不愉快犯*木内一裕

  • 2015/11/09(月) 16:59:03

不愉快犯
不愉快犯
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木内 一裕
講談社
売り上げランキング: 84,128

人気ミステリー作家、成宮彰一郎の妻が行方不明になった。事件性が高いと見た三鷹署の新米刑事ノボルは、先輩刑事の佐藤とともに捜査を開始。次々に容疑者候補が浮かぶ一方、警視庁本部の組対四課や捜査一課も事件に関与してくる。「どうせなら死んじゃっててくんないかなぁ…」不愉快な言動を繰り返す夫、成宮の真意とは―。完全犯罪を「完全」に描き切る、前代未聞の傑作ミステリー!


ミステリ作家が自ら考えた完全犯罪の完全さを証明すべく策を練り、犯行後の体験をも自分の次回作に生かそうとする物語である。そもそも主人公の作家・成宮彰一のキャラクタや考え方が、極めて身勝手で不愉快である。もちろんそれが著者の狙いであるので、まんまと成功していると言える。たとえ罪に問われなくても、これ以上ないほど心証は悪いのは当然である。だが、思わぬ人物が思わぬ反応をすることで、心の揺れが一瞬露わになるところは、少なからず胸がすき、その後の刑事の対応も応援したくなる。だが結局はどんな罪に問われようと、反省することはないのだろうな、と思えて後味はよくない。ラストのエピソードが唯一の救いである。絶対に現実にあってほしくない一冊である。

OUT-AND-OUT*木内一裕

  • 2015/09/11(金) 07:29:25

アウトアンドアウト (100周年書き下ろし)
木内 一裕
講談社
売り上げランキング: 543,173

自称・探偵の矢能が突然呼び出された先で目撃したのは、依頼人の死体と覆面姿の男。銃を向ける覆面男の意外な行動に、矢能は窮地に追い込まれる。周到に用意を重ね、完璧にやり遂げた殺人。予期せぬ闖入者が現れたが、無事に問題を処理した。はずだった。成功の喜びの直後、若き殺人者に絶望が訪れる。あの男は何者なんだ。


ハードボイルド探偵物語である。元やくざの矢能が陥った不可解な状況と、恩義に駆られて引き受けざるを得なかった殺人者、預かっている小学生の娘、やくざの組織、政治家。さまざまな人々の思惑と欲得をかいくぐって、何が真実かを見極めつつ、ターゲットを追いつめていくのが見事である。矢能の心がたどり着いたところがほっとさせられる一冊である。

昨夜のカレー、明日のパン*木皿泉

  • 2013/08/27(火) 16:33:21

昨夜のカレー、明日のパン昨夜のカレー、明日のパン
(2013/04/19)
木皿 泉

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悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは、まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく。なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる人気脚本家がはじめて綴った連作長編小説。


人は大切な人を失ったときどうすればよいのだろうか。涙を流し続けることも、俯き続けることも、孤独な世界に籠り続けることもできるが、それはたぶん誰も望まないことだろう。明日も生きていかなければならない遺された者に、ほんとうの意味での命を吹き込むのは何だろうか。そんなことを考えさせてくれる一冊である。

なんらかの事情*岸本佐知子

  • 2013/02/20(水) 07:17:57

なんらかの事情なんらかの事情
(2012/11/08)
岸本 佐知子

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「ああもう駄目だ今度こそ本当にやばい、というとき、いつも頭の片隅で思うことがある」第23回講談社エッセイ賞受賞『ねにもつタイプ』より6年。待望の最新エッセイ集。


おそらく普通の大人の真面目な顔をしているのだろう。人と会っていたり、電車の座席に座っていたりする著者は。だがその頭の中は、めまぐるしく活動し、世の中で起きていること――あるいは著者の頭の中だけで起きていること――を絶妙なおもしろさにしているのである。そのことを想像すると、くすり、と笑いがこみあげてくる。クラフトエヴィング商會に通じる部分もあるような気がする。大好きなテイストの一冊である。

道警刑事サダの事件簿*菊池貞幸

  • 2012/10/08(月) 14:13:03

道警刑事(デカ)サダの事件簿 (徳間文庫)道警刑事(デカ)サダの事件簿 (徳間文庫)
(2012/08/03)
菊池 貞幸

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サダは走る。ひったくり犯を追って。車泥棒のヤクザを追って。北海道江別署の駅前交番を振り出しに、機動捜査隊や銃器対策課などで刑事として活躍後、熱血ゆえの左遷もなんのその、真っ直ぐに正義を貫いた42年間の警官人生!サダの熱い心が、逮捕した自販機破損の高校生を改心させ、ヤクザが隠匿していた大量の拳銃や機関銃押収の糸口を掴んだ。事実の迫力が小説やドラマを越える。


警察小説ではなく、なんの捻りもないただの事件簿?と思ったら、ほんとうにただのサダの事件簿なのだった。退官後の元警察官が著者なのである。だが、フィクションよりもずっと信じられないような展開もあり、被疑者や被害者との情の通い合いもあり、著者だからこそとも思われる無謀さもある。それを、熱意を胸に秘めつつ淡々と事件簿として綴っている姿に、警察官という職業への愛を感じて胸が熱くなる。読後に改めて表紙を見るとしみじみとありがたくなる一冊である。

味なしクッキー*岸田るり子

  • 2012/04/04(水) 07:38:33

味なしクッキー味なしクッキー
(2011/10/07)
岸田 るり子

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別れを決意して「最後の晩餐」の仕度をする女
高校時代の友人の自殺の真相を知りたがる女
不倫相手にクッキーを焼く女。
気鋭の描く「無垢と悪意」の後味は・・・・・


表題作のほか、「パリの壁」 「決して忘れられない夜」 「愚かな決断」 「父親はだれ?」 「生命の電話」

これは怖い。日常のなかに狂気が潜んでいるようなじわりと外堀から埋められていくような怖さである。後味は決してよくない。甘いと思って食べたら味なしクッキーだったときよりも、おそらく苦味が強い。思わず顔が歪んでしまう物語もある。それでも、次の物語の扉を開けずにはいられない一冊である。

白椿はなぜ散った*岸田るり子

  • 2011/11/23(水) 19:54:19

白椿はなぜ散った白椿はなぜ散った
(2011/08)
岸田 るり子

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望川貴は幼稚園で出会った日仏混血の少女・万里枝プティに心を奪われ、二人は永遠の絆で結ばれていると確信する。小中高大学と同じ学校で過ごし、大学でも同じ文学サークルへ入会するが、そこで出会った大財閥の御曹司が万里枝に急接近する。貴は凡庸な容姿の自分とは違い、驚くほどの美貌を誇る異父兄・木村晴彦に、万里枝を誘惑するよう依頼する。貴の計画は成功するかに見えたが―。錯綜する愛憎。はたして真実の絆はどこに。


幼稚園のときに出会ってひと目で惹かれあったタカと万里枝。小・中・高・大と同じ学校で過ごし、大学でも同じサークルに入ったが、そこには万里枝に視線を送る大財閥の御曹司がいた。自分に自信のないタカは、美形の異父兄・晴彦にある計画を持ちかける。まさにそこが間違った道の分岐点だったのである。微笑ましかった幼稚園時代から、歳を重ねるごとに拘りが生まれ、執着が強まり、妄想が膨らんで、現実をそのままに見ることができなくなっているようなタカの姿には哀れみさえ感じさせられる。その彼の純粋すぎる愛情が周囲に広げた波紋の大きさは、彼自身の想像をもはるかに超えるものだった。殺人事件の容疑者にされそうになっている作家の恋人を助けたい一心で奔走する香里がたどり着いた真実を知ったとき、読者はどうしようもない空しさに胸をかきむしりたくなる。タカもおそらく同じだっただろう。救われない物語である。一途さが恐ろしい一冊である。

お月さん*桐江キミコ

  • 2011/11/18(金) 19:39:12

お月さんお月さん
(2007/02/16)
桐江 キミコ

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あまりにも小さくて、かなしくて、さびしい。でも、泣きたくなるほど、いとおしい。こんなふうでも、人は生きたいものなのだ。淡い人生の味がつまった珠のような短編集。


表題作のほか、「モーニングセット」 「クリームソーダ」 「金平糖のダンス」 「キツネノカミソリ」 「薔薇の咲く家」 「葬式まんじゅう」 「愛玉子ゼリー」 「デンデンムシと桜の日」 「寒天くらげ」 「アメリカン・ダイナー」 「三月うさぎ」

取り立ててなんということもないことごとが、至極穏やかに綴られている。ほんの少し世間が考える標準からずれていたりもするが、だからといってどうということもない、ああこんな人がいたなぁと、誰にでも思い当たるような人びとが主人公である。そして、表題作はもちろん、どの物語の中にもいろんな形の月が出てくるのが一興である。ちょっぴりもの哀しくてやさしく、それでいてなにか後ろめたいような気持ちにさせられるのはどうしてだろう。小さくても大切な人びとに会える一冊である。

虚言少年*京極夏彦

  • 2011/10/19(水) 14:05:12

虚言少年虚言少年
(2011/07/26)
京極 夏彦

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僕は、まあやる気のない、モテない、冴えない子供だ。かといって憤懣やるかたないわけでもなく鬱々と陰に篭っているわけでもなく、人気者でもなければイジメっ子でもなく嫌われ者でもなければイジメられっ子でもない。毎日がそこそこ楽しくて、そこそこ幸福であり、なのにそれを自覚していないことが多いので不平不満を垂れたりして、面白ければ笑うし悲しければ泣くし好きなことはやりたいし嫌いなことはやりたくなくて、学校も好きでも嫌いでもないという、まあべたっとしたどうでもいい子供なのである。ただ、まあ特徴を一つ挙げるなら。僕は―嘘吐きなのだ。


ソノ一・三万メートル  ソノ二・たった一票  ソノ三・月にほえろ!  ソノ四・団結よせ  ソノ五・けんぽう  ソノ六・ひょっこりさん  ソノ七・屁の大事件

主役の僕・内本健吾は小学校六年生である。そして学校ではそ知らぬ顔をしてつるまないが、下校時はいつも行動を共にし、似たり寄ったりの馬鹿さ加減を競い合う友人たち・京野達彦と矢島誉が準主役という役どころである。内容は・・・、と言って語ることはこれといってない気もするが、要するに毒にも薬にもならない小学生男子のどうしようもない頭のなかを覗き見しているような一冊なのである。427ページという厚みのある本であるが、読んでも読まなくても世間の動向になんら影響を与えない類のものであろう。だからといって面白くないわけではない。馬鹿らしい面白さ満載なので、ツボにはまれば笑いが止まらなくなるかもしれない、ということもあるかもしれない。名前の似かより具合から、京野達彦には著者が投影されているのだろうか、などと思い巡らしながら読むのもまた興味深いものである。忙しく慌しいときは避け、ゆったりと時間のあるときに読むといい一冊である。

頭の中身が漏れ出る日々*北大路公子

  • 2010/09/30(木) 13:55:35

頭の中身が漏れ出る日々頭の中身が漏れ出る日々
(2010/03/17)
北大路 公子

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40代、独身。趣味昼酒。超地味な日常から生まれた55編。「サンデー毎日」で好評を博した連載エッセー、待望の第2弾!


なにを隠そう某日記以来のファンである。もちろん一面識もないが、著者の文章を長いこと読み続けてきたのでいまとなっては(勝手に)旧知の隣人のような心持ちでさえある。本作でも相変わらずの日々をお暮らしのご様子、まことにうれしいことである。最後にしんみりさせてくれるところも読者のツボを心得て…と思えばこの落ちである。それもまたいい。

出口のない部屋*岸田るり子

  • 2010/09/15(水) 13:24:09

出口のない部屋 (ミステリ・フロンティア)出口のない部屋 (ミステリ・フロンティア)
(2006/04/22)
岸田 るり子

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私に差し出されたのは「出口のない部屋」という題名の原稿。「読ませていただいてよろしいですか?」彼女はロボットのように無表情のまま頷いた。それは、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。なぜ、見ず知らずの三人は、この部屋に一緒に閉じ込められたのか?免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。いったいこの三人の接点はなんなのか?三人とも気がつくと赤い扉の前にいて、その扉に誘われるようにしてこの部屋に入ったのだった。そして閉じ込められた。『密室の鎮魂歌』で第14回鮎川哲也賞受賞の岸田るり子が鮮やかな手法で贈る、受賞第一作。


『出口のない部屋』という同名の小説が差し挟まれ、読者を現実と虚構のすきまに陥れるような物語である。小説の登場人物であるひとりの男とふたりの女の話と、現実と思われる出来事とを行き来しながら、読者は入れ子構造のような不可思議な恐怖の謎を解いていくことになる。出口のない部屋に閉じ込められた三人の共通点はなんなのか、そしてなにより彼らをここに導いた人物とは、またその理由とはなんなのだろうという怖いもの見たさが先にたち、もどかしくなる。だが、真実を知ったとき、そのあまりに自分本位の理由付けに身震いし、視野の狭さに愕然とさせられるのである。

二つの月の記憶*岸田今日子

  • 2008/10/06(月) 13:38:53

二つの月の記憶二つの月の記憶
(2008/01/18)
岸田 今日子

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かけがえのない
快楽には
少しの独のある
ユーモアと
不思議な愛と
エロスが必要です。
今日子さんを
そのまま
食べて下さい。     佐野洋子


表題作のほか、「オートバイ」 「K村やすらぎの里」 「P夫人の冒険」 「赤い帽子」 「逆光の中の樹」 「引き裂かれて」

現実の時間を生きていると思っていたら、いつの間にかどこからか夢のなかに入り込んでしまったような心地の物語たちである。しかもその内容はといえば、安らかで穏やかな夢物語ではなく、どこか不穏で不安定で、胸のどこかに引っかかるようなものばかり。なのに、読者はいつの間にか岸田今日子ワールドに誘われ、包み込まれている。
明るい物語を暗いトーンで描いたような、あるいは逆に、暗い物語をパステルトーンで描いたような、据わりの悪さが魅力といえるかもしれない。

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硝子のドレス*北川歩実

  • 2007/08/09(木) 19:29:11

☆☆☆☆・

硝子のドレス (新潮ミステリー倶楽部) 硝子のドレス (新潮ミステリー倶楽部)
北川 歩実 (1996/03)
新潮社

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「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。


女性なら程度の差こそあれ惹きつけられてしまうキャッチコピーを掲げるサニースリムセンター。ヒロインコンテストと銘打って、何人もの女性を健康的にダイエットさせることに成功し、コンテストの女王を主役に映画まで作るという。そんな夢のようなヒロインコンテストの二回目には二万人を越える応募者があった。

必死にダイエットの成功を望む何人かの女性、恋人に突然去られた男、ダイエットプログラムのトレーナーの女。はじめはそれぞれの思惑がそれぞれに語られ、それらが次第にねじれ絡まりあって複雑な組み紐のようになっていく。
物語が何を追っているのか、前半ではなかなか判らないが、物語が進むに連れてもやもやとしたものが固まって段々形になっていくようで胸が騒ぐ。だが結末は、想像を超えたものだった。
永井するみ作品を思い出させられるような一冊だった。

金のゆりかご*北川歩実

  • 2007/08/01(水) 18:43:06

☆☆☆☆・

金のゆりかご 金のゆりかご
北川 歩実 (1998/07)
集英社

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29歳のタクシードライバー野上雄貴は、GCS幼児教育センターから幹部候補生としての入社要請を受け、不審を覚える。センターの母体となった教育システムの創始者・近松吾郎が、愛人に生ませた子が野上だった。野上自身、0歳のときから「金のゆりかご」と呼ばれる装置で育てられ、一時は天才少年としてマスコミでももてはやされたが、やがて限界の露呈とともに切り捨てられたのだ。彼が、9年前に起こったセンターの4人の子供が次々と精神に錯乱をきたした事件を追ううち、事件の鍵を握ると思われる一人の少年の母親・漆山梨佳が行方をくらます。

現代科学が生んだ装置「金のゆりかご」とは画期的な発明か、それとも悪魔の商品か? 幼児教育センターを舞台に、先端科学の成果を呼び込み、知的興奮のトルネードを巻き起こす、新感覚ミステリー。


初めから終わりまで、一体何度だまされただろう。しかも最後の最後にたどり着いた真実は、それまでのどれよりも信じられない事実だった。
大人は、自分や組織を守るために嘘をつく。平気な顔で、ときには笑みさえ浮かべながら。ならば子どもは・・・・・。
元凶が近松吾郎であったことは間違いない。自分が手がけたことの及ぼす影響にまったく思いを致さなかったという点においても、彼の罪は赦されるものではない。しかし、彼のような研究者はおそらくいつの時代にも存在しそうであり、それが怖い。
途中、何度も自分の差別意識についても考えさせられた。答えはまだみつけられないし、見つけられる物ではないという思いもある。なにかを判断するときに、差別意識を持っていることを忘れずにいることくらいしかできることがないような気もする。
何度もだまされながら、そのたびに考えさせられることが多い一冊だった。

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ねにもつタイプ*岸本佐知子

  • 2007/07/05(木) 12:46:59

☆☆☆☆・

ねにもつタイプ ねにもつタイプ
岸本 佐知子 (2007/01)
筑摩書房

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観察と妄想と思索が渾然一体となったエッセイ・ワールド。
ショートショートのような、とびっきり不思議な文章を読み進むうちに、ふつふつと笑いがこみあげてくる。

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私はいま、目の前にあるこの英語の文章の意味について、一心に考えなければならない。
だがそう思うそばから、ついついコアラの鼻について考えてしまうのである。
あの鼻。材質は何でできているのだろう。
何となく、昔の椅子の脚の先にかぶせてあった黒いゴムのカバーに似ている気がする。
触ったらどんな感じだろう。カサカサしてほんのり温かいだろうか。
それとも案外ひんやり湿っているだろうか。 (「Don't Dream」より)


子どものころのこと、現在のこと、ある物のこと、漠然とした気分のこと・・・・・。題材はさまざまだが、ちょっと不思議なあれこれがいろとりどりに詰め込まれた一冊である。缶入りドロップスのように、次はどんな味の一粒が出てくるのかとてもたのしみである。
なんとなく共感できてしまうことがあちらこちらにでてくるのも愉しく可笑しい。

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