FC2ブログ

ワーキング・ホリデー*坂木司

  • 2007/10/27(土) 13:54:06


ワーキング・ホリデーワーキング・ホリデー
(2007/06)
坂木 司

商品詳細を見る

息子と過ごすために、ホストから「ハチさん便」ドライバーへ。正義感の強い元ヤンキー父とおばちゃん臭い少年のハートフルな物語。


ホストをしている大和のところに突然やってきた小学五年の男の子・進。しかも、大和が自分の父親だと言う。身に覚えのないわけではない大和は、渋々ながら夏休みを進と過ごすことになる。それと同時に、ホストクラブのおかまママ・ジャスミンの計らいでハニービー・エクスプレス(通称ハチさん便)という宅配便会社で働くことになったのだった。
ハチさん便の同僚やお客さん、進とその友だちなどさまざまな人たちを巻き込むひと夏は、誰にとっても"熱い"夏になったのだった。
ありがちで泣かせる設定なのだが、そこが――というかそれだからこそ――イイのである。大和のだらしなさも、進のおばさんぽさも、ジャスミンママの計らいも、雪夜とナナのお節介も。どれもが絶妙で、ほろりとさせられるのである。大和が汗だくで引くハニービー・キャリー(実はリアカー)にもし町なかでであったら、思わず冷たい缶ジュースを差し出してしまいそうである。

> more >>>

シンデレラ・ティース*坂木司

  • 2006/10/11(水) 17:15:55

☆☆☆☆・

シンデレラ・ティース シンデレラ・ティース
坂木 司 (2006/09/21)
光文社

この商品の詳細を見る

サキは大学二年生。歯医者が大嫌いなのに、なぜかデンタルクリニックで受付アルバイトをすることになって…。個性豊かなクリニックのスタッフと、訪れる患者さんがそれぞれに抱えている、小さいけれど大切な秘密。都心のオフィス・ビルの一室で、サキの忘れられない夏がはじまる。

じっと我慢していても、夏は動かない。歯も治らない…。個性豊かなデンタルクリニックのスタッフと、訪れる患者さんたちがそれぞれに抱えている、小さいけれど大切な秘密。都心の歯科医を舞台にした、ひと夏の青春小説。


表題作のほか、「ファントムvs.ファントム」「オランダ人のお買い物」「遊園地のお姫様」「フレッチャーさんからの伝言」という 歯医者さんがらみの連作。

子どもの頃初めて行った歯医者さんでとんでもなく怖い思いをした咲子はそれからすっかり歯科医恐怖症になってしまい、しっかり歯磨きをして虫歯を作らないようにして歯医者には近寄らないようにして大学二年の今に至っている。そんな夏休み、咲子は母にある受付のアルバイトの話を持ちかけられ、何の受付なのか知らないままでその場所まで行ったのだったが、なんとそこは「品川デンタルクリニック」という紛れもない歯医者だった。
品川デンタルクリニックは、エステサロンのような趣の歯医者で、診察券をメンバーズカード、患者をお客様と呼び、院長はじめスタッフがみな個性的なのである。そして、それぞれが個性的なのにぶつかり合わず 補い合って和みの雰囲気を醸し出している。咲子もサキと呼ばれ、みんなと親しんでいくうちに、歯科医の内側や想いに触れ、少しずつ変わっていく。
それだけでも充分たのしく読めるのだが、さらにその上に毎回日常の謎ならぬ 歯医者がらみの謎が提供され、いつも粉にまみれている歯科技工士の四谷の「歯に聞いてみる」謎解きが、歯科の現場ならではで一層興味をそそられる。

咲子の親友のヒロちゃんはこの夏は沖縄でアルバイトをしており、なにかあると咲子も電話で相談したりしているのだが、ヒロちゃんの側の物語も近々読むことができるらしい。こちらもたのしみである。

> more >>>

動物園の鳥*坂木司

  • 2005/11/03(木) 22:09:50

☆☆☆☆・



鳥井と坂木のシリーズ第三弾にして最終章。
前作までの知り合いである下町の職人・木村栄三郎翁の紹介で、その友人の高田安次郎さんが持ち込んだ相談事がメインの物語である。
安二郎さんがボランティアとして働いている動物園で このところ危害を加えられた野良猫が何匹も見つかっており、同じボランティア仲間の若い女性・松谷明子さんが気に病んでいるので、何とか犯人を見つけてもらえないだろうか、というのだった。
様子を見に行った動物園で、坂木はある人物に声をかけられる。彼は鳥井を今のような状態に追い込んだ元凶となる男・谷越だった。
中学時代 嫌な奴だった谷越は今も相変わらず嫌な奴で、この物語にはなくてはならない登場人物でもあるのだが...。

相変わらず鋭い観察眼と推理力を発揮して、頼まれたことはもちろん 頼まれもしないことまで見事に解決して見せた鳥井だったが、そんな彼の様子を見、自分と鳥井の関係を思い、坂木が最後に下した決断は、鳥井にとってはあまりにも唐突なものだったことだろう。ノックに応えてドアを開けたときに鳥井がどんな顔をしてそこにいるかを想像すると胸がいっぱいになる。
シリーズはこれで終わりだが、ほんとうの鳥井と坂木の物語はこれからはじまるのだろう。


> more >>>

切れない糸*坂木司

  • 2005/10/20(木) 21:34:54

☆☆☆☆・



 俺、新井和也。家は商店街によくある町のクリーニング屋さ。
 新井と洗いをかけた「アライクリーニング店」が屋号。
 年じゅうアイロンの蒸気に包まれて育った俺は、超寒がりときている。
 大学卒業をひかえたある日、親父が急死した。
 就職も決まっていない俺は、仕方なく家業を継ぐことに。
 大ざっぱな性格の母親、アイロン職人のシゲさん、そして長年
 パートとして店を盛り立ててくれている松竹梅トリオの松岡さん、
 竹田さん、梅本さんに助けられ、新たな生活がスタートしたんだ。
 目下のところクリーニング品の集荷が、俺の主な仕事。
 毎日、お得意さんの家を訪ねては、衣類を預かってくるというわけ。
 ところが、あるお得意さんから預かった衣類は・・・・・。
  (見返しより)


日常ミステリ、というか商店街ミステリである。
和也と友人で喫茶店のバイトの沢田の関係は、『青空の卵』の坂木と鳥井の関係と とてもよく似ている。和也が相談を持ちかけ、話を聞いた沢田が推理し、魔法のひと言を謎の当事者に向かって和也に言わせることで謎解きのきっかけを作るのだ。まるで坂木と鳥井の手順を見ているようである。
それなのに別のものとして愉しめるのは、生まれてからずっと商店街に暮らす和也をとりまく良くも悪くも濃密な人間関係や、充分に分かり合えるまえに急死した父親に対する気持ち、そして、困った顔をした生き物に擦り寄ってこられる和也の性質と、唯一そんな彼が困った顔で相談できる沢田との関係が魅力的だからだろう。
また、この物語がやさしさに包まれている心地がするのは、謎を解いた時点で≪めでたしめでたし≫と その人との関係を断つのではなく、その先にまでも心を配り、その後をまでも見守って よい関係を築いているからなのだろう。
遠くても近いと思える切れない糸を持てた者はしあわせである。


> more >>>

仔羊の巣*坂木司

  • 2005/08/10(水) 17:21:15

☆☆☆・・



 僕、坂木司とひきこもりの友人、鳥井真一との間にも、変化の兆しはゆっくりと、
 だが確実に訪れていた。やがていつの日か、友が開かれた世界に向かって
 飛び立っていくのではないか、という予感が、僕の心を悩ませる。
 そんな僕の同僚、吉成から同期の佐久間恭子の様子が最近おかしい、と相談されたり、
 週に一回、木工教室の講師をするようになったという木村さんからの誘いで、
 浅草に通うことになった僕たちが、地下鉄の駅で駅員から相談を受けたり、
 と名探偵・鳥井真一の出番は絶えない。
 さらには、僕の身辺が俄に騒がしくなり、街で女の子から襲撃されることが相次ぐ。
 新しく仲間に加わった少年と父親との確執の裏にあるものとともに、
 鳥井が看破した真実とは・・・・・?
 『青空の卵』で衝撃のデビューを飾った坂木司の第二作品集!
  (見返しより)


坂木と鳥井のシリーズ第二弾である。
ひきこもりの鳥井が坂木によってじりじりと少しずつ外に開かれてゆくのは、嬉しくもあり、淋しくもある。どうしても、坂木の心持ちになって読んでしまうのである。
あとがきで、はやみねかおる氏が書くように、前作『青空の卵』とこの『仔羊の巣』はタイトルからして 卵から巣へと世界を広げているのだが、巣の外へ出たときに鳥井を待っているものが何かを想うと、ただ手放しで喜ぶわけにもいかないことに気づいて茫然としてしまう。
どうか彼の出会う外の世界が少しでもやさしいものでありますように、と祈るしかない。
この物語だけでも充分に愉しめるが、『青空の卵』から読みはじめると坂木と鳥井に対する思い入れは倍増するだろう。

青空の卵*坂木司

  • 2005/08/01(月) 20:43:03

☆☆☆・・

青空の卵 青空の卵
坂木 司 (2002/05)
東京創元社

この商品の詳細を見る

 僕は坂木司。外資系の保険会社に勤務している。
 友人の鳥井真一はひきこもりだ。プログラマーを職とし、料理が得意で、
 口にするものは何でも自分で作ってしまう――それもプロ顔負けの包丁さばきで。
 要するに外界との接触を絶って暮らしている鳥井を、何とか社会に引っ張り出したい、
 と僕は日夜奮闘している。そんな僕が街で出合った気になること、不思議なことを
 鳥井の許に持ち込み、その並外れた観察眼と推理力によって
 縺れた糸を解きほぐしてもらうたびに、友人の世界は少しずつ、でも確実に
 外に向かってひろがっていくのだった・・・・・!?
 気鋭の新人による書き下ろし連作推理短編集。
      (見返しより)


著者がモデルかどうかは定かではないが、同名の坂木司が主人公である。
鳥井真一とは中学時代からの友人であり、いまや、互いになくてはならない存在なのだ。
彼らが親友同士というものになった経緯からしてありふれてはいないのだが、大人になってからの関係もそれから引き続いて一般的ではない。
けれども、とても純粋で確かな関係なのだ。妬けちゃうくらい。
そして、ひきこもりの鳥井の見事な推理と洞察力は、坂木が持ち込む日常の謎をいともあっさりと解き明かしてしまう。
鳥井と坂木の二人きりの閉ざされた関係と、彼らそれぞれの魅力と、周りに集まってくる人たちの魅力とが撚り合わされて素敵な人間関係が繋がっていくのとが 対照的なのにとても自然で、それがまた物語の面白さに繋がっているのかもしれない。

> more >>>