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オルゴォル*朱川湊人

  • 2011/11/26(土) 07:51:00

オルゴォルオルゴォル
(2010/10/08)
朱川 湊人

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「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、ハヤトは一路、鹿児島を目指す。奇跡の、そして感動のクライマックス!直木賞作家による感動の成長物語。


長いものには巻かれろ的な行動パターンの小学四年生のハヤトが主人公である。積極的に悪さをするタイプではないけれど、巻き込まれれば消極的には加担する、という感じの、いささか情けない印象の少年でもある。そんな彼にくっついてくるクラスで浮いているシンジロウ。正直鬱陶しいと思っていたハヤトだったが、彼と出会ったことが大きく見るとハヤトを変えたのかもしれない。母のヒトミさんとの関係、遠くで暮らす父との関係、父の新しい奥さんとの出会い、そして電撃ガール・サエさんとの出会いが、ハヤトに自分で考えることの大切さを気づかせたのだろう。奇跡のようなクライマックスではあるが、出会いとタイミングの妙を思わされる一冊である。

本日、サービスデー*朱川湊人

  • 2011/11/21(月) 17:03:56

本日、サービスデー本日、サービスデー
(2009/01/21)
朱川湊人

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世界中の人間には、それぞれに一日だけ、すべての願いが叶う日がある。それが、サービスデー。神様が与えてくれた、特別な一日。本来は教えてもらえないその日を、思いがけず知ることになったら。直木賞作家の幸運を呼ぶ小説。


表題作のほか、「東京しあわせクラブ」 「あおぞら怪談」 「気合入門」 「蒼い岸辺にて」

どの物語もいささかブラックである。であるが、どこかブラックに徹しきれずあたたか味が滲み出ていたりもして、それがまたいい味を出している。「東京しあわせクラブ」だけはあまり好きになれなかったが、それでも主人公の心の中のあたたか味には触れることができるのである。毎日を、きょうこそがサービスデーだと思って過ごしてみようか、と思わされる一冊である。

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太陽の村*朱川湊

  • 2010/04/04(日) 16:25:15

太陽の村太陽の村
(2010/01/28)
朱川 湊人

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父親の定年を祝うハワイ旅行に出かけた坂木一家は、帰りの飛行機で事故に遭う。
意識を取り戻した主人公・龍馬は、自分がタイムスリップして過去の世界に来てしまった事を悟る。
どうする俺??? おたくで引きこもりの龍馬は、やがて農作業や素朴な村民との触れあいにより、
現代とは正反対の生活に喜びを見出していくのだが…。
「都市と田舎」、「過去と未来」、「バーチャルとリアル」、「文明と未開」の狭間に揺れる青年の葛藤と成長を直木賞作家が描く。
著者新境地のタイムスリップ・エンタテインメント!


飛行機の墜落事故をきっかけに、過去の世界にタイムスリップしてしまったオタク青年の物語。――と、単に言ってしまえない不思議さ満載の一冊である。無論、恐ろしい事故に遭い、意識を取り戻したら、平成の常識が通用しない世界にいたオタク青年・坂木龍馬は戸惑いつつも真剣である。そして、彼を取り巻く村人たちや、世話をしてくれる村長夫妻の反応もさもありなんと思わされるものなのであるが、細かいところになにやら不自然さがちらつくのである。それもそのはずとわかるのは、ラスト近くなってからなのだが、ある意味、タイムスリップよりも荒唐無稽な感がするのはわたしだけだろうか。そして、哀しいのは、飛行機事故は現実で、助かったのは龍馬ひとりらしいということである。

あした咲く蕾*朱川湊人

  • 2009/11/21(土) 21:43:52

あした咲く蕾あした咲く蕾
(2009/08)
朱川 湊人

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「赦されること」と「受け入れられること」それがこの世の中で、一番うつくしいことだと思いませんか。世界一、うつくしい物語。


表題作のほか、「雨つぶ通信」 「カンカン軒怪異譚」 「空のひと」 「虹とのら犬」 「湯呑の月」 「花、散ったあと」

ホラー臭はなく――ちょっとした不思議は起こるが――心温まる物語集である。いまよりものんびりしていた昭和の頃を思い返す物語が多いのも、効果的である。大切な人と不思議な力。切なくあたたかい一冊だった。

わくらば追慕抄*朱川湊人

  • 2009/07/13(月) 13:43:50

わくらば追慕抄わくらば追慕抄
(2009/03/26)
朱川 湊人

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人や物の「記憶」を読み取れるという不思議な力をもった姉の鈴音と、お転婆で姉想いの妹ワッコ。固い絆で結ばれた二人の前に現れた謎の女は、鈴音と同じ力を悪用して他人の過去を暴き立てていた。女の名は御堂吹雪―その冷たい怒りと憎しみに満ちたまなざしが鈴音に向けられて…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさと生きる哀しみをノスタルジックに描く、昭和事件簿「わくらば」シリーズ第2弾。


「澱みに光るもの」 「黄昏の少年」 「冬は冬の花」 「夕凪に祈った日」 「昔、ずっと昔」

連作短編集でもあり、一連の物語としても読める。前作同様、歳を重ねた和歌子が、振り返って語る形を取っている。
前作では、わけもわからず借り出された形の鈴音だったが、今作でははっきりと自分の意思を持って自らの力を使うようになっていて、少しずつ人間としての強さも身につけてきたのだなぁと感慨深い。
また今作では、薔薇姫と名乗る、鈴音と同じような力を持つ女性が登場し、上条姉妹にも読者にも不安を抱かせる。彼女と鈴音の関係が明らかにされていないので、シリーズはまだつづくのだろう。たのしみである。

いっぺんさん*朱川湊人

  • 2007/12/17(月) 17:26:13


いっぺんさん (いっぺんさん)いっぺんさん (いっぺんさん)
(2007/08/17)
朱川 湊人

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いっぺんしか願いを叶えない神様を探しに友人と山に向った少年は神様を見つけることができるのか、
そして、その後友人に起きた悲しい出来事に対してとった少年の行動とは……。
感動の作品「いっぺんさん」はじめ、鳥のおみくじの手伝いをする少年と鳥使いの老人、
ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」など、
ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド八編。


表題作のほか、「コドモノクニ」 「小さなふしぎ」 「逆井水」 「蛇霊憑き」 「山から来るもの」 「磯幽霊」 「八十八姫」

ノスタルジーと恐怖の融和。まさに内容紹介にあるとおりの物語たちである。恐怖の淵から身を乗り出していて 何者かに引きずり込まれるような、底知れない恐ろしさをも感じさせられる。帰ってこない子ども、幸せとは程遠い結末。しかしラストへと向かうまでの物語は決して特別なものではなく、懐かしさすら覚えるような景色を見せるのだ。だからこそよけいに背筋が寒くなるのかもしれない。
読んだ者の心の隙間に入り込み、うしろめたさを隠そうとすると柔らかいところに刺さってくるような、不思議な怖さの一冊である。

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さよならの空*朱川湊人

  • 2006/10/20(金) 14:20:54

☆☆☆・・

さよならの空 さよならの空
朱川 湊人 (2005/03/29)
角川書店

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夕焼けよりも大切なものなんて・・・・・。
拡大を続けるオゾンホールを食い止めるため、化学物質ウェアジゾンが開発された。しかし、それは思わぬ副作用をもたらすことに。散布した空で夕焼けの色が消えてしまうのだ。開発者のテレサは八十数歳のアメリカ人女性科学者。テレサは胸の奥に秘めたある想いを達するため日本へ向った。日本に着いたテレサは小学校三年生のトモルとキャラメルボーイと名乗る若者と数奇な運命で巡り合い、最後の夕焼けのポイントへと向う。オール読物推理小説新人賞、日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。彗星の如く現れた小説界の大本命・朱川湊人が贈る現代の寓話。


なくても誰も困らないが、なくなると味気なく寂しく 何か忘れ物をしたような心地になるもの。朝焼けや夕焼けとはそんなものだろう。そんな、心のふるさとのような夕焼けが今後150年間夕暮れの空から消えてしまうという物語である。
「ワンダリング」・ホール(さまよえる穴)」と名づけられた 突如現れ、しかも移動するオゾンホールへの対応措置として開発された ウェアジゾン――フロン分子と結合して、フロンからオゾンを破壊する力を奪い、自然消滅するまで成層圏を漂うだけの無害な物質に変える――という化学物質を散布することによって、波長の長い光をも分散させてしまうので、夕焼けの赤い色も目に見えなくなってしまうのだという。
70代でウェアジゾンを開発したテレサは、いますでに80代の半ばであり、お祭り騒ぎに近い ウェアジゾン散布のセレモニーの後、急速に老いを感じ始めていた。その後、日本でのウェアジゾン散布に立ち会うためにテレサは来日するのだが...。
二十歳のころの今は亡き日系の恋人との思い出、弟の事故死に重い責任を感じているトモル少年との出会い、ウェアジゾン散布反対を叫んで焼身自殺した娘の父の思惑、そして、かつて産み 手放した娘との再会、などなどと絡められながら、最後の夕焼けが描かれる。
そして、それぞれの胸に宿る神の存在が一瞬見せたのかもしれない この世とは別の世界との交わりは、科学を超えた何かを思わせる。

なくても困らないからなくなってもいいわけではない、と強く思う。

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わくらば日記*朱川湊人

  • 2006/03/06(月) 17:32:48

☆☆☆・・



姉さまの“あの力”は、人を救いもしましたが――。
人や物の記憶が“見える”不思議な力を持つ少女が出会った、五つの事件、様々な人々、そして人なればこその、深い喜びと哀しみ。

気鋭の直木賞作家が、ノスタルジーとともに現代人の忘れ物を届けます。

昭和三〇年代。当時私は東京の下町で母さまと姉さまと三人、貧しいながらも仲むつまじく過ごしておりました。姉さまは、抜けるように色が白く病弱で、私とは似ても似つかぬほど美しい人でしたが、私たちは、それは仲の良い姉妹でした。ただ、姉さまには普通の人とは違う力があったのです。それは、人であれ、物であれ、それらの記憶を読み取ってしまう力でした・・・・・。

小さな町を揺るがすひき逃げ事件、女子高生殺人事件、知り合いの逮捕騒動・・・・・
不思議な能力を持つ少女が浮かび上がらせる事件の真相や、悲喜こもごもの人間模様。現代人がいつのまにか忘れてしまった大切な何かが心に届く、心温まる連作短編集。
  ――帯より


語るのは、年取った和歌子。不思議な力をもつ姉さま・鈴音の妹であるワッコである。
東京タワーができた頃の東京下町で、彼女が姉さまとともに目の当たりにした出来事のあれこれを思い出しながら語るのである。
鈴音と書いて<りんね>という名をもつ姉の不思議な力は、人助けにもなったが、知らなくていいことまで知ってしまうこともあり、鈴音も悩むのだったが。

要所要所に教訓めいたことごとが散りばめられているのだが、それが説教臭くならず自然に心に染みてくるのは、姉さまや母さまに語らせる著者の妙技だろうか。
次に期待をもたせるような記述があちこちにあるのは、続編を想定してのことだろうか。いま、彼女たちのことをもっと知りたい思いである。

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花まんま*朱川湊人

  • 2006/03/02(木) 13:00:17

☆☆☆・・



第133回直木賞受賞作
大人になったあなたは、何かを忘れてしまっていませんか?
大阪の路地裏を舞台に、新進気鋭の著者が描く六篇の不思議な世界
  ――帯より


トカビの夜
あの日、死んだチェンホが私の部屋に現われた

妖精生物
大人を知らぬ少女を虜にした、その甘美な感触

摩訶不思議
おっちゃんの葬式で霊柩車が動かなくなった理由



花まんま
妹が突然、誰かの生まれ変わりといい始めたら

送りん婆
耳元で囁くと、人を死に至らせる呪文「送り言葉」

凍蝶
墓地で出会った蝶のように美しい女性はいまどこに

いじめとか差別とか人の死とか、気持ちが暗くなるようなことがたくさん書かれているのだが、それぞれの物語の主人公の 歪まず前に進む性格のせいか、暗澹たる心持ちにさせられることはない。
その哀しさに眉を曇らせることはあるが、主人公にとっては悪いことばかりとは言えないようでほっとさせられるからかもしれない。

かたみ歌*朱川湊人

  • 2005/12/09(金) 17:52:08

☆☆☆☆・



 忘れてしまってはいませんか?
 あの日、あの場所、あの人の、
 かけがえのない思い出を。

 東京・下町にあるアカシア商店街、ある時はラーメン屋の前で、
 またあるときは古本屋の片隅で――。
 ちょっと不思議な出来事が、傷ついた人々の心を優しく包んでいく。
 懐かしいメロディと共に、ノスタルジックに展開する七つの奇蹟の物語。

                               (帯より)

七つの連作短編集。

古いレコード店から そのときでさえナツメロと呼んでもいいような「アカシアの雨がやむとき」の曲が流れるアカシア商店街。そのなかの≪幸子書房≫という古本屋の芥川龍之介似の主。商店街から程近い覚智寺というあの世と繋がる場所があるという噂の寺。
そんなあれこれが時を追い語り手を替えて七つの出来事をつなぐのである。
昔からそれぞれが 一見無関係のようにこの町でそれぞれの暮らしを積み重ね、それぞれの想いを積み重ねてきた。そんなちいさな町で起こった出来事が 不思議な何かによって結び合わされ最後の章でパズルのピースがカチリとはまるように腑に落ちるのである。
人の(えにし)というものを思わされてあたたかい。