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探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線*東川篤哉

  • 2022/01/24(月) 16:30:42


勤め先のスーパーをクビになり、地元・武蔵新庄で「なんでもタチバナ」をはじめた橘良太。最近は名探偵一家の主である綾羅木孝三郎の娘・有紗のお守役を仰せつかっている。しかしこの有紗が曲者で、幼いながら名探偵気取り。
実際、推理力は父親をしのぎ、数々の難事件を解決してきた。
そんなある日、依頼先に出かけた良太が密室殺人に遭遇してしまい……。

溝ノ口&南武線を舞台に凸凹コンビが大活躍!
王道のユーモアミステリー、堂々の完結


完結編ということである。だが、最後のやり取りからすると、イギリスで世界的名探偵の母と共に謎を解き、さらにパワーアップして帰ってきたアリサと良太は、きっとまた溝口で出会うと信じたい。しばらく間をおいても、ぜひまたその後を見守りたいものである。今回は、アリサの父・孝三郎も、少しだけ名探偵としての片鱗を見せてくれて、ちょっとほっとしたり。愉しませてもらったシリーズである。

探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます*東川篤哉

  • 2021/09/20(月) 18:29:48


勤め先のスーパーをクビになり、地元・武蔵新城で
『なんでも屋タチバナ』を始めた俺、橘良太。
三十一歳。独身。長所、特になし。特技は寝ること。
最近は、隣駅の溝ノ口に住む名探偵一家の主・綾羅木孝三郎がお得意様。
娘の綾羅木有紗の子守役を仰せつかっている。
しかしこの有紗、10歳にして名探偵を気取っており、
俺が依頼された事件にことごとく首を突っ込みたがる。

そんなある日、孝三郎の代わりに有紗と高橋さん一家の奥多摩バーベキューに
付き添っていたら、なんと溺死体に遭遇してしまい……! ?

美少女探偵×ヘタレ三十路男による
爆笑必至のユーモア・ミステリー


今回はほんとうに泣かなかったな、アリサちゃん。そして、良太との上下関係もしっかりと定着し、もはやすっかり名探偵と役に立たない助手、という感じである。でも、いくら名探偵とは言え、10歳の女の子、公の場では大人がいないと発言の信憑性も危ういということで、かろうじて良太も役に立つ、というものである。とは言え、助手・良太、謎解きに自ら役立てられるかどうかは別として、結構な確率で、いいヒントに行きあたっているのも確かで、それがアリサの役に立っているとも言えるのである。なんともまどろっこしい。まだまだ溝口界隈、熱そうなので、次も愉しみなシリーズである。

探偵少女アリサの事件簿*東川篤哉

  • 2021/09/03(金) 07:38:43


名探偵は小学生! ?
天才探偵少女とヘタレ三十男の迷コンビが難事件に挑む!
東川篤哉、最新ユーモア・ミステリ!

就職先のスーパーを誤発注した大量のオイルサーディーンとともにクビになり、
地元で「なんでも屋タチバナ」を始めた、俺、橘良太。 三十一歳、独身、趣味は
ナシ、特技は寝ること。そんな平凡な三十男の俺にある日、子守り依頼が舞い込んだ。
報酬につられて出かけた豪邸で待ちかまえていたのは、ロリータ服の美少女。
わずか十歳にして自らを探偵と信じる無垢で無謀な少女、綾羅木有紗だった――。

「ねぇ、おじさん、あたしのこと、ナメてんじゃないの?」

なんでも屋の良太の前に現れた、探偵を名乗る十歳の美少女•有紗。
有紗に殺人鬼の濡れ衣を着せられた良太は、事件を一緒に調べることになって……。

天才探偵少女とヘタレ三十男の迷コンビが難事件に挑む、
東川篤哉、最新ユーモア・ミステリ!


両親ともに名(?)探偵の10歳の少女・綾羅木有紗と、冴えない三十男の橘良太という凸凹コンビの探偵物語である。「4」と「千」を見間違えたせいで、スーパーをクビになり、成り行きでナンデモ屋になった良太のもとに舞い込む依頼がきっかけで、事件に巻き込まれ、依頼者の娘として知り合ったアリサに引きずりまわされる格好で、いつの間にか探偵助手のようになっているのである。舞台は南武線・武蔵新城、溝の口辺り。絶妙なローカル加減で、舞台設定も人物設定も面白い。事件も、子どもが首を突っ込むにしては結構シビアで、日常の謎でありながら、殺人事件もじゃんじゃん起こる。すでにコンビで活動している体になっているので、次が愉しみなシリーズである。

谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題*東川篤哉

  • 2020/12/28(月) 07:41:02


謎解きと下町散歩はよく似合う―下町情緒に満ちた東京の谷根千(谷中・根津・千駄木)で、ミステリアスな雑貨屋店主・竹田津と天然女子大生・つみれが怪事件を解く!


鰯専門の居酒屋・鰯の吾郎を営む岩篠なめ郎の妹で、女子大生のつみれの目線で語られる物語。ひょんなことから知り合った、兄の友人らしい開運グッズショップ「怪運堂」店主の三十男・竹田津が、つみれが持ち込んだちょっとした謎を、谷根千をぶらぶら散歩しながら解き明かすという趣向である。傍目には、ぶらぶらしているようにしか見えないかもしれないが、勘所はきっちり押さえて、見事に謎を解きほぐす竹田津のキャラがいい。なぜかすべてつみれのお手柄と評判が立っているようなのに、気にする様子がないのも竹田津らしくてなかなかいい。もっともっと見たくなる探偵コンビの一冊である。

もう誘拐なんてしない*東川篤哉

  • 2020/06/27(土) 12:57:28


大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!?いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。


ドラマになったという記述も見かけたが、確かに映像向きかもしれない。ハチャメチャな設定に派手な展開。道具立てもぶっ飛んでいて、笑える要素も、じんとさせる要素もある。しかも、そもそもの誘拐の動機づけになった理由は、冒頭であっけなく解決されているので(本人たちは知らないが)、言ってみれば無駄などたばた騒ぎだったことになるのも愉快である。だが、表向きの愉快さの裏には、本気の企みが隠されていて、しかもこれが結構純愛だったりするところもなかなかである。気軽に読めて惹きこまれる一冊だった。

バタフライ*平山瑞穂

  • 2016/02/24(水) 07:28:19

バタフライ
バタフライ
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平山 瑞穂
幻冬舎 (2015-12-17)
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交差するはずのなかった、それぞれのままならぬ人生。
小さな勇気が奇跡の連鎖を起こす、書き下ろし群像ミステリー。

尾岸七海(13)は母の再婚相手に身体を求められていた。「この男を本当に殺したい」。島薗元治(74)は妻に先立たれ、時間を持て余している。「若い奴は全くなってない」。永淵亨(32)はネットカフェで暮らし、所持金は1887円。「もう死ぬしかないのか」。山添択(13)は級友にゴミ扱いされて不登校に。「居場所はゲームの中だけだ」。設楽伸之(43)は二代目社長として右往左往している。「天国の父に笑われてしまう」……。全く接点のなかった、困難に直面する一人ひとりの日常。誰かの優しさが見知らぬ人を救う、たった一日の奇跡の物語。


改めて、たった一日のできごとだと思うと、呆然とする。もともと何の関係もなかった人たちが、ふとした偶然から――意識的に、あるいは無意識に――関わり合い、その日一日の様相を変えていくのは、劇的であるようにも思えるが、考えてみると、誰の毎日にも必ず起こっていることなのだと気づかされる。タイトルはバタフライ効果を想起することが狙いだと思われるが、そう言うには、いささか繋がり方が偶然過ぎるところがなくもない気はする。ほんの些細な――出会いとも言えない――かかわりによって、流れというのはこうも簡単に変わっていくのかと驚かされる一冊である。

純喫茶「一服堂」の四季*東川篤哉

  • 2015/12/19(土) 17:12:52

純喫茶「一服堂」の四季
東川 篤哉
講談社
売り上げランキング: 107,958

古都・鎌倉でひっそりと営業する古民家風喫茶「一服堂」。エプロンドレス姿の美人店主は、恥ずかしがり屋で人見知り。しかし、事件となるとガラリと人が変わってしまう。動機には一切興味がない安楽椅子型の名探偵が「春」「夏」「秋」「冬」の4つの事件を鮮やかに解く、連作シリーズ!


安楽椅子と書いて、「あんらくよりこ」と読む。純喫茶「一服堂」の店主にして、安楽椅子探偵である。個人的には、客の話す猟奇殺人の内容を聞き、突如スイッチが入るときに、カップやグラスを叩き割るのは、いささかいただけない気がするが、そのギャップにやられる人もいるのかもしれない。常連客が連れてきた新しい客が常連になったりして、季節ごとの連作になっているのだが、仕掛けがさまざま配されていて工夫されている印象ではある。すでにあるこの手の物語のテイストを少しずつ寄せ集めた感がなくはないが、そこそこ愉しめる一冊ではあった。

遠い夏、ぼくらは見ていた*平山瑞穂

  • 2015/08/23(日) 17:02:34

遠い夏、ぼくらは見ていた (幻冬舎文庫)
平山 瑞穂
幻冬舎 (2014-10-09)
売り上げランキング: 372,145

十五年前の夏のキャンプに参加した二十七歳の五人がキャンプ主催者の遺言執行人に集められた。当時ある行為をした者に遺産三十一億円を贈ると告げられる。行為の内容は伏せられたまま、五人にはキャンプの詳細を思い出すことが課せられた。莫大な金への欲に翻弄されながら、各々が遠い夏の日を手繰り寄せる……。人の記憶の暗部に迫るミステリー。


『偽憶』を加筆・修正し、改題したもの。文庫版のタイトルの方が、読みたい欲求をそそられる。同じ場所にいても同じものを見ているとは限らず、たとえ同じものを見ていたとしても同じように感じるとは限らない。そして、人の記憶というものは、時を経るにしたがって、自分の都合のいいようにどうにでも変えることができるのである。たとえそれが無意識だとしても。小学六年の夏に母親に薦められて参加したキャンプ。それから十五年が経って、降って湧いたような莫大な遺産話。その後亡くなった一人を除く五人の男女は、その後の生き方も現在の状況もさまざまであり、受け止め方もそれぞれであるが、なんとかそのときのことを思い出そうとする。その中で、初めは存在さえも忘れていた、故人となった志村広弥の様子が意味ありげに思い出されるのだった。遺産話の真偽は、途中の会話の中のひと言で、疑いが濃くなるが、何のための企てなのかが明らかになったとき、それまでの伏線が一本の道筋を照らし出す。と思ったのだが、それからまた展開があり、さらに人の記憶の不確かさに驚かされることになる。ラストは予想しなかったが、救われる心地がする。中盤から俄然目が離せなくなる一冊だった。

ザ・タイガース 花の首飾り物語*瞳みのる

  • 2014/02/05(水) 17:17:11

ザ・タイガース 花の首飾り物語ザ・タイガース 花の首飾り物語
(2013/11/29)
瞳 みのる

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ザ・タイガースが完全復活!花の首飾り物語

2011年12月、慶應高校教師だった瞳みのるが40年ぶりに復帰し、GS世代から熱い注目を浴びた「ザ・タイガース コンサート」。その時の大反響ぶりから、今年12月には、遂にトッポこと加橋かつみも加えたオリジナルメンバーで全国ツアーが開催されることになった。東京、大阪ではドームで開催するコンサートにもかかわらずチケットは完売状態で、今年はさらに大きなムーブメントになることは必至である。今だから話せるタイガースのデビュー当時の秘話や、これまで参加を渋っていた加橋が辿ってきた道のり、そして今回、加橋の参加でオリジナルバージョンが披露される「花の首飾り」の誕生秘話を紹介する。1968年に発表された「花の首飾り」の歌詞は一般公募されたもので、その後、多くのミュージシャンがカバーした。この曲のルーツを瞳みのるが訪ね、すぎやまこういち氏、橋本淳氏、なかにし礼氏、井上陽水氏などへのインタビューも収録した。


タイガースがデビューしたころ、わたしは小学校高学年で、GSに特別な興味はなかったのだが、タイガースはほかのグループとは少し違った特別な場所に立っているような印象がある。数あるタイガースの歌の中で「花の首飾り」が取り上げられているのは、大ヒットしたということもあり、歌詞が公募によるものだということで、歌の原点探しというミステリ風味が加味されてのことかもしれないとも思う。元の作詞者・菅原房子さんは、冬至19歳の女子学生だったが、その後の消息は不明だったのである。著者は、彼女の故郷を訪ね、さまざまな縁から現在の彼女を探し当て、電話でのインタビューを実現させた。彼女が応募した詞が元になって「花の首飾り」が生まれたことは確かなのだが、補作者のなかにし礼が作ったようなものだという見解を読んだときには、もやもやしたものが胸に広がったが、当のなかにし礼氏のインタビューを読んで、報われた心地になった。ひとつの時代を作ったタイガースの思わぬ舞台裏をのぞいたような一冊だった。

中途半端な密室*東川篤哉

  • 2012/04/19(木) 19:42:05

中途半端な密室 (光文社文庫)中途半端な密室 (光文社文庫)
(2012/02/14)
東川 篤哉

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テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ四メートルの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?そんなバカな!不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作)謎解きの楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編。


表題作のほか、「南の島の殺人」 「竹と死体と」 「十年の密室・十分の消失」 「有馬記念の冒険」

正直、「謎解き~」シリーズは、これ以上追いかけなくてもいいかな、という感じだったのだけれど、この短編集は、初期の頃の作品ということで、コミカルなタッチではあるものの、「謎解き~」シリーズほどぶっとんでいないからか、期待以上におもしろかった。ミステリ部分がしっかり立ち上がっているので、個人的にはこちらの方が好みである。表題作だけが十川一人が探偵役で、ほかは探偵役の山根敏とワトソン的な七尾幹夫のコンビが主役なのだが、彼らのシリーズならもっと読んでみたいと思わされる一冊だった。

放課後はミステリーとともに*東川篤哉

  • 2011/11/10(木) 07:42:50

放課後はミステリーとともに放課後はミステリーとともに
(2011/02/18)
東川 篤哉

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鯉ケ窪学園高校探偵部副部長・霧ケ峰涼の周辺には、なぜか事件が多い。
校舎から消えた泥棒、クラスメ-トと毒入り珈琲一族との関わり、校外学習のUFO騒動――
解決へ意気込む涼だが、ギャグが冴えるばかりで推理は発展途上。
名推理を披露するのは探偵部副部長なのかそれとも? ユーモア学園推理の結末は?


タイトルどおりの高校が舞台の学園物である。探偵役は霧ケ峰涼。探偵部の副部長である。だが、積極的に推理し、謎解きをしているというよりは、いつも巻き込まれ、誰かが披露した推理の穴を上手い具合に塞いでいるように見えなくもない。切れ者というよりも、愛すべき探偵役といったところだろうか。それにしても事件が多い高校である。という一冊。

19分25秒*引間徹

  • 2011/04/06(水) 16:55:23

19分25秒19分25秒
(1994/01)
引間 徹

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埋立地に誕生した人工の街を舞台に、夜な夜などこからともなくあらわれては消えていく謎の競歩選手と主人公を軸に、小気味よいテンポで、読む者を駆り立てる爽快な物語。


就職も決まった大学四年生男子が主人公である。ある日公園で、ものすごい速さで歩いている男と出会った。男の左膝から下はサイボーグのような義足だった。それが主人公と競歩の出会いだった。彼は、どういうわけか目が離せない男と張り合うように競歩にのめりこんでいくのだった。得たものよりも失ったものの方が多いことを自覚しながらも、止められない衝動によってトレーニングを重ねる姿は、まるで何かに取り憑かれたようにも見えるが、清々しくもある。出会いの妙と静かな衝動を感じさせられる一冊である。

密室に向かって撃て!*東川篤哉

  • 2011/01/09(日) 16:44:50

密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)密室に向かって撃て! (カッパ・ノベルス)
(2002/10)
東川 篤哉

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烏賊川市の外れ、鳥ノ岬にある十条寺食品社長宅に銃声が轟いた。撃たれたのは、偶然居合わせた「名探偵」鵜飼杜夫。失われた銃声の謎と「衆人環視の密室」に、鵜飼とその弟子が挑む。書下ろし長編推理小説。


烏賊川市シリーズ第二弾である。砂川警部と志木刑事、そして探偵・鵜飼杜夫と弟子になってしまった戸川流平が、烏賊川市の名士・十条寺家で起こった殺人事件に挑む。コミカルな筆致ながら、伏線は冒頭からすべて綿密に張り巡らされており、頼りないことこの上ないイメージの鵜飼探偵の推理力も意外や意外なかなかのものなので、はっとさせられること度々である。キャラクターのコミカルさとミステリの内容の充実度とのギャップがいい感じの一冊である。

謎解きはディナーのあとで*東川篤哉

  • 2010/12/23(木) 19:06:40

謎解きはディナーのあとで謎解きはディナーのあとで
(2010/09/02)
東川 篤哉

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執事とお嬢様刑事が、6つの事件を名推理!

ミステリ界に新たなヒーロー誕生! 主人公は、国立署の新米警部である宝生麗子ですが、彼女と事件の話をするうちに真犯人を特定するのは、なんと日本初!?の安楽椅子探偵、執事の影山です。
彼は、いくつもの企業を擁する世界的に有名な「宝生グループ」、宝生家のお嬢様麗子のお抱え運転手です。本当は、プロの探偵か野球選手になりたかったという影山は、謎を解明しない麗子に時に容赦ない暴言を吐きながら、事件の核心に迫っていきます。
本格ものの謎解きを満喫でき、ユーモアたっぷりのふたりの掛け合いが楽しい連作ミステリです。


第一話 殺人現場では靴をお脱ぎください
第二話 殺しのワインはいかがでしょう
第三話 綺麗な薔薇には殺意がございます
第四話 花嫁は密室の中でございます
第五話 二股にはお気をつけください
第六話 死者からの伝言をどうぞ


大富豪・宝生家の令嬢の麗子は国立署の警部である。そして直属の上司の風祭は中堅自動車メーカー・風祭モータースの御曹司。なにかと出自をひけらかす風祭と違い、麗子が宝生家の令嬢だと言うことは警察でもほんの一部しか知らず、彼女自身も隠している。だが、仕事が終わるや否や執事の影山が運転するリムジンが近くまで迎えに来て、麗子はそこでお嬢様に戻るのである。このわかりやすい設定とキャラクターがどたばた喜劇そのもので笑ってしまうが、面白い。執事の影山の人を食ったような慇懃無礼さもなかなかである。彼が見事な推理を披露する得意げな顔が目に浮かぶようである。大掃除の合間にも気軽に愉しめる一冊である。

密室の鍵貸します*東川篤哉

  • 2010/12/02(木) 17:02:23

密室の鍵貸します (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)密室の鍵貸します (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)
(2002/04)
東川 篤哉

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その日、烏賊川市立大学映画学科の四年生・戸村流平は、二つの死への嫌疑をかけられた。大学の先輩である茂呂耕作と、元彼女の紺野由紀。流平は、由紀の死に関しては完璧にアリバイがあるのだが、それを主張できない。なぜなら、由紀が死んだ夜、流平は鍵のかかった茂呂の部屋で、彼の死体を発見していたから…。緻密な構成と大胆なトリック、飄々とした筆致。極上の本格推理デビュー作。


コメディタッチの軽妙さで物語は進み、登場人物たちもコミカルな描かれ方をしているのだが、核を成す事件のありようは至って真面目な本格ミステリであり、そのギャップを含めて愉しめる一冊である。真犯人の動機が読み解かれたときには気が抜けたが、だからこその周到さだったのだと言うこともできるのかもしれない。