な土地柄ながらときおり起こる事件も、殺伐とした印象はなく、関係者の動向や心情が柔らかく描かれているので、どこかほのぼのとした空気感が漂っている。近所の人たちからお裾分けで届く野菜などを使った食卓の様子も、東京バンドワゴンにどこか通じるところがあって、気分が和む。外科医だった花さんの怪我の理由が明らかにされていないので、これはシリーズになるということですよね。これからの雉子宮駐在所が愉しみな一冊である。

猫ヲ捜ス夢  蘆野原偲郷*小路幸也

  • 2017/12/06(水) 16:48:21

猫ヲ捜ス夢: 蘆野原偲郷 (文芸書)
小路 幸也
徳間書店
売り上げランキング: 302,498

古より、蘆野原の郷の者は、人に災いを為す様々な厄を祓うことが出来る力を持っていた。しかし、大きな戦争が起きたとき、郷は入口を閉じてしまう。その戦争の最中、蘆野原の長筋である正也には、亡くなった母と同じように、事が起こると猫になってしまう姉がいたが、行方不明になっていた。彼は、幼馴染みの知水とその母親とともに暮らしながら、姉と郷の入口を捜している。移りゆく時代の波の中で、蘆野原の人々は何を為すのか?為さねばならぬのか?


暮らしの隅々の細かいことが、普段当たり前に思っている指標とはいささか違う次元にあるので、馴染むまでには戸惑いもあるが、次第にそんなものだと得心して物語にのめり込む。白い猫になり行方知れずになっている姉が帰ってくるのを心待ちにしながら、日々、「事」を成して暮らしている正也と知水の周りに、ぽつりぽつりと不思議なことが起こりはじめる。蘆野原の端境を見つける手掛かりに近づくのだろうか、と興味はいや増す。そんな出来事のひとつをたどった先で出会ったのは、言葉を話さない少女・美波であり、彼女もまた不意に猫になる性質なのだった。彼女が現れたことで、蘆野原への道はひらけはじめる。蘆野原という偲郷を、よく判らないながらも認めている世界にあって、彼らの果たす役割は何なのだろう。そして彼らに安らげるときは来るのだろうか。日本人の心の奥深くに、失くしてはいけない何かの物語なのかもしれないと思わされる一冊でもある。

マイ・ディア・ポリスマン*小路幸也

  • 2017/10/05(木) 18:51:13

マイ・ディア・ポリスマン
小路幸也
祥伝社
売り上げランキング: 172,954

交番に赴任してきたお巡りさんは元捜査一課の刑事。
幼なじみの副住職は、説法はうまいけど見た目はヤクザ。
彼らの前に現れたマンガ家志望の女子高生は伝説の○○の孫!?

財布が消えた? 現れた? この町で、一体何が起こっている?
奈々川市坂見町は東京にほど近い古い町並みが残る町。元捜査一課の刑事だった宇田巡は、
わけあって〈東楽観寺前交番〉勤務を命じられて戻ってきたばかり。寺の副住職で、幼なじみの
大村行成と話していると、セーラー服姿のかわいい女子高生・楢島あおいがおずおずと近づい
てきた。マンガ家志望の彼女は警官を主人公にした作品を描くために、巡の写真を撮らせてほ
しいという。快くOKした巡だったが、彼女が去ったあと、交番前のベンチにさっきまでなかった
はずの財布が。誰も近づいていないのに誰が、なぜ、どうやって? 疑問に包まれたまま財布の
持ち主を捜し始めた巡は、やがて意外な事実を知ることに……。


さまざまな、超能力とは言えなくても、凡人にはない能力を持つ人が集まっているこの町が、そもそもちょっと不思議な町である。だが、この町には、なんとなくほのぼのとした空気が流れているような気もする。ただ、そこで起こる出来事もまたちょっぴり謎めいていて、不思議な雰囲気を醸し出している。それぞれが、立場や世代の違いを超えて、互いを思いやっているのが伝わってきて心地いいのだが、人助けのためとはいえ、掏摸の技が正当化されているのがいささか気になるところではある。そして、些細なことかもしれないが、恋する乙女には酷なひと言にはっとさせられもした。シリーズ化されて、後々の伏線にでもなるのだろうか。いまのところ言われた本人が気にする様子もないので、単に副住職の失言なのかもしれないが、個人的には、この人にだけは言われたくないなあと思わされるひと言ではある。昔の友情も再確認でき、家族の和が戻り、過去のつながりも明らかになり、万事うまく解決したのは、思いやりの気持ち故だろう。次の展開が愉しみな一冊でもある。

東京カウガール*小路幸也

  • 2017/08/15(火) 12:32:28

東京カウガール
東京カウガール
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小路 幸也
PHP研究所
売り上げランキング: 296,734

きみは知らない/きみを知りたい
僕は動けなかった。恐怖心からではなく、男たちを叩きのめすその女性に見惚(みと)れてしまったんだ――。
その夜、カメラマン志望の大学生・木下英志は夜景を撮っていた。人気(ひとけ)のない公園で鈍い音を聞きつけカメラを向けると、そこには一人の女性がいた。彼女は屈強な男たちを叩きのめすと、車椅子の老人を伴い車へと消えた……。後日、改めて画像を見た英志は気づく。「似ている。横顔が、あの子に」
〈カウガール〉と名付けた彼女の画像を頼りに、その正体に近づいていく英志だったが、やがて彼女自身にも心を寄せていく。そして辿り着いた真相と、彼女の家族が背負った哀しい過去とは? 累計150万部突破の「東京バンドワゴン」シリーズの著者が描く、もう一つの「東京」の物語。


東京郊外の牧場が舞台ののんびりほのぼのした物語、ではない。実際には、都心のど真ん中で、物騒な出来事が繰り広げられる物語である。何人ものどうしようもない男たちが、再起不能なほど叩きのめされている。そして、そのことに偶然気づいてしまった大学生の英志(えいじ)が、バーを営むゲイの叔父や店の常連客たちと、秘密裏に策を練る、ものすごく不穏な物語なのである。それでも、なんとなく漂う雰囲気は穏やかでやさしくあたたかい。登場人物たちがみな、誰かのことをまっすぐに思いやり、その人のためにできる限りのことをしようと決意しているからなのかもしれない。裏事情はさまざまあって、きれいごとだけでは済まされないこともままあるが、人の思いがまっすぐで確かなものなら、良い結果がついてくるのだと思わせてくれる。哀しく切なく、じんわり心温まる一冊である。

ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン*小路幸也

  • 2017/08/07(月) 16:16:39

ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 15,459

若き日の堀田我南人はコンサート帰りに、ある女子高校生と出会った。名は秋実。彼女はアイドルとして活躍する親友・桐子の窮地を救うため、ひそかに東京に来たという。話を聞いた我南人と、古書店“東京バンドワゴン”の一同は、彼女のために一肌脱ぐが、思いもよらぬ大騒動に発展し…?下町の大家族が店に舞い込む謎を解決する人気シリーズ、番外長編


サチさんがちゃんと生きて動いていて、秋実ちゃんもいて、我南人はまだ二十歳そこそこの堀田家である。こんな景色を見られる日がくるなんて。このシリーズを読み続けていてよかった、と思わず嬉しくなってしまう。そして、周りの人たちをあっと驚かせる、一度であっちもこっちも片づけてしまう我南人の仕切りが、この頃からのものだったことがわかって、やはり天性のものなのだと腑に落ちる。いつもちゃらんぽらんな感じでしゃべっているのに、ときどき普通の話し方に戻ってしまう辺りも、可愛らしささえ感じてしまう。堀田家とその周りの人たちに、さらなるLOVEを感じる一冊である。

風とにわか雨と花*小路幸也

  • 2017/07/11(火) 10:49:17

風とにわか雨と花
風とにわか雨と花
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小路 幸也
キノブックス
売り上げランキング: 53,236

僕が九歳、風花(ふうか)ちゃんが十二歳になった四月にお父さんとお母さんは、リコンした。どうしてかって訊いたら「今は説明してもわからないと思うので、言わない」ってお母さんは言った――

専業作家を目指す父、仕事に復帰した母、小学生の姉と弟。
父が暮らす海辺の町を舞台にした、心温まる家族物語。
親子四人の心情の変化を、それぞれの視点から鮮やかに描く!


両親が離婚した一家四人の物語である。大人の都合――この場合主に専業作家を目指す父の我儘――で離ればなれで暮らさなければならなくなった父と姉弟、母と姉弟、そして喧嘩別れしたわけではない夫と妻、それぞれの関係や思いが、それぞれの視点で描かれている。家族以外の周りの大人たちにも示唆を得て、子どもたちはその年齢なりに自分の置かれている状況や父と母の生き方を理解しようとし、父と母も、お互いを、そして子どもたちを大切に思いながらも、それぞれの道を前を向いて歩こうとしている。こんなに互いを思いやってしあわせそうなのに、なぜ?とどうしても思ってしまうが、それはこの家族の問題なのだろう。離婚という悲しい題材を扱いながらも、胸のなかがあたたかさで満ちてくる一冊である。

家族はつらいよ 2*小路幸也

  • 2017/05/14(日) 18:34:52

家族はつらいよ2 (講談社文庫)
小路 幸也 平松 恵美子
講談社 (2017-03-15)
売り上げランキング: 170,066

熟年離婚の危機を乗り越えた平田周造は、運転好きの頑固な高齢者。しかし自損事故をきっかけに、家族に「免許返納」を求められ憤慨する。そんな折、彼は高校時代の同級生と再会し、互いの境遇の違いを実感させられるのだった。「男はつらいよ」の山田洋次監督が描く新作喜劇映画シリーズ、小説化第2弾!


平田家の家族それぞれが語る平田家の日常のあれこれ。その人なりの日々語りをつなぎ合わせると、平田家の全体像が見えてくる。高齢になった平田周造に運転をやめさせようという目論見が大きな流れだが、そこにさまざまな事情が絡んできて、流れがあちこちに派生していくのも愉しい。結局周造の運転はどうなるのか気になる一冊でもある。

花咲小路三丁目のナイト*小路幸也

  • 2017/03/10(金) 18:25:40

花咲小路三丁目のナイト
小路 幸也
ポプラ社 (2016-12-05)
売り上げランキング: 319,900

たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起こる花咲小路商店街。今回の舞台は商店街唯一の深夜営業店<喫茶ナイト>。すっかり夜ならではの相談所になっている店を手伝いながら、その相談事を店主の仁太が突拍子もない方法で何とかする様子を、居候の甥っ子・望が語っていく。
前三巻でおなじみの人物も多数登場!
ますます楽しい花咲小路シリーズ第四弾。


ほんとうに読めば読むほどユニークな住人ばかりの商店街である。しかも、なんだかんだといつかどこかで繋がっていたりして、一度こんがらがったら、どうにもほどけなくなりそうである。夜だけ開いている喫茶店ナイト(実はKから始まるナイトなのだが)がよろず相談所のような場所であり、そこの主がひと癖もふた癖もありそうな謎多き人物である仁太さんなのだから、持ち込まれた相談事を、居候の甥・望の手を借りて、表立てず荒立てずに、収まるべきところに収めてしまうのだった。基本的に、みんなが善人で、お互いを思いやっているからこその解決でもあるように思われる。ラストは、そんな解決策があったか、という感じで、パズルが見事にはまったような印象である。これからの花咲小路がどうなるのか、まだまだ目が離せないシリーズである。

スローバラード*小路幸也

  • 2016/10/23(日) 08:46:15

スローバラード Slow ballad
小路幸也
実業之日本社
売り上げランキング: 54,027

事件の連鎖が呼び起こしたのは、「あの頃」の記憶と私たちの絆――

2014年4月。東京・北千住で喫茶店〈弓島珈琲〉を営むダイは53歳になっていた。
学生時代、バンド仲間の淳平、ヒトシ、ワリョウ、真吾と暮らした自宅を改装した店舗だったが、
ダイにも、常連客のゲームクリエイター・純也や三栖刑事にも家族ができ、
少しずつ生活も変化している。
かつて三栖が下宿していた純和風の家には、学生時代の友人ワリョウの息子・明と
その友人たちが下宿していた。

ある日、水戸に住むヒトシの息子の智一が「東京に行ってきます」というメモを残して
家出したと連絡が入った。
ダイは三栖や明、純也らと智一の行方を捜し始めると、
智一と同じ高校に通う村藤瑠璃がケガを負った家族を残し、
行方不明になっていることがわかる。
時を同じくして、人気俳優となった淳平の妻・花凜にストーカー騒ぎが起こった。

ダイたちは、智一の高校の先輩にあたる仁科と、新宿二丁目でゲイバーを営むディビアンが
それらの事件に関わることを突き止める。
学生時代をともにした仲間たちが〈弓島珈琲〉に再び集結し、
「あの頃」に封印した事件と対面する――。

青春時代のほろ苦さが沁みる珈琲店ミステリー。


誰ひとり悪人はいないのに、昏い思いを抱えて生きざるを得ない仲間たちである。彼らも歳を重ね、53歳になった。それに伴い、事件も子どもたちの世代が中心になっている。だが、その根っこはやはり、ダイたちが日々をともにしていた若いころにあったのだった。一度はどこかに置いて、前に進めていると思った屈託も、また手元に戻ってきてしまう。なんと切ないことだろう。それでも、真実を知ればこそ、また次の一歩を踏み出せるのかもしれない。彼らの信頼関係が揺らがない限り。それぞれのしあわせを大切に生きていってほしいと願わずにいられないシリーズである。

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード*小路幸也

  • 2016/09/08(木) 20:17:52

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 151,755

老舗古書店「東京バンドワゴン」に舞い込む謎を、大家族の堀田家が人情あふれる方法で解決する、人気シリーズの最新作。
医者を目指して勉強を続けてきた花陽がいよいよ受験シーズンに突入。研人は高校生活を送りながら音楽の道に邁進中。さらに、お店に遠方から招かれざる客がやってきて、ひょんなことからシリーズ初の「海外旅行」も実現! ?
今回も「LOVEだねえ」の決めゼリフとともに、読み逃せない熱いエピソードが満載。ファン待望の第11弾。


なんともう11作目である。回を重ねるごとに、冒頭でサチさんが紹介する堀田家(とその周囲の)人たちの数も増え、紹介だけでかなりのボリュームを必要とするようになってきた。初めの何作かは、その関係性に頭が混乱することもあったが、もはや「本を開けば堀田家の一員」状態なので、悩むこともなくなっている。今回も、季節ごとに堀田家に難題が持ち上がり、そのたびに人情味或解決に導くのだが、主導権を握る人が少しずつ変わってきている印象である。以前はどういうわけか、普段ふらふらしている我南人が、いいところでバシッと決めるパターンが多かったが、今回は、若い人たちの活躍が目立っている。ことに、かんなちゃんと鈴花ちゃんの画策には目を瞠るものがある。将来が愉しみである。とは言っても、大黒柱の勘一もまだまだ元気で、ロンドンまで行って大立ち回りを披露していて頼もしい。そしていつもながらいちばん好きなのは、朝食のシーンである。昨夜の残り物も含めて、何もかもおいしそうで、みんなが愉しそうなのがなによりである。いつまでもいつまでも続いてほしいシリーズである。

小説家の姉と*小路幸也

  • 2016/08/26(金) 18:55:10

小説家の姉と
小説家の姉と
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小路 幸也
宝島社
売り上げランキング: 88,699

五歳年上の姉は、学生時代に小説家としてデビューした。それから数年後、一人暮らしをしていた姉から突然、「防犯のために一緒に住んでほしい」と頼まれた大学生の弟・朗人。小説家としての姉を邪魔しないように、注意深く生活する中で、編集者や作家仲間とも交流し、疎遠だった幼なじみとも再び付き合うようになった朗人は、姉との同居の“真意”について考え始める。姉には何か秘密があるのでは―。


いつものことながら、著者の物語には根っからの悪人がひとりも出てこない。それは今作も然りである。そして、主人公の朗人も姉も、沙羅には朗人の彼女の清香も、幼なじみの千葉くんも、それぞれ境遇は違うが、大切に育てられたのだろうと察せられる育ちの良さがにじみ出ている。誰を見ても考え方が健全なので、多少の行き違いがあったとしても、難なく修復できるのである。お互いを自然に思いやれるさまも、見ていて心地好い。お姉さん=美笑さんの書いた小説を読んでみたくなる一冊である。

ストレンジャー・イン・パラダイス*小路幸也

  • 2016/08/14(日) 16:50:20

ストレンジャー・イン・パラダイス
小路 幸也
中央公論新社
売り上げランキング: 239,118

ここは阿形県賀条郡〈晴太多〉(はれただ)。観光地も名物産業も何もない、ほぼ限界集落。
そんな故郷を再生するため、町役場で働く土方あゆみは、移住希望者を募集する。やってきたのはベンチャー企業の若者、ニートの男、駆け落ちカップルなど、なんだかワケありなはぐれ者(ストレンジャー)たち。
彼らが持つ忘れたい過去も心の傷も、優しい笑顔が包み込む――。〈晴太多〉へどうぞ。みんなが待ってます!


限界集落と呼ばれるような何もない故郷「晴太多(はれただ)」に、婚約を破棄されて帰ってきたあゆみを軸に、離婚して帰ってきた綾那や、町興しの企画に乗って都会から移ってきたIT企業のメンバー、あゆみが営む「晴太多宿の食事の切り盛りをするヒサばあちゃんなど、晴太多を動かそうとする人たちと、あとからやって来た人たちの関わりにあたたかみがあって好ましい。踏み込み過ぎず、突き放しすぎず、むずかしい距離感を守りながら、少しずつ近づいて親しくなっていき、お互いを思いやるまでに関係性を育てる様は、見ていて気持ちが好い。晴太多再生事業は、物語のラストのそのまた先に活性化されるのだろうが、みんなが生き生きと暮らす様子も見てみたいと思わされる一冊である。