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おっぱいマンション改修争議*原田ひ香

  • 2019/07/09(火) 07:41:24

おっぱいマンション改修争議
原田 ひ香
新潮社
売り上げランキング: 418,408

いまは亡き天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」。立地もデザインも抜群、できた当時はあこがれの住居、いまでは、終の住処として、人気を保ち続けていた。だが、重大な問題が発覚!勃発した改修騒ぎは、建築家の娘、学生運動あがりの引退した教師、秘密を抱えた元女優、天才の右腕たちの人生を、秘密を、理想を呑み込んで―。建て替えるべきか、残すべきか。正義の審判の行方は?人生最大のお買い物は、人生最悪のドラマを生む!?


タイトルから想像するのは、住人たちのコミカルな騒動だが、実際はもっとずっと深刻な物語である。住人それぞれが終の棲家として購入し、現在も日々を過ごしているかつて最先端だったマンション。そこには住人の数だけ腎性があり、決して途中で投げ出せるものではない。そして、建築した側の関係者やその家族にもそれぞれの思いがあり、それぞれの人生があるのである。そんな中で起こった改修話は、登場人物たちそれぞれにこれまでとこれからの自分のことを考えるきっかけを与えたのではないだろうか。思い入れ、利害、諦めや希望、いろんな気持ちが絡まりあって、改修争議は混迷を深めるのだった。ものがなしく、切なく、他人事であればくすりと笑ってしまいもする一冊である。

DRY*原田ひ香

  • 2019/03/24(日) 16:34:07

DRY
DRY
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原田ひ香
光文社
売り上げランキング: 25,802

北沢藍は職場の上司と不倫して、二人の子供を置いて家を出た。十年ぶりに実家に戻ると、男にだらしない母と、お金にがめつい祖母がうら寂しく暮らしていた。隣に住む幼馴染の馬場美代子は家族を見送り、今は祖父をひとりで看ている。介護に尽くす彼女は、孝行娘とあがめられているが、介護が終わったその先はどうやって生きていくのだろうか。実は、彼女の暮らす家には、世間を震撼させるおぞましい秘密が隠されていた。注目の作家初のクライムノベル。


タイトルに込められたいろいろな意味を知るにつれ、やるせない思いがどんどん募る。負のスパイラルにはまり込むと、無意識のうちに思考回路の一部が切断されたようになり、これほどまでに選択肢が狭められるのだろうか、と気が重くなる。だが、読み進めていくうちに、だんだん藍や美代子の心の動きがわかってくると、その時選ぶ道はそれが最善のような気がしてきてしまうから恐ろしい。罪に手を染めるきっかけなんて、ほんの一回の歯車のずれだけなのかもしれないとさえ思えてくる。胸の中を冷たい風が吹き抜けるような一冊だった。

ギリギリ*原田ひ香

  • 2019/01/03(木) 19:18:10

ギリギリ
ギリギリ
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原田 ひ香
KADOKAWA/角川書店 (2015-09-30)
売り上げランキング: 781,094

女性管理職として仕事に没頭する瞳。前夫の一郎太が過労死した寂しさをまぎらわすかのように、同窓会で再会した脚本家の卵の健児と再婚した。瞳と健児のもとには、一郎太の母親や不倫相手から細々と連絡があり、相談に乗ったり、一郎太の不在を嘆いたりしている。ある日、瞳はゴミ箱のなかから健児が書いた脚本の草稿を見つけ、自分が選んだ道に疑問を感じるようになるが…。


瞳の心情と健児の心情が交互に語られる。大切な人を亡くしたり、脚本家としてなかなか芽が出ない不甲斐なさを抱えていたり、お互いに頼りあってはいるが遠慮もある瞳と健児である。そこに、亡くなった前夫・一太郎の母の静江さんの存在や、一太郎の不倫相手だったという冴子さんの存在が入り込んできて、さらに素直なだけではいられなくなるのだった。何となく流れで再婚してしまったが、どことなく危うい地盤の上に立っているような不安定さが始終つきまとっていて、読む者にもどかしさを感じさせる。互いに必要としているのに素直になり切れず、かといって、はっきり問いただすこともできずに抱え込んだものは、日々積もり積もってはけ口をなくすのである。二人が前に進むには、こうするしかなかったのだろうか。切なさの残る解決でもある。とはいえ、思わず苦笑してしまうこともあったりして、軽快に読める一冊ではある。

復讐屋成海慶介の事件簿*原田ひ香

  • 2018/08/30(木) 07:52:28

復讐屋成海慶介の事件簿
双葉社 (2015-12-16)
売り上げランキング: 83,492

男に騙され、会社も辞める羽目になってしまった元OLの神戸美菜代は、凄腕の復讐屋がいるという噂を聞きつけ、その男、成海慶介の事務所を訪ねる。が、お金がないこと、社会的信用がないことを理由にけんもほろろに追い返されてしまう。諦めきれない美菜代は弟子入りを志願、押しかけ秘書として成海の事務所で働きだすが――。


本作の前に読んでいた桑潟幸一准教授(クワコー)のダメダメぶりに引きずられて、成海も同類のような先入観で読み始めてしまったことを、まずは成海氏に謝らなければならない。これといって働いていないようには見えるが、それにはちゃんと理由があり、結果として依頼人の心を安らかにする手助けになっている。なかなかやるではないか。ひょんな成り行きから実質の弟子になっている美菜代も思いのほか役立っているようで、好感の持てるコンビだと思う。ぜひ次の展開を見たいので、シリーズ化をお願いしたい一冊である。

三千円の使いかた*原田ひ香

  • 2018/08/23(木) 16:09:58

三千円の使いかた (単行本)
原田 ひ香
中央公論新社
売り上げランキング: 17,860

24歳、社会人2年目の美帆。貯金に目覚める。29歳、子育て中の専業主婦、真帆。プチ稼ぎに夢中。55歳、美帆・真帆の母親、智子。体調不良に悩む。73歳、美帆・真帆の祖母、琴子。パートを始める。御厨家の人々が直面する、将来への不安や人生のピンチ。前向きに乗り越えたいからこそ、一円単位で大事に考えたい。これは、一生懸命生きるあなたのための家族小説。「8×12」で100万円貯まる?楽しい節約アイデアも満載!


御厨家の主に女三世代の生き方術あれこれである。節約術が多くを占めるが、人生の岐路における選択術や、人間の価値の見極め方、自分の人生への責任の持ち方、などなど、琴子さんの年の功的アドバイスが腑に落ちるし、格好いい。三世代、それぞれ置かれた状況や立場は違うが、誰もが一生懸命に日々を生きているのが何より好感が持てる。愉しい読書タイムを過ごせた一冊である。

5時過ぎランチ*羽田圭介

  • 2018/08/10(金) 18:28:39

5時過ぎランチ
5時過ぎランチ
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羽田 圭介
実業之日本社
売り上げランキング: 244,431

ガソリンスタンドのアルバイト、アレルギー持ちの殺し屋、写真週刊誌の女性記者。日々過酷な仕事に臨む三人が遭遇した、しびれるほどの“時間外労働”!芥川賞作家・羽田圭介だから書ける、限りなく危険なお仕事&犯罪小説!


タイトルから、もっとほのぼのとした物語かと思いきや、なんとも過酷なお仕事ものがたりだった。とはいえ、ただのお仕事ものがたりと思ったら大間違い。過重労働、時間外労働、など、危ない仕事の現場がぎっしりと詰まっているのだった。GSを舞台にした『グリーンゾーン』では、著者が三か月くらい実際にバイトでもしたのではないかと思わせるような、詳細な業内容が描かれていて、車のことは全くわからないながら、その忙しさは充分すぎるほど伝わってきた。さらに、『内なる殺人者』と『誰が為の昼食』は全く別の物語かと思ったのだが、緩やかにつながっていて、最後の最後でそういう落ちになるのか、と納得させられる構成になっていて、二度おいしい気分になれる一冊でもある。

失踪.com 東京ロンダリング*原田ひ香

  • 2017/12/16(土) 16:35:16

失踪.Com 東京ロンダリング
原田 ひ香
集英社
売り上げランキング: 264,916

事故物件に住み部屋をロンダリング(浄化)する人材を斡旋する相場不動産。ある時から、なぜかその関係者が次々と相場不動産を離れていく。背後に妨害工作の動きを察知し、調査を始めた仙道は、とある事実を突き止める。相場と共に、巨大勢力と戦おうと立ち上がった仙道が決断したこととは…。


事故物件のロンダリングと失踪者探し。どちらも社会の裏側を見据える仕事である。相場と仙道の二人が扱った案件に関わった人たちが、後半、次々といささか怪しげな感じになってくる辺りで、何か大きな力を感じるが、弱小会社にそこまでするか、と思わなくもない。それを除けば、人間の屈託が絶妙に描かれていて惹きこまれる一冊だった。

東京ロンダリング*原田ひ香

  • 2017/12/13(水) 17:11:48

東京ロンダリング
東京ロンダリング
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原田 ひ香
集英社
売り上げランキング: 84,836

内田りさ子、32歳。わけあって離婚。戻るべき家を失い、事故物件に住むことを仕事にした彼女。失意の底、孤独で無気力な毎日を過ごしていた―。移り住む先々で人と出会い、衝突しながら、彼女は何を取り戻したのか。東京再生、人生再生の物語。


初めのうちは、主人公のりさ子が、自分の不貞で離婚してすべてを失ったとは言え、とにかく暗く、覇気がなく、自信もなく、一生部屋に籠っていそうな雰囲気で、先が心配になるほどだった。だが、行く先々で出会う人たちに少しずつ影響を受け、ほんの少しずつだが、本来の自分を取り戻していく様子に、(まだまだもどかしい部分が多いが)多少なりともほっとさせられる。いつの日か、作り笑いではない自然な笑顔ができるようになればいいと、願ってしまう。この先が知りたくなる一冊である。

人生オークション*原田ひ香

  • 2017/09/11(月) 18:35:20

人生オークション
人生オークション
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原田 ひ香
講談社
売り上げランキング: 1,612,216

不倫の果てに刃傷沙汰に及んでしまい、謹慎中のりり子叔母さん。就職が決まらずアルバイトをする私は、気分転換にと、一人暮らしを始めた叔母の様子を見に行くことに。そこで目にしたのは、トラック一台分はある、大量のダンボール。処分に困った二人はそんな「お荷物な過去」をせっせとオークションにかけてゆくが…。“欲しいもの”を手放していく叔母と、“欲しいものが欲しい”私。世代も生き方も異なる二人を鮮やかに描く、ちょっとしたご縁のハナシ。


示談にこそなったが、不倫の果てに相手の妻を刺して逮捕されたりり子叔母さんは、親族のもてあまし者となり、元夫が送りつけてきた大量の荷物に埋もれるようにして、無気力にただそこにいた。就活に失敗し、アルバイトだけでぶらぶらしている瑞希に白羽の矢が立ち、りり子叔母さんの様子を見に行く役目を押しつけられた。段ボールの山の中には、ほとんど使っていないブランド品もたくさんあり、瑞希は渋るりり子を説得してオークションに出してみることにしたのだった。予想以上の高値がついたり、梱包して発送したり、オークション特有の言葉遣いに違和感を覚えたりしながら、荷物は少しずつ減り、口座の残高は少しずつ増え、それなりに愉しむようにもなっていった。初めはりり子を敬遠していた瑞希だったが、事件の真実や、りり子の胸の裡を知るにつれ、義務感だけではない気持ちが芽生えてくるのだった。自分のことは、解っているようで解っていない。なにが足りなくて、なにが過剰なのか、ほんとうはどうしたいのか、などなど、人間というものの不思議を考えさせられる一冊でもある。

踊れぬ天使 佳代のキッチン*原宏一

  • 2017/06/21(水) 16:09:30

踊れぬ天使 佳代のキッチン
原宏一
祥伝社
売り上げランキング: 46,221

毎日大量に注文してくる疲れ顔の主婦、茶栽培に励む脱サラ夫になぜか冷たい妻、
笑顔に時おり影がさすロングライド女子……
ワケありな人びとの心を優しく満たす、とびっきりの一皿。
移動調理屋・佳代のおいしい料理が、温かな出会いと縁を繋ぐ絶品ロードノベル。
『ヤッさん』『床下仙人』の著者最新作!


第一話「おみちょの涙」  第二話「チャバラの男」  第三話「ロングライド・ラブ」  第四話「踊れぬ天使」  第五話「モンクス・ドリーム」  最終話「カフカの娘」

今回も、日本全国あちこちを旅しながら、その土地その土地の産物や調味料を使い、そこの人たちの知恵と力も借りて、調理屋を営んでいる佳代である。両親を探すという悲壮感はすっかり薄れ、未知の食べものに対する好奇心や、人々との触れ合いを愉しみ、ある時は巻き込まれて悩みながら、刻々と成長しているように見える。弟・和馬の言うところの根っからのおせっかい体質で、知り合った人たちの気持ちのもつれをほぐしてしまうのも、おいしい料理があればこそなのかもしれない。早く素敵な人と出会って落ち着いてほしいという思いと、いつまでも放浪し続けてほしいという思いで悩ましいシリーズでもある。

ロスト・ケア*葉真中顕

  • 2017/01/13(金) 09:25:55

ロスト・ケア
ロスト・ケア
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葉真中 顕(はまなか・ あき)
光文社
売り上げランキング: 310,854

社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。


X県八賀市が舞台。羽田洋子、斯波宗典、佐久間功一郎、大友秀樹、そして、裁判で死刑が確定した<彼>の立場で、交互に物語が進められる。八賀市で親の介護に苦悩する人たちと、介護施設職員の仕事の過酷さの現状が、かなり具体的に描かれていて、胸が潰れる心地であるが、他人事とは到底思えず、ページを閉じたくなるのに目が離せないという矛盾が起こる。介護の現状と社会制度の脆弱さのギャップを考えずにはいられないが、それが厳然としてある現状で、なにがいちばんの大作なのだろうかと考えると、答えが見つからない。<彼>の行為は罪なのだろうか、それとも救いなのだろうか。重く深く考えさせられる一冊である。

三人屋*原田ひ香

  • 2016/10/12(水) 16:47:50

三人屋
三人屋
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原田 ひ香
実業之日本社
売り上げランキング: 298,969

朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナック―時間帯によって出すものが変わるその店は、街の人に「三人屋」と呼ばれていた。三女にひと目ぼれするサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店の店主、女にもてると自負するスーパーの店長など、ひとくせある常連客たちが、今日も飽かずにやって来る…。さくさくのトースト、すだちの香るぶっかけうどん、炊きたての白飯!心も胃袋もつかむ、おいしい人情エンターテインメント!


両親が亡くなった後、営んでいた喫茶店を、朝は三女の朝日がモーニングを出し、昼は次女のまひるがうどん屋をやり、夜は長女の夜月がスナックを営んでいることから、近所では「三人屋」と呼ばれている。姉妹は、両親の生前からのさまざまな確執によって仲が悪く、ことに長女と次女はほとんど口をきくことさえない。ただ、生前、小さなオーケストラのピッコロ奏者だったという父が、たった一度録音したレコードを探し、父のピッコロを聴くという夢だけを共有している。盛り込まれた要素はどれも興味深く、先を知りたくなるようなものなのだが、それぞれの掘り下げ方がいささか散漫になっている印象である。ラストは、姉妹間の感情の問題だからだろうか、あまりにもあっけなく、肩透かしされたような不消化感が残る。おもしろかったが、もう少し突き詰めてほしかった気もする一冊である。

絶叫*葉真中顕

  • 2016/10/11(火) 19:08:29

絶叫
絶叫
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葉真中 顕
光文社
売り上げランキング: 80,870

平凡な女、鈴木陽子が死んだ。誰にも知られずに何カ月も経って……。
猫に喰われた死体となって見つかった女は、どんな人生を辿ってきたのだろうか?
社会から棄てられた女が、凶悪な犯罪に手を染め堕ちていく生き地獄、魂の叫びを描く!


まず冒頭に、ひとりの男性が殺害された新聞記事が置かれている。それに続くプロローグで、物語の主人公である鈴木陽子は、多数の猫に食い荒らされて死因すらわからない孤独死状態で発見されるのである。物語は、陽子が幼いころから順を追って、彼女を「あなた」と呼ぶ誰かによって語られる章と、捜査する刑事・奥貫綾乃の視点で語られる章とが交互に繰り返される形で進んでいく。無残な死体となるまでの陽子の生き様は、ほんの少し踏み出す角度がずれていたら、誰もが陥ってしまったかもしれない道筋のように思われ、そのときどきには抗うことができなかっただろうと、絶望的な気分にさせられる。それでも、なんとかならなかったのは、やはり彼女の育った環境と、それを跳ね返せなかった彼女自身の弱さゆえなのだろうか。さまざまな汚れ仕事を経験し、犯罪の片棒を担ぐまでになってしまった彼女だが、彼女を「あなた」と呼ぶ人物に光が当たったとき、驚きに目を瞠るとともに、なぜか少しだけほっとしてしまったのも事実である。読み始めたら目を離せなくなる一冊である。

ビューティーキャンプ*林真理子

  • 2016/08/12(金) 07:11:54

ビューティーキャンプ
林 真理子
幻冬舎 (2016-02-25)
売り上げランキング: 33,123

苛酷で熾烈。嫉妬に悶え、男に騙され、女に裏切られ。ここは、美を磨くだけじゃない、人生を変える場所よ。並河由希の転職先はミス・ユニバース日本事務局。ボスは、NYの本部から送り込まれたエルザ・コーエン。ブロンドに10センチヒール、愛車ジャガーで都内を飛び回り、美の伝道師としてメディアでひっぱりだこの美のカリスマだ。彼女の元に選りすぐりの美女12名が集結し、いよいよキャンプ開始。たった一人が選ばれるまで、運命の2週間。小説ミス・ユニバース。


読む前に抱いていた期待の方向が間違っていたのかもしれないが、肩透かし感があったことは否めない。もっとドロドロした精神的心理的な闘いが描かれているのかと思ったのだが、ファイナリストたちの内面にはさほど踏み込んでいるとは言えず、由希の目を通したさらっとしたレポートといった印象である。もっと個性と個性のぶつかり合いが見たかった気がする一冊である。

夏のバスプール*畑野智美

  • 2015/12/07(月) 07:20:23

夏のバスプール
夏のバスプール
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畑野 智美
集英社
売り上げランキング: 598,434

夏休みまであと5日! 青春初恋物語
2012年、世界は12月で滅亡するとの噂だが、高校1年生の涼太は、仙台から来た同級生に恋をする。一風変わった彼女には複雑な事情が…? 小説すばる新人賞受賞第一作、胸キュン青春小説!


夏の、ときて、バスプールと続くので、泳ぐプールを連想してしまったのだが、バスターミナルのことらしい。
夏休み直前の高校一年生の物語である。彼らみな、まだ何者でもなく、それぞれが鬱屈した想いを抱えながら、一般的に見れば広いとは言えない自分の場所で、その時その時にいちばんいいと思ったことをしている。あるときは逃げ出し、籠り、爆発させ、弾け、頭を抱えるが、あしたが少しでも良くなればいいという漠然とした気持ちは伝わってくる。絶対的に良い人も悪い人もいなく、ひとりの中にさまざまなその人がいて揺れている様が、この年代ならではのもどかしさを絶妙に描いている。彼らがよくびしょ濡れになっているからというわけではないが、瑞々しい一冊だった。