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世界中が雨だったら*市川拓司

  • 2005/09/13(火) 20:23:35

☆☆☆・・



 ここにいるのはもうひとりの僕です。
 想い/盲信/性/狂気・・・・・。
 ミリオンセラー作家の魂の叫びが木霊する三つの「愛」の物語。

 愛を見失った少女、愛に飢えた少年、愛を手探りする不器用な大人たち。
 市川拓司の新作は、震えがくるほど切なく、悲しく、やるせない。
 ここにあるのは、僕の永遠のテーマです。
        (帯より)


表題作のほか、琥珀の中に・循環不安

どの物語でも人が殺されたり殺そうとされたりする。そして、殺されたあとのことや殺そうとされるまでのことが綴られている。
語り手は、殺した者であり、殺されようとするものである。
そして、どの場合にも足りないのは≪愛≫である。
≪愛≫はなぜこんなにも人から正気を奪い人を操るのだろう。
たぶんそれがわからないからこの物語たちが書かれたのだろう。


そのときは彼によろしく*市川拓司

  • 2005/05/04(水) 20:49:45

☆☆☆☆・


 この世界には、物理学の教科書にも載っていない強い力がひとつある。
 
 小さな人生の大きな幸福の物語
       (帯より)


13歳の時に出会い、ひとときを共にした風変わりな少年たちと少女。15年の後の再会は、思ってもいないものだった。

生温かい水の中を、全身の力を抜いて漂うような心地好い物語だった。
繋がっている、結ばれている、包まれている、守られている、という感じ。ぎすぎすした日々から解き放たれたい時にうってつけの一冊。

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いま、会いにゆきます*市川拓司

  • 2004/07/06(火) 12:44:16

☆☆☆☆・


 好きな人を思うとき、必ずその思いには
 別離の予感が寄り添っている。――もし、そうだとしても

 書かれているのは、ただ「愛している」ということ。
 思い切り涙を流してください。

                    (帯より)


15才の中学生の頃から半径1メートルの圏内にいた二人が 少しずつ近づいて結婚し愛すべき息子をなし しあわせに暮らせると思った頃 妻は病に命を落とす。
「一年後の雨の季節にあなたたちの様子を見るために戻ってくる」というひと言を残して。

切なく 悲しく 狂おしく愛しい物語である。
彼らが歩いているのは たまらなくでこぼこで茨だらけの道のように見えるのだが、この物語は最初から最後まで淡いパステルカラーの水彩画のように描かれている。
誰もがみな少しずつあるいはたくさんの不幸を背負っているのに 誰もがみなしあわせに描かれていて そういう風に描かれるうちにしあわせであろうとしているようで胸がつまるのだ。
こんなに切なく哀しいしあわせの形なんてあっていいのだろうか。