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新章 神様のカルテ*夏川草介

  • 2019/04/26(金) 21:12:48

新章 神様のカルテ
新章 神様のカルテ
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夏川 草介
小学館
売り上げランキング: 3,365

信州にある「24時間365日対応」の本庄病院に勤務していた内科医の栗原一止は、より良い医師となるため信濃大学医学部に入局する。消化器内科医として勤務する傍ら、大学院生としての研究も進めなければならない日々も、早二年が過ぎた。矛盾だらけの大学病院という組織にもそれなりに順応しているつもりであったが、29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、局内の実権を掌握している准教授と激しく衝突してしまう。
舞台は、地域医療支援病院から大学病院へ。
シリーズ320万部のベストセラー4年ぶりの最新作にして、10周年を飾る最高傑作! 内科医・栗原一止を待ち受ける新たな試練!


引きの栗原、どこにいても過酷な日々である。大学病院でもそれは変わらず、毎日走り回っている。だが、なんとかなってしまうのだろうな、と思わされるのは、たぶんその語り口やキャラによるものなのだろう。さらには、背後で静かに支える妻の榛名と娘の小春の存在によるところも大きい。そして、登場人物の誰もが至極個性的でありながら、みんなが真摯で真剣で格好いいことが、このシリーズの最大の魅力なのである。じわりじわりと身体中に、清新なものが沁み渡る心地がする。いつまでもこの物語の世界に浸っていたいと思わされるシリーズである。

一週間のしごと*永嶋恵美

  • 2019/02/16(土) 12:33:33

一週間のしごと (創元推理文庫)
永嶋 恵美
東京創元社
売り上げランキング: 693,420

優等生だがほかに取り立てて特徴のない男子高校生・開沢恭平は、日曜日に幼なじみの青柳菜加に呼びつけられ、一方的に相談された。渋谷の雑踏で母親から見捨てられた子どもを保護し、家まで送り届けたが、荒れ果てた無人の室内に危機を覚え、自宅に連れてきたという。昔から行動力だけが突出している菜加は、事の重大さをまったく認識していなかった。「誘拐罪。お前がやったことはれっきとした犯罪だ」――大人たちを頼らず事態の収拾を図るため、恭平たちの波瀾の一週間が幕を開ける!


OLさんのお仕事ものがたりかと思いきや、主人公は高校生たち。しかもかなりショッキングなストーリーである。高校生が主人公だということをつい忘れてしまいそうになる瞬間が何度もある。前半は、不穏な描写もあって興味を惹かれながらも、高校生の日常的な趣が強いのだが、次第に真相に近づくにしたがって、読み始めるときには想像もしなかった展開になり、なかなか納得できなくて、胸が苦しくなる。真犯人にとっては全編救いがなくて、重たいものを呑み込んだような気分だが、それ以外の登場人物にとっては、あしたに光が見えるのが救いである。養護教諭の存在が素晴らしい。さまざま考えさせられる一冊である。

院内カフェ*中島たい子

  • 2018/10/13(土) 18:21:01

院内カフェ (朝日文庫)
中島たい子
朝日新聞出版
売り上げランキング: 57,998

「ここのコーヒーはカラダにいい」と繰り返す男や、態度の大きい白衣の男が常連客。その店で働く亮子は売れない作家でもある。夫との子どもは望むけれど、治療する気にはなれない。病院内カフェを舞台にふた組の中年夫婦のこころと身体と病を描く長編小説。


病院のなかにあって、病院ではない。院内カフェは独特の存在である。入院患者も外来患者も、その家族も見舞客も、誰でも分け隔てなく迎え入れ、ここではみな等しく客という存在になる。そんな、中立国のようなこの場所にも、毎日、さまざまな人生模様が描かれ続ける。主婦であり、作家であり、カフェのバイト店員でもある亮子の目が捉える人間模様を、彼女自身の家庭の事情も織り込みながら、紡ぎだしているのが本作である。自分というものの在りようや、夫婦や親子のかかわりあい方のことを、いままでにない角度から考えさせられる一冊でもある。

道具箱はささやく*長岡弘樹

  • 2018/08/05(日) 20:03:30

道具箱はささやく
道具箱はささやく
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長岡 弘樹
祥伝社
売り上げランキング: 228,761

資産家の娘・早百合に意中の相手がいるのか。調査を依頼された探偵の木暮と菜々は、最後の候補者と早百合がスクランブル交差点ですれ違うよう仕向ける。だが、その寸前に、なぜか木暮は早百合に電話を入れた…(「意中の交差点」)。借金苦から、休暇を利用して質屋に押し入った刑事の角垣。逃走中に電柱に衝突するも目撃者はなく、無事逃げおおせた。だが、なぜか上司の南谷は、角垣が犯人だと見抜くのだった…(「ある冬のジョーク」)。とっておきのアイデアを注ぎ込み、ストイックに紡がれた贅沢な作品集。


ひとつひとつの物語はほんの短いものなのだが、その中に、必ず一度は、「ほほぅ」と思わされる要素が埋め込まれている。それはときに、はっとするようなことだったり、なるほどと合点するようなことだったり、ちょっぴり笑ってしまうようなことだったりとさまざまなのだが、それらのスパイスによって、物語が格段に魅力的になっているのは間違いない。ちょっぴり洒脱な印象もある一冊である。

すずらん通り ベルサイユ書房 リターンズ!*七尾与史

  • 2018/07/06(金) 10:56:25

すずらん通り ベルサイユ書房 リターンズ! (光文社文庫)
七尾 与史
光文社 (2018-05-09)
売り上げランキング: 115,035

日本一の本の街・神田神保町にあるベルサイユ書房。テレビで有名なイケメン写真家・ジョージ久保田のサイン会が脅迫された。彼の新作写真集の中に、脅迫犯に都合の悪い何かが写っているらしい。剣崎店長の指令で、作家志望の書店員・研介らは写真の謎を追うことに。卑劣な脅迫犯を捕まえ、写真集を刊行中止から救えるか?タダモノじゃない七尾ワールドが大展開!


今回もベルサイユ書房は物騒な厄介事のオンパレードである。ここで働く面々が、嫌気がささずに働き続けているのが不思議なくらい、次々に起こる物騒な事々。もはや、誰かが引き寄せているとしか思えなくなってくる。キャラクタも、一作目より安定し、素直にそれぞれの人物を受け入れられるようになった気がする。そして、一作目の「ノブエ」事件もまだ引きずっているのが、得したようでもあり、おぞましすぎるようでもある。今回は、美月のポップに焦点が当たらなかったが、次回はまたそこから始まる事件も見てみたい。次も早く読みたいシリーズである。

すずらん通りベルサイユ書房*七尾与史

  • 2018/06/30(土) 12:24:43

すずらん通り ベルサイユ書房 (光文社文庫)
七尾 与史
光文社 (2015-04-09)
売り上げランキング: 262,664

ミステリ作家を目指す日比谷研介は神保町すずらん通りの「ベルサイユ書房」でアルバイトを始めた。そこは男装の麗人・剣崎瑠璃子店長、“カリスマポップ職人”の美月美玲など、濃いキャラの書店員ばかりが働いていた。しかも穏やかなバイト生活と思っていた研介の前で、次々と不可思議な事件が発生し…。気鋭のミステリ作家が贈る破天荒にして新たなる書店ミステリー!


ベルサイユ書房シリーズの一作目。キャラの濃すぎる店長のいるベルサイユ書房が舞台である。ベルサイユ書房は、店長のキャラだけではなく、美月美玲というポップ書きの天才がいて、そのポップを見ると、思わず手に取ってしまうと評判である。そして、本のセレクトにも独自性があり、書店の間でも注目されている店なのである。アルバイトしていた古書店が閉店したために、ここでアルバイトすることになった日比谷研介の目線で物語は進む。事件を呼ぶのか、事件に呼ばれるのか、ベルサイユ書房の周りではちょこちょこ事件が起きている。しかも、結構深刻な事件である。美月の目の付け所の鋭さは興味深いし、周りを固める登場人物たちも気になるところである。シリーズのこれからさらにキャラが定着していくと、ますます面白くなりそうな一冊である。

にらみ*長岡弘樹

  • 2018/05/01(火) 13:50:27

にらみ
にらみ
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長岡 弘樹
光文社
売り上げランキング: 255,057

“にらみ”とは、刑事が公判を傍聴し、被告人が供述を翻したりしないよう、無言で圧力をかけること―。事務所荒らしで捕まり、懲役五年の判決を受けた窃盗の常習犯・保原尚道は、仮釈放中に保護司を殺害しようとした容疑で逮捕された。取り調べを担当する片平成之は、四年前の保原の裁判で“にらみ”をしていて面識があった。保原は自首しており、目撃者による面通しも終えているのだが、片平は納得していない。保原は人を殺めようとするほどの悪人なのか―。(「にらみ」)驚きと情感あふれるミステリー傑作集!


表題作のほか、「餞別」 「遺品の迷い」 「実況中継」 「白秋の道標」 「百万に一つの崖」

いささか無理やりな感がある個所もないわけではなかったが、展開が愉しみになるストーリーである。ラストは読者それぞれが納得するように、ということなのか、明確に文字にされていない場合が多いので、物語によっては多少悩む点もあったが、ほぼ納得できるものだった。事実の裏側を垣間見るような一冊でもある。

サイコパス*中野信子

  • 2017/10/10(火) 16:48:42

サイコパス (文春新書)
中野 信子
文藝春秋
売り上げランキング: 451

とんでもない犯罪を平然と遂行する。ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう…。脳科学の急速な進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきた。私たちの脳と人類の進化に隠されたミステリーに最新科学の目で迫る!


いままで、身の周りにサイコパスと思われる人がいたことが(たぶん)ないので、想像するしかないのだが、本書を読んでわかったのは、ひとつの型に当てはめ切れるものではないということである。病的に顕著なサイコパスは、犯罪者としてマスコミに取り上げられることも多く、その行動には、単純に理解できない恐ろしさを感じる。反面、その傾向はあるが、さほど違和感なく社会生活を営むことができているように見える人たちは、自らの情動の赴きに悩まされることもあるのだろう。まだまだ解き明かされていないことが多い分野であるが、100人に一人というかなりな確率で存在するサイコパスを解き明かし、犯罪に向かわせないようにすることは、これからの重要な課題なのだろう。興味深い一冊だった。

血縁*長岡弘樹

  • 2017/07/23(日) 19:05:54

血縁
血縁
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長岡 弘樹
集英社
売り上げランキング: 19,014

誰かに思われることで起きてしまう犯罪。誰かを思うことで救える罪。

コンビニの店長が男にナイフを突きつけられる中、電話の音が響いた。【でていいか】店長の差し出したメモを見ても、男は何も答えなかった――「文字盤」
父親の介護に疲れた姉は七年ぶりに妹と再会し、昔交わしたある約束を思いだす。親を思う姉妹の気持ちの行方は――「苦いカクテル」
自首という言葉を聞くと、芹沢の頭をあの出来事がよぎる。刑務官が押さなければならない、死刑執行の三つのボタン――「ラストストロー」
ほか、七つの短編を通して、人生の機微を穿つ。
バラエティに富んだ、長岡ミステリの新機軸。


誰かの思惑が、別の誰かの思惑と一致し、あるいはすれ違い、それがある物事の結果を変えてしまうことがある。人生はなかなか思い通りにはいかないものである。だが読者にとっては、それこそが面白いところである。さまざまな関係の人たちの人生の道筋が、誰のどんな思惑、どんなきっかけで変わっていくのかが興味深い一冊である。

東京二十三区女*長江俊和

  • 2017/05/03(水) 12:44:47

東京二十三区女
東京二十三区女
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長江 俊和
幻冬舎 (2016-09-09)
売り上げランキング: 28,423

フリーライターの原田璃々子は、民俗学の講師だった先輩・島野仁と東京二十三区を巡り取材をしている。板橋区を訪れた二人は、自殺の名所、高島平団地に向かった。だがーー「私が探している場所は、ここではありません」。彼女は“何を"探しているのか。板橋の縁切神社、渋谷の暗渠、港区の外苑西通りを走るタクシー、江東区の埋め立て地「夢の島」、品川区の大森貝塚。誰もが知っている"あの場所"の誰も知らない過去を知るとき、璃々子は、「本当の秘密」を知ることになる。


読む前に想像していた内容とは違うテイストの物語だったが、面白かった。東京二十三区のあちこちを霊感の強いフリーライター・原田璃々子が何かを探して訪れ、先輩・島野仁が行動をともにして、その場所の薀蓄を滔々と語るというのがストーリーの主な流れである。その合間に、その場所にまつわるホラーテイストの出来事が差し挟まれ、璃々子が探すものとどう関連してくるのかに興味を惹かれる。時間も過去と現在を行きつ戻りつしていて、過去からその地に積み重ねられてきた歴史さえも感じられるようである。自分が暮らす場所の過去に想いを馳せてみたくなる。そして最後の品川区では、予想外の結末が待っていて驚かされるが腑にも落ちるのである。大都会東京にも歴史や人の思いが積み重なっているのだと改めて思わされる一冊でもある。

時が見下ろす町*長岡弘樹

  • 2017/03/25(土) 18:23:19

時が見下ろす町
時が見下ろす町
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長岡弘樹
祥伝社
売り上げランキング: 336,967

町のシンボル、大きな時計が目印の時世堂(じせいどう)百貨店の隣に立つ一軒の家。その家で、和江は抗癌剤治療に苦しむ四十年連れ添った夫を介護している。ある日、夫の勧めで、気分転換に写生教室に出かけることになり、孫娘のさつきに留守番を頼むことに。その日だけのつもりだったのだが、なぜかさつきはそのまま居座ってしまい……。和江の家が建つ前は時世堂の物置き、その前は製鞄工場、さらにその前は中古タイヤの倉庫……。様々に変わりゆく風景の中で、唯一変わらなかった百貨店。その前で、繰り広げられてきた時に哀しく、時に愛しい事件とは?


第一章 白い修道士  第二章 暗い融合  第三章 歪んだ走姿(フォーム)  第四章 苦い確率  第五章 撫子の予言  第六章 翳った指先  第七章 刃の行方  第八章 交点の香り

一見ミステリとは思えないストーリー展開なのだが、いつの間にかするりとミステリの世界に滑り込んでいる印象である。時世堂百貨店がある町で起こる出来事を集めた短編集なのだが、狭い町のあちこちでこんなことが起こっていることを想像すると、それだけでかなり怖い。それは、殺人事件などの大きなものばかりではなく、時に人の心の中に仕舞いこまれた思いまで抉り出すことにもなるのだが、逆にそれを食い止めようとする愛にあふれた行動につながることもある。怖くもあり、胸がじんわりあたたかくもなる一冊である。

白衣の嘘*長岡弘樹

  • 2017/03/17(金) 18:32:34

白衣の嘘
白衣の嘘
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長岡 弘樹
KADOKAWA (2016-09-29)
売り上げランキング: 169,165

悲哀にみちた人間ドラマ。温かな余韻が残るラスト。
『傍聞き』『教場』を超える、傑作ミステリ集!
バレーボール全日本の女子大生・彩夏と、彼女を溺愛する医者の姉・多佳子。彩夏の運転で実家に向かう途中、ふたりはトンネル崩落事故に遭ってしまう。運転席に閉じ込められた妹に対して姉がとった意外な行動とは……(「涙の成分比」)。
命を懸けた現場で交錯する人間の欲望を鮮やかに描く、珠玉の六編。

「いつか“命”をテーマに医療の世界をミステリとして書きたいと思っていました。自分にとって集大成と言える作品です」――長岡弘樹


「最後の良薬」 「涙の成分比」 「小医は病を医(なお)し」 「ステップ・バイ・ステップ」 「彼岸の坂道」 「小さな約束」

白衣の下に隠された医者の嘘、医者の罪、偽の医者。状況はそれぞれであり、心情もさまざまであり、嘘にもいろいろある。誰かを守ろうとする嘘もあれば、保身のための嘘もあり、他人を貶めようとする嘘もある。だが、どの物語の登場人物も、たとえ何かを偽っていたとしても、最後の人間らしさまではなくしていないのが救いでもある。白衣の現場でなくとも当てはまる人間ドラマの一冊でもある。

総理に告ぐ*永瀬隼介

  • 2016/11/11(金) 07:16:04

総理に告ぐ
総理に告ぐ
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永瀬 隼介
KADOKAWA/角川書店 (2016-04-30)
売り上げランキング: 187,261

ノンフィクションライターの小林は、1年前に脳梗塞で倒れて病気療養中の元与党幹事長・佐竹の回顧録のゴーストライターを引き受けた。生活に苦しむ小林は現状からの一発逆転を狙い、佐竹に過去のスキャンダルを告白させようと試みるが、国の行く末を憂う佐竹が語り出したのは、戦争のできる国家へと大きく舵を切る現総理大臣の大スキャンダルだった。しかし、佐竹の告白が終わった刹那、佐竹邸の監視についていた公安警察が現れて乱闘になり、脳梗塞を再発した佐竹は死亡、公安に立ちはだかった書生は射殺される。佐竹の告白と乱闘の一部始終が録音されたレコーダーを手に現場から命からがら逃げ出した小林は、旧知の警察官の助けを得て、マスコミを巻き込んだ大勝負に出るが――。


政界の裏側、腰砕けのマスコミ、フリーライターの矜持、警察の威信、公安の執拗さ。さまざまな要素が交錯し、現政権が覆り、日本の進路が修正されるかもしれないという期待を抱かせる展開である。猛進あり、駆け引きあり、裏取引ありと、命を張っての攻防が繰り広げられるが、主役のフリーライター小林のキャラに情けなさがあることで――それがリアルでもあるのだが――緊迫感にかける部分もあるような気がする。それでもこの結末である、終章のタイトル「光射す闇へ」というのが秀逸である。情報を鵜呑みにせずにアンテナを張り巡らせていないと恐ろしいことになると改めて感じさせられる一冊でもある。

表参道・リドルデンタルクリニック*七尾与史

  • 2016/09/26(月) 19:03:52

表参道・リドルデンタルクリニック
七尾 与史
実業之日本社
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表参道ヒルズのすぐ近くにある錦織デンタルオフィスは、
錦織早苗院長以下、スタッフは全員女性という歯科医院。
場所柄、芸能人やセレブ患者も多く、街の雰囲気とともに華やぎに満ちている。
院長以外のもう一人のドクター、月城この葉はもの静かな知的美人。
長い黒髪とFカップの胸、歯科医師としての腕に優れ、彼女目当てに通う男性患者も多いのだ。
だがこの葉は明晰な頭脳をもって、患者をはじめ、様々な人間関係に隠された真実をつかむ、名探偵としての顔も有しているのだ。
錦織デンタルオフィスの歯科衛生士・高橋彩女はそんなこの葉に憧れつつ、期せずして助手的な役割をつとめている。
たとえば、以下のように三つの独立した事件に――。


なんともゴージャスな歯科医院が舞台である。スタッフ全員が美形の女性で、プロ意識が強く、技術も一流なのである。なんだかんだと理由をつけて男性患者が予約を取りたがる気持ちはよくわかる。男性でなくともお世話になりたくなる歯科医院である。そんな歯科医院の個室で交わされる会話や、受付で得られる情報から、患者の抱える謎を解き明かしてしまう名探偵のような存在なのもまた、美人歯科医・この葉と歯科衛生士・彩女のコンビなのである。しかも、この葉は、自らの父の死に疑問を抱き、その謎を何とか解きたいという思いをずっと抱え続けているのだった。ゴージャスな気分と、見事な推理、そして歯科治療の裏側もちょっぴり覗けて、いろいろ愉しめる一冊である。

偶然屋*七尾与史

  • 2016/08/24(水) 20:50:18

偶然屋
偶然屋
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七尾 与史
小学館
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その「偶然」は仕組まれたものかもしれない

出会いと別れ、栄光と挫折、幸福と不幸、そして生と死・・・・・・。
運命だと思っていたことは、実はすべて仕組まれていたのかもしれない!?

弁護士試験に挫折して就職活動中の水氷里美は、ある日、電信柱に貼られた「オフィス油炭」という錦糸町にある会社の求人広告を見つける。藁にもすがる思いで連絡を入れると、面接場所に指定されたのは、なんとパチンコ屋!?
数々のミッションをなんとかクリアした里美に与えられたのは「アクシデントディレクター」という聞き慣れないお仕事だった――。
確率に異常にこだわる社長の油炭、かわいいけれど戦闘能力の超高い女子中学生・クロエとともに、里美はクライアントからの依頼を遂行していくが、あるとき「偶然屋」たちの前に、悪魔のような男の存在が浮かび上がる・・・・・・。

ブラックユーモアミステリーの名手、本領発揮!
『ドS刑事』シリーズなどで人気の著者の新たなる代表作!!


なかなかうまくいかない就活中、偶然見つけた電柱に貼られたアシスタントディレクターの求人広告に飛びついて、指定された場所に行ってみると、そこはパチンコ屋で……。始まりからしてほんとうに偶然?と思わされる出来事で幕を開ける。アシスタントディレクターというのは、里美の早とちりで、実際はアクシデントディレクター=偶然屋だったのだが、とりあえず見習いとして採用された里美は、なんとか与えられた仕事をクリアしていくのである。そうしているうちに、時間を前後してあちこちで起こっていた、まったく無関係と思われる事件にある共通項を見つけ、恐ろしい企てに巻き込まれていくのである。偶然なんてないのかも。ドミノ倒しのように、最初のピースが倒れたときには、既に決められたシナリオに向かって、ひとつの絵を描くだけなのかもしれないとさえ思ってしまう。コミカルなタッチで軽く読めるのだが、かなり深く怖い物語でもある。里美と油炭のこの先も気になるし、もっと続きを読みたい一冊である。