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あの日に帰りたい 駐在日記*小路幸也

  • 2019/11/18(月) 18:19:08

あの日に帰りたい-駐在日記 (単行本)
小路 幸也
中央公論新社
売り上げランキング: 80,475

1971年。元刑事・蓑島周平と元医者・花の夫婦の駐在生活も板についてきた頃。新たな仲間、柴犬のミルも加わりのんびりした生活……と思いきや、相変わらず事件の種はつきないようで――。平和(なはず)の田舎町を、駐在夫婦が駆け回る!


語り口が東京バンドワゴンと似てきているように感じるのはわたしだけだろうか。特に食事の支度をする場面で、色濃く出ているような気がする。それはともかく、雉子宮駐在所の日々は、大方はのんびりしているものの、いざ何か起こると、結構大事になったりするので気が抜けない。だが、どんな事件であれ、住人のことを第一に考え、この先もよりよく生きて行けるように配慮する簑島巡査や花さんの対応が素晴らしい。真相は、当事者と花さんの日記でしかわからないので、読者はお得である。雉子宮に観光客がたくさん来て、町が潤ってほしいと思いはするが、こののどかさは変わらずにいてほしいと願ってしまうシリーズである。

アンド・アイ・ラブ・ハー*小路幸也

  • 2019/08/23(金) 18:38:21

アンド・アイ・ラブ・ハー 東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 103,927

一進一退を続けるボンの容態に、落ち着かない日々を過ごす堀田家。しかしトラブルが起これば、すかさず助太刀参上!進路に悩む研人に、「老人ホーム入居を決めてきた」と宣言するかずみ。そして長年独身を貫いてきた藤島がついに―。それぞれが人生の分かれ道に立った家族、でもつながっているのはやっぱり「LOVE」があるから!人気シリーズ待望の第14弾!


もう14作目か、という感慨ひとしおである。小さかった人たちは大人になり、もっと小さかった人たちも小学生になり、大人たちはさらに歳を重ね、充分に歳を重ねていた人たちは、さらに老いていく(サチさんを除いて)。おめでたく明るい反面、どうしても一抹の寂しさも感じるのは、致し方のないことなのだろう。そんなすべてを受け止め見守る覚悟が、人生には必要なのだということを、本作が教えてくれる気がする。シリーズが続くほどに人間関係が広がっていくのは当然のことで、堀田家にもずいぶん新しい関係が築かれている。若い人たちが増えて、これからさらに広がっていくだろうと予想もされ、頼もしくも思われるが、読者としては、どこまで着いていけるかという不安も多少あるのが本音である。今回も厄介事が持ち込まれはしたが、それよりなにより、「ゆく人くる人」感の強い一冊だった。

テレビ探偵*小路幸也

  • 2019/02/09(土) 16:33:29

テレビ探偵
テレビ探偵
posted with amazlet at 19.02.09
小路 幸也
KADOKAWA (2018-12-25)
売り上げランキング: 224,188

1969年、イケイケで無類に楽しく、でもちょっといかがわしい、そんなテレビに誰もが夢中だったあの頃―コミックバンド「ザ・トレインズ」のボーヤとなって芸能界入りした19歳の葛西靖之(チャコ)は、個性的なメンバーや業界人たちに振り回されていつも忙しい。ある日、トレインズに土曜夜8時の新番組を持つ話が持ち上がった。スターへの道が拓けたことを喜ぶ者、音楽に専念できないことを危ぶむ者…間で右往左往するばかりのチャコだが、そんな中、生放送中の舞台で殺人未遂(?)事件が発生し―。停滞の時代にガツンと元気を届ける、昭和青春ミステリの開幕!


昭和の真ん中を生きてきたわたしにとっては、懐かしすぎる物語である。いくらフィクションだとは言え、実際の彼らの顔で頭の中に物語が展開されてしまうのは仕方がないだろう。テレビでは見られない裏側の世界が、垣間見られた気分になれて、お得感満載の物語でもある。なんだかいろいろといい時代だったなぁ、と思い出に浸りたくなってしまう一冊でもあった。

春は始まりのうた マイ・ディア・ポリスマン*小路幸也

  • 2019/01/14(月) 16:26:05

春は始まりのうた マイ・ディア・ポリスマン
小路幸也
祥伝社
売り上げランキング: 153,076

夜空に浮かぶのは、満開の桜と……白いお化け!? 〈東楽観寺前交番〉に赴任して三年目の巡査・宇田巡(うためぐる)。彼のもとに幼馴染みで音楽事務所社長の市川公太がやってきて、白い化け物にでくわし荷物をとられたと言う。じつは似た訴えはこれで三件目、巡は捜査を開始する。一方、巡 の彼女で、伝説の掏摸(すり)の孫にしてマンガ家デビューをしたばかりの楢島あおいは、高校の卒業式の帰りに巡を見張っている男がいることに気づく。身許を確かめようとしたところ、その男の懐にあったのは何と警察手帳だった……。 犯罪者が〝判る〟お巡りさん、伝説の掏摸の血を受け継ぐ美少女マンガ家、 超絶記憶を誇る兄弟……そして、新たな凄ワザメンバーが登場!? 面白さ倍増で贈る、キュートでハード(?)なミステリー!


今回も、ほのぼのとしているようで、国家を揺るがす一大事がバックにあったりして侮れない。どうしてこの町のこの地域にだけ、これほど特殊な技能の持ち主が集まってしまったのかという疑問は於くとして、みんな根っこがいい人たちなのである。かなり物騒なことに関わりあってはいるものの、日々はいたってのどかに繰り広げられており、巡とあおい、行成と杏菜も順調に前に向かっているようでほほえましい。この町にいる限り、何が起きても大丈夫な気がするシリーズである。

花咲小路三丁目北角のすばるちゃん*小路幸也

  • 2018/12/31(月) 20:27:08

花咲小路三丁目北角のすばるちゃん
小路 幸也
ポプラ社
売り上げランキング: 61,261

たくさんのユニークな人々が暮らし、日々さまざまな事件が起きる花咲小路商店街。
にぎやか商店街の裏には、真っ赤なシトロエンが看板代わりの駐車場<カーポート・ウィート>があるのです。
若社長・すばるちゃんが営むカーポートを訪れるのはいろんな車。ときには厄介ごとも乗せてきて――


花咲小路シリーズ、今回は、三丁目北角の赤いシトロエンが目印の駐車場の若き経営者・すばるちゃんが主人公。母は、すばるちゃんが生まれてすぐに出ていき、父は病気で亡くなり、その後育ててくれた祖父も亡くなって、ひとりになってしまったが、花咲小路商店街の人たちに見守られて、恙なく暮らしている。赤いシトロエンは、すばるちゃんの住まいであるとともに、亡くなった父の魂が宿り、カーラジオを通じて話ができる、という秘密も載せているのだった。花咲小路のエピソードはこれまでにもさまざまな人たちを主役に繰り広げられてきたが、その度に、花咲小路商店街の絵地図に色をつけていくような気持になった。今回もまた違う一角に新しい色を塗れて、絵地図がどんどん生き生きしてくるようでうれしくなる。人は、ひとりで生きているようでも、周りの人たちに見守られているのだと実感する一冊でもある。

妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ*小路幸也

  • 2018/07/25(水) 19:22:53

妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3 (講談社文庫)
小路 幸也 平松 恵美子
講談社 (2018-03-15)
売り上げランキング: 354,610

無神経な夫・平田幸之助の言動に、それまで一家を支えてきた嫁・史枝がついにキレた。妻として母として嫁として、いなくなって初めてわかる史枝の有難み。後悔しつつも素直になれない幸之助に、周囲の心配は募るばかり……。山田洋次監督の傑作映画を、「東京バンドワゴン」の小路幸也がノベライズ。笑いと涙で家族の愛情を描く、喜劇シリーズの総決算!


史枝さん、よくやった!という感じである。それにつけても、幸之助のなんと無神経で身勝手なことか。史枝さんがも、よくいままで耐えてきたものである。救いは、義理の関係も含め、周りがおおむね史枝さんの存在意義を大いに認めてくれているということだろう。それがなければ、個人的には、金輪際戻りたくはない。幸之助がすっかり心を入れ替えたとは、まだ信じられないが、少しずつ変わってくれることを祈るばかりである。家庭の、主婦のありがたさがよくわかる一冊である。

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン*小路幸也

  • 2018/07/22(日) 08:47:50

ヘイ・ジュード 東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 59,801

花陽の医大受験を目前に控え、春を待つ堀田家。古書店“東京バンドワゴン”の常連・藤島さんの父親が亡くなって、書家だった父親のために記念館を設立するという。すると古書をきっかけに思いがけないご縁がつながって…。笑って泣ける、下町ラブ&ピース小説の決定版!下町の大家族が店に舞い込む謎を解決する人気シリーズ第13弾!


もう13作目なのか、とまずは感慨深い思いに浸る。いい加減新しいネタもないのではないだろうか、という懸念をよそに、きょうも堀田家の面々は、誰かのためにあわただしく動いているのである。そして、あの花陽が医大受験の年を迎えたのだという感慨も深い。子どもたちの成長とともに、堀田家内の役割も少しずつ変わってきて、それもまた興味深い。人生の旅を終える人がいると思えば、また新たに堀田家や東京バンドワゴンの流れに乗る人もいて、時の移ろいは途切れることがないのだと思わせても暮れる。人間の営みのことなのだから、ネタ切れなどということは有り得ないのかもしれない。研人のふるまいが、我南人のそれに似てきたのもうれしいところである。これからもどんどん動いていく堀田家が愉しみなシリーズである。

花歌は、うたう*小路幸也

  • 2018/01/22(月) 07:29:58

花歌は、うたう
花歌は、うたう
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小路 幸也
河出書房新社
売り上げランキング: 111,632

天才的ミュージシャンだった父の失踪から9年。秘められた音楽の才能が花開くとき、止まっていた時が動き始める―。幼なじみの勧めで歌をうたうことに真剣に向き合い始めた花歌は、父親譲りの天才的な音楽の才能を花開かせていく。そんな中、父・ハルオの目撃情報が届き…。祖母・母・娘、三世代女子家庭の再生の物語―。


ストーリーはかなり劇的ではあるものの、物語自体は割と淡々とよくある日常のひとコマを切り取ったように描かれている。主人公の花歌がいちばんのほほんとして見えるのは、祖母のうたや母の花子を始めとする周りの大人たちや、親友のむっちゃんやリョーチのおかげなのだろう。そして、無自覚な才能を引き出せるということは、それもまた才能なのだろう。伝説のミュージシャンで花歌の父・ハルオの失踪に至る心の闇には、さらりと触れるだけだったので、そこももっと知りたい気はしたが、それはまた別の物語になってしまいそうではある。花歌の歌を実際に聴いてみたくなる一冊である。

駐在日記*小路幸也

  • 2018/01/03(水) 07:29:19

駐在日記 (単行本)
駐在日記 (単行本)
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小路 幸也
中央公論新社
売り上げランキング: 263,554

昭和五十年。横浜で刑事をしていた蓑島周平は、皆柄下郡・雉子宮駐在所に赴任した。ある事件で心身に傷を負った妻の花と穏やかな暮らしをするため、自ら希望した人事だった。しかし、優しくて元気な人ばかりのこの雉子宮にも、事件の種は尽きないようで……。平和な田舎の村を守るため、駐在夫婦が駆け回る! 「東京バンドワゴン」シリーズの著者が贈る、どこか懐かしい警察連作短編。


横浜の捜査一課の刑事から、田舎町の駐在さんになった簑島周平の新婚の妻・花さんの駐在所の日々の覚え書きのような日記がベースになった物語である。花さん目線で描かれているので、警官の物語で、平和な土地柄ながらときおり起こる事件も、殺伐とした印象はなく、関係者の動向や心情が柔らかく描かれているので、どこかほのぼのとした空気感が漂っている。近所の人たちからお裾分けで届く野菜などを使った食卓の様子も、東京バンドワゴンにどこか通じるところがあって、気分が和む。外科医だった花さんの怪我の理由が明らかにされていないので、これはシリーズになるということですよね。これからの雉子宮駐在所が愉しみな一冊である。

猫ヲ捜ス夢  蘆野原偲郷*小路幸也

  • 2017/12/06(水) 16:48:21

猫ヲ捜ス夢: 蘆野原偲郷 (文芸書)
小路 幸也
徳間書店
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古より、蘆野原の郷の者は、人に災いを為す様々な厄を祓うことが出来る力を持っていた。しかし、大きな戦争が起きたとき、郷は入口を閉じてしまう。その戦争の最中、蘆野原の長筋である正也には、亡くなった母と同じように、事が起こると猫になってしまう姉がいたが、行方不明になっていた。彼は、幼馴染みの知水とその母親とともに暮らしながら、姉と郷の入口を捜している。移りゆく時代の波の中で、蘆野原の人々は何を為すのか?為さねばならぬのか?


暮らしの隅々の細かいことが、普段当たり前に思っている指標とはいささか違う次元にあるので、馴染むまでには戸惑いもあるが、次第にそんなものだと得心して物語にのめり込む。白い猫になり行方知れずになっている姉が帰ってくるのを心待ちにしながら、日々、「事」を成して暮らしている正也と知水の周りに、ぽつりぽつりと不思議なことが起こりはじめる。蘆野原の端境を見つける手掛かりに近づくのだろうか、と興味はいや増す。そんな出来事のひとつをたどった先で出会ったのは、言葉を話さない少女・美波であり、彼女もまた不意に猫になる性質なのだった。彼女が現れたことで、蘆野原への道はひらけはじめる。蘆野原という偲郷を、よく判らないながらも認めている世界にあって、彼らの果たす役割は何なのだろう。そして彼らに安らげるときは来るのだろうか。日本人の心の奥深くに、失くしてはいけない何かの物語なのかもしれないと思わされる一冊でもある。

マイ・ディア・ポリスマン*小路幸也

  • 2017/10/05(木) 18:51:13

マイ・ディア・ポリスマン
小路幸也
祥伝社
売り上げランキング: 172,954

交番に赴任してきたお巡りさんは元捜査一課の刑事。
幼なじみの副住職は、説法はうまいけど見た目はヤクザ。
彼らの前に現れたマンガ家志望の女子高生は伝説の○○の孫!?

財布が消えた? 現れた? この町で、一体何が起こっている?
奈々川市坂見町は東京にほど近い古い町並みが残る町。元捜査一課の刑事だった宇田巡は、
わけあって〈東楽観寺前交番〉勤務を命じられて戻ってきたばかり。寺の副住職で、幼なじみの
大村行成と話していると、セーラー服姿のかわいい女子高生・楢島あおいがおずおずと近づい
てきた。マンガ家志望の彼女は警官を主人公にした作品を描くために、巡の写真を撮らせてほ
しいという。快くOKした巡だったが、彼女が去ったあと、交番前のベンチにさっきまでなかった
はずの財布が。誰も近づいていないのに誰が、なぜ、どうやって? 疑問に包まれたまま財布の
持ち主を捜し始めた巡は、やがて意外な事実を知ることに……。


さまざまな、超能力とは言えなくても、凡人にはない能力を持つ人が集まっているこの町が、そもそもちょっと不思議な町である。だが、この町には、なんとなくほのぼのとした空気が流れているような気もする。ただ、そこで起こる出来事もまたちょっぴり謎めいていて、不思議な雰囲気を醸し出している。それぞれが、立場や世代の違いを超えて、互いを思いやっているのが伝わってきて心地いいのだが、人助けのためとはいえ、掏摸の技が正当化されているのがいささか気になるところではある。そして、些細なことかもしれないが、恋する乙女には酷なひと言にはっとさせられもした。シリーズ化されて、後々の伏線にでもなるのだろうか。いまのところ言われた本人が気にする様子もないので、単に副住職の失言なのかもしれないが、個人的には、この人にだけは言われたくないなあと思わされるひと言ではある。昔の友情も再確認でき、家族の和が戻り、過去のつながりも明らかになり、万事うまく解決したのは、思いやりの気持ち故だろう。次の展開が愉しみな一冊でもある。

東京カウガール*小路幸也

  • 2017/08/15(火) 12:32:28

東京カウガール
東京カウガール
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小路 幸也
PHP研究所
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きみは知らない/きみを知りたい
僕は動けなかった。恐怖心からではなく、男たちを叩きのめすその女性に見惚(みと)れてしまったんだ――。
その夜、カメラマン志望の大学生・木下英志は夜景を撮っていた。人気(ひとけ)のない公園で鈍い音を聞きつけカメラを向けると、そこには一人の女性がいた。彼女は屈強な男たちを叩きのめすと、車椅子の老人を伴い車へと消えた……。後日、改めて画像を見た英志は気づく。「似ている。横顔が、あの子に」
〈カウガール〉と名付けた彼女の画像を頼りに、その正体に近づいていく英志だったが、やがて彼女自身にも心を寄せていく。そして辿り着いた真相と、彼女の家族が背負った哀しい過去とは? 累計150万部突破の「東京バンドワゴン」シリーズの著者が描く、もう一つの「東京」の物語。


東京郊外の牧場が舞台ののんびりほのぼのした物語、ではない。実際には、都心のど真ん中で、物騒な出来事が繰り広げられる物語である。何人ものどうしようもない男たちが、再起不能なほど叩きのめされている。そして、そのことに偶然気づいてしまった大学生の英志(えいじ)が、バーを営むゲイの叔父や店の常連客たちと、秘密裏に策を練る、ものすごく不穏な物語なのである。それでも、なんとなく漂う雰囲気は穏やかでやさしくあたたかい。登場人物たちがみな、誰かのことをまっすぐに思いやり、その人のためにできる限りのことをしようと決意しているからなのかもしれない。裏事情はさまざまあって、きれいごとだけでは済まされないこともままあるが、人の思いがまっすぐで確かなものなら、良い結果がついてくるのだと思わせてくれる。哀しく切なく、じんわり心温まる一冊である。

ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン*小路幸也

  • 2017/08/07(月) 16:16:39

ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン
小路 幸也
集英社
売り上げランキング: 15,459

若き日の堀田我南人はコンサート帰りに、ある女子高校生と出会った。名は秋実。彼女はアイドルとして活躍する親友・桐子の窮地を救うため、ひそかに東京に来たという。話を聞いた我南人と、古書店“東京バンドワゴン”の一同は、彼女のために一肌脱ぐが、思いもよらぬ大騒動に発展し…?下町の大家族が店に舞い込む謎を解決する人気シリーズ、番外長編


サチさんがちゃんと生きて動いていて、秋実ちゃんもいて、我南人はまだ二十歳そこそこの堀田家である。こんな景色を見られる日がくるなんて。このシリーズを読み続けていてよかった、と思わず嬉しくなってしまう。そして、周りの人たちをあっと驚かせる、一度であっちもこっちも片づけてしまう我南人の仕切りが、この頃からのものだったことがわかって、やはり天性のものなのだと腑に落ちる。いつもちゃらんぽらんな感じでしゃべっているのに、ときどき普通の話し方に戻ってしまう辺りも、可愛らしささえ感じてしまう。堀田家とその周りの人たちに、さらなるLOVEを感じる一冊である。

風とにわか雨と花*小路幸也

  • 2017/07/11(火) 10:49:17

風とにわか雨と花
風とにわか雨と花
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小路 幸也
キノブックス
売り上げランキング: 53,236

僕が九歳、風花(ふうか)ちゃんが十二歳になった四月にお父さんとお母さんは、リコンした。どうしてかって訊いたら「今は説明してもわからないと思うので、言わない」ってお母さんは言った――

専業作家を目指す父、仕事に復帰した母、小学生の姉と弟。
父が暮らす海辺の町を舞台にした、心温まる家族物語。
親子四人の心情の変化を、それぞれの視点から鮮やかに描く!


両親が離婚した一家四人の物語である。大人の都合――この場合主に専業作家を目指す父の我儘――で離ればなれで暮らさなければならなくなった父と姉弟、母と姉弟、そして喧嘩別れしたわけではない夫と妻、それぞれの関係や思いが、それぞれの視点で描かれている。家族以外の周りの大人たちにも示唆を得て、子どもたちはその年齢なりに自分の置かれている状況や父と母の生き方を理解しようとし、父と母も、お互いを、そして子どもたちを大切に思いながらも、それぞれの道を前を向いて歩こうとしている。こんなに互いを思いやってしあわせそうなのに、なぜ?とどうしても思ってしまうが、それはこの家族の問題なのだろう。離婚という悲しい題材を扱いながらも、胸のなかがあたたかさで満ちてくる一冊である。

家族はつらいよ 2*小路幸也

  • 2017/05/14(日) 18:34:52

家族はつらいよ2 (講談社文庫)
小路 幸也 平松 恵美子
講談社 (2017-03-15)
売り上げランキング: 170,066

熟年離婚の危機を乗り越えた平田周造は、運転好きの頑固な高齢者。しかし自損事故をきっかけに、家族に「免許返納」を求められ憤慨する。そんな折、彼は高校時代の同級生と再会し、互いの境遇の違いを実感させられるのだった。「男はつらいよ」の山田洋次監督が描く新作喜劇映画シリーズ、小説化第2弾!


平田家の家族それぞれが語る平田家の日常のあれこれ。その人なりの日々語りをつなぎ合わせると、平田家の全体像が見えてくる。高齢になった平田周造に運転をやめさせようという目論見が大きな流れだが、そこにさまざまな事情が絡んできて、流れがあちこちに派生していくのも愉しい。結局周造の運転はどうなるのか気になる一冊でもある。