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ふにゅう*川端裕人

  • 2006/04/10(月) 11:54:08

☆☆☆・・



ふにゅう~ と、いきなり言われても。
重松清氏、困惑、爆笑そして感動!!
たった一度でもいい。かわいい愛娘に、〈ふにゅう〉をやってみたい・・・・・。
滑稽だけどピュアな、新しい父親の肖像!

仕事に燃えるママの代わりに、育児に奮闘する洋介。息子を見る妻の眼差しに嫉妬を覚えつつも、平静を装う匡史。血が大の苦手なのに、立会い出産に望むハルキ。事情はそれぞれ違うけど、子供を愛する気持ちは、みな同じ――頑張るパパの“超現実”を描いたユーモア溢れる小説集。
  ――帯より


父と幼子の五つの物語。
現実問題として、いまの日本では、両親が揃っているのに父親が主に育児をすることを選択する家庭は まだごく稀、あるいは皆無に近いだろうと思われるが、この五つの物語の父親たちは望むと望まざるとに関わらず主夫として育児に関わることになり、そしてそのことを良しとしているのである。どころか、積極的に楽しみ、この場にいない妻=母親を呪いながらも満ち足りた時間を過ごしているのである。子育てに関われる時間を大切に思う父親たちと、それを見る世間の目とのギャップもさもありなんと頷かされる。育児に関して母親が特別なのは、産むという役割と母乳を与えることができる――それとて全員ができるわけではないが――ということだけではないのだろうかと思わされもする。

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今ここにいるぼくらは*川端裕人

  • 2005/09/04(日) 17:17:42

☆☆☆・・



ハカセ君こと大窪博士の小学生時代のあちこちを切り取った連作短編集。
博士は関西の川のそばで生まれ、泣き虫だったが、上級生のガキ大将に無理矢理くっついて川のはじまりを探す大冒険をしたりして 小学校低学年までをそこで過ごす。
その後、東京の郊外の山の中の町に引越し、言葉のことで仲間はずれになったりしながらも、≪自分≫のありようについて、頼りなさを感じながらもいつも考えながら生きている。
連作は、時間を追いつ戻りつして進むので、いまあることが、突然そこに現われたのではないことがよく解る。

キーワードはカバーにも使われているように≪川≫だろう。
川はぽつんとある日突然はじまったわけではない。空から降った雨が地下に蓄えられ、じわじわと年月をかけて染み出してきたものだろう。そして、流れ下り さまざまな風景を通り過ぎ 交じり合いながら河口を、そして海を目指すのだ。その間にも空へ還りまた雨となってどこかの川のはじまりになっているかもしれない。
川は人の生きる様なのかもしれない。
今ここにいるぼくらは、突然今ここにいるのではないのだ。

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