女子的生活*坂木司

  • 2017/01/08(日) 13:47:36

女子的生活
女子的生活
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坂木 司
新潮社
売り上げランキング: 68,055

都会に巣食う、理不尽なモヤモヤをぶっとばせ! 読めば胸がスッとする、痛快ガールズストーリー。ガールズライフを楽しむため、東京に出てきたみきは、アパレルで働きながらお洒落生活を満喫中。マウンティング、セクハラ、モラハラ、毒親……おバカさんもたまにはいるけど、傷ついてなんかいられない。そっちがその気なら、応戦させてもらいます! 大人気『和菓子のアン』シリーズの著者が贈る、最強デトックス小説。


主人公のみきは、躰は男性、心は女性、しかも恋愛対象は女性という性的マイノリティとして、東京のアパレル関係のブラック企業で働いている。ブラックではあるのだが、自身にとってはある意味快適な職場環境ではある。職場の同僚たちにはカミングアウト済み。そんな同僚たちとの付き合いや、合コンにおける立ち位置、それぞれの女子たちの日々の闘いをそっと応援したくなる。もちろんみきもである。突然転がり込んできてなし崩し的にルームシェアすることになった中学の同級生の後藤の男のステレオタイプの見本のような行動様式にイライラさせられたり、合コン相手の反応に怒りまくったりするものの、案外いまがしあわせなんじゃないかとも思わせてくれる。考えさせられる面もあり、爽快な面もあり、これからのみきの人生をもっと見ていたいと思わされる一冊である。

アンと青春*坂木司                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              アンと青春*坂木司                                                                             

  • 2016/04/27(水) 18:51:04

アンと青春
アンと青春
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坂木 司
光文社
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ある日、アンちゃんの手元に謎めいた和菓子が残された。これは、何を意味するんだろう―美人で頼りがいのある椿店長。「乙女」なイケメン立花さん。元ヤン人妻大学生の桜井さん。そして、食べるの大好きアンちゃん。『みつ屋』のみんなに、また会える。ベストセラー『和菓子のアン』の続編。


「空の春告げ鳥」 「女子の節句」 「男子のセック」 「甘いお荷物」 「秋の道行き」

待ちに待った続編である。またアンちゃんやみつ屋の立花さん、椿店長、桜井さんに会えて嬉しくてたまらない。アンちゃんも、相変わらず自分の存在にいまひとつ自信を持てずにいたりはするが、それでも疑問に思い、自分で調べて対処しようとする姿には成長が感じられる。ふと発せられた言葉の端から、起こっていることの問題を拾い上げ、核心に迫って解決策を導き出す。誰かに助けを求め、誰かと話すことからヒントを掴んで、少しでも良く在りたいとしている姿は、きっと誰でも応援したくなる。ただ、今回は、立花さんとの関係が、ちょっとうまくいっていない。どこか歯車がかみ合っていないのである。その原因はおそらく立花さんの側にあって、次回作で進展があるのだろう。早く続きが読みたいシリーズである。そうそう、出てくるお菓子もどれもおいしそうで、口の中によだれが……。

何が困るかって*坂木司

  • 2015/01/13(火) 07:20:13

何が困るかって何が困るかって
(2014/12/12)
坂木 司

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子供じみた嫉妬から仕掛けられた「いじわるゲーム」の行方。夜更けの酒場で披露される「怖い話」の意外な結末。バスの車内で、静かに熾烈に繰り広げられる「勝負」。あなたの日常を見守る、けなげな「洗面台」の独白。「鍵のかからない部屋」から出たくてたまらない“私”の物語―などなど。日常/非日常の情景を鮮やかに切り取る18篇を収録。


著者の作品としては珍しいテイストである。読み始めて、「え?ほんとうに坂木さん?」と表紙を見直してしまう感じ。ひとつひとつの物語はとても短く、あっという間に読めてしまいはするのだが、喉越しはまったく滑らかではなく、どこかにちいさな何かが引っかかっているような居心地の悪さが残りもするのである。かと言って腑に落ちないわけではなく、「あるある」的な納得感も満載なのだから不思議である。強いて言えば、日常に潜むホラーのような怖さだろうか。気づかずに通り過ぎてしまえばどうということもないのに、一旦気づいてしまったら最後、足が竦んでしまうような。そんな中に、じんわりあたたかい気分になる物語が紛れ込んでいたりもして、絶妙な一冊である。

肉小説集*坂木司

  • 2014/12/13(土) 07:35:10

肉小説集肉小説集
(2014/11/01)
坂木 司

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豚足×会社を辞めて武闘派として生きる元サラリーマン。ロースカツ×結婚の許しを得るべくお父さんに挑むデザイナー。角煮×母親に嫌気がさし、憧れの家庭を妄想する中学生。ポークカレー×加齢による衰えを感じはじめた中年会社員。豚ヒレ肉のトマトソース煮込みピザ風×片思いの彼女に猛アタックを試みる大学生。生ハム×同じ塾に通う女の子が気になる偏食小学生。肉×男で駄目な味。おいしくてくせになる、絶品の「肉小説」


「武闘派の爪先」 「アメリカ人の王様」 「君の好きなバラ」 「肩の荷(+9)」 「魚のヒレ」 「ほんの一部」

表紙は、よくお肉屋さんにある豚の部位別名称のイラストである。そして内容も、その部位別の物語になっている。ごりごりだったり、ぎとぎとだったり、ほろほろだったり、噛み切れなかったり。味わいも噛み応えもさまざまであるが、どの物語にもいささかの情けなさやほろ苦さや哀しみが漂っている。だが最後には胃の腑に沁み渡るやさしさに変わるのである。坂木流豚肉料理といった風味の一冊である。

ホリデー・イン*坂木司

  • 2014/07/30(水) 13:16:37

ホリデー・インホリデー・イン
(2014/05/27)
坂木 司

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「初めまして、お父さん」。
元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の登場で一変! 思いもよらず突然現れた息子と暮らすことになった大和は、宅配便会社「ハニー・ビー・エクスプレス」のドライバーに転身するが……荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続。宅急便会社の仲間や、ホストクラブの経営者で女装のジャスミン、ナンバーワンホストの雪夜らをも巻き込んでの大騒動を描いた『ワーキング・ホリデー』が刊行されたのは2007年。2012年にはその後の大和と進の物語を書いた『ウィンター・ホリデー』が、同年には『ワーキング・ホリデー』が映画化され、人気となっている「ホリデー」シリーズから誕生した、初のスピンアウト短編集が本作『ホリデー・イン』である。
今回は親子の物語ではなく、彼らを取り巻く愛すべき人々のもうひとつの物語。ジャスミン、雪夜、進らそれぞれを主人公にした6編が収録された。
01「ジャスミンの部屋」 …… クラブ経営者が拾った謎の中年男の正体は?
02「大東の彼女」 …… お気楽フリーターの大東の家族には実は重い過去があった
03「雪夜の朝」 …… 完璧すぎるホストの雪夜にだってムカつく相手はいるんだ!
04「ナナの好きなくちびる」 …… お嬢様ナナがクラブ・ジャスミンにはまった理由
05「前へ、進」 …… まだ見ぬ父を探し当てた小学生の進の目の前には――
06「ジャスミンの残像」 …… ヤンキーだった大和とジャスミンの出逢いの瞬間
どの作品も登場人物たちの過去の秘密を明かしつつ、ハートウォーミングな結末は読者を暖かな気持にしてくれる。『和菓子のアン』で大ブレイク中の坂木さんの、さらなる魅力を惹き出すお洒落な作品集だ。


ジャスミンさん、知れば知るほど哀しくて切なくて、しあわせで愛すべきキャラクタである。惚れてしまいそう。そして、登場人物の誰もが、何かしらの屈託を抱えながら、拾われたり、偶然だったり、事情は違うがジャスミンさんの元に集まっている。いましあわせなことがなぜか哀しく感じられ、鼻の奥がつんとしてくる。それぞれの過去を知ることで、お互いの関係により深みが増すように思えるのが嬉しくもある一冊である。

大きな音が聞こえるか*坂木司

  • 2013/01/06(日) 17:04:06

大きな音が聞こえるか大きな音が聞こえるか
(2012/12/01)
坂木 司

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八田泳、高校一年生。そこそこ裕福でいわゆる幸せな家庭の息子。帰宅部。唯一の趣味はサーフィン。凪のように平坦な生活に自分を持て余している。だがそんな矢先、泳は製薬会社に勤める叔父がブラジル奥地へ行くと知らされた。さらにアマゾン川の逆流現象=ポロロッカで波に乗れるという情報を聞いて―小さな一滴が大きな波紋を生んでいく、等身大の成長物語。


温い毎日をなんとなく生きている泳は、それでもなんとなくは、いまのままではいけないような気分を抱えていた。いつもサーフィンをしに行く海には、仙人と呼ばれる人がいて、終わらない波に乗ったことがあるという。そんなとき、製薬会社に勤める母の弟の剛がブラジルに赴任し、アマゾンの奥地へ行くという。アマゾンには川を遡る巨大な波=ポロロッカがあるということを初めて知る。そのとき、泳のスイッチが入ったのだった。ポロロッカに乗りに行くために、バイトをして旅費を稼ぎ、両親を説得するところから、泳の新しい日々は始まった。友人の二階堂や、バイト先の人たちとの交流、家族の在りよう、クラスでの在り方。普通の生ぬるい高校生としての泳と、目的に向かって遮二無二進む泳とのギャップが微笑ましい。そしてアマゾンに行ってからの泳と、夢を叶えて帰国してからの泳の違いも著しく、その成長ぶりが頼もしくもある。それぞれの場所でそのときそのときで頑張る姿がとてもいい一冊である。

ウィンター・ホリデー*坂木司

  • 2012/02/29(水) 17:15:19

ウィンター・ホリデーウィンター・ホリデー
(2012/01)
坂木 司

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届けたい。間に合わないものなんてないから。一人から二人、そして…。父子の絆の先にある、家族の物語。父親は元ヤン・元ホスト・現宅配便ドライバー、息子はしっかり者だけど所帯じみてるのが玉にきずの小学生。冬休み、期間限定父子ふたたび。


前作『ワーキング・ホリデー』は夏休みだったが、今回は冬休み前からはじまる。大和はもうすっかり夏休みに突然現れた息子・進を待ちわびる父親である。今回も、場当たり的な大和としっかりものの進の好対照に苦笑いし、まだまだ回り道をしているようなところのある距離感をもどかしく思いつつ、父子の絆の深まりに胸を熱くするのだった。そしてなにより今回は、進の母・由希子との関係にも前回とはひと味違う進展――と言ってしまっていいであろう――があって、今後に期待が持てるのだった。大和や進を囲む個性は揃いの面々のあたたかな気持ちも変わらずにあって、読者もその一員になった心地で応援してしまうのである。まだまだもっともっと続きを読みたい一冊である。

和菓子のアン*坂木司

  • 2010/11/18(木) 19:41:15

和菓子のアン和菓子のアン
(2010/04/20)
坂木 司

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やりたいことがわからず、進路を決めないまま高校を卒業した梅本杏子は、「このままじゃニートだ!」と一念発起。デパ地下の和菓子屋で働きはじめた。プロフェッショナルだけど個性的な同僚と、歴史と遊び心に満ちた和菓子に囲まれ、お客さんの謎めいた言動に振り回される、忙しくも心温まる日々。あなたも、しぶ~い日本茶と一緒にいかがですか。


表題作のほか、「一年に一度のデート」 「萩と牡丹」 「甘露家」 「辻占の行方」

甘い香りが漂ってきそうな日常の謎の物語である。デパ地下和菓子店・みつ屋でアルバイトをすることになったアンちゃんこと梅本杏子が主役である。みつ屋のメンバーは、中身はオッサンかと思わせる椿店長に外見はイケメンなのに中身は乙女の菓子職人を目指す立花さん、アルバイトの先輩で元ヤンキーの桜井さんという個性的な面々だが、それぞれから学ぶことは多い杏子である。お店にやってくるお客さんの様子から、その抱える問題や悩みを推し量り、解きほぐしてしまう椿店長の細かい観察眼はお見事である。杏子も気づいたことを口にすることで、謎解きに一役買ったりもするようになる。みつ屋の面々のプロフェッショナルぶりとあたたかさが、登場する和菓子と共にほっと和ませてくれる一冊である。表紙のおまんじゅうを食べられないのが残念である。

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短劇*坂木司

  • 2009/05/13(水) 14:19:11

短劇短劇
(2008/12/17)
坂木 司

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たとえば、憂鬱な満員電車の中で。あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に掘られた穴ぼこの底で。聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。


26の短い物語集。
ちょっといい話もないわけではないが、全体のトーンはホラーとまでは言えないが、いささか薄気味悪い感じである。
暗闇に立てたろうそくを一本ずつ吹き消しながら、語って聞かせる百物語にも似合いそうな話も多い。
ひとつひとつの窓に、外からは窺い知れない物語が隠されている、と思わせられるような装丁もぴったりである。

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夜の光*坂木司

  • 2009/02/07(土) 08:24:06

夜の光夜の光
(2008/10)
坂木 司

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慰めはいらない。癒されなくていい。本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。

本当の自分はここにはいない。高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。家族、恋愛、将来……。問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。そしてそれは、本当に得難いことなのだ。


自分たちをスパイになぞらえ、自分に圧力をかけ、自分を追いつめる者たちと闘う高校生四人が、惹かれるように集まったのは、縛りのゆるい天文部という部活だった。彼らは、近からず遠からずの絶妙な距離感で、闘いの最前線にあってひとときの安息を得られる存在として、互いを認め合うのである。
通常彼らは、普通の高校生として生きているので、学園物としての一面もあり、日常の謎系のミステリも織り込まれていて、愉しませてくれる。
彼ら四人は、たまたま惹かれあってスパイとしての存在を認め合ったが、高校時代というのは、誰でも多かれ少なかれ同じような思いを抱く年頃なのではないだろうか。彼ら以外にも闘っている者はいたのかもしれない。そう思うと、同志とも言える仲間にめぐり合えた彼らは、しあわせなのだろう。
満天の星空を見上げながら野外料理を愉しむ彼ら流の観測会は、それぞれに足りないものを無言のうちに補い合うようで、胸をあたためてくれる。

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先生と僕*坂木司

  • 2008/02/12(火) 17:14:42

先生と僕先生と僕
(2007/12)
坂木 司

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「先生と僕」―2人が向かった書店でみかけたもの…?「消えた歌声」―推理小説研究会の仲間と行ったカラオケで…?「逃げ水のいるプール」―区民プールで働くクラスメートが…?「額縁の裏」―繁華街で無料の展覧会に誘われたら…?「見えない盗品」―ペット用品をネットで買おうとしたら…?(こわがりな大学生+ミステリ大好き中学生)×謎=名探偵。あなたのまわりのちょっとした事件。先生と僕が解決します。


僕:伊藤二葉、小心者の大学一年生。
先生:瀬川隼人、頭脳明晰・アイドル系の容姿のミステリ好き中学一年生、家庭教師募集中。

ひょんなことから大学の推理研究部に入部することになった二葉――殺人とか怖いことがで大の苦手――が、公園のベンチで江戸川乱歩の文庫本を読んでいたのが縁で、家庭教師を頼まれた。その相手が瀬川隼人だったのだ。条件は、二時間の持ち時間のうち半分は自習、残りは好きな本を読んだりミステリの話をしたりして過ごす、というものなのだった。
隼人は、事件の種をあちこちで見つけ、二葉を巻き込んで解決に乗り出すのである。
隼人の見た目と内実のギャップと 二葉の根っからの人のよさが、実年齢と逆転しているところが面白さを増している。新しいコンビ誕生、という感じ。
つづきはあるのだろうか。

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ホテルジューシー*坂木司

  • 2007/12/12(水) 13:07:01


ホテルジューシーホテルジューシー
(2007/09)
坂木 司

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大家族の長女に生まれた柿生浩美=ヒロちゃんは、直情で有能な働きモノ。だがこの夏のバイト先、ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。昼夜二重人格の“オーナー代理”はじめあやしげな同僚達や、ワケありのお客さんたちに翻弄される日々。怒りつつもけなげに奮闘するヒロちゃんにさらなる災難が…。注目の覆面作家がおくる、ひと夏の青春&ミステリ。


『シンデレラ・ティース』の姉妹作品。サキちゃんが苦手な歯医者さんでアルバイトしているそのとき、沖縄のホテルでアルバイトしていた友だちのヒロちゃんが本作の主人公である。
装丁からしてポークの缶詰である。まさにホテルジューシー――ジューシーは沖縄料理の炊き込みご飯や雑炊のことらしいが。
オーナー代理、お掃除係のクメばあとセンばあ、賄いの比嘉さん、そしてさまざまなお客さんたち。ひと癖もふた癖もある彼らとかかわり過ごすうちに、ヒロちゃんも少しずつ沖縄のときの流れに馴染んでいき、ひとつずつ人間というもののあれこれを学んでいくのだった。
夏休みがおわりに近づき、ヒロちゃんがホテルジューシーを離れなければならない日が近づいてくると、読者まで一緒になって離れがたい心持ちにさせられてしまう。それくらい心地好いホテルジューシーなのだった。

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ワーキング・ホリデー*坂木司

  • 2007/10/27(土) 13:54:06


ワーキング・ホリデーワーキング・ホリデー
(2007/06)
坂木 司

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息子と過ごすために、ホストから「ハチさん便」ドライバーへ。正義感の強い元ヤンキー父とおばちゃん臭い少年のハートフルな物語。


ホストをしている大和のところに突然やってきた小学五年の男の子・進。しかも、大和が自分の父親だと言う。身に覚えのないわけではない大和は、渋々ながら夏休みを進と過ごすことになる。それと同時に、ホストクラブのおかまママ・ジャスミンの計らいでハニービー・エクスプレス(通称ハチさん便)という宅配便会社で働くことになったのだった。
ハチさん便の同僚やお客さん、進とその友だちなどさまざまな人たちを巻き込むひと夏は、誰にとっても"熱い"夏になったのだった。
ありがちで泣かせる設定なのだが、そこが――というかそれだからこそ――イイのである。大和のだらしなさも、進のおばさんぽさも、ジャスミンママの計らいも、雪夜とナナのお節介も。どれもが絶妙で、ほろりとさせられるのである。大和が汗だくで引くハニービー・キャリー(実はリアカー)にもし町なかでであったら、思わず冷たい缶ジュースを差し出してしまいそうである。

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シンデレラ・ティース*坂木司

  • 2006/10/11(水) 17:15:55

☆☆☆☆・

シンデレラ・ティース シンデレラ・ティース
坂木 司 (2006/09/21)
光文社

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サキは大学二年生。歯医者が大嫌いなのに、なぜかデンタルクリニックで受付アルバイトをすることになって…。個性豊かなクリニックのスタッフと、訪れる患者さんがそれぞれに抱えている、小さいけれど大切な秘密。都心のオフィス・ビルの一室で、サキの忘れられない夏がはじまる。

じっと我慢していても、夏は動かない。歯も治らない…。個性豊かなデンタルクリニックのスタッフと、訪れる患者さんたちがそれぞれに抱えている、小さいけれど大切な秘密。都心の歯科医を舞台にした、ひと夏の青春小説。


表題作のほか、「ファントムvs.ファントム」「オランダ人のお買い物」「遊園地のお姫様」「フレッチャーさんからの伝言」という 歯医者さんがらみの連作。

子どもの頃初めて行った歯医者さんでとんでもなく怖い思いをした咲子はそれからすっかり歯科医恐怖症になってしまい、しっかり歯磨きをして虫歯を作らないようにして歯医者には近寄らないようにして大学二年の今に至っている。そんな夏休み、咲子は母にある受付のアルバイトの話を持ちかけられ、何の受付なのか知らないままでその場所まで行ったのだったが、なんとそこは「品川デンタルクリニック」という紛れもない歯医者だった。
品川デンタルクリニックは、エステサロンのような趣の歯医者で、診察券をメンバーズカード、患者をお客様と呼び、院長はじめスタッフがみな個性的なのである。そして、それぞれが個性的なのにぶつかり合わず 補い合って和みの雰囲気を醸し出している。咲子もサキと呼ばれ、みんなと親しんでいくうちに、歯科医の内側や想いに触れ、少しずつ変わっていく。
それだけでも充分たのしく読めるのだが、さらにその上に毎回日常の謎ならぬ 歯医者がらみの謎が提供され、いつも粉にまみれている歯科技工士の四谷の「歯に聞いてみる」謎解きが、歯科の現場ならではで一層興味をそそられる。

咲子の親友のヒロちゃんはこの夏は沖縄でアルバイトをしており、なにかあると咲子も電話で相談したりしているのだが、ヒロちゃんの側の物語も近々読むことができるらしい。こちらもたのしみである。

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動物園の鳥*坂木司

  • 2005/11/03(木) 22:09:50

☆☆☆☆・



鳥井と坂木のシリーズ第三弾にして最終章。
前作までの知り合いである下町の職人・木村栄三郎翁の紹介で、その友人の高田安次郎さんが持ち込んだ相談事がメインの物語である。
安二郎さんがボランティアとして働いている動物園で このところ危害を加えられた野良猫が何匹も見つかっており、同じボランティア仲間の若い女性・松谷明子さんが気に病んでいるので、何とか犯人を見つけてもらえないだろうか、というのだった。
様子を見に行った動物園で、坂木はある人物に声をかけられる。彼は鳥井を今のような状態に追い込んだ元凶となる男・谷越だった。
中学時代 嫌な奴だった谷越は今も相変わらず嫌な奴で、この物語にはなくてはならない登場人物でもあるのだが...。

相変わらず鋭い観察眼と推理力を発揮して、頼まれたことはもちろん 頼まれもしないことまで見事に解決して見せた鳥井だったが、そんな彼の様子を見、自分と鳥井の関係を思い、坂木が最後に下した決断は、鳥井にとってはあまりにも唐突なものだったことだろう。ノックに応えてドアを開けたときに鳥井がどんな顔をしてそこにいるかを想像すると胸がいっぱいになる。
シリーズはこれで終わりだが、ほんとうの鳥井と坂木の物語はこれからはじまるのだろう。


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