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教室の灯りは謎の色*水生大海

  • 2019/10/07(月) 16:40:50

教室の灯りは謎の色
教室の灯りは謎の色
posted with amazlet at 19.10.07
水生 大海
KADOKAWA/角川書店 (2016-08-27)
売り上げランキング: 954,112

塾には通いながらも不登校を続ける、高校生の遥。遥には母親が教師をしている学校へ行けない理由があった。ある日、塾の近くのレンタルショップで事件が起き、遥は犯人だと疑われる。窮地を救ってくれたのは、居合わせた塾講師の黒澤だった。寡黙ながら救いの手を差し伸べてくれる黒澤に、遥の心は少しずつ解きほぐされていく。レンタルショップの事件は、遥が不登校になるきっかけとなった出来事にもつながっていき、やがて、黒澤の言葉が彼女の世界を変える――。


言ってみれば、塾講師とその生徒のコンビ探偵物語と言えるだろうか。塾講師の黒澤は、身体に合わないおじさんぽい背広に、実はきれいな顔を隠すようなメガネをかけた、寡黙で一見冷たい先生なのだが、事に当たった際の着眼点と洞察力には、優れたものがある。一方の塾生・遥は、そんな先生を慕って、探偵の助手よろしく、事件にかかわるさまざまな調査を買って出る。それが解決につながることもなくはない。なので、コンビと言っていいかは微妙なところではあるのだが。黒澤の個人の事情に踏み込み過ぎないスタンスは好ましく、遥の一生懸命さも微笑ましい。もっと二人のコンビを見たい一冊である。

ランチ探偵*水生大海

  • 2019/09/30(月) 16:58:25

ランチ探偵 (実業之日本社文庫)
水生大海
実業之日本社 (2016-10-06)
売り上げランキング: 355,700

大仏ホーム経理部のOL・阿久津麗子は、同僚の天野ゆいかを誘ってランチ合コンへ。
恋人に振られたばかりでいい出会いを求める麗子だが、
なぜか男性陣から持ち込まれる話題は、犯人探しや暗号解読ばかり。
深夜に動くエレベーター、金曜日に大量の弁当を購入する美女、ストーカー事件の真犯人、
失踪した新婦が残したメッセージ、アパートの窓に日替わりで現れる動物、消えた結婚指輪。
ミステリマニアのゆいかは、それらの「謎」に興味を示し……。
オフィス街の怪事件に安楽椅子探偵のニューヒロイン・天野ゆいかが挑む!


ランチタイムにセッティングした合コンの場で、話題に出た謎を解き明かすという安楽椅子探偵物語である。話題に出した本人は、解き明かしてもらおうという気などさらさらないのだが、麗子の同僚のゆいかが、そのたびに食いつくのである。でも、結果としてその謎解きで、合コン相手が救われたり、腑に落ちて次に進めるようになったりするので、後味は悪くない。恋人がいつまでも見つからないのは、そのせいなのかどうなのか。こんなちょっとした謎解きがみられるなら、ランチ合コン、いつまでも続いてほしい気もする。次も愉しみな一冊である。

最後のページをめくるまで*水生大海

  • 2019/09/18(水) 16:23:10

最後のページをめくるまで
水生 大海
双葉社
売り上げランキング: 87,951

小説の、最後の最後でおどろきたい方、ぜひどうぞ。「どんでん返し」をテーマに描いたミステリー5編。
「使い勝手のいい女」「わずかばかりの犠牲」「骨になったら」「監督不行き届き」「復讐は神に任せよ」……
どの短編も、ラストで景色が一変します。


割と軽く読めるが、ラストでガラッと視点が変わると、いままで見えていたのとは別の景色が見えてくる。人間の思い込みと、脳のだまされやすさを思い知らされる一冊である。

ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~*三上延

  • 2018/12/16(日) 19:03:50


ある夫婦が営む古書店がある。鎌倉の片隅にひっそりと佇む「ビブリア古書堂」。その店主は古本屋のイメージに合わない、きれいな女性だ。そしてその傍らには、女店主にそっくりな少女の姿があった―。女店主は少女へ、静かに語り聞かせる。一冊の古書から紐解かれる不思議な客人たちの話を。古い本に詰まっている、絆と秘密の物語を。人から人へと受け継がれる本の記憶。その扉が今再び開かれる。


栞子さんと大輔くんが結婚し、生まれた子ども・扉子が6歳の時のお話である。外見は母親似だが、はきはきしていて、本が大好き。でも、人とかかわるのは少々苦手のようである。そんな扉子が興味を持った過去の出来事を、栞子が話して聞かせるという趣向の本作である。これまで出てきたさまざまな事件を、別の角度から眺めているような感もあり、なるほどそうだったのか、と思わせられることもある。扉子にとっては、面白かったり面白くなかったりそれぞれのようだが、いまのところまだ何を思っているのかはよくわからない。これからどんな風に育っていくのか、栞子の才能を受け継いでいくのか、ますます愉しみなシリーズである。

ビブリア古書堂の事件手帖 7~栞子さんと果てない舞台~*三上延

  • 2017/05/17(水) 16:29:45


ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく―。奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった…。人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる。


完結してしまったんだなぁというのが読後の素直な気持ちである。一応八方丸く収まったので、めでたしめでたしということなのだろうが、長年の積もり積もった思いを消化して仕事をともにする母・智恵子さんと栞子さんの姿や、それをすぐそばで見守る大輔君の姿も見てみたかった気はする。今作では、いままでになかった大金が動く難しい取引が行われ、手に汗握る緊張感もあったが、行ってみれば門外漢である大輔君の存在が助けになっていることも確かで、栞子さんには公私ともになくてはならないパートナーになっている様子が、読者にとってはとてもうれしい。いつか気まぐれに続きを書いてくれないだろうか、とつい思ってしまうシリーズである。

江ノ島西浦写真館*三上延

  • 2016/02/19(金) 09:40:44

江ノ島西浦写真館
江ノ島西浦写真館
posted with amazlet at 16.02.19
三上 延
光文社
売り上げランキング: 8,524

江ノ島の路地の奥、ひっそりとした入り江に佇む「江ノ島西浦写真館」。百年間営業を続けたその写真館は、館主の死により幕を閉じた。過去のある出来事から写真家の夢を諦めていた孫の桂木繭は、祖母の遺品整理のため写真館を訪れる。そこには注文したまま誰も受け取りに来ない、とごか歪な「未渡し写真」の詰まった缶があった。繭は写真を受け取りに来た青年・真鳥と共に、写真の謎を解き、注文主に返していくが―。


ビブリア古書堂の趣をそのままに、舞台を江ノ島の写真館に移したような物語である。主人公の繭は、写真館を営む祖母の手ほどきで、写真に興味を持ち、専門学校に通うようになるが、そこで、自分の考えの足りなさから、自ら撮った写真によってある人物を傷つけてしまう。それをトラウマとしてずっと胸に抱え続け、それ以後カメラさえ手放して写真から遠ざかる暮らしをしていたが、祖母が亡くなり、遺品整理のために写真館を訪れなければならなくなった。そこで出会った真鳥秋孝や、残されていた未渡しの写真に絡む謎を、繭が解き明かしていくのである。閉じられた写真館に残された写真、というどこか暗い雰囲気が、繭の心象ともマッチしていて、趣きのある風景になり、しっとりとした時間が流れる印象になっている。ラストの種明かしには、閉じられていた窓を開け放ったような明るさが感じられて、ほっとさせてくれる。やさしい一冊である。

消えない夏に僕らはいる*水生大海

  • 2015/10/17(土) 16:56:08

消えない夏に僕らはいる (新潮文庫nex)
水生 大海
新潮社 (2014-09-27)
売り上げランキング: 123,150

5年前、響の暮らす田舎町に、都会の小学生たちが校外学習で訪れた。同学年の5年生と言葉を交わすうち、彼らを廃校に案内する。きもだめしをすることになった響たちは、ある事件に遭遇し、一人の女子が大怪我を負ってしまう。責任を感じ、忌まわしい記憶を封印した響だが高校生活に希望を抱くなか、あの日の彼らと同じクラスで再会する―少年少女の鮮烈な季節を描く、青春冒険譚。


小学校五年の夏の校外学習で体験した衝撃的な出来事を、そのときの五人(響、友樹、紀衣、ユカリ、宙太)は、何らかの形でそれぞれ引きずったまま高校生になって再開し、そのまま封じ込めようとしていたものが再びよみがえってきてしまう。五年生のときの立場や役割によって、それぞれが抱えるものが少しずつ違い、それがその後の性格形成にも影響を及ぼしていたり、僅かずつずれて微妙な気遣いになっているあたりが興味深い。高校のクラスの中の人間関係も絡み、面白く読ませるが、ラストの決着がいささか物足りなかった印象はある。彼らの本当の青春はこれから始まるのだと思わせてくれる一冊ではある。

読めない遺言書*深山亮

  • 2015/06/26(金) 18:54:20

読めない遺言書
読めない遺言書
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深山 亮
双葉社
売り上げランキング: 583,938

平凡な教師の竹原は、ある日、警察から父の孤独死を知らされる。いつか我が家に帰ってくると思っていた父。だが、見つかった遺言書は“全遺産を小井戸広美に遺贈する”という、見ず知らずの人物に宛てられた信じがたいものだった。家族を捨てた事への憤りとやりきれなさを胸に広美を追い始めた途端、尾行、盗撮、放火と、立て続けに事件に巻き込まれ―。竹原は遺言書を握りしめ、父が残した「謎」を追う。緻密な構成と劇的な展開が導く、驚愕のラスト。珠玉の長編推理小説。


家族を捨てた――とずっと思っていた――父の孤独死によって、見ず知らずの人物に全財産を譲るという遺言書を手にすることになった中学校教師・竹原が主人公。遺言書にある人物・小井戸広美とはどんな人物で、父とはどんな関係なのか。調べる内に、ホームレスの支援活動に行き着き、さらにその裏側にはびこるものを知ることになる。教師としての存在意義、教え子の抱える問題、同僚に抱くコンプレックスなどなど、さまざまな要素を絡めながら、流れが次第に一本にまとまっていくのが心地好い。泥沼に陥るかと思った物語であるが、最後は胸の中がほんのりぬくもる一冊である。

本格小説 下*水村美苗

  • 2015/03/17(火) 17:13:27

本格小説 下本格小説 下
(2002/09)
水村 美苗

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夏目漱石の遺作を書き継いだ『続明暗』で鮮烈なデビューを果たし、前代未聞のバイリンガル小説『私小説from left to right』で読書人を瞠目させた著者が、七年の歳月を費やし、待望の第三作を放つ。21世紀に物語を紡ぐことへの果敢な挑戦が、忘れかけていた文学の悦びを呼び招く。


上巻を読んでから時間が空いてしまったが、やっと下巻を読むことができた。上巻から持ち越された緊張感と昂揚感はそのまま続き、東太郎、冨美子、よう子、そして三枝三姉妹や関係者たちもそれぞれ歳を重ねて状況はずいぶん変わってくる。よう子は重之ちゃんと結婚し、娘も生まれたが、太郎に対する気持ちが消え去ってしまったわけではなかったのである。太郎とよう子、夫の重之三人の関係は、危うい緊張感の上に安定し、しあわせの極みとも言える時を過ごしもする。彼らが主役の物語でありながら、それよりも、語り手とも言える冨美子の一生の物語とも思われ、最後に語られる事実にその感をさらに強くするのである。人というもののむずかしさ奥深さ、底知れなさを思わされる一冊である。

ビブリア古書堂の事件手帖6--栞子さんと巡るさだめ*三上延

  • 2015/02/22(日) 13:56:57

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
(2014/12/25)
三上 延

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太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。深い謎の先に待つのは偶然か必然か?


栞子さんと大輔くんはやっとつきあい始めたものの、なんだかもどかしすぎるほどにぎこちないままである。それなのに、妹の文音がみんなに知らせて歩くものだから、会う人ごとにからかわれてさらにぎこちなくなる二人なのである。そんな折、栞子さんにけがを負わせた張本人の田中が今度は依頼人として近づいてくる。もう一冊ある太宰の『晩年』を探してほしい、というのだ。調べていくうちに、祖父母の時代の絡まった人間模様が浮き彫りにされてくる。古書に関しては栞子さんの知識と洞察力には目を瞠るものがあるが、人間関係をここまでややこしくしなくてもよかったのではないか、と思わなくもない。ともかく、次回作では二人にもう少し進展があることを祈らずにはいられないシリーズである。

本格小説 上*水村美苗

  • 2015/01/20(火) 18:49:56

本格小説 上本格小説 上
(2002/09)
水村 美苗

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ある夜、“水村美苗”は奇跡の物語を授かった。米国での少女時代に出逢った実在する男の、まるで小説のような人生の話。それが今からあなたの読む『本格小説』…。軽井沢に芽生え、階級と国境に一度は阻まれた「この世ではならぬ恋」がドラマチックに目を覚ます。脈々と流れる血族史が戦後日本の肖像を描く。


本格小説というタイトルだが、まず「本格小説の始まる前の長い長い話」という章があり、水村美苗のアメリカ滞在中の少女時代のあれこれが描かれていて、それがこの小説を書くきっかけになったのだという。初読みの著者なので、どんな仕掛けが隠されているのか皆目想像がつかず、自伝のような出だしに少なからず戸惑う。本編(?)が始まってからは、物語に惹きこまれはするが、冒頭の章がどうかかわってくるのかが気になったまま、上巻は終わり、物語の主人公・東太郎のこの先の生き方も気になるが、どんな構成になっているのかも気になって仕方がない。早く下巻を読みたくなる一冊である。

倒立する塔の殺人*皆川博子

  • 2014/09/24(水) 17:08:50

倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)
(2011/11/17)
皆川 博子

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少女を殺したのは、物語に秘められた毒――戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で小説の回し書きが流行していた。蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』とタイトルだけ記されたその美しいノートは、図書館の書架に本に紛れてひっそり置かれていた。ノートを手にした者は続きを書き継ぐ。しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた恐ろしい企みが明らかになり……物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。


女学校というある意味閉ざされ守られた場所が主な舞台であり、さらに戦時下という特殊な心理状況の下であったからこその物語であろう。物語の中で綴りあげられていく物語と、物語の中の現実とが入り組み互いに影響を与え合ってより不可思議な景色を見せているようでもある。時を隔て、ふとした勘違いを利用し、当初は思いもしなかった事実が明らかにされていくのだが、読むうちにだんだんと現実と作中作のどちらが先なのか判然としなくなってくるのがめまいのような感覚で、タイトルとも相まって不思議な心持ちにさせられる一冊である。

ビブリア古書堂の事件手帖5~栞子さんと繋がりの時~*三上延

  • 2014/09/11(木) 16:25:24

ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
(2014/01/24)
三上 延

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静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。


またまた面倒な事件に首を突っ込んでいる栞子さんなのである。そして、その事件のいくつかは、何と母が彼女を試すために仕掛けているのではないかという疑惑も。さらに、思い切って告白した大輔に五月いっぱいまで返事を保留し、栞子がしなければならないこととは。もどかしくほのぼのとした大輔と栞子の関係と、それを進めるために栞子が乗り越えなくてはならないことに立ち向かい、さらにそのために母の挑戦を受けて謎を解く。栞子さんにとってはなにやら決死の感じでもある。今後のあれもこれも気になるシリーズである。

致死量未満の殺人*三沢陽一

  • 2013/12/15(日) 17:12:05

致死量未満の殺人致死量未満の殺人
(2013/10/25)
三沢 陽一

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雪に閉ざされた山荘で、女子大生・弥生が毒殺された。容疑者は一緒に宿泊していた同じ大学のゼミ仲間4人――龍太、花帆、真佐人、圭。外の世界から切り離された密室状況で、同じ食事、同じ飲み物を分け合っていたはずなのに、犯人はどうやって弥生だけに毒を飲ませることができたのか。警察が到着するまで、残された4人は推理合戦を始める……15年後、雪の降る夜。花帆と夫の営む喫茶店を訪れたのは、卒業以来、音信不通の龍太だった。あと数時間で時効を迎える弥生の事件は、未解決のまま花帆たちの人生に拭いきれない影を落としていた。だが、龍太はおもむろに告げる。「弥生を殺したのは俺だよ」たび重なる推理とどんでん返しの果てに明かされる驚愕の真相とは? 〈第3回アガサ・クリスティー賞〉に輝く正統派本格ミステリ。


犯人が事項間際に当時の仲間に告白し、そのときのことを振り返るという趣向なので、誰が犯人かというハラハラ感はなく、如何にして殺したかというところに注目して読むことになるのだが、それさえも著者の仕掛けたトリックだったのかもしれない。最後まで読むと、あのとき無差別殺人を疑ってパニックにならなかった理由も腑に落ちるのである。そうだったのか…。最後の最後のどんでん返しは、あまりにも身勝手すぎて、胸が悪くなる感もあるが、最後まで緊張を切らせない一冊だった。

ビブリア古書堂の事件手帖4~栞子さんと二つの顔~*三上延

  • 2013/04/22(月) 17:13:30

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
(2013/02/22)
三上 延

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珍しい古書に関係する、特別な相談―謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その家には驚くべきものが待っていた。稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。そして、深まる謎はあの人物までも引き寄せる。美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくるのだが―。


ドラマを先に観てしまったせいで、謎解きのわくわく感はまったくなかったが、ドラマでは描かれなかったところに、ほんのちょっとしたどきどきがあったりもして、やはり原作は想像力をかきたてられていいものである。大輔も、少しずつ長く本を読めるようになっているようだし、栞子さんとの距離もじりじりと縮まってもきていることだし、次作辺りでそろそろ母とも決着がつくのだろうか。ドラマがなかったらもっと愉しめた一冊である。