いかさま師*柳原慧

  • 2017/06/08(木) 12:56:04

いかさま師  『このミス』大賞シリーズ
柳原 慧
宝島社
売り上げランキング: 1,507,995

三十年前、顔を切り裂き、謎の自殺を遂げた天才画家・鷲沢絖。その妻の死体が、今ではゴミ屋敷と呼ばれている鷲沢邸から発見された。しかもその顔はどす黒く変色し、どろりと溶けていた。遺産相続人として母を指名された高林紗貴は、屋敷からある絵画がなくなっていることに気づく。作者はジョルジュ・ド・ラ・トゥール、約二百六十年の長きにわたり忘れ去られていた、フランス絵画史における最も謎めいた画家。計り知れない価値を秘めたその絵画の行方を探り始めた紗貴だったが、同時に周辺で不気味な出来事が起こり始める。年若い紗貴の恋人、相続を巡りライバル関係にある青年、姿を消してしまった絵画コレクターの父。いったい誰が味方で誰が敵なのか。ラ・トゥールと、見る者の心を揺さぶる鷲沢絖の断筆「顔を引き裂かれた自画像」。―これらの絵画に隠された真実とは。


タイトルの「いかさま師」はラトゥールの絵のタイトルなのだが、物語そのものを絶妙に表していて見事である。天才画家の遺産相続に関わる一連の流れと、彼の半生にかかわった人々が抱えることになった事々、そして、血のつながりと欲。興味深い要素がたくさんありすぎるが、それらがきっちりと太い流れになっている印象である。誰を信じればいいのか、誰が味方で誰が敵なのか、そもそも味方など誰ひとりいないのか。次々に奥の手やら隠し技やらが出てくるので、常に気を抜けない展開が続くのである。結局は、作品にとっていちばんいいところに落ち着いたとは言えるのかもしれない。先が愉しみで、ページを繰る手が止まらない一冊だった。

続・森崎書店の日々*八木沢里志

  • 2014/08/01(金) 16:50:01

続・森崎書店の日々 (小学館文庫)続・森崎書店の日々 (小学館文庫)
(2011/12/06)
八木沢 里志

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本の街・神保町で近代文学を扱う古書店「森崎書店」。叔父のサトルが経営するこの店は二年前失意に沈んでいた貴子の心を癒してくれた場所だ。いまでは一時期出奔していた妻の桃子も店を手伝うようになり、貴子も休みの日のたび顔を見せていた。店で知り合った和田との交際も順調に進んでいたが、ある日、貴子は彼が喫茶店で昔の恋人と会っているのを目撃してしまう。一方、病後の桃子を労う様子のない叔父を目にし、貴子は夫婦での温泉旅行を手配するが、戻って来てから叔父の様子はどこかおかしくて…。書店を舞台に、やさしく温かな日々を綴った希望の物語。映画化された「ちよだ文学賞」大賞受賞作品の続編小説。


前作からの懸案事項で、良かったことあり、悪かったことありの続編である。なんといっても桃子さんが再発した癌に命を持って行かれてしまったことがいちばんの悲しみであり、魂が抜けたようになった叔父の姿も見ていられない。だがそれもいつの日か乗り越えていけるのだと思わせてくれたので、総じて良いことが多かったとも言えるだろう。ただ、前作でも感じたことだが、文体がすでにある何かを思い出させられるようで、それが前作よりもより強く感じられたのが残念な気もするのである。ちょっと神保町をふらふらしたくなるシリーズである。

森崎書店の日々*八木沢里志

  • 2014/08/01(金) 07:16:33

森崎書店の日々 (小学館文庫)森崎書店の日々 (小学館文庫)
(2010/09/07)
八木沢 里志

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貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。「第三回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。書き下ろし続編小説「桃子さんの帰還」も収録。


映画は知らなかったので、なんの先入観もなしに読むことができた。森崎書店の日々、と言っても、古書店の日常が描かれているわけではなく、失意の貴子が森崎書店で過ごした日々の物語である。もちろんその日々の中で読書とは縁遠かった貴子が読書の面白さに目覚め、そこからの出会いもあり成長もするのである。なので、本はきっかけに過ぎないのだが、やはりそれは本でなくてはならなかったのだろうとも思われる。桃子さんのその後のことや、和田さんとのその後のことも知りたいと思わされる一冊である。

純喫茶トルンカ*八木沢里志

  • 2014/07/21(月) 16:40:16

純喫茶トルンカ (徳間文庫)純喫茶トルンカ (徳間文庫)
(2013/11/01)
八木沢 里志

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「純喫茶トルンカ」は美味しい珈琲が自慢のレトロな喫茶店。東京の下町にひっそり佇む店には、魔法をかけられたようなゆっくりとした時間が流れ、高校生の看板娘・立花雫の元気な声が響く。ある日バイトの修一と雫が店に出ていると、女性客が来店。突然「あなたと前世で恋人同士だったんです」と修一に語りだし…。孤独や悲しみを抱えた人々の心がやわらかくドリップされていく…。ほろ苦くも心あたたまる物語。


「日曜日のバレリーナ」 「再会の街」 「恋の雫」

似たような設定の物語がいくつも思い浮かんで、どれがどれだか判らなくなりそうだが、このレトロなたたずまいのトルンカも、商店街のふと見過ごしてしまいそうな路地の奥にある、界隈をねぐらにしている野良猫に導かれなければ知らない人は入ってこないような店である。渋い中年男のマスターと高校生の娘の雫、バイトの大学生修一の三人で切り盛りしている。まさに野良猫に誘われてやってきた千夏が、修一と前世で恋人同士だったと言い始め、どうなることかと思ったが、あたたかく穏やかに解決されていくのだった。登場人物それぞれが何かしらの哀しみを抱えているのだが、お互いを思いやり、見守っていることが伝わってきて、しみじみとした心地にさせられる一冊である。

ここは退屈迎えに来て*山内マリコ

  • 2013/01/08(火) 21:30:53

ここは退屈迎えに来てここは退屈迎えに来て
(2012/08/24)
山内 マリコ

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地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、「R‐18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。


「私たちがすごかった栄光の話」 「やがて哀しき女の子」 「地方都市のタラ・リビンスキー」 「君がどこにも行けないのは車持ってないから」 「アメリカ人とリセエンヌ」 「東京、二十歳。」 「ローファー娘は体なんか売らない」 「十六歳はセックスの歳」

さまざまな年代の<女の子>の恋や青春や日常の、夢や希望とその叶わなさの狭間で身悶えするような一冊。
なぜか椎名一樹が楔のようにどの物語にも入り込んでいるが、だからと言って主役というわけでもなく、時系列でもないのがちょっと面白くもある。

ガレキノシタ*山下貴光

  • 2012/10/22(月) 17:04:11

ガレキノシタガレキノシタ
(2012/07/19)
山下 貴光

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私たちは閉じ込められている。夢じゃないぞ。友情、恋愛、いじめ、家族…それぞれに問題を抱えた生徒や教師が生と死のはざまで見つけたものは―!?亙礫の下で何かが生まれる―感動の傑作サバイバル小説。

「……きっかけは一九九五年に韓国で起きた三豊百貨店崩壊事故だ。(中略)
瓦礫に閉じ込められ、悲劇に見舞われた彼らではあるが、
そこで先ほどまでつづいていた生活がなくなってしまうわけではない。(中略)
彼らは悲劇の象徴ともいえる巨大な瓦礫と向き合いながらも生活をつづけ、
抱えたままの問題や自分自身とも向き合ったのではないか。
…そして、そういう物語を書きたくなった。
――山下貴光(月刊J-novel2012年8月号より)」


ある日の高校の休み時間、突然校舎が倒壊し、教師や生徒が瓦礫の下敷きになった。我に返り置かれた状況を把握したとき、彼らの胸に去来したものは、そして彼らがとった行動は何だったのか。何人かの生徒、教師のそのときが描かれているが、どれも涙なしには読むことができない。それぞれが、どんな風に生きてきたか、どんな心構えを持っていたかという本性の部分が現れ、それはこれからどんな風に生きていくか、ということにもつながっていくように思われる。なにができるか、どう生きるか、を考えさせられる一冊でもある。

屋上ミサイル 謎のメッセージ*山下貴光

  • 2012/07/22(日) 16:43:37

屋上ミサイル〜謎のメッセージ (『このミス』大賞シリーズ)屋上ミサイル〜謎のメッセージ (『このミス』大賞シリーズ)
(2012/05/11)
山下 貴光

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高校の屋上を愛する「屋上部」―デザイン科の辻尾アカネと校内きっての不良・国重嘉人、恋に一途な沢木淳之介、バンドマンの平原啓太―の間には、不穏な空気が漂っていた。夏休みを目前に、校内で事件が続いているのだ。ぼや騒ぎや、切り裂かれた油彩画、連続する校内暴行事件。被害者は皆、口を閉ざしているのだったが、一連の事件は国重の仕業ではないかという噂が広がった。アカネたちは真犯人探しをはじめるが、新たな被害者が出て…。『このミス』大賞シリーズ第2弾。


今回も、屋上部のまとまっているのかいないのか判らない活動状況が素敵である。確かなのは、一作目よりさらに部員間の信頼関係が密になっているということだろう。誰もが疑う中、微塵の迷いもなく国重の名誉回復のために行動を起こす彼らが――その言動は脇に置いておくとして――清々しい。国重とアカネがうまくいってしまったりするのも何となくこの物語としては似つかわしくない気もするが、そうなりそうでならない微妙なラインを行ったり来たりする感じもまたなかなかである。そして、アカネの母のひとことが、かなりツボである。真理だ、と思う。三作目もぜひ読みたいシリーズである。

屋上ミサイル*山下貴光

  • 2012/06/13(水) 11:26:52

屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)
(2009/01/10)
山下 貴光

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第7回『このミス』大賞は大紛糾! 選考委員がまっぷたつに分かれ、喧々諤々の議論の末、大賞のダブル受賞となりました。本作は、高校生が結成した「屋上部」が、屋上の平和を守るため、難事件に挑む青春ミステリーです。選考委員のコメントは次の通り。「読みはじめてすぐ、今回の大賞はこれだ!と確信した。キャラと会話は抜群。文章のセンスもいい。自信をもって推薦します。私も屋上部に入りたい」大森望(翻訳家・評論家)「前半の複線が綺麗にはまってくる後半に随所で感心。口当たりのいい青春活劇に仕上がっている」香山二三郎(コラムニスト)


のどかな屋上と青空の表紙をまくると、いきなり世界で一番偉い人が拉致されて五日目という物騒な一文に出会うことになる。このこととタイトルから、テロリストの物語か、と一瞬思うが、そのあとに続くのは表紙のままの雰囲気の学園ドラマである。そのミスマッチがいいのかもしれない。物語中の会話に出てくる、「でもさ、今ってそんな時代なんだよね。危険はすぐそばに転がってる」という言葉がすべてを言い表しているような気がする。だが、それならば、学園ドラマは徹底的にのどかであってもよかったのではないかとも思う。愚にもつかないことで悩んだり、些細なことで舞い上がったり、どこにでもある高校生活とミサイル攻撃の危機が実際に隣り合っている落差が描かれていたら、個人的にはもっと惹きこまれたかもしれないとも思う。もっと知りたい著者の一冊ではある。

たぶらかし*安田依央

  • 2011/03/20(日) 16:58:41

たぶらかしたぶらかし
(2011/02/04)
安田 依央

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39歳のマキは、市井の人々の中で、誰かの「代役」を演ずる役者。ワケあり葬儀での死体役、多忙なセレブ社長の子息の母親役、夫の親戚との付き合いを厭う新妻役など、役柄は多岐にわたる。依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、プロとして淡々と仕事をこなす日々。ある日、ニセの依頼をしてきた謎の男・モンゾウに、無理やり弟子入りされて…。第23回小説すばる新人賞受賞作。


依頼者のその場しのぎの身勝手さには苛々させられるが、代役請負会社・OR社の面々――全容を窺い知ることはできないが――の仕事に際するプロ根性は感嘆するところである。主人公・マキの役者ぶりと、これでいいのかと常に煩悶する姿も生々しく、だからこそ好感が持てる。気持ちの深いところにじわりと働きかけてくるような一冊である。

株式会社 家族*山田かおり 山田まき・絵

  • 2010/10/28(木) 17:05:08

株式会社 家族株式会社 家族
(2010/02/10)
山田 かおり山田 まき

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これぞ現代の「幸福論」か!?

尼崎出身のファッションデザイナー、アヴァンギャルドな家族の日々を綴る!

もしかすると、あなたのとなりの家で繰り広げられているかもしれない!?
嘘みたいだけど、本当の家族の話。家族という組織の絶妙なバランス、
面倒だけど憎めない父、母。ニヒルな妹(本書ではイラストを担当)。
誰にでも家族がいる。その全てに、些細だけど愛すべき物語がある。
全国から笑い声、続々!愉快痛快請け合います!


何気ない、というには面白すぎる家族の日常のあれこれを綴った日記のような一冊である。常識の規格からはずれたような父や、おおらかな母、根暗な妹やペットたちのことがときには揶揄するように、また苦笑いを我慢するようにして描かれているのだが、そこからこちらに向かって流れてくるのは、あふれんばかりの愛情なのである。愉快痛快、そしてあたたかな家族の理想である。

償い*矢口敦子

  • 2008/10/21(火) 18:21:44

償い償い
(2001/07)
矢口 敦子

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「あの人は死んでよかったんだと思うよ」私が救った子供は、15歳の殺人鬼に成長していた? 36歳の日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、エリート医師からホームレスになった。流れ着いた東京のベッド・タウン光市で、高齢者、障害者など社会的弱者ばかりが殺される連続ナイフ殺人事件が起き、日高は知り合った刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて誘拐犯から命を救った15歳の少年・真人が犯人ではないかと疑い始める。「人の心の泣き声が聞こえる」という真人は、「不幸な人は死んでしまえば、もう不幸は感じずにすむ」と言う。自分が救った子供が殺人鬼になったのか―日高は悩み、真相を探るうち、真人の心の深い闇にたどり着く。感動のミステリ長篇。


殺人事件があり、警察が捜査していて、探偵役となる人物も登場するが、これがミステリか、と問われると、全面的にはうなずけない気もするのである。ミステリと言うよりも、タイトルが表わすように、心のドラマという趣が強い一冊だと思う。

人の肉体を殺したら罰せられるけれど、人の心を殺しても罰せられないんだとしたら、あまりに不公平です。


という本文中の一節に象徴される罪の意識に、探偵役である野宿者・日高も、かつて彼に命を助けられた真人(マコト)も囚われているのである。
連続殺人事件は一応の解決を見るが、彼らは、自らが囚われた心の枷から抜け出すことはおそらくできないのではないかと思われる。この物語のラストその後には、まだまだ苦しみが待ち構えているように思えてならない。日高にも、真人にも・・・・・。

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まあ、そこへお坐り*山藤章二

  • 2008/03/26(水) 17:43:05

まあ、そこへお坐りまあ、そこへお坐り
(2003/08/08)
山藤 章二

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当代一の「戯れ絵師」は,気は弱いのに頑固でパソコン嫌い.年をとるに従って,あまりに早すぎる日本の変化に違和感を覚えるようになり,「ずれ爺」と自称している.芸能,スポーツ,人情,流行語,言葉遣いから政治まで,「なんだかよくわからないけど世の中ヘンだぞ」と感じている読者に贈る辛口エッセイ75話.


八年前の一冊である。世界情勢も国内情勢ももちろんそのときとはずいぶん違っているのだが、それだからこその面白味もあるように思われる。まさにそのときに読めば、そのときなりの辛口な切り口を愉しむことができたのだろうと思うが、出版時からすれば「未来」という立場から眺めたからこそ判る、八年前のあれこれの著者流の斬り方がまことに当を得ていて驚かされる。

ふだんの暮らしがおもてなし*山本ふみこ

  • 2007/08/03(金) 18:39:56

☆☆☆・・

ふだんの暮らしがおもてなし ふだんの暮らしがおもてなし
山本 ふみこ (1997/11)
晶文社

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もてなしは、客用?いやいや、私は日々を共にする家族や友人を、まずもてなしたい。仕事に家事にてんてこ舞い、娘二人と新しいつれあい、ネコ、友だち入りみだれての毎日は、平穏でも優雅でもないけれど。それでいい、ふだんが大事。食べる人への手紙のようなお弁当。お見舞いと贈りもの。ていねいにいれるお茶の味。庭仕事の効用。気晴らしのマニキュア。近所づきあいの醍醐味…。いまの生き方に昔の知恵を重ねつつ、暮らしの手ざわりを楽しむ。『生活の達人』が濃やかにつづる味わい深いエッセイ。


タイトルに惹かれて手に取った一冊。
編集者でありエッセイストでもある著者の気張らない生活スタイルが、読んでいて心地好い。時にがんばりすぎ、時に凹み、頼って甘えてしゃっきりと立つ。そんな自然体の暮らしぶりが微笑ましく好ましい。

八月の熱い雨*山之内正文

  • 2007/03/20(火) 20:15:18

☆☆☆・・

八月の熱い雨 <便利屋<ダブルフォロー>奮闘記> 八月の熱い雨 <便利屋<ダブルフォロー>奮闘記>
山之内 正文 (2006/08/30)
東京創元社

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母のスミエに紹介されて、向かった先は風格のある寄せ棟造りの立派なお屋敷。そこで泉水を待っていたのは、一人暮らしの優雅な老婦人と、気のよさそうな通いの家政婦だった。亡き夫が残した本を朗読してほしいという老婦人の依頼に悪戦苦闘する泉水は、この屋敷に頻繁に無言電話がかかっていることを知る。裏には怪しい少年たちの存在が?(第三話・八月の熱い雨)。ひとりで便利屋“ダブルフォロー”を営む青年・皆瀬泉水が出合う奇妙な謎と、依頼人たちの悲喜交々の物語。小説推理新人賞受賞作家が放つ、ハートウォーミングな連作集。


表題作のほか、「吉次のR69」「ハロー@グッバイ」「片づけられない女」「約束されたハガキの秘密」
便利屋<ダブルフォロー>奮闘記、とサブタイトルにあるように、25歳の皆瀬泉水(みなせいずみ)が営む便利屋シリーズである。
犬の散歩やチケット取りといった正統派(?)便利屋仕事をこなす毎日なのだが、ときにはちょっと変わった依頼も舞い込む。そんな謎を孕んだ依頼に応えるうちに 親身になりすぎたりもするのが泉水のいいところでもある。そして、そんな性格のおかげで、依頼者の胸のわだかまりもほぐれ、依頼を受けたときには謎と思えたあれこれに答えが見つかるのである。
次はどんな依頼が舞い込むのか、シリーズの行方が楽しみだ。

おとなの小論文教室。*山田ズーニー

  • 2006/03/11(土) 17:33:06

☆☆☆・・



あなたの言葉が聞きたい。
ひと言でもいい、わきあがってくる想いを、言葉にして伝えてほしい。

ビリビリくるリアル感に引き込まれて読んでいくと、あなたも何か表現したくなる!
「考える」習慣がついてくる!
「おとなの小論文教室。」は、自分の頭で考え、自分の想いを、自分の言葉で表現したいという人に、「考える」機会と勇気、小さな技術を提供する、まったく新しい読み物です。
  ――帯より

まるで鉛筆のように、その身を削って教える先生がいる。
本気ってのは、ほんとに強い。  糸井重里


「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されたコラムの単行本化である。
小論文教室、と銘打っているが、これは 四角四面の表面上のお勉強ではない。自分の心の奥深くを見つめなおす入口であるとも言えるのではないだろうか。
「一人称」のない借り物の自分でいるうちは、自己表現などできるわけがないということが、押し付けではなく自然に入り込んできて実感される。
書けなくなりそうである。まったく。

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