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剣持麗子のワンナイト推理*新川帆立
- 2022/08/09(火) 07:14:44
亡くなった町弁のクライアントを引き継ぐことになってしまった剣持麗子。
都内の大手法律事務所で忙しく働くかたわら、業務の合間(主に深夜)に一般民事の相談にも乗る羽目になり……。
次々に舞い込む難題を、麗子は朝までに解決できるのか! ?
法律相談に運動会(?)に、剣持麗子は今日も眠れない!
不本意ながら、放っておけない巷の厄介事に毎回首を突っ込むことになる剣持麗子の物語である。事件がらみで知り合ったホスト・武田信玄(源氏名、本名は黒丑)をアルバイトの助手にして、少しは雑用を任せられるようにはなったが、今度は当の黒丑に不信感を抱くことになる。異なるいくつかの事案に、夜中に立ち会うことになるが、どの事案にも黒丑の影がつきまとうのである。麗子の夜は、さらに不穏なものになるのである。黒丑の件が回収されていないので、次があるのは確定と思われるが、先の展開が愉しみなシリーズになってきた。
倒産続きの彼女*新川帆立
- 2022/04/19(火) 16:44:15
『このミステリーがすごい! 』大賞 大賞受賞作&シリーズ累計48万部突破
『元彼の遺言状』続編!
彼女が転職するたび、その企業は必ず倒産する――
婚活に励むぶりっ子弁護士・美馬玉子と、高飛車な弁護士・剣持麗子がタッグを組み、謎の連続殺「法人」事件に挑む!
(あらすじ)
山田川村・津々井法律事務所に勤める美馬玉子。事務所の一年先輩である剣持麗子に苦手意識をもちながらも、
ボス弁護士・津々井の差配で麗子とコンビを組むことになってしまう。
二人は、「会社を倒産に導く女」と内部通報されたゴーラム商会経理部・近藤まりあの身辺調査を行なうことになった。
ブランド品に身を包み、身の丈にあわない生活をSNSに投稿している近藤は、会社の金を横領しているのではないか? しかしその手口とは?
ところが調査を進める中、ゴーラム商会のリストラ勧告で使われてきた「首切り部屋」で、本当に死体を発見することになった彼女たちは、予想外の事件に巻き込まれて……。
前作で、剣持麗子の独特のキャラの印象が強いのに、敢えての主人公交代である。とは言え、剣持麗子あっての美馬玉子という印象は拭えない。だが、玉子もなかなか鋭い調査をし、身体を張った仕事をしているところは、この弁護士事務所の女性陣の特徴ということか。弁護士とはなんと危ない仕事であることか。上からのお達しに唯々諾々と従うだけではなく、自分の良心と探求心を抑え込まずに行動を起こすところは、何かあったら弁護を依頼したい、と思わされる頼もしさがある。人助けもしたが、失われた命もあり、その辺りは胸が痛む。長く続くシリーズになるといいな、と思う一冊だった。
元彼の遺言状*新川帆立
- 2022/01/03(月) 06:45:34
第19回『このミステリーがすごい! 』大賞 大賞受賞作
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」――奇妙な遺言状をめぐる遺産相続ミステリー!
(あらすじ)
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」。元彼の森川栄治が残した奇妙な遺言状に導かれ、
弁護士の剣持麗子は「犯人選考会」に代理人として参加することになった。
数百億円ともいわれる遺産の分け前を勝ち取るべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。
ところが、件の遺書が保管されていた金庫が盗まれ、さらには栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害され……。
主人公のキャラが強く、設定はいままでにないもので、登場人物たちも癖が強く、誰もが身勝手な印象ではある。映像化されたら、それなりの娯楽番組になるのではないだろうか、と思わされる。ただ、道具立てが派手な割には、ミステリとしては物足りなさもあって、やはり、活字で読むよりは映像で見た方が楽しめそうな一冊かもしれない。
闇に香る嘘*下村敦史
- 2021/12/21(火) 18:24:43
村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。有栖川有栖氏が「絶対評価でA」と絶賛した第60回江戸川乱歩賞受賞作!
全盲の主人公、中国残留孤児、小児の腎臓移植と、深刻な要素が多く盛り込まれているが、そのすべてが、この物語にとってはなくてはならないものだったように思う。戦争による悲惨で過酷な体験、引き上げ後の境遇、闇に閉ざされた絶望と焦燥、そして疑心暗鬼。心の在りようによって、物事の捉え方がこれほど変わるものかということも思い知らされる。種明かしされるまでは、真相にまったく思い至らなかった。それほどに自然なストーリー展開であったということである。読み応えのある一冊だった。
ヴィクトリアン・ホテル*下村敦史
- 2021/12/19(日) 10:37:14
事件、誘惑、秘密の関係……すべてを見ているのは、このホテルだけ。
張り巡らされた伏線、交錯する善意と悪意に一気読み&二度読み必至!
伝統ある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」は明日、その歴史にいったん幕を下ろす。ホテルを訪れた宿泊客それぞれの運命の行方は――?
『闇に香る嘘』『黙過』『同姓同名』など、話題作を次々発表する社会派ミステリの旗手がエンターテインメントを極めた、感動の長編ホテルミステリー! !
【主な登場人物】
佐倉優美――悩める人気女優
三木本貴志――自暴自棄なスリ
高見光彦――新人賞受賞作家
森沢祐一郎――軟派な宣伝マン
林志津子――人生の最期をホテルで…
映像化には向かない趣向である。登場人物それぞれの視点がひとつの章として描かれているので、読者は、同じ場面を複数の角度から見ることもあるのが興味深い。そして、しばらく読み進めると、細かい描写に些細な違和感を覚えることが増えてくる。違和感の正体を探ろうとさらに読み進めると、後半にそれは明きらかになるのだが、もう少し後まで、素直に読ませてほしかった気は少しする。とは言え、全体を通して描かれているのは、人間のやさしさであり、善意が悪意に負けてはいけないというメッセージなのではないかと思えた。ホテルの設えなどは、映像化されたところを見てみたいが、無理な願いだろう。著者のほかの作品も読んでみたいと思わされる一冊だった。
僕の探偵*新野剛志
- 2020/04/08(水) 16:24:06
僕と宗介は半年前、街で偶然再会した。学生時代からの友人は、仕事を辞めて行くあてもないらしい。仕方なく一晩だけ泊めてやるつもりだったのが、今ではすっかり居着いてしまっている。そんな彼は、僕の周辺で起きた事件を素人探偵となって次々と解決していくのだが…。それぞれ暗い過去を持つ青年、勇吾と宗介。彼らに訪れる出会いと別れを描き、爽やかな余韻を残す連作短編集。
主人公の家に居候する友人が、話を聞いて事件を解決する、ある意味安楽椅子探偵物語なのだが、そう単純なものでもない。この探偵、普段はヨガの修行とやらでとんでもない恰好をしていたりするのだが、ときにものすごくアクティブだったりするので驚かされる。主人公の僕・勇吾は素人の女の子が売りのデリヘルの雇われ店長で、女の子たちやお客たちがらみで、あれこれ問題が起きると、居候の宗介に話をし、何となくアドバイスをもらったり、言うとおりにしてみると解決してしまったりするのである。宗介自身も、抱えきれない屈託を隠し持っていて、それがとんでもない展開になったりもする。それでもなんだかんだ言って、後味は爽やかで、青春物語のような読み心地でもあるのが不思議である。ドロドロしたものを爽やかに解決してくれる一冊かもしれない。
地面師たち*新庄耕
- 2020/03/12(木) 18:38:42
ある事件で母と妻子を亡くした辻本拓海は、大物地面師・ハリソン山中の下で不動産詐欺を行っていた。ハリソン山中を首謀者とし、拓海を含む五人のメンバーが次に狙ったのは、市場評価額百億円という前代未聞の物件だった。一方、ハリソン山中を追う定年を間近に控えた刑事の辰は、独自の捜査を続けるうち、ハリソンが拓海の過去に深く関わっていたことを知る。一か八かの最大級の詐欺取引、難航する辰の捜査、そして、地面師の世界の深奥に足を踏み入れた拓海が知る事実とは―。
まるでドキュメンタリーのような緊迫感を味わえる物語である。人間の欲望に巧みにつけいっているとは言え、こんなことをされたら騙されない方がおかしい、と思わずうなってしまうような巧妙さである。さまざまな証明書や書類の類の偽造技術の巧妙さも、ここまで来ているのかと、ため息が出るほどである。被害者側の思惑にも同情できない要素があることもあって、つい地面師たちに肩入れしそうになってしまうが、そんなころ合いに定年間近の刑事・辰の捜査状況が挿みこまれるので、一時我に返ることができる。一旦悪の片棒を担いだら、泥沼だということもよく判る。文句なく面白い一冊だった。
カトク 過重労働撲滅特別対策班*新庄耕
- 2020/02/06(木) 16:30:22
大企業の過重労働を特別捜査する東京労働局「カトク」班の城木忠司は、今日も働く人びとのために奮闘する!ブラック住宅メーカー、巨大広告代理店、IT系企業に蔓延する長時間労働やパワハラ体質。目標達成と“働き方改革”の間で翻弄されるビジネスパーソン達を前に、城木に出来ることは?時代が待望した文庫書下ろし小説。
過重労働を撲滅するという目的のために、ブラック企業を捜査する「カトク」にスポットを当てたお仕事小説である。確かにカトクの仕事内容も描かれているが、それよりも、捜査対象のブラック企業の闇がよく描かれている印象である。どうしてここまでブラックになってしまったのか、その実態を、時には我が身に引き寄せながら真剣に考える城木の、自らもまた苦悩している姿が胸に痛い。なにを、あるいはどこを、そして誰の考えを正せば労働環境が改善されるのか。捜査しながら的確に判断を下す彼らが救いの神にも見えてくる。愉しみながらも考えさせられる一冊だった。
絶声*下村敦史
- 2019/10/08(火) 16:23:08
親父が死んでくれるまであと一時間半――。
もう少しで巨額の遺産が手に入る。大崎正好はその瞬間を待ち望んでいた。
突如、本人名義のブログが更新されるまでは……。
『私はまだ生きている』
父しか知り得ない事実、悔恨、罪などが次々と明かされていく。
その声が導くのは、真実か、破滅か。
驚愕のラスト&圧倒的リーダビリティの極上ミステリー!
すい臓がんを患い、余命いくばくもない時期に突然疾走し、生死不明のまま時が経ち、遺産目当ての子どもたちの動きが慌ただしくなった折も折、父のブログが更新される。失踪宣告は一旦棚上げされ、一日も早く遺産を手に入れるためだけに、子どもたちはあれこれ調べ始めるのだが……。先妻の子どもと後妻の子ども、後妻が離縁された経緯、遺産のために仕組まれたあれこれ、父本人の後悔、などなど、複雑な要因が絡み合い、さらには、父本人によって仕組まれた仕掛けによって、思ってもみない結末を迎えることになる。面白く読んだのだが、登場人物の誰もが、私利私欲のためにしか動いておらず、個人的には誰にも肩入れすることができなかったことが、もうひとつのめり込めなかった一因かもしれない。自らの生き方が招いたこととはいえ、父親の哀れが思われてならない一冊ではあった。
府中三億円事件を計画・実行したのは私です。*白田
- 2019/04/19(金) 16:24:46
1968年12月10日に東京都府中市で起きた『三億円事件』。
「その犯人は、私です。」
今年8月、突如インターネットサイトに投稿された小説によって、日本中が話題騒然となった。
あの日、何があったのか――。
昭和を代表する迷宮入り事件。
奇しくもちょうど50年目を迎える節目の今年、「小説家になろう」に投稿され、ネット騒然!
ランキング1位! 800万PV突破の話題作、緊急発売!!
惹句があまりにも興味深いのでつい手に取ったが、ちらっと危惧した通りのないようで、正直がっかり感が強い。長年連れ添い、先日亡くした妻はあの彼女だったのか、事件を起こした後きょうまで、どんな思いで生きてきたのか、そして、奪った現金を実際はどこに隠し、どう使ったのか、などなど、著者が真犯人だと言う設定で小説にするなら、真犯人以外には想像できないその後の現実をこそ、深く掘り下げてほしかったと思う。お薦めしようとは思わない一冊である。
ルールズ*新藤晴一
- 2017/10/23(月) 06:57:08
人気ロックバンド、ポルノグラフィティの新藤晴一が描く
青春ロック小説の傑作!
ポルノグラフィティのギタリスト・作詞家として活躍する著者が、
2010年の小説家デビュー以来、待望の第2作目を上梓!
舞台は、著者が長きにわたって身を置く音楽業界。
メジャーデビューを目指して奮闘する
ロックバンドのベーシストを主人公にすえ、
ロッカーたちの生き様を追いかけた本書は、
細部にまでリアリティが宿るロック小説の傑作!
運命をともにするメンバーたちとの人間関係、
デビューにかけるひたむきな想いや葛藤、
成功を夢みる男たちの欲望……。
彼らの未来のカギを握るのは、いったい誰なのか?
この出来事は、伝説となりうるのか?
夢か現実か?
一気読み必至の青春グラフティ。
ロックは全くの門外漢だが、それでもそのばかばかしいほどの熱さがひしひしと伝わってくる。なにを大切に思い、なにを最優先に生きていくかということは、ロッカーに限らず、その人なりの譲れない理由があるだろう。彼らにとって、それがロックだということだ。損得勘定など微塵も考えずにいられた時代から、人生設計を俯瞰してみなければならない年代になってもなお、譲れないものは譲れないけれど、少しずつ妥協も覚えなければ生き残ってはいけない。そんなジレンマと、それでも熱い仲間たちとの結びつきが、読んでいて心地好い。有名人が物した小説という色眼鏡を外しても充分読み応えのある一冊だと思う。
騙し絵の牙*塩田武士
- 2017/10/12(木) 16:23:36
大手出版社で雑誌編集長を務める速水。誰もが彼の言動に惹かれてしまう魅力的な男だ。ある夜、上司から廃刊を匂わされたことをきっかけに、彼の異常なほどの“執念”が浮かび上がってきて…。斜陽の一途を辿る出版界で牙を剥いた男が、業界全体にメスを入れる!
主人公の編集者・速水には俳優の大泉洋があてがきされているので、初めから明確なイメージを持って読み進められるという、テレビドラマを観た後で原作を読んでいるような不思議な読書体験ができる。ほんとうにこの速水、大泉洋氏以外では考えられないキャラクタである、と思ってしまった時点でまんまとやられているのだろう。エピローグがあるからこその騙し絵ということなのだろうが、流れとしては当然とも言えるのではないかとも思った。カバー写真の仕掛けも秀逸で、物語をよく表している。仕掛けでも内容でも愉しませてくれる一冊だった。
罪の声*塩田武士
- 2016/12/02(金) 19:19:47
逃げ続けることが、人生だった。
家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。
「これは、自分の声だ」
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。
未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する。
圧倒的な取材と着想で描かれた全世代必読!
本年度最高の長編小説。
昭和最大の未解決事件―「ギンガ萬堂事件」の真相を追う新聞記者と「男」がたどり着いた果てとは――。
気鋭作家が挑んだ渾身の長編小説。
グリコ森永事件を題材にした409ページの大作である。青酸ソーダ入りのお菓子が店頭に置かれたということで、当時子どもが生まれたばかりだったわたしも我が身のこととして恐ろしさを感じた事件だったので、興味深く読んだ。大々的に報道された割には、実際犯人は何が目的だったのかよくわからず、尻すぼみに終わった印象があったが、本書を読むと、妙に納得できてしまう。記者が、大きな事件の取材に際して、犯人はどんなにもっともらしい大義名分を持っているのかと思って臨むと、どうしようもない理由で事件を起こしていることが多々あり、がっくりする、というようなことを言っているが、このギンガ萬堂事件の犯人たちも、まさにそうで、それがリアルさをより増している。読後は、あの事件の真相はまさにこうだったのだろうと思えてしまうほどである。テープの声の子どもにスポットを当てたのも見事だと思う。読み応えのある一冊だった。
田嶋春にはなりたくない*白河三兎
- 2016/09/06(火) 17:02:04
正しいことを正しいと言って、何が悪いんですか! 史上最高に鬱陶しい主人公、誕生! 一流私大の法学部に在籍する女子大生「田嶋春」、通称タージ。曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気は、まったく読まない。もちろん、友達もいない。そんなタージが突撃した「青春の謎」には、清冽で切ない真実が隠されていて――。読めば読むほど、不思議とタージが好きになるかも! ?
個人的には、初めからちょっと好きだったかも、田嶋春。これほど極端に空気を読まないわけではない(と自分では思う)が、似たところがある気がして、親しみを覚えてしまったりもする。なので、タージの気持ちが全く分からないというわけではなく、かと言って、全面的に支持できるというわけでもないので、肩頬に苦笑いを浮かべて眺めてしまうような読書タイムだった。きっと深く知ればみんな好きになると思うよ、田嶋春。彼女のことをもっともっと知りたくなる一冊なのである。
殺人犯はそこにいる*清水潔
- 2014/06/01(日) 17:08:49
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犯人が野放しになっている? 「桶川ストーカー事件」を手掛けた記者が迫る! 5人の少女が標的になった知られざる大事件。それを追う記者が直面したのは、杜撰な捜査とDNA型鑑定の闇、そして司法による隠蔽だった――。執念の取材で冤罪「足利事件」の菅家さんを釈放へと導き、真犯人を特定するも、警察は動かない。事件は葬られてしまうのか。5年の歳月を費やし、隠された真実を暴きだす衝撃作。
報道を鵜呑みにしてはいけない、と常々思ってはいることだが、本書を読むと、一体何を信じればいいのだろう、と戸惑い、憤りさえ覚えてしまう。警察とは、市民の安全を守り、何を措いても市民の安全安心を脅かす真犯人を捕まえてくれるもの、というのは建前に過ぎないのだろうか。なにを信じればいいのか疑心暗鬼に駆られる中、著者の取材と調査が真実に迫る様子はもどかしさのなかから一条の光が差すようである。そしてそれでも自身の保身ゆえに動かない警察組織には落胆を隠せない。真実を知りたいと切実に思わせる一冊である。
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