約三十の嘘*土田英生

  • 2006/04/16(日) 17:38:20

☆☆☆・・



複雑な成り立ち方をした一冊である。
そもそもは、1996年に劇作家で演出家でもある著者が自らの劇団のために書いた脚本であり、のちに 大幅な書き直しをして映画化された。映画は著者が日本を離れている間に著者の手が触れることなく制作された。そして、その映画を観た著者が、それをベースにして小説として書いたのがこの『約三十の嘘』という一冊なのだそうである。
劇も映画も観ていないのでどこがどう違っていて何が変わらないのかが判らないのが残念でもある。

三年前までグループで巧妙な詐欺を働いていたが、仲間の裏切りなどをきっかけとして別々の道を歩いていた詐欺たちが、久々に集まり 仕事をすることになったところから物語ははじまる。大阪からトワイライトエクスプレスで札幌へと向かい、北海道のあちこちで仕事をするという計画であった。
三年前と、いまこの時の 出来事や人間関係の微妙なずれや、そもそも登場人物のひとりひとりが詐欺師という嘘つきを商売にしている人たちだということで発言の信憑性まで疑われてきて興味深い。
事件が起こりはするが、ミステリという感じではなく、人間の心の物語なのだろうと思う。
他人に吐く嘘よりも、自分自身に吐く嘘の方が始末に終えないものなのだろうなぁ。