fc2ブログ

殴られた話*平田俊子

  • 2010/10/12(火) 16:38:07

殴られた話殴られた話
(2008/11/05)
平田 俊子

商品詳細を見る

こんなに痛いのは、殴られたからじゃない! ピアニストの椎名と不倫関係にある「わたし」だが、彼には他にも女がいる・・。息が詰まるほどのディテール。一人称ならではの効果が、作品の完成度を高めている。


表題作のほか、「キャミ」 「亀と学問のブルース」

ぐだぐだぐずぐずと重い話である。それなのになぜか厭な気分にさせられることはない。女は哀しい。それに比してこれらの物語に出てくる男は一様に不甲斐ない。ご都合主義のいいとこ取りでいつも逃げ腰である。どうして彼女たちはこんな男に、とだれもが思うのだろうが、男と女というのはことほどさように厄介なものなのである。という一冊である。

スロープ*平田俊子

  • 2010/04/16(金) 11:10:45

スロープスロープ
(2010/01/30)
平田 俊子

商品詳細を見る

心の深みから湧き上がる言葉で紡がれた物語さかをのぼるように、さかのぼる時と心。「言葉」と「言葉」が繋がり、重なり、踊りながら、物語を紡いでいく。詩人ならではのリズムを底に秘めた絶好小説世界。


独特の雰囲気を持つ一冊である。物語だと思って読んでいると、エッセイのようでもあり、また覚書のようでもあり、読み進むうちにまた物語に戻り、エッセイにつづく。坂道を下っていたらいつのまにか上っていたような、無意識のうちに騙されたような心地にさせられもする。いろんなところに坂はあり、傾斜がついていればそれは坂である。物理的に、心情的に、さまざまな坂のことが書かれているのは確かである。

私の赤くて柔らかな部分*平田俊子

  • 2009/09/27(日) 16:44:22

私の赤くて柔らかな部分私の赤くて柔らかな部分
(2009/07/31)
平田 俊子

商品詳細を見る

失恋の痛みをかかえ、私はある日突発的に旅に出る。終着駅に辿りついた私は、帰るきっかけを失って……。生きることのよるべなさと虚実ないまぜのマジカル世界。言葉の魔術師・平田俊子の新境地!


七月七日に亡くなった信頼する上司のお別れの会が九月九日にあった。彼に会えるかもしれないと来てみたが、会えるはずもなく、まなみはふらりと会場を抜け出し、そのままふらりといつも乗らない電車に乗った。たまたま降り立った知らない町は、なにもかもが見知らぬもので頼りなかったが、駅から離れたステーションホテルの一室をなかなか立ち去ることができなくなるのだった。
お子様ランチが主なメニューの上田食堂の上田宇枝、ホテルのフロントマン八十八(やどや)、その弟の照穂、犬が吠える店。寄る辺ない町で、行きずりの女から少しずつ変容しながら、まなみは自分の中の何かをあきらめ、何かと折り合いをつけられたのだろうか。
現実と妄想のあわいを行ったり来たりするような、ふわふわとした心許なさと、赤をモチーフにしたむき出しの痛みとが、ときに痛く苦しく、ときに心地好く感じられる不思議な味わいの一冊だった。

さよなら、日だまり*平田俊子

  • 2009/09/18(金) 18:37:46

さよなら、日だまりさよなら、日だまり
(2007/07)
平田 俊子

商品詳細を見る

用意周到な占い師(♂)と、ミステリアスな友達(♀)。浮気性の夫と、占いなんか信じないはずだった「わたし」。4人が仲よくなればなるほど、どこか不安になる―。ある晩をさかいに、それは現実のものとなった。野間新人賞受賞後の最新小説。


律子は夫とふたり暮らし、子どもはまだいない。雑誌やPR誌に原稿を書く仕事をしているが、最近物足りなさを覚えるようになっていた。そして、夫の浮気をほんの少し疑ってもいた。
そんなとき、仕事関係の知人の祝賀会で女優で歌人のユカリと知り合い、夫の愚痴をぶちまけてしまう。ユカリは、よく当る占い師を知っていると言い、さっそく須貝と引き合わされたのだったが・・・・・。
知り合いだとか、友人だとか思っていると、なんとなく噛み合わないところがあっても見過ごしてしまったりすることがある。そんな風に巧妙に近づかれ、親しくなって、いつの間にか騙されていることにも気づかずにいる。その結果、とんでもないことになり、初めて目が醒めるのである。しかしそのときはもう遅い。引き返すポイントは無数にあったのに、ことごとく素通りしてしまう律子(と夫)がもどかしくてたまらなかった。そんなむなしさを感じさせる一冊だった。

密室は眠れないパズル*氷川透

  • 2008/11/06(木) 13:54:02

密室は眠れないパズル密室は眠れないパズル
(2000/06)
氷川 透

商品詳細を見る

エレベーターの前で胸を刺された男は「常務に、いきなり刺された」と、犯人を名指しして絶命した。“殺人犯”は、エレベーターで無人の最上階へ向かうところを目撃される。電話は不通、扉も開かない。ビル内には犯人を含めて九人だけ。犯人はなぜ逃げようとせず、とどまっているのか―。やがて最上階のエレベーターは下降を始めた。そして扉が開く。そこには、背中を刺され、血まみれで息絶えた常務が倒れていた。―いったい誰が、いかなる方法で殺したのか。常務が犯人ではなかったのか。積み重ね、研ぎすました論理の果てに行く着くのは八人の中の一人。新鋭が読者に挑戦する正統派長編本格推理。


著者が出会った事件の経緯を小説にする、という形式である。なので、著者=氷川透が登場し、最終的には探偵役も務める。
犯人は、割と早い時期からなんとなく目星がついてしまったが、さまざまな可能性を提示し、ひとつずつ潰していく過程が面白かったし、犯人自身にそれを認めさせるための氷川の謎解き場面も、自信がありそうななさそうな微妙なスタンスが好ましかった。

> more >>>

滴り落ちる時計たちの波紋*平野啓一郎

  • 2005/02/08(火) 13:04:06

☆・・・・


 おそるべき作品集
 9篇の小説、9種の企み、9つの輝き、
 文学の可能性のすべてがここに。

                            (帯より)

帯には著者の言葉として
≪この作品集は、僕という作家が「一体、何をしようとしているのか」を、
 より具体的に明かしてくれるのではないかと思っています。≫

とも書かれているのだが、正直言って、私には著者が何をしようとしたのかは見当もつかなかった。
『初七日』や『最後の変身』では、その題材や主人公の情動に共感を覚える部分も多かったのだが、この作品たちをこのようにまとめ、並べた意図は、やはりまったく私には理解できなかった。