シューカツ!*石田衣良

  • 2009/05/20(水) 16:57:21

シューカツ!シューカツ!
(2008/10)
石田 衣良

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仕事も会社も、わからない。でも今、闘うしかないんだ。水越千晴、鷲田大学三年生。仲間七人で「シューカツプロジェクトチーム」を結成した。目標は全員で、最難関マスコミ合格。


我が子がまさに物語の主人公たちと同じ大学三年生で、シューカツ中!、ということで興味を持ち、図書館に予約を入れたのだが、かなり待たされているあいだに、息子は四年生になり、シューカツも終わってしまった。
物語の主人公たちは、私大の雄ともいわれるマンモス大学・鷲田大学の学生であり、そもそも優秀であり、その上OBOGはどこの企業にもほぼ間違いなくいる等、就職活動においては恵まれた環境にある。しかも、志望はマスコミ関係という花形企業である。ごく普通の大学生に当てはめるのには無理がある気がしなくもない。だが、就職活動に臨む心意気や、思い入れ、緊張感や、自分という人間を全否定されたような挫折感などは、誰にも共通のものとしてよく描かれていると思う。
これは、シューカツ!の物語なので、学業に関してはほとんど触れられていないが、実際の大学三年生は、就職活動をしつつ、きちんと講義も受ければ、試験だってあり、サークル活動もしているのである。

空は、今日も、青いか?*石田衣良

  • 2006/08/13(日) 17:00:39

☆☆☆・・

空は、今日も、青いか? 空は、今日も、青いか?
石田 衣良 (2006/03/16)
日本経済新聞社

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階層社会、少子化、テロ、転職時代の風がどんなに冷たくても、ぼくらは一度きりの「今」を生きるんだ。道に迷ったあなたに贈る、やさしく、力強いメッセージ。「R25」と日経夕刊の好評連載がまとめて読める!

石田衣良、待望の初エッセイ。


初エッセイだったんですね。 ちょっと意外でした。
大上段に構えた物言いではなく、隣のお兄さんがちょっとひと言アドバイスしてくれるような、親しみやすいエッセイだったように思う。 それでいて、経済界やIT業界に対しては、結構はっきり異論も唱えている。 
章の区切りごとに差し挟まれている空の写真がとても好い。

40 フォーティー 翼ふたたび*石田衣良

  • 2006/08/07(月) 18:10:40

☆☆☆☆・

40 翼ふたたび 40 翼ふたたび
石田 衣良 (2006/02)
講談社

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40歳から始めよう。
人気作家が初めて描く同世代のドラマ。
著者、会心の長編小説が誕生!

人生の半分が終わってしまった。 それも、いいほうの半分が。
投げやりに始めたプロデュース業で、さまざまな同世代の依頼人に出会い変身する吉松喜一、40歳。
生きることの困難と、その先の希望を見つめた感動作!
  ――帯より


大手の代理店を辞め、先輩の興した会社に入るも肌が合わず、“40歳から始めよう”を合言葉に 一匹狼でプロデュース業をはじめたはいいが、事務所も間借り状態。 少しでも知名度を上げようとかき始めたブログを更新する毎日だった。 たまに飛び込んでくる仕事は、ブログを見た人たちからの プロデュースとは関係のない雑多な仕事だけ。 暇を持てあましていることもあり 仕方なしにそれらの依頼を引き受けているうちに、喜一自身が少しずつ変わってくる。 そして最後には、新雑誌のお披露目イベントのプレゼンに勝ち残り、登場人物が勢ぞろいしてイベントを行ってしまうのである。
物語の筋の流れは、くさい青春ドラマっぽいと言えなくもないのだが、分別盛りの40歳の男たちが悩み涙する姿に爽やかさすら覚えるのである。

まだ青春のさなかにある人間はいうかもしれない。夢も希望もない人生なんて生きる意味がない。だが、それが違うのである。ほんとうは自分のものではない夢や希望によって傷つけられている人間がいかに多いことか。本心では望んでいないものが得られない。そんなバカげた理由で不幸になっている者も、この世界には無数にいるのだ。
余計な荷物を全部捨ててしまっても、人生には残るものがある。それは気持ちよく晴れた空や、吹き寄せる風や、大切な人のひと言といった、ごくあたりまえのかんたんなことばかりだ。そうした「かんたん」を頼りに生きていけば、幸せは誰にでも手の届くところにあるはずだ。


という喜一がブログに書いた一文が印象的だった。

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娼年*石田衣良

  • 2006/07/08(土) 17:07:06

☆☆・・・

娼年 娼年
石田 衣良 (2001/07)
集英社

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二十歳の大学生リョウは、高級デートクラブで男娼として働き始める。ミステリアスな美しい経営者。夜ごと彼を求める女たち。ある一線を越えたとき、彼が見るものは!? 新鋭が描く性愛の極致。


やっぱりこの手のものは好みじゃないなぁ。
リョウくんのまとう雰囲気は嫌いではなかったし、母を失ったいきさつには同情すべきところもないわけではないのだが、それでもやはり好きにはなれない物語だった。

うつくしい子ども*石田衣良

  • 2006/03/16(木) 12:42:35

☆☆☆・・



弟はなぜ殺したんだろう?
13歳の弟は猟奇殺人犯!?
14歳の〈ぼく〉の孤独な闘いが始まった。
今を生きる子どもたちの光と影をみずみずしく描く問題作!
  ――帯より


科学学園都市として知られるニュータウン東野市夢見山で小学3年の女児が行方不明になり、間もなく奥ノ山の自然保護課の用具小屋で惨たらしい死体で見つかった。
そしてあろうことか身柄を確保された犯人は13歳の中学生だった。

夢見山中学2年の三村幹生を語り手とする章と朝風新聞の記者・山崎を語り手とする章がほぼ交互に繰り返される。
幹生の章では、世間の目やマスコミの報道に翻弄される犯人の兄としての幹生と友人たちとの関係や、犯人である弟の心の動きを探る過程が描写され、山崎の章では、警察の動きや記者としての葛藤が描かれる。そして二つが次第に重なりラストへと上っていくのである。

『うつくしい子ども』というタイトルのなんと皮肉なことだろう。
姿形の美しさ、親の言うことをよく聞きすくすくと健やかに真っ直ぐ育っている美しさ。そしてその美しさの仮面に隠された闇の顔。
起きてしまったことの残虐さとその動機の儚さとのギャップには胸を塞がれる思いがするが、兄として、揺れることはあっても何とかして弟の心に寄り添おうとする(姿形の美しくない)幹生の行動の勇気には胸を打たれる。

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スローグッドバイ*石田衣良

  • 2006/02/09(木) 22:11:13

☆☆☆・・



表題作のほか、
泣かない・十五分・You look good to me・フリフリ・真珠のコップ・
夢のキャッチャー・ローマンホリデイ・ハートレス・線のよろこび。

どっぷりと恋愛小説。隅から隅までお互いを知り、足りない部分を埋めるように互いを求める季節から、愛で隙間が埋められた後にできた余分のような飽和状態の鬱陶しい切なさへ。そしてその逆も。恋愛というものの 底の知れなさ、明日の知れなさが これでもかというほど描き尽くされている。
恋愛小説はちょっと苦手なのだが、そんななかで『ローマンホリデイ』は少し異色。ネットの掲示板で知り合った男女が実際に会う物語である。21歳大学生のはずの女性が実は72歳だったのだが、ありがちな話 にはならず、それを知ったときの男性・瑞樹のとった行動が自然で好もしかった。

てのひらの迷路*石田衣良

  • 2006/02/07(火) 17:16:46

☆☆☆・・



耳元で囁くように書きました。

石田衣良のパーソナルな声がきこえてくる。
贅沢な、贅沢な24篇のショートショート。
24のまえ書きつきです。
  ――帯より


添えられている石田衣良としての小さな前書きが、続く小さな本編を引き立たせている。
それぞれの掌編はノンフィクションではないのだが、実際に著者自身に起こったことや体験したことが下敷きとされ 色濃く現われているのが この前書きによってよくわかる。

タイトルのてのひらの迷路とは、世界に二つと同じ物はないという≪掌紋≫のことだが、それに因んだと思われる表紙の拇印は石田衣良さんご本人のものだろうか。

蛇足だが、石田衣良さんの筆名の由来を初めて知った。

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池袋ウエストゲートパーク*石田衣良

  • 2006/01/20(金) 17:41:39

☆☆☆・・



池袋西口公園、この辺りの少年たちは池袋ウエストゲートパークと呼んでいる。舞台はタイトルの通り池袋。そこで暮らし遊ぶ少年たちの闘いの物語、とでもいうのだろうか。主人公・真島誠はある事件がきっかけで自分たちの池袋の平和を守ろうという使命感を抱き、具体的に自分にできることは何かと考えて解決していく。
物語はテンポも良く、誠の熱い想いにも共感できるのだが、わたしは基本的に不良少年――十把一絡げにしてはいけないことは承知の上で――をヒーローのように扱うことに違和感があり好きではないので、のめり込むことはできなかった。IWGPファンの方々からはブーイングの嵐かもしれないが。

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東京DOLL*石田衣良

  • 2005/10/08(土) 21:19:02

☆☆☆・・



 わたしは、恋する人形。

 「ねぇ、MG。人形はどうするか、知ってる。
 人形はうんともてあそばなきゃいけないよ」

 青く透明なビルと虚ろさが混在する東京湾岸――
 石田衣良がハードにシャープに描く
 パーフェクトな人形に恋をした男の物語。
         (帯より)


ゲームクリエィターのMG(マスター・オブ・ゲーム) こと相楽一登は、≪女神都市(ヴィーナスシティ)≫の原案を練っているさなか、コンビニでレジを打つ水科代利(みずしなより)に出会う。
完璧ともいえるバランスを持つその姿は、MGの創作意欲に火を点けたのだった。
東京の街で 場所を替え衣装を替えて代利を撮影するうちに、いつしかMGにとって代利はなくてはならないものになってゆく。

三角関係だか四角関係だか、愛情関係ももつれているし、大会社の圧力や正々堂々とは言えない引き抜きの気配があったりもして、状況はかなりごたごたしているのだが、それにもかかわらず、全編を通して 光を弾く硬質な雰囲気が流れつづけ、人の想いの熱さがカプセルに包まれているかのようにじかに伝わってこないのは著者の意図なのだろうか。
まさにバーチャルリアリティの世界を見ているようだった。

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4TEEN*石田衣良

  • 2005/06/13(月) 11:28:28

☆☆☆・・


 14歳は、空だって飛べる。
 スカイラインを切り取る超高層マンション、
 路地に並ぶ長屋ともんじゃ焼きの店。
 〈きのう〉と〈あした〉が共存するこの町、月島で、
 ぼくたちは、恋をし、傷つき、旅にでかけ、死と出会い、
 そしてほんの少しだけ大人になっていく――。
 14歳の4人組が一年間に出会った8つの物語を鮮やかに描いて、
 〈いま〉を浮き彫りにする青春ストーリー。
  (帯より)


まだまだ子どもで、それなのに大人の世界にどの時期よりも強く憧れる14歳の少年たちの物語である。
14歳とは、未来はいくらでも広がっていて、けれど自分がいる未来をまだ上手く思い描くことはできず、大人と子どもの境界を行きつ戻りつ揺れながら一日一日を目一杯に過ごす年頃ではないだろうか。

純真で、優しく、率直で残酷で、臆病なくせに好奇心のかたまりである14歳という一年間が、なんと過不足なく描かれていることだろう。
読者は(特に昔少年だった)あっというまに14歳の日々に引き戻されること請け合いである。

そしてまた、町の描写も見事である。
月島が、銀座が、新宿が生きているのだ。まさにいま、4人の少年が自転車で走り回っているような気がするほどに。

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エンジェル*石田衣良

  • 2005/05/01(日) 20:44:38

☆☆☆・・


 死後ぼくはしあわせだった。彼女に出会うまで。
 記憶喪失の幽霊が「自分自身の殺人事件」の謎に挑む
 ファンタジック・ミステリ!

 人生最大の決断は、「死後」に待っていた!
 夏の夜、自分自身の埋葬を目撃した掛井純一は、何物かに殺され
 「幽霊」として蘇った。失われた記憶と自らの死の謎を追って、
 欲望と計算にまみれた現世の人間を探偵していく。
 縁を切った資産家の父、父代わりの弁護士、映画界の巨匠、
 ヤクザ風の男たち、そして一目で見せられた女優の卵・・・・・。
 死後の恋を守り、すべての謎が解けた夜明け、
 死者の「生命」を賭けた究極の選択が、純一に迫る!

                     (帯より)

タイトルの「エンジェル」は
天に召された神の子である天使ともうひとつの意味とを掛けているのだろう。
もうひとつの意味とは、経営学で言う≪ベンチャー企業の創業時に立ち上がりのための資金=シードマネーを提供し、創業を援助する個人投資家≫のことなのである。

幽霊になった純一の魂が、母の胎内にいるときまで戻り、自分がこの世に生まれ出る瞬間を確かな意識で体験し、時間を追って次々に追体験する場面は、泣きたいほど切なくさえある。
本当に信頼できるものは何か、人生において タイミングがなんと大きな部分を占めるものであるのか、そして、最後になすべきは何か。
ありがちな結末ではあるかもしれないが、それこそが、あるべき結末なのだという思いでもある。

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1ポンドの悲しみ*石田衣良

  • 2005/04/20(水) 20:29:48

☆☆☆・・


 ふつうの恋のちいさな火花
 日常に舞い降りた一瞬のときめき10drops

                  (帯より)

30代の恋愛、しかも特別ではない普通の人たちの恋愛模様を描いた10の短編集。

恋愛にマニュアルはないので、どの恋愛もその二人にとっては独創的な唯一のものなのだ。
そんな星の数ほどもある恋愛模様の中から10のエピソードが選び出されたのがこの一冊だろう。
恋愛の教科書にはならないが、どの物語にもはっとさせられることがある。

アキハバラ@DEEP*石田衣良

  • 2005/01/22(土) 09:08:22

☆☆☆☆・

アキハバラ@DEEP アキハバラ@DEEP
石田 衣良 (2006/09)
文藝春秋

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 未来に変身!  裏アキハバラ電脳戦争

 コスプレ喫茶のアイドル・不潔恐怖症のWebデザイナー・
 中卒の天才プログラマー・・・・・。
 病気のおたく青年たちが、裏アキハバラで出会ったとき、
 ネットの世界に革命を起こすeビジネスが始まった!


                           (帯より)


ひとりずつだと何もできない 能力はあるが社会システムに適応できないおたく青年たちが、ネットの悩み相談サイトを通じて出逢ったことがそもそもこの物語の種となったのである。

語るのは彼らが後に生み出した電脳世界の人格を持ったAI(人工知能)なのだ。彼は、21世紀初頭に出逢い、アキハバラ@DEEPというIT会社を興したおたく青年たちを≪父たちと母≫と呼ぶ。

アキハバラというITの先端を行きながら なにか特別な雰囲気を持つ街とそこに吸い寄せられるように集まる独特の匂いを持つ若者たち、というイメージからは想像もできないほど 読後感は爽やかである。

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約束*石田衣良

  • 2005/01/16(日) 08:59:09

☆☆☆☆・




 かけがえのないものを失くしても、
 いつか人生に帰るときがくる――。
 喪失によって止まった時間が、ふたたび流れ出すときを描く、
 “バック・トゥ・ライフ”――珠玉のセブン・ストーリーズ。
  
                           (帯より)


あとがきで 表題作は池田小学校の事件をきっかけにして出来上がったものであり、生き残った子どもたちにエールを送り、なくなった子どもたちの魂を鎮めるために、自分になにかできないかと真剣に考えた末に生まれたものなのである。

7つの物語のどれもが深く傷つき 動きを止めた時間を 流れ出させるあたたかさを描いて妙である。
涙なしには読めない一冊だ。

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波のうえの魔術師*石田衣良

  • 2004/12/25(土) 08:18:53

☆☆☆・・


 世界は、(マーケット)だ!
 あやしげな老紳士と就職浪人の青年が手を組んで、
 預金量第三位の大都市銀行をはめ殺す!
 知略の限りを尽くした「五週間戦争」の果てに待つものは・・・・。
                          (帯より)


パチンコ屋に通い詰める就職浪人の白戸則道は、ひとりの老人に目をつけられた。小塚というその老人は、予め白戸の身元を調べた上である日彼に声をかける。
それが、すべての筋書きの始まりだった。
波、とは マーケットのことである。そして、波のうえの魔術師とは 他ならぬ小塚老人のことなのである。
コンピュータにもできないマーケットの流れを見事に予想し、小塚が成し遂げたのは 愛 なのかもしれない。
冒険の旅に出た少年たちのような老人と青年のマーケットの旅をわくわくどきどき共に楽しめた一冊だった。