fc2ブログ

鼓笛隊の襲来*三崎亜記

  • 2008/05/12(月) 17:01:55

鼓笛隊の襲来鼓笛隊の襲来
(2008/03/20)
三崎亜記

商品詳細を見る

戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母と過ごすことになった園子の一家。避難もせず、防音スタジオもないが、無事に乗り切れるか。表題作ほか、鮮やかで不安定な世界を描く短編集。書き下ろし1編を含む全9編。


表題作のほか、「彼女の痕跡展」 「覆面社員」 「象さんすべり台のある街」 「突起型選択装置(ボタン)」 「「欠陥」住宅」 「遠距離・恋愛」 「校庭」 「同じ夜空を見上げて」

三崎さんである。設定、前提条件からまず尋常ではない。しかし、大分慣れたので、大方すんなりと物語に入り込めるようになった。
それでもそれぞれの物語には、不思議があふれていて、だからこそ本質が露わになったりすることがあり、ドキリとさせられ興味深い。
なんの疑いも持たずにのうのうと暮らすわたしたちが失いかけているものを思い出させ、完全に失くしてしまうのを踏みとどまらせてくれるような一冊である。

> more >>>

失われた町*三崎亜記

  • 2006/12/12(火) 12:50:52

☆☆☆・・

失われた町 失われた町
三崎 亜記 (2006/11)
集英社

この商品の詳細を見る

30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?時を超えた人と人のつながりを描く、最新長編900枚。


「町が消滅する」という予想外な現実がここにはまずある。月ヶ瀬という町が消滅した後の「現在」から物語は語られはじめ、時間と場所を行きつ戻りつしながら 町の消滅に直接・間接に関わった人たちの心残りや悲しみ、諦めやひと握りの希望といった深く濃い想いが、淡々と日常を過ごす様子の中で語られていく。
人々の心の動きにはうなずかされることも共感することもたくさんあるのだが、それでもなんとなくどこか着いて行けない感じがしてしまうのは何故だろう。大前提があまりにも突飛過ぎるからだろうか。あちこちに都合のよさを感じてしまうからだろうか。

> more >>>

バスジャック*三崎亜記

  • 2006/03/23(木) 17:13:32

☆☆☆・・



表題作のほか、二階扉をつけてください・しあわせな光・二人の記憶・雨降る夜に・動物園・送りの夏。
短編集とも掌編集ともいえない少し長めのものからたった3ページのものまで、長さも持ち味も違う7編の物語である。

二階に 役に立つとは思えない扉をつけることを推奨される町の物語や、失った過去のぬくもりが見える窓の物語や、一緒にいるはずの二人の記憶が少しずつぶれてゆく物語や、芸術性まで帯びてしまいそうなバスジャックの物語や、雨が降る夜だけ現われる図書館の物語や、予算が足りないのに珍しい動物を展示したい動物園の物語や、大切な人との永遠の別れをゆっくりゆっくり行う人たちの物語である。
物語にはひとつとして共通点などないのだが、現実からほんの少しだけズレた軸の上にある感じがどの物語からも漂い出してくる。
『となり町戦争』の三崎亜記さんの手に成るものだと改めて納得する。

> more >>>

となり町戦争*三崎亜記

  • 2005/08/28(日) 17:02:34

☆☆☆・・



ある日、僕・北原修路の目は、舞坂町の広報紙≪広報まいさか≫に小さく載っていたこんな記事に吸い寄せられた。

 ――――――――――――――
 【となり町との戦争のお知らせ】
 開戦日     九月一日
 終戦日     三月三十一日(予定)
 開催地     町内各所
 内容      拠点防衛 夜間攻撃 敵地偵察 白兵戦
   お問い合わせ  総務課となり町戦争係 
 ――――――――――――――


開戦日の九月一日になっても僕の目には何も変わったところは見えず、いつもとまったく変わらない日常が過ぎていた。そんなとき、突然≪戦時特別偵察業務従事者≫に任命され、となり町戦争係の香西瑞希と結婚するという体裁を取ってとなり町に潜入して偵察活動を行うことになった。

最初から最後まで戦争という実感をもてないままに戦争に協力し、人の命を犠牲にして終戦を迎えるのだが、それでも僕は何の実感も持てはしないのだ。
それはおそらく、読む者にとっても同じではないか。
著者は何を想ってこの物語を書いたのだろう。
となり町はもしかするともっとずっと広い意味でのとなり町なのかもしれない。そしてわたしたちは、人を殺す ということを少しも認識しないまま となり町と実感の伴わない戦争をしているのではないだろうか。
これは、著者からの警告なのかもしれない。

> more >>>