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初恋さがし*真梨幸子

  • 2019/08/11(日) 18:32:25

初恋さがし
初恋さがし
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真梨 幸子
新潮社
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成功も失敗も、かけがえのない記憶。だから会いたい、あの人に――。所長も調査員も全員が女性、その探偵事務所の目玉企画は「初恋の人、探します」。青春の甘酸っぱい記憶がつまった初めての恋のこと、調べてみたいとは思いませんか? ただし、ひとつご忠告を。思い出の向こう側にあるのは、地獄です――。他人の不幸は甘い蜜、という思いを、心のどこかに隠しているあなたに贈る、イヤミス極地点!


何となくほのぼのささえ感じさせるタイトルとは裏腹な表紙のイラストである。そして実際に、ほのぼのとは程遠い物語である。そこは著者、さもありなんである。ひとつの依頼ごとに章を成しているので、一話完結の物語集といった趣なのだが、次第にそれだけではないことが明らかになってきて、最終章ですべての点がつながるのである。そうまとめたか、という感じである。一話一話が充分厭な感じなのに、こう繋がることで厭度がさらに増し、背筋が寒くなる。他人事として読むには興味をそそられる一冊である。

ゆりかごに聞く*まさきとしか

  • 2019/08/08(木) 16:48:05

ゆりかごに聞く
ゆりかごに聞く
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まさき としか
幻冬舎 (2019-04-18)
売り上げランキング: 85,940

新聞社で働く柳宝子は、虐待を理由に、娘を元夫に奪われていた。ある日、21年前に死んだはずの父親が変死体で発見され…。遺留品には猟奇的殺人事件の大量の記事の切り抜きと娘に宛てた一通の手紙。「これからも見守っている」。宝子は父の秘密を追うことになるが、やがてそれは家族の知られざる過去につながる。一方、事件を追う刑事の黄川田は、自分の娘が妻の不貞の子ではないかと疑っていた。


親になるとはどういうことだろう。母性は人のなかにいつ芽生えるものなのだろう。父性はどんな条件でどの段階で芽生えるのだろう。そんな、人の生にまつわるあれこれを考えさせられる物語である。親に愛されること、子を愛すること。それは誰にでも無条件に与えられるものではないのだということが、本作を読むと痛いほど伝わってきて、胸が締めつけられる。さまざまな命の扱われ方を考えさせられる一冊でもある。

ある女の証明*まさきとしか

  • 2018/12/13(木) 18:31:53

ある女の証明 (幻冬舎文庫)
まさき としか
幻冬舎 (2018-10-10)
売り上げランキング: 134,939

主婦の小浜芳美は、新宿でかつての同級生、一柳貴和子に再会する。中学時代、憧れの男子を奪われた芳美だったが、今は不幸そうな彼女を前に自分の勝利を嚙み締めずにはいられない。しかし――。二十年後、ふと盗み見た夫の携帯に貴和子の写真が……。「全部私にちょうだいよ」。あの頃、そう言った女の顔が蘇り、芳美は恐怖と怒りに震える。


貴和子というひとりの女を、さまざまな年代に彼女とかかわった人々の目で見せられているような印象の物語である。貴和子が本当はどんな女性だったのか、いい人だったのか、悪女だったのか、幸せだったのか不幸だったのか。貴和子自身の言葉で語られることは全くないので、実際のところは判らないが、わたしには、貴和子自身は、その時その時で、自分に正直に生きているように見受けられる。ただ、どの年代でも、確固とした居場所を見つけることはできなかったように見えるのが、切なすぎる。物語全体を通して、もの悲しさが漂っている気がして、やりきれない気持ちにさせられる一冊である。

ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係*真梨幸子

  • 2018/09/23(日) 16:09:54

ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係
真梨 幸子
KADOKAWA (2018-07-27)
売り上げランキング: 150,325

自己顕示欲の塊となって、ブログに日々よしなしごとを綴るダメンズ女、離婚したパートナーの動向チェックに余念がない元妻、ささいなことで恨みを募らせていく反社会性パーソナリティ障害の元同僚、妄想を暴走させてSNSを炎上させるアイドルオタク…ふとした日常の違和感、感情の掛け違いから、妄執に取り憑かれていく男女たち。詐欺、ストーカー、リベンジポルノ、盗撮、盗聴…「愛」という大義の下の暴力を、イヤミスの女王が執拗にあぶり出す!


さまざまな立場のツキマトイが描かれていて、そのどれもがいつ現実になってもちっとも不思議ではないものばかりなので、背筋が寒くなる。しかも、本作では、それが奇妙に連鎖していて、つきまとわれているのかつきまとっているのか、時に判然としなくなる。一方的な言い分だけで判断してはいけないと、そこも恐ろしくなる。人は、自分に都合のいい理屈で行動するものなのである。充分厭な気分にさせらた後、そこに待っているのはさらに厭な事実だった。いい加減にして!と叫びたくなる一冊である。

玉瀬家、休業中。*まさきとしか

  • 2018/09/15(土) 18:32:28

玉瀬家、休業中。
玉瀬家、休業中。
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まさき としか
講談社
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澪子は41歳、バツイチ。"人並み”の幸せを夢見ていただけなのに、もろく崩れる。家財道具は旦那に持っていかれ、お金もない。そんな中、姉の香波が金の無心にやってくる。香波は澪子の状況を知り、久しぶりに実家で暮らすことを提案する。そして10年ぶりに母親が一人で住む家に戻ったのはいいのだが、娘たちの出戻りを笑い飛ばす始末。がさつな母に傷つく澪子。そしてある日、家で怪しい人影を発見するのだが?!


41歳にして自分探しの澪子である。一度人生設計につまずいた後は、すべてを失い、未来さえも失くしたような気になっていた。自分には何もない。何もできない。そうやって日々を無為に過ごし、ほかのだれかの自分よりもわずかに劣るところを見つけては、わずかに自分を慰めるのだった。だが、がさつで人の気持ちをわからないと思っていた母にも、いつも尖って自分勝手だと思っていた姉にも、引きこもりでどうしようもない兄にも、それぞれの人生があって、自分よりもはるかに充実していると知り、ますます鬱々とするのである。家族の知らなかった一面を知るうちに、少しずつ視点が変わってきて、なんだか馬鹿らしく思われてくるにつれ、縛られていたものが少しずつ緩み始める。少しずつでも未来のことを考えられるようになった澪子には、きっとこれまで見えていなかったものがどんどん見えるようになってくるのだろう。家族との関係も、きっと少しずつ変わってきて、玉瀬家もいつか休業中ではなくなるのだろう。前半は、いろんな意味でイライラさせられもしたが、次第に応援したくなってくる一冊だった。

向こう側の、ヨーコ*真梨幸子

  • 2018/06/05(火) 16:52:39

向こう側の、ヨーコ
向こう側の、ヨーコ
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真梨幸子
光文社
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独身を謳歌する陽子には幼い頃からよく見る夢があった。それは、もう一人の私、かわいそうなヨーコが出てくる夢。一方、夫と子供の世話に追われる陽子は愚痴ばかりこぼす毎日を送っていた。境遇の異なる二人の陽子の人生が絡み合う、イヤミスの傑作!


あの時、違う選択肢を選んでいたらこうなっていただろう、というパラレルワールドを生きる自分を夢に見るA面の陽子と、B面のパラレルワールドのなかの陽子の物語が、交互に描かれている。初めはその違いははっきりしているのだが、物語が進むにつれて互いに浸食しあい、影響しあってくる印象である。なので、いまどちらの面にいるのか、ふと判らなくなり、めまいに似た気分になることが時々あって混乱させられる。分岐した世界であるはずなのに、人間関係も時としてもつれ合っていて、夢遊病のように、あちらとこちらの世界を行き来しているのではないかと思わされることも、ことに後半ではたびたびある。陽子がどんどん追い詰められていき、深みにはまっていく様は、見ていて痛々しく、どのエピソードも胸がささくれるようなものである。ラストの後味の悪さは格別で、自業自得ともいえるが、やりきれなさすぎる。登場人物の誰にも親近感を抱けない一冊である。

アルテーミスの采配*真梨幸子

  • 2018/05/10(木) 20:32:15

アルテーミスの采配
アルテーミスの采配
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真梨 幸子
幻冬舎
売り上げランキング: 394,656

AV女優連続不審死事件。容疑者の男は行方不明。男が遺した原稿『アルテーミスの采配』が、隠された嘘、或は真実を語り始める。私の人生、狂ったのは誰のせい?毎日は無数の罠で満ちている。最後一ページまで、見事なる真梨幸子の采配。


AV女優のインタビューを集めた本を作るという企画のためにインタビューを受けたAV女優が次々に不審な死を遂げる、連続不審死事件を軸に、物語は進む。彼女たちの生い立ちや、AV女優になろうと思った動機がインタビュー記事として読者の前に明らかにされ、どうして殺されなければならなかったのかに興味を惹かれる。そして、「アルテーミスの采配」に関わった者たちの関係が次々に明らかになり、深く根差した恨みもさらけ出される。芋づる式に暴かれる恨みの連鎖に背筋が寒くなる。アリジゴクのような苦界に絡めとられる成り行きも恐ろしい。見たくないのに見てしまう、怖いもの見たさ欲をそそられる一冊であるとも言えるかもしれない。

5人のジュンコ*真梨幸子

  • 2018/05/09(水) 07:28:20

5人のジュンコ
5人のジュンコ
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真梨 幸子
徳間書店
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なぜ私は、あの子と同じ名前になってしまったのだろう。篠田淳子は、中学時代の同級生、佐竹純子が伊豆連続不審死事件の容疑者となっていることをニュースで知る。同じ「ジュンコ」という名前の彼女は、淳子の人生を、そして淳子の家族を崩壊させた張本人だった。親友だった女、被害者の家族、事件を追うジャーナリストのアシスタント……。佐竹純子容疑者と同じ「ジュンコ」という名前だったがゆえに、事件に巻き込まれていく4人の女たちの運命は。


現実の事件からの着想だということはすぐにわかるが、その事件を掘り下げているわけではなく、そこからさらに深く入り込み、事件の裏側、さらには、そこに至るはるか以前の子ども時代のエピソードから描いている。そこでは、たまたまジュンコという同じ名前だったからこそ生まれた悲劇がすでに始まっており、いかに根深いものだったかがうかがい知れる。その後も、佐竹純子にかかわったジュンコという名を持つ女性たちが、さまざまな形で影響を受け、泥沼にはまり込んでいくのである。たかが同じ音を持つ名前だっただけで、と思うが、その影響の強さには恐ろしささえ感じる。ジュンコさんが読むとしばらく落ち込むかもしれないとも思ってしまう。映像化されていたのは全く知らなかったが、観てみたいと思わせる一冊である。

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで*真梨幸子

  • 2018/04/25(水) 13:34:22

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで
真梨 幸子
幻冬舎 (2018-01-25)
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嫌なお客のワガママ放題、無理難題。敏腕外商・大塚佐知子がご用命とあらば、殺人以外なんでもします…でも。「お客様は神様?所詮は他人です」。私利私欲の百貨店へいらっしゃいませ。


老舗百貨店の外商のお仕事ぶりの物語。とは言っても、普通に想像する有能な外商さんとはちょっと違うのが、著者らしいところだろう。有能といえばこれ以上有能な外商もいないかもしれないが、お得意様方から持ち込まれる無理難題を、いささかやりすぎと思えなくもない方法で片づけてしまう。客の要求が常識の範囲内であれば、これ以上ない外商さんたちなのだろうが、顧客の要求が並ではないので、勢い、対処法も並ではなくなるのである。勘違いや行き違いも微妙に絡み合い、ブラックすれすれの流れにコミカルなスパイスが効いて、面白さも味わいも深くなっている。物語のその後が知りたいと思わせるものもたくさんあって、愉しめる一冊である。

猫の話をそのうちに*松久淳

  • 2018/02/19(月) 08:46:51

猫の話をそのうちに
猫の話をそのうちに
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松久 淳
小学館
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売れないギターデュオ・ネクストマンデイのひとり、野崎周一郎は、相方がこの業界から去り、覚束ない日々を送っていた。そんなある日、偶然居合わせた居酒屋で、人気ミュージシャン・黒沢と飲むことになる。その場で、説教をされ、号泣した野崎だったが、翌日、何事もなかったように黒沢から飲みの誘いを受ける。以降、野崎は、気が付けば頻繁に黒沢と飲むようになった。だが、元カノとの中途半端な交際を指摘されたことをきっかけに、野崎と黒沢は連絡が途絶えてしまう。それから、長い時間が流れた――。


初めは、ただの酔っぱらいのたわごとであり、破天荒を気取るイヤな奴と何も言えずにいいように扱われる後輩の関係の話しかと思い、良い印象を持たずに読み進めたのだが、黒沢の行動パターンや胸の裡が少しずつ察せられるようになるにつれ、野崎自身の不甲斐なさや中途半端なずるさ、そして音楽に対する諦めの悪さが、黒沢に何らかの衝動――あくまでも内面の動きとして――を起こさせ、このような関係を続かせているのではないかということに思い至ると、二人の関係が違ったものに見えてくる。ひとりの人間を一面だけで判断することはできないということもよく判る。情熱的でもあり、しみじみさせられる一冊でもある。

祝言島*真梨幸子

  • 2017/09/30(土) 16:53:26

祝言島
祝言島
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真梨 幸子
小学館
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2006年12月1日、東京で3人の人物が殺され、未解決となっている「12月1日連続殺人事件」。大学生のメイは、この事件を追うテレビ番組の制作会社でアルバイトをすることになる。無関係にみえる3人の被害者の共通点が“祝言島”だった。東京オリンピック前夜の1964年、小笠原諸島にある「祝言島」の火山が噴火し、生き残った島民は青山のアパートに避難した。しかし後年、祝言島は“なかったこと”にされ、ネット上でも都市伝説に。一方で、祝言島を撮ったドキュメンタリー映画が存在し、ノーカット版には恐ろしい映像が含まれていた。


人間の厭な心が凝縮したような場所になってしまった祝言島。東京オリンピックの影に隠れて、その存在さえも歳伝説にされてしまった哀れな島である。そんな祝言島にゆかりのある人たちが、後々まで噂や出自に囚われて、事件を起こしたり巻き込まれたりして行くのである。無関係だと思っていた人が、思わぬところで関係者だったり、他人だと思っていたらそうではなかったり、騙された感が強い部分もなくはないが、それをも含めて厭な感じである。祝言島と口にするだけで祟られそうな不快な気持ちになるのは、ある意味情報操作のようでもあり、普段でも陥りそうなことであって、気をつけなければと思ったりもする。人の心の闇が凝縮し、じわじわと滲み出してくるような一冊である。

劇場*又吉直樹

  • 2017/07/31(月) 19:00:03

劇場
劇場
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又吉 直樹
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一番 会いたい人に会いに行く。
こんな当たり前のことが、なんでできへんかったんやろな。

演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。
夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った――。

『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、
書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。

夢と現実のはざまでもがきながら、
かけがえのない大切な誰かを想う、
切なくも胸にせまる恋愛小説。


脚本を書くことで演劇という手段で自分の世界を作り出そうともがく永田は、自分の中に湧き上がるものと時代の流れとをうまくすり合わせることができずにいる。それでも、諦めたくない何ものかを持っているので、安易にその流れに乗っていくことはできないのである。深く考え、悩むこともあるのだが、声として外に出る言葉は、胸の裡とは裏腹に軽薄でふざけた調子になってしまったりもする。先の先を読み、裏の裏へ思いを致して、結局空回りするような感じとでも言えばいいのか。それは、すべての人に理解してもらえるわけではなく、落ち込み自己嫌悪に陥ることも多々あるのである。水鳥が悠々と泳いでいるように見えて、水面下では大忙しなのと似ているような気がする。永田もまた、傍から見れば、恋人の沙希に寄りかかってぐうたらしているようにしか見えない。沙希も、精いっぱい解ろうとしていたのだが、やはり追いつかなくて疲れてしまったのだろう。面倒なものである、人間というものは。不器用で面倒で、外からはうかがい知ることのできない思いに溢れた一冊である。

カウントダウン*真梨幸子

  • 2017/04/27(木) 07:07:37

カウントダウン
カウントダウン
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真梨 幸子
宝島社
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余命、半年――。海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイスト、五十歳・独身。
歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきっかけで癌が見つかった。余命は半年。
潔く〝死〟を受け入れた亜希子は、“有終の美"を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王寺涼子とともに〝終活〟に勤しむ。
元夫から譲られた三鷹のマンションの処分。元夫と結婚した妹との決着。そして、過去から突きつけられる数々の課題。
亜希子は“無事に臨終"を迎えることができるのか!?
人気ファッション誌「大人のおしゃれ手帖」大好評連載作品、待望の単行本化。
装画は大人気イラストレーター・マツオヒロミさんによる描き下ろし!


歩道橋から転落して怪我をしたことがきっかけで甲状腺に癌が見つかり、余命半年を告げられた海老名亜希子が主人公。有名百貨店の外商・薬王寺涼子の手を借りて、最期の日までのカウントダウンを始めるのである。だが、身辺整理を始めると、来し方のあれこれに引きずり込まれて、記憶違いや記憶の改ざん、憤りや後悔などなど、さまざまな感情に翻弄され、自分の人生を改めて思い返すことになるのである。登場人物たちもすべて腹に一物抱えた癖のある人たちで、誰にも肩入れできないのが著者らしい。そして、ずっとなんとなく影が薄かった担当編集者の牛島君が終盤になって俄然その存在意義を見せつけてくれ、すべてが繋がるのが小気味よくもある。最期の日へのカウントダウンというと、暗いばかりな印象であるが、絶妙なコメディタッチもにじませて、興味深く読める。終活のこと、人間関係のこと、などなどさまざま考えさせられる一冊でもある。

いちばん悲しい*まさきとしか

  • 2017/02/16(木) 16:55:43

いちばん悲しい
いちばん悲しい
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まさきとしか
光文社
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ある殺人事件が抉り出す、常人の想像の及ばない、劇毒。

ある大雨の夜、冴えない中年男が殺された。不倫相手の妄想女、残された妻子、キャンプでの不幸な出来事――事件の周縁をなぞるような捜査は、決して暴いてはならない秘密をつきとめる――女たちの心の奥底にうずまく毒感情が、人の命を奪うまでを描いたイヤミスの誕生! !


登場人物がみんな自己中心的で、誰にも感情移入できない。誰もが、自分こそがいちばん悲しい被害者だと、まるで悲しさ比べでもしているような物語である。存在感のない中年男・戸沼暁男が何者かに殺された。一体犯人は誰なのか。警察が探る中、次々に関係者と思われる人々の内情が明らかにされ、やり切れなさがどんどん増していく。そして真犯人がわかってみれば、これもまたなんとも哀しい事情を抱えているのだった。いちばん悲しいのは、こんなに悲しい人たちをたくさん見せられた読者かもしれないと思わされる一冊である。

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実*真梨幸子

  • 2017/02/11(土) 18:32:51

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 (徳間文庫)
真梨幸子
徳間書店 (2012-11-02)
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一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。
男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。
茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン !


ひとつ前の読書のほのぼのした気分が一遍に吹き飛ぶような殺伐とした始まりで、一瞬本を閉じようかと思ったほどである。フジコの事件の再現も含まれてはいるが、一体何人殺されるのだろう。フジコと彼女を形成した環境、そして、彼女が生み出してしまった悪意の数々が、あとからあとから押し寄せてきていたたまれなくなる。下田茂子にインタビューはできるのだろうか、これからどんな厭な展開が待ち受けているのか、半分怯えながら読み進んだが、最後の最後でやっとこの件を仕組んだ張本人が姿を現す。この厭な連鎖はまだ続くのだろうか。ほんとうに厭な読後感の一冊である。