ディーセント・ワーク・ガーディアン*沢村凛

  • 2015/01/01(木) 17:12:07

ディーセント・ワーク・ガーディアンディーセント・ワーク・ガーディアン
(2012/01/18)
沢村 凜

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「人は、生きるために働いている。だから、仕事で死んではいけないんだ」労働基準監督官である三村は、〈普通に働いて、普通に暮らせる〉社会をめざして、日々奮闘している。行政官としてだけでなく、時に特別司法警察職員として、時に職務を越えた〈謎解き〉に挑みつつ。労働基準監督署を舞台に描く熱血エンターテインメント!


第一話 転落の背景  第二話 妻からの電話  第三話 女の頼み事  第四話 部下の迷い  第五話 フェールセーフの穴  第六話 明日への光景

労働基準監督官という仕事にスポットライトを当てたお仕事小説であり、謎解きもあるミステリでもあって、ひと粒で二度おいしい感じでうれしい。労働基準監督官の三村と友人で刑事の清田との関わりも好もしいし、それぞれのキャラクタがしっかりしていて読みやすい。監督に出向く先の事業所の問題ばかりでなく、三村の家族の事情や、部下との関係も絡ませてさまざまな興味を掻き立てられるが、どれも散漫になっていないのがいい。労働基準監督官という仕事の大切さと苦労のことを、いままでまったく知らなかったと思い知らされ、読んでよかったと思わせる一冊である。

猫が足りない*沢村凛

  • 2014/11/24(月) 07:18:07

猫が足りない猫が足りない
(2014/09/17)
沢村 凜

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就職が決まらない知章はスポーツクラブに入会した。会員の女性たちに頼まれて近隣の猫虐待を調べると、意外な事件が明らかに。
真相究明に一役買ったのは会員の四元さんだった。その後、猫がらみで騒動を引き起こす彼女に振り回される知章。
就職はどうなる?四元さんの悲願とは?端正かつ大胆な筆の運びが魅力の連作ミステリー。


周りがどんどん内定を取る中、なかなか就職が決まらない知章は、父の方針でアルバイトも禁じられ、身分不相応なスポーツクラブの会員証を渡される。することもなく毎日スポーツクラブに通ううちに、ラウンジに集いおしゃべりをする年上(高齢?)の女性たちの輪になんとなく入っていて、その情報収集力や意外に取れている統制にちょっと驚くのである。そして、その知章が勝手に名づけている<おしゃべり会>からは少し距離を置く四元さんが、猫が足りない故に物語の中で大切な役割を果たすのである。おばさんたちのおしゃべりに端を発する日常の探偵物語にしては、死体も出てきたりして物騒でもあるのだが、<おしゃべり会>の面々や四元さんと知章の関係が微笑ましくもあり、心温まる物語でもあるのである。知章と<おしゃべり会>のこれからも見てみたいと思わされる一冊である。

タソガレ*沢村稟

  • 2011/03/13(日) 16:54:29

タソガレタソガレ
(2010/11/25)
沢村 凛

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パリ旅行中に明かされた里美の“特別な感覚”とは!?彼女の無意識の所作が呼ぶストーカーと誘拐殺人の行方は!?何でも屋の祐児の愛は障碍だらけ。大胆な展開を支える繊細な文章!注目の女性作家が『あやまち』『カタブツ』『さざなみ』に続いて贈る好評4文字シリーズ最新刊は、恋人たちの危機を救うハートウォーミングな物語。


ある日彼女の部屋で/恩知らずな彼女/憶測の彼方に/チャンスの後ろ髪/テストの顛末/別の日、彼女の部屋で

人の顔を憶えることのできない「相貌失認」という病気があることを本作で初めて知った。生まれつき相貌失認の主人公・里美の健気な処し方を知り、普段何気なく接している人の中にももしかすると苦しんでいる人がいるかもしれない、と思わせられた。病気そのものももちろんだが、人に解ってもらえないということがなにより辛いだろうと察せられる。里美には解ってくれる十年来の親友がおり、もうひとりの主人公である恋人・祐児にも、冒頭の行き違いのあとは理解してもらえたのが苦しい中でも救いである。そんな相貌失認ゆえに身の回りに起こる事件を、祐児が解決していくようなゆるい縛りのミステリになっている。謎を解きながら、相貌失認について読者も少しずつ理解を深めていくようになるのである。祐児の親身さがあたたかく、少しずつ里美が甘えられるようになるのがうれしくもある。胸の中がしみじみあたたかくなる一冊だった。

脇役スタンド・バイ・ミー*沢村凛

  • 2010/01/13(水) 16:50:54

脇役スタンド・バイ・ミー脇役スタンド・バイ・ミー
(2009/04)
沢村 凜

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鳥になりたいと祈る老女。彼女に何をしてあげられるだろうか…穏やかに暮らす“主役”の生活に忍びこむ、ミステリアスな“脇役”たち。騒音とともに消えた女、真夜中に廃屋でひとり眠る少女、前世を占えると告げる美女―すべての謎が解決したとき、あなたの胸に浮かび上がる“脇役”の本当の姿とは?いつもは主人公のあなたも、他人の人生では、脇役。傍らに立ち、手を差し伸べるか、あるいは―。再読必至の連作ミステリー。


 

  第一話  鳥類憧憬
  第二話  迷ったときは
  第三話  聴覚の逆襲
  第四話  裏土間
  第五話  人事マン
  第六話  前世の因縁
  最終話  脇役の不在


どうやら同じ街を舞台とする連作らしい、と判るのは、警察官・脇田さんの存在が共通しているからである。脇田さんに相談に乗ってもらい、あるいは腑に落ちない思いを解決してもらった別々の人たち・別々な事件の連作である。どの物語も、解き明かされてみれば納得でき、当時者たちも脇田さんの存在によって穏やかな気持ちで終えることができたはずである。それだけならば、「いい人脇田さん」で済んでしまうのだが、最終話でそれぞれの物語の登場人物が顔を揃え多ところで判明した事実がいちばんのミステリである。知りたいような知りたくないような、そんな一冊である。

さざなみ*沢村凛

  • 2006/07/16(日) 08:35:20

☆☆☆・・

さざなみ さざなみ
沢村 凛 (2006/01)
講談社

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世界は波でできている
次々に難題を出す謎の女主人。執事となった借金男が思いついた、波紋とシマウマと世界征服が一度に見える奇案が生む不測の結末。

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「百歩譲って<幸福の手紙>が善と悪を両立させた存在でないとしても、これをヒントに、これから私たちがやろうとしているネズミ講をそのようなものにすることは可能だと思います。つまり、善そのものを、悪であるネズミ講のしくみのなかで広げていくようにするのです」絹子さんの顔がぱーっと輝いた。俺は勝利を確信した。「それって、とってもおもしろそう。で、具体的には、どうやるの」??<本文より>


 |銀杏屋敷
 |奥山史嗣
 |ケース
が1セットになり、それが 7セット+α 連なっている、不思議な形態の連作である。
「銀杏屋敷」では、この章の語り手で、借金地獄にはまり込んでもがいているところを 執事として雇い入れられた秋庭が、女主人の絹子さんに言いつけられた仕事をこなす様子が語られる。
「奥山史嗣」は、そのまま奥山史嗣の陥った苦悩が描かれる。
「ケース」は、毎回主人公を替え、タイトルどおり様々なケースが語られる。

まったくちぐはぐに見える 1セットになる三つの章が、どう繋がるのかさっぱり見当もつかずにしばらく読み進んだのだが、こんな風に繋がっていたなんて!まさに《さざなみ》である。
そして、読者もろとも秋庭の思い込みに見事にやられるのだった。 あぁ、絹子さん...。
いちばんはじめの《ぽちゃん》の及ぼす影響――良くも悪くも――を思い知らされる一冊だった。

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カタブツ*沢村凛

  • 2006/06/04(日) 21:25:59

☆☆☆・・

カタブツ カタブツ
沢村 凛 (2004/07)
講談社

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気まじめに生きる男女ゆえの殺人、不倫、自殺…。世界に例のない「地味でまじめな人たち」にスポットライトを当てた短編集。誠実度100%人間たちのミステリー。


バクのみた夢・袋のカンガルー・駅で待つ人・とっさの場合・マリッジブルー・マリングレー・無言電話の向こう側 の6つのカタブツたちの物語。
地味でまじめな人たちの、と謳うのともカタブツの、と謳うのともちょっと違うような気はしなくもないが、まあ 表舞台に立って目立つことのないだろう人たちの物語なのだと思う。
カタブツ、と言い切ってしまうにはどの登場人物もいささか筋金がやわな気がする。・・・が、正真正銘筋金入りのカタブツは物語になどしようがないのだろう。
いちばん好きだったのは『無言電話の向こう側』。
樽見の 自身で考えたことに対するこだわりと、須磨の樽見にたいする熱が心地好かった。

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あやまち*沢村凛

  • 2006/05/26(金) 17:32:15

☆☆☆☆・

あやまち あやまち
沢村 凛 (2004/04/24)
講談社

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男と女、とり返しのつかない瞬間!
プレ「引きこもり」の女性が恋した男には秘密が。
ファンタジー大賞受賞者初の書下ろし恋愛小説。
  ――帯より


29歳の美園希実(ミソノノゾミ)は「一人でもいい」「二人でいてすれ違う淋しさよりも一人でいる愉しさのほうがいい」と思いながら、地下鉄I線Y駅で電車を下りて職場に通う毎日を送っていた。そんな希実の自分だけの拘り というか決めごとは、地下鉄の出口まで上がるのにエスカレーターを使わず階段を上がることだった。そして通勤時間のその階段は希実の専用のようになっていたのだった。
そんなある日、はじめて後ろから希実を追い抜いて行った人がいた。天津甘栗のような色の頭の男の人だった。
プロローグで、何もはじまっていないのにもうすでに結末が明かされている。
そして、それだからこそこれからはじまる物語のひとコマひとコマが一層大切に思えてくるのである。
希実の取った反応はあやまちだったのかもしれないが、あのときにあれ以外のどんな反応ができるというのだろう。それを思うとあまりにも切な過ぎる。またいつか、しばらく時が経ったあとでどこかでふたりが巡り会えることを祈らずにはいられない。

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