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わたし、定時で帰ります。*朱野帰子

  • 2019/02/04(月) 16:40:38

わたし、定時で帰ります。
朱野 帰子
新潮社
売り上げランキング: 47,248

絶対に残業しないと決めている会社員の結衣。個性豊かな同僚たちに揉まれながら働く彼女の前に、無茶な仕事を振って部下を潰すというブラック上司が現れて―。新時代を告げるお仕事小説、ここに誕生!


壮絶なお仕事小説である。定時に帰れる会社を目指し、ひとり戦う会社員の結衣が主人公。周りの評価は様々で(とはいえ概ね仕事に熱心ではないという評価なわけである)、それにめげずに定時帰社を貫こうとする結衣なのである。現状は、結衣ひとりがどう足掻いても、同僚や後輩、上司までもが敵であり、みんな仕事に取り憑かれたように自分を痛めつけるような残業を続ける。恋愛にも職場環境にもジレンマを抱える結衣の奮闘ぶりと、周囲の亀の歩みのような変化が見どころである。まだまだすっきり解決したわけではないが、ここからがきっと勝負だろう。イライラもやもやしながらも、終始結衣を応援した一冊である。

会社を綴る人*朱野帰子

  • 2019/01/04(金) 21:06:05

会社を綴る人
会社を綴る人
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朱野 帰子
双葉社
売り上げランキング: 12,659

何をやってもうまくできない紙屋が家族のコネを使って就職したのは老舗の製粉会社。
唯一の特技・文を書くこと(ただし中学生の時にコンクールで佳作をとった程度)と
面接用に読んだ社史に感動し、社長に伝えた熱意によって入社が決まったと思っていたが――
配属された総務部では、仕事のできなさに何もしないでくれと言われる始末。
ブロガーの同僚・榮倉さんにネットで悪口を書かれながらも、紙屋は自分にできることを探し始める。
一方、会社は転換期を迎え……?会社で扱う文書にまつわる事件を、
仕事もコミュニケーションも苦手なアラサー男子が解決!?
人の心を動かすのは、熱意、能力、それとも……?
いまを生きる社会人に贈るお仕事小説。


面白い構成の物語である。物語の大部分で、ほとんどの人が仮名なのである。なぜかというと、会社の暗黒部分をブログにアップしている同僚の榮倉さんが、つけた名前だからである。主人公の紙屋(仮名)は、劣等感の塊であり、実際に何をやらせてもまともにできない。唯一できることといえば、文章を綴ることくらいなものである。優秀な商社マンの兄のコネで製粉会社に入った紙屋は、周りに迷惑をかけながらも、自分に正直に文章を綴り続ける。タイトルを見ると、創業時からの社史編纂に関わる物語を想像してしまうが、紙屋が書くのは、社内メールや工場の安全標語、営業部のプレゼン資料や広報誌にのせるコラムの添削など、日常の業務のほんの一端である。それでも、紙屋の与えられた仕事に真摯に向き合う姿は、少しずつ周囲の見方を変えていく。真面目なのはいいことだ、正直に生きるのは素晴らしいことだ、と思わされる。自分は何もできないと自覚したうえで、これならできると思えたことに真摯に向かう姿は人の胸を打つ。紙屋の正直さが、社内の人間関係や、日々の在り方にまで影響を及ぼす様子を見ると、なぜかほっとする。紙屋(本名・菅谷大和)のことをもっと知りたいと思わされる一冊だった。

書店ガール 7*碧野圭

  • 2018/12/20(木) 18:42:18

書店ガール7 旅立ち (PHP文芸文庫)
碧野 圭
PHP研究所
売り上げランキング: 44,194

中学の読書クラブの顧問として、生徒たちのビブリオバトル開催を手伝う愛奈。故郷の沼津に戻り、ブックカフェの開業に挑む彩加。仙台の歴史ある書店の閉店騒動の渦中にいる理子。そして亜紀は吉祥寺に戻り…。それでも本と本屋が好きだから、四人の「書店ガール」たちは、今日も特別な一冊を手渡し続ける。すべての働く人に送る、書店を舞台としたお仕事エンタテインメント、ついに完結!


本シリーズも完結か、と思って読むと、ほんとうにいろいろなことがあったものだなぁという感慨が押し寄せてくる。ただひとつ、最初から最後まで変わらないのは、書店員たちの本に対する愛情である。ただ、活字離れが叫ばれ、紙の本の需要も減り、さらにはネット書店の台頭で、町の本屋さんの閉店が相次ぐ昨今、経営者サイドからすれば、本への愛情だけでやっていけるものでもないという事情もよくわかる。それでもやはり、最後の最後まで、お客様と共にある空間のために、情熱を注ぐのも書店員なのだろう。愛奈、彩加、理子、亜紀それぞれにスポットが当てられてはいるが、やはり理子の章の読み応えが群を抜いている。「ネットで買うのは作業だけど、本屋で買うのは体験」という言葉が印象に残る一冊だった。

小説の神様 あなたを読む物語 上*相沢沙呼

  • 2018/11/27(火) 19:34:35

小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)
相沢 沙呼
講談社
売り上げランキング: 147,673

もう続きは書かないかもしれない。合作小説の続編に挑んでいた売れない高校生作家の一也は、共作相手の小余綾が漏らした言葉の真意を測りかねていた。彼女が求める続刊の意義とは…。その頃、文芸部の後輩成瀬は、物語を綴るきっかけとなった友人と苦い再会を果たす。二人を結びつけた本の力は失われたのか。物語に価値はあるのか?本を愛するあなたのための青春小説。


読み始める前に、既読の『小説の神様』を上下巻に分けたのかと、ちょっと迷ったのだが、純然たる続編である(ちょっぴり紛らわしい)。時間もほとんど前作と地続きで、小余綾や千谷の抱える悩みもほぼそのままの状態からの続きなので、目新しさはほとんどない。人々にとって小説とは何か、という大きすぎる問題がいつも目の前にあり、自分がどういう姿勢でそれに向かうのかという葛藤から逃れることができずに、何もかもが混沌としているような印象である。この悩みから抜け出すことはできるのだろうか。抜け出せれば、合作小説も目覚ましく進捗するのだろうか。それは本作ではまだわからない。文芸部の成瀬の友人たちに対する心の持ちようにも少しずつ変化が現れ、こちらは少し明るいが、中学時代の友人真中との関係は、なかなか難しいままである。下巻では、これらがすべて解決されるのだろうか。不安要素はたくさんある気がする。ともかく下巻を早く読みたいシリーズである。

火のないところに煙は*芦沢央

  • 2018/11/01(木) 13:37:32

火のないところに煙は
芦沢 央
新潮社
売り上げランキング: 20,824

本年度ミステリ・ランキングの大本命! この面白さ、《決して疑ってはいけない》……。「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」。突然の依頼に、かつての凄惨な体験が作家の脳裏に浮かぶ。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。作家は、事件を小説にすることで解決を目論むが――。驚愕の展開とどんでん返しの波状攻撃、そして導かれる最恐の真実。読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!


普段怪談など書かない作家が依頼を受け、過去の体験を思い出して小説にするが、それに紐づけられるように、次々と不思議な話が舞い込んでくる。論理的な考えをめぐらし、解決策を探ってみたりするが、知らず知らずのうちに、形のない流れに取り込まれていくのだった。どれもがまったく別個の出来事だと信じて疑わなかった作家が、ある共通点に気づいたとき、それまでの恐ろしさが倍増する。不安と恐怖の連鎖の物語でもある。物語が終わっても、恐怖は何も終わっていないと、さらに恐ろしくなる一冊である。

対岸の家事*朱野帰子

  • 2018/10/20(土) 18:47:04

対岸の家事
対岸の家事
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朱野 帰子
講談社
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家族のために「家事をすること」を仕事に選んだ、専業主婦の詩穂。娘とたった二人だけの、途方もなく繰り返される毎日。幸せなはずなのに、自分の選択が正しかったのか迷う彼女のまわりには、性別や立場が違っても、同じく現実に苦しむ人たちがいた。二児を抱え、自分に熱があっても休めない多忙なワーキングマザー。医者の夫との間に子どもができず、姑や患者にプレッシャーをかけられる主婦。外資系企業で働く妻の代わりに、二年間の育休をとり、1歳の娘を育てるエリート公務員。誰にも頼れず、いつしか限界を迎える彼らに、詩穂は優しく寄り添い、自分にできることを考え始める――。

手を抜いたっていい。休んだっていい。でも、誰もが考えなければいけないこと。
終わりのない「仕事」と戦う人たちをめぐる、優しさと元気にあふれた傑作長編!


こんなに真っ向から家事というものに焦点を当てた小説があっただろうか。専業主婦であれ、働く女性であれ、働く男性であれ、ひとり親であれ、独身者であれ、家事とは、生きていくうえで必ずやらなければならない仕事である。本作では、さまざまな立場や状況で、それぞれに家事に向き合い、愉しんだり、悩んだり、苦しんだりしながらも、それを投げ出せずにいる。そして、自分だけがこんなに大変なのだと、他者を攻めてイライラをぶつけ、悪循環に陥るのである。名前のない仕事とも言われる、日々の暮らしの中のほんとうに細かいあれこれから、人はどうしたって逃れることはできないのである。なので、家事というもののとらえ方を狭めてしまうと、人生の多くの時間を無駄にすることになるような気がする。それぞれが追い詰められている苦しさを、少しだけ体感できたような気持ちでもある。時にはほっぽり出すことも大切なのかもしれないと思わされる一冊でもあった。

小説の神様*相沢沙呼

  • 2018/10/08(月) 16:33:56

小説の神様 (講談社タイガ)
相沢 沙呼
講談社
売り上げランキング: 121,729

いつか誰かが泣かないですむように、今は君のために物語を綴ろう。

僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。
物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!



中学生でデビューした作家が同じクラスに二人もいるというのは、奇跡としか思えない設定ではあるが、もしそんなことがあったとしたら、普通に考えて、意気投合するか反発しあうか、完全に無視するかのどれかだろう。だが、彼らの場合はそのどれでもなく、二人でひとつの物語を紡ぐことになる。本作は、さまざまな要因を含みつつ、それをひとつずつ呑み込んで消化し、それでも消化しきれないものは少しでもかみ砕いて、二人でやっていこうとしっかりと思えるまでの物語である。自分と自分の編み出した物語を愛せるようにならないままでは、どうしたって二人でやっていくことはできなかったのである。自分たちの立ち位置を見極めたここからが、彼らの始まりなのだと思わされる一冊でもある。

菜の花食堂のささやかな事件簿 きゅうりには絶好の日*碧野圭

  • 2018/09/07(金) 16:25:52


「このあたりでは評判らしいですよ。ちょっとしたヒントから真実を見抜く、日本のミス・マープルだって」グルメサイトには載っていない、だけどとっても美味しいと評判の菜の花食堂の料理教室で靖子先生が教えてくれるのは、ささやかな謎と悩みの答え、そしてやっぱり美味しいレシピ。いつも駐車場に停まっている赤い自転車の持ち主は誰?野外マルシェでご飯抜きのドライカレーが大人気になったのはなぜ?小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者が描き出す、あたたかくてほろ苦い大人気日常ミステリー、第二弾!


読む順番が逆になってしまったが、ピクルスの瓶詰を売ることになった経緯に、なるほど、と思った。そして、靖子先生の事情が垣間見られ、収まるところに収まったのだと胸をなでおろした。自分に関するな謎も自分で解いてしまう靖子先生なのであった。心を込めて丁寧に、ということをあらためて思わされるシリーズでもある。

菜の花食堂のささやかな事件簿 金柑はひそやかに香る*碧野圭

  • 2018/09/02(日) 18:50:42


「靖子先生、そういう謎を解くのが得意なんです。いつも、ちょっとしたヒントから真実を見つけてくれるんです」手を掛けたランチが評判の菜の花食堂を営む靖子先生はいつも、とびきりの料理と謎の答えと、明日へと進むためのヒントを手渡してくれる―。好き嫌いがないはずの恋人が手作りのお弁当を嫌がるのはなぜ?野菜の無人販売所の売上金が、月末に限って増えている理由は?小さな食堂の料理教室を舞台に『書店ガール』の著者が描き出す、あたたかくて美味しい大人気日常ミステリー、第三弾!


菜の花食堂、香奈さんと優希が手伝うようになって、それまでよりも少しずつ地域に開かれた、憩いの場になっているようである。新しいことに積極的に取り組み、宣伝も増やして、広く知ってもらう試みも、いままで以上にやっている。常連さんにも愛され、相変わらずさまざまな謎も持ち込まれる。靖子先生はほんの小さなとっかかりから見事に推理して解き明かしてしまうのだが、今回は、先生自身にまつわる謎を解き明かし、先生ご一家の心をも解きほぐしたのが、何よりの謎解きだったのかもしれない。菜の花食堂、ますます地域になくてはならない場所になっている。あたたかい気持ちになれる一冊だった。

オーパーツ 死を招く至宝*蒼井碧

  • 2018/05/04(金) 16:40:00


貧乏大学生・鳳水月の前に現れた、顔も骨格も分身かのように瓜二つな男・古城深夜。鳳の同級生である彼は、OOPARTS―当時の技術や知識では、制作不可能なはずの古代の工芸品―の、世界を股にかける鑑定士だと高らかに自称した。水晶の髑髏に囲まれた考古学者の遺体、夫婦の死体と密室から消えた黄金のシャトル…謎だらけの遺産に引き寄せられるように起こる、数多の不可解な殺人事件。難攻不落のトリックに、変人鑑定士・古城と巻き込まれた鳳の“分身倹ひ”の運命は?2018年第16回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。


全くの他人でありながら、瓜二つの容貌を持つ古城深夜と鳳水月が、主に古城の主導によって事件に巻き込まれ、謎を解き明かすという趣向である。多分にマニアックな蘊蓄が語られているので、興味がある人には垂涎ものなのだろうが、それ以外の人には、とっつきにくい部分も多いかもしれない。キャラクタもまだ発展途上という印象で、続編があるなら、少しずつこなれていきそうな気はする。個人的にはあまり入り込めない一冊ではあった。

駒子さんは出世なんてしたくなかった*碧野圭

  • 2018/04/15(日) 10:41:05

駒子さんは出世なんてしたくなかった
碧野 圭
キノブックス (2018-02-28)
売り上げランキング: 50,724

水上駒子42歳。出版社で働く管理課課長。専業主夫の夫と高校生の息子あり。平穏な毎日に突然降りかかった昇進辞令。社内をかけめぐる噂と悪口、足を引っ張る年上の部下、女を使うことも厭わない同性ライバル…セクハラ・パワハラの横行する男社会をかいくぐり、駒子はどんな明日をつかむのか!?痛快お仕事小説!


出世欲はさほど強くないものの、出版社の管理課で課長を務める駒子さんが主人公である。家には、専業主婦の夫と息子がいて、日々はとてもうまく回っていると疑わなかったが、社内のセクハラ問題の後始末的な人事異動に始まり、駒子さん自身の昇進と新部署立ち上げという目の回る忙しさに加え、夫がカメラマンの仕事を再開することになって、家庭内にも不協和音が響き始める。あっちもこっちも、うまくいかないことだらけ。とは言いながらも、立ち止まってはいられない。人脈や熱意や、開き直りも駆使しつつ乗り越えていくことになるのである。掛け違った歯車にどこで気づき、どれだけ迅速に修正するかでその後の展開が変わってくるというのが伝わってくる。完璧な人間なんかどこにもいないのだから、頼り頼られながら、一歩ずつ前へ進めばいいのだ、と思わせてくれる一冊でもある。

妖盗S79号*泡坂妻夫

  • 2018/02/10(土) 07:47:44

妖盗S79号 (河出文庫)
泡坂 妻夫
河出書房新社
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神出鬼没の怪盗S79号!指輪に名画、名刀に化石まで、古今東西のお宝を、奇想天外な手口で次々と盗み出す。そんな中、世間では、連続猟奇殺人事件も発生中で、大混乱!果たして、警視庁のS79号専従捜査班は怪盗の正体とその真の目的を暴くことができるのか?ユーモラスで見事なトリックが光る傑作、待望の復刊!


妖盗S79号と専従捜査班の東郷と二宮の対決の物語である。あっという間に目的のものを盗み出し、尻尾を掴ませない妖盗S79号の鮮やかさと、妄念とも言える執着ぶりで逮捕に向けて捜査を続ける東郷の懸命ながら滑稽でもある様子の対比が面白さを増している。出てくる人出てくる人、みんなが怪しげなのもなかなかおかしい。ラストの種明かしには、いささか驚かされたが、味のある真実だったと思う。愉しめる一冊である。

木曜日にはココアを*青山美智子

  • 2017/12/22(金) 16:56:46

木曜日にはココアを
木曜日にはココアを
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青山 美智子
宝島社
売り上げランキング: 83,555

僕が働く喫茶店には、不思議な常連さんがいる。必ず木曜日に来て、同じ席でココアを頼み、エアメールを書く。僕は、その女性を「ココアさん」と呼んでいる。ある木曜日、いつものようにやって来たココアさんは、しかし手紙を書かずに俯いている。心配に思っていると、ココアさんは、ぽろりと涙をこぼしたのだった。主夫の旦那の代わりに初めて息子のお弁当を作ることになったキャリアウーマン。厳しいお局先生のいる幼稚園で働く新米先生。誰にも認められなくても、自分の好きな絵を描き続ける女の子。銀行を辞めて、サンドイッチ屋をシドニーに開業した男性。人知れず頑張っている人たちを応援する、一杯のココアから始まる温かい12色の物語。


登場人物もエピソードも、何一つ無駄がなく、点と点が見事にひとつながりになっている。次の話しでは、誰が誰とどんな風につながっているのだろう、という興味でどんどん愉しくなっていく。じんとしたり、ほろりとさせられたり、微笑ましく眺めたり、それぞれの物語もしっかりしているので、なお愉しめる。ただ、ひとつ気になったのは、「等親」という言葉。ない言葉ではないと思うが、「親等」の方がずっと一般的ではないだろうか。それとも何か意図があって、使ったのだろうか。いささか気になった。それ以外はとても愉しい一冊だった。

バック・ステージ*芦沢央

  • 2017/10/03(火) 19:09:24

バック・ステージ
バック・ステージ
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芦沢 央
KADOKAWA (2017-08-31)
売り上げランキング: 16,923

バラバラのピースがぴったりハマったラストに思わず「ビンゴ!」と大喝采!

新入社員の松尾はある晩会社で、先輩の康子がパワハラ上司の不正の証拠を探している場面に遭遇するが、なぜかそのまま片棒を担がされることになる。翌日、中野の劇場では松尾たちの会社がプロモーションする人気演出家の舞台が始まろうとしていた。「離婚したばかりのシングルマザー」「再会した同級生」「舞台に抜擢された新人俳優」「認知症の兆候が表れた大女優」舞台の周辺では、4つの事件が同時多発的に起き、勘違いとトラブルが次々発生。バラバラだったパズルのピース、それが松尾と康子のおかしな行動によって繋がっていき……。すべてのピースがピタリとはまったラストに、思わず「ビンゴ!」。毎日ストレスフルに働くあなたを、スッキリさせる「気分爽快」ミステリー!


別々の場所で、一見無関係のように起こる出来事が、次第に一本にまとまり、パズルのピースがパタパタとはまるように一枚の絵になっていく。好きな設定なのだが、この物語では、一本にまとまる過程の爽快感があまり感じられなかった気がする。なので、ラストまでカタルシスを得ることができなくて少し残念だった。面白くないわけではないのだが、それぞれの事件が自分の好みからはちょっぴりはずれていたということかもしれない。個人的には物足りなさもあったが、愉しめる一冊ではある。

書店ガール6 遅れてきた客*碧野圭

  • 2017/09/01(金) 07:29:54

書店ガール 6  遅れて来た客 (PHP文芸文庫)
碧野 圭
PHP研究所 (2017-07-11)
売り上げランキング: 23,717

彩加が取手の駅中書店の店長になってから一年半、ようやく仕事が軌道に乗り始めたと感じていたところ、本社から突然の閉店を告げられる。一方、編集者の伸光は担当作品『鋼と銀の雨が降る』のアニメ化が決定して喜ぶものの、思わぬトラブル続きとなり……。逆境の中で、自分が働く意味、進むべき道について、悩む二人が見出した答えとは。書店を舞台としたお仕事エンタテインメント第六弾。


今回の主役は、取手のエキナカ書店、本の森の店長の彩加と、東京の疾風文庫の編集長・小幡である。片や、やっと軌道に乗ってきた書店の閉店を告げられ、片や、小説のアニメ化に伴う駆け引きに悩まされ、それぞれがこの先進むべき道を手探りするなかで、周囲との関わりに助けられ、一歩ずつ進んでいく物語である。たくさんの理不尽と、本音と建て前、大人の事情や思いやるからこその葛藤。それぞれの心の動きが、それはもう溢れるほどに伝わってきて、読んでいるこちらまで苦しくなってくる。あっちもこっちも切ないが、助けてくれる人も必ずそばにいて、なんとか拓けていくのである。新しい一歩を踏み出そうと思わせてくれる一冊である。