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エムエス 継続捜査ゼミ2*今野敏

  • 2019/02/19(火) 16:50:10

エムエス 継続捜査ゼミ2
今野 敏
講談社
売り上げランキング: 54,561

未解決事件を取り上げるため「継続捜査ゼミ」と呼ばれる小早川ゼミの5人の女子大生は、冤罪をテーマにしようとする。小早川は、授業で学内ミスコン反対のビラを配る女子学生高樹晶に会うが、高樹は小早川と話をした直後、何者かに襲われ救急車で運ばれた。その後、高樹に対する傷害容疑で小早川が任意同行されることに――警察に疑われ続ける教授に代わり、ゼミ生たちが協力して事件の真相を明らかにしていく。


登場人物のキャラクタもしっかり定着して、それぞれが生き生きしている本作である。そして今回は、ゼミでは冤罪事件を取り上げるのだが、小早川自身が冤罪の被害者にされかけるという、なんとも言えないタイミングの良さ(悪さかもしれないが)で、冤罪ということについて様々な角度から考えさせられる。立場が違うと見え方がこうも違うものかと思わされることもあり、ひとつ歯車を掛け違うと、どこまでも修正が効かなくなってエスカレートしていく怖さも味わった。なにより、小早川ゼミの結束力が強まった物語であったと思う。次の活躍が愉しみなシリーズである。

継続捜査ゼミ*今野敏

  • 2019/02/11(月) 18:48:28

継続捜査ゼミ (講談社文庫)
今野 敏
講談社 (2018-10-16)
売り上げランキング: 23,251

長年の刑事生活の後、警察学校校長を最後に退官した小早川の再就職先は女子大だった。彼が『刑事政策演習ゼミ』、別名『継続捜査ゼミ』で5人の女子大生と挑む課題は公訴時効が廃止された未解決の殺人等重要事案。最初に選んだのは逃走経路すら不明の15年前の老夫婦殺人事件だった。彼らは時間の壁を超え事件の真相に到達できるのか。異色のチーム警察小説、シリーズ第1弾!


元警察学校の校長だとは言え、昔の未解決事件だとは言え、一般人にここまで情報を開示していいのだろうかという疑問は於くとして、未解決事件を題材にして検証を進めるゼミはおもしろそうである。ゼミ生は五人、それぞれ個性に富んだ面々で、得意分野もさまざまである。それがうまい具合に役割分担になって事件の真相に迫っていくのである。教授である小早川のキャラクタもなかなか魅力的である。それにしても、いくら題材の提供者だとは言え、毎回オブザーバーとしてゼミに参加している安斎刑事の本来の仕事はどうなっているのか不思議である。ともあれ、気軽に読めて愉しいシリーズで、次が愉しみな一冊である。

殺人鬼にまつわる備忘録*小林泰三

  • 2018/12/04(火) 07:46:44

殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
小林 泰三
幻冬舎 (2018-10-10)
売り上げランキング: 48,943

見覚えのない部屋で目覚めた田村二吉。目の前に置かれたノートには、「記憶が数十分しかもたない」「今、自分は殺人鬼と戦っている」と記されていた。近所の老人や元恋人を名乗る女性が現れるも、信じられるのはノートだけ。過去の自分からの助言を手掛かりに、記憶がもたない男は殺人鬼を捕まえられるのか。衝撃のラストに二度騙されるミステリー。


短期記憶が定着しない田村二吉が主人公なので、チャプターが変わるたびに記憶がまっさらになり、改めて現在の状況を、自らが記したノートで確認するところから始まる。読者はもちろん経緯をすべてわかっているのに、主人公だけが、新たな気持ちで事に当たるのが、新鮮でもありもどかしくもある。経験則が役に立たないというのは、どういうものだろうか、と想像するだけで絶望的になるが、二吉はそんなことすら考える余裕なく、日々を生きている。しかも、触れた人物の記憶を自由に書き換えられる殺人鬼と対峙しているのだから、本人以外の周囲の危機感はさらに増す。ラストは、一見うまくいったように見えるが、いささかもやもやとする気分が残る。本当は何が真実なのだろうか。気になって仕方がない一冊ではある。

クララ殺し*小林泰三

  • 2016/10/04(火) 18:24:47

クララ殺し (創元クライム・クラブ)
小林 泰三
東京創元社
売り上げランキング: 101,351

大学院生・井森建は、ここ最近妙な夢をよく見ていた。自分がビルという名前の蜥蜴で、アリスという少女や異様な生き物が存在する不思議の国に棲んでいるというものだ。だがある夜、ビルは不思議の国ではない緑豊かな山中で、車椅子の美少女クララと“お爺さん”なる男と出会った。夢の中で「向こうでも会おう」と告げられた通り、翌朝井森は大学の校門前で“くらら”と出会う。彼女は、何者かに命を狙われていると助けを求めてきたのだが…。夢の“クララ”と現実の“くらら”を巡る、冷酷な殺人ゲーム。


『アリス殺し』の姉妹編。前作と同じく、というよりも前作以上に、要素が複雑に絡み合っており、しかもあちらの世界とこちらの世界も複雑に入り組んでいて、謎解きにかかる辺りからはことに、頭の中がグルグルしてくる。誰が誰のアーヴァタールで、誰と誰が通じているのか、さらには誰が改造されて元とは違う存在になっているのかが複雑で、解きほぐせなくなってくる。しかも、罪と罰の観念もあちらとこちらでは違うので、なにを持って解決とするのかも不確かで、いささか消化不良気味でもあり、哲学的と言ってもいいかもしれない。次々に暴かれる本体とアーヴァタールの相関関係が判ってくると、どんどん先を知りたくなる一冊でもある。

プロフェッション*今野敏

  • 2015/10/07(水) 18:30:15

プロフェッション
プロフェッション
posted with amazlet at 15.10.07
今野 敏
講談社
売り上げランキング: 19,404

立て続けに発生した連続誘拐事件。解放された被害者たちは、皆「呪い」をかけられていた――。警視庁きっての異能集団、ここに始動!
2014年に連続ドラマ化、2015年に映画化された「ST 警視庁科学特捜班」シリーズ(「ST 赤と白の捜査ファイル」)最新刊!


キャラクタはドラマに引きずられっぱなしだった。プロファイリングがメインな捜査なので、青山翔が前面に出てくる場面が多いのだが、そのたびに頭に浮かぶ映像を修正しなければならなのがいささか鬱陶しかった(著者のせいでは全くないのだが)。事件自体は、STが出てくるだけあって癖があるものだが、サイコパスを登場させるのはどうなんだろう、とちらりと思う。大学の研究室というある意味閉ざされた場所での人間関係のややこしさは充分に堪能させてもらった。設定を愉しめれば面白く読める一冊である。

アリス殺し*小林泰三

  • 2013/11/11(月) 16:43:44

アリス殺し (創元クライム・クラブ)アリス殺し (創元クライム・クラブ)
(2013/09/20)
小林 泰三

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複数の人間が夢で共有する〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と、現実世界で起きる不審死。驚愕の真相にあなたも必ず騙される。鬼才が贈る本格ミステリ。


タイトルに惹かれて読んでみた。不思議の国のアリスの世界で起こる殺人事件の物語かと単純に思っていたら、さにあらず。現実世界――それさえ確固としたものとは思えなくなるのだが――と、夢のなか(たぶん)の世界とが複数の人々によって共有され、奇妙にリンクしているのである。夢の世界の物語などと侮っていると、あまりにもグロテスクに過ぎる殺人事件の描写が何度も現れるので、具合が悪くなりそうでもある。覚悟して読んだ方がいい。余談だが、物の解らない人に何かを説明するときのイライラ感も充分すぎるほど味わえる。自業自得とは言え、あまりにも惨い一冊である。

ツクツク図書館*紺野キリフキ

  • 2012/01/27(金) 19:00:35

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)
(2008/02)
紺野 キリフキ

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つまらない本しか置いてない、ツクツク図書館。職員も建物もへんてこぞろい。弱気な館長、運び屋、語学屋、戻し屋ちゃん…そこにある秋、ひとりの着ぶくれ女がやってきた。女は働かないで、わがまま放題。だけど、図書館にある“伝説の本”の話を聞いて…?奇妙でかわいくってクセになる。キリフキワールド、いざ、開幕。


まず、ツクツク図書館の名前の由来に納得である。そんなことだったのか、と肩透かしを食ったようでもある。本作にはまったく関係ないが、この区にはほかにもいろんな「ツクツク○○」があるのだろうな、と想像すると愉しくなる。そしてこのツクツク図書館が一風変わっている。つまらない本しか置いていないのはさることながら、誰もが見つけられるわけではないらしい、というのもなにやら不思議である。そして、見かけはちょっと変わった洋館なのだが、中に入ると廊下はなくて、さまざまなジャンルのたくさんの部屋があり、迷子になりそうなのである。なんと愉しそうではないか。部屋と本が興味深いだけではなく、そこで繰り広げられる人間模様もまた興味深いのである。館長とか、雇われたのに仕事が嫌いなぶくぶくに着膨れた女とか。ともかく不思議な迷い道を愉しめる一冊である。

キリハラキリコ*紺野キリフキ

  • 2012/01/21(土) 16:59:20

キリハラキリコキリハラキリコ
(2006/08/22)
紺野 キリフキ

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不思議で不条理でおかしさに彩られた新小説
キリハラキリコの住むキリキリ町はおかしなことばかり起こる。誰も来ない始業式の教室。贋作マンガを売る古書店。蕎麦がにゅるにゅると飛び出るシャワー。季節ごとに必ず起こる停電。時の流れを教えにやってくる暦屋。特殊な才能を持ちながらも敗北が似合う男ミスター水村。キリコのまわりで起こる奇妙で愉快でちょっぴり哀しい出来事を彼女が日記のかたちで綴る。やがて、町に2カ月も続く大停電が訪れ、キリコの日記も最後のページが記される。 小学館文庫小説賞の佳作入選作を大幅改稿。従来の形式を打ち破る不条理で不思議で自由な小説空間は読む者をキリコのワンダーランドへとひき込む。携帯サイト『The News』で1日平均6万件のアクセスも記録した異色作。


ズバリ中学生・キリハラキリコの日記である。しかし、ただの日記ではない。いやただの日記なのだが、その内容がただ事ではないのである。でもそれがキリコの住むキリキリ町では普通のことなのだ(たぶん)。キリコを初めとする登場人物も、一件普通らしく見えても、その実なんだかどこかこれまで知っている人たちとは違い、それがキリコの日常にしっくり馴染んでいるから、読者はなおさら据わりの悪い思いをするのであるが、それがまた快感にもなってくる。違和感に包まれながら読みはじめたはずなのに、これはこれでいいか、といつのまにか受け入れてしまっていることに気づくのである。世界の裂け目からするりと入り込んでしまったような一冊である。

同期*今野敏

  • 2010/06/09(水) 16:38:37

同期同期
(2009/07/17)
今野 敏

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懲戒免職になった同期の公安刑事が、連続殺人の容疑者に。「教えてくれ。おまえはいったい何者なんだ」男たちの前に立ちはだかる最も高い壁―組織の論理。その壁を突破するのは、刑事たちの誇りと絆。現時点での集大成ともいえる最新警察小説、登場。


389ページ。三日くらいかかるかと思って読み始めたのだが、一気に読み終えてしまった。主人公の刑事・宇田川亮太が、はじまりとラストではまったく別人のようである。事件とその裏でうごめくもの、そして上司や先輩の刑事たちの上辺だけでは判らない情熱のようなものに触れて成長した証である。刑事というのはひとつの職業だが、ある種職人技でもあるのだと思わされる。刑事仲間や上司、相方刑事に抱く宇田川の印象が、短期間に二転三転するのも、現実味があって好感した。止まらなくなる一冊だった。

児玉清の「あの作家に会いたい」*児玉清

  • 2009/11/18(水) 13:36:24

児玉清の「あの作家に会いたい」児玉清の「あの作家に会いたい」
(2009/07/01)
児玉 清

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 大崎善生 角田光代 町田康 村山由佳 
 森絵都 真保祐一 江國香織 北原亞以子 
 荻原浩 あさのあつこ 北方謙三 浅田次郎 
 東野圭吾 三浦しをん 山本兼一 宮部みゆき 
 上橋菜穂子 有川浩 石田衣良 万城目学 
 北村薫 小川洋子 桜庭一樹 川上弘美 
 夢枕獏 


まさに、「あの作家に会いたい」と読者が思う顔ぶれである。
作品の書き方や、子ども時代の読書体験など、同じような質問でも、答えにはそれぞれ個性がにじみ出ていて興味深い。それぞれの作家のおすすめ本が載せられているのも嬉しい趣向である。
聞き手の児玉清さんの読書家ぶりも素晴らしい。

マダムだもの*小林聡美

  • 2007/08/31(金) 17:10:05

☆☆☆・・

マダムだもの (幻冬舎文庫) マダムだもの (幻冬舎文庫)
小林 聡美 (2005/06)
幻冬舎

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オットのドタキャンでひとりで出かけた結婚記念旅行、夫婦で長生きのための地味な食事、生ゴミ処理機からの異臭問題、犬の躾に発揮する「武士道精神」、イギリス旅行での「タイタニック事件」…。愛するオットと二匹の猫に大きな犬も加わって、女優でマダムの相変わらずのお気楽人生は続く―。つつましくも笑える日常を綴った名エッセイ。


画面で拝見するイメージどおりのエッセイで、なんとなくうれしくなってしまった。勝手に親近感を抱いてしまうような、もしもご近所でお見かけしたら、うっかり声をおかけしてしまいそうな気分である。マダム小林おひとりでも充分魅力的だが、ご夫婦という単位でもますます素敵に思えるのだった。

台所のおと*幸田文

  • 2006/06/15(木) 17:35:57

☆☆☆・・

台所のおと 台所のおと
幸田 文 (1992/09)
講談社

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暮らしのなかのなにげない音に絡みあう 男と女の意気地。
生きる哀しみを捉える確かな視線と透徹した感性。
  ――帯より


昭和31年から45年の間にさまざまな文芸誌に掲載された十の短編をまとめた一冊である。
表題作のほか、濃紺・草履・雪もち・食欲・祝辞・呼ばれる・おきみやげ・ひとり暮らし・あとでの話。
日本人の暮らしが欧米化し、近代化する過程でぽろぽろと落としてきてしまった心意気や 忍耐、気配り 思いやり などというものをさりげなく思い出させてくれるような物語たちだった。
一見すると虐げられているかのように見える女性(妻)の、だからこその意気地を垣間見るようで、哀しくやりきれなくもなるが 清々しい思いもするのである。

アルキメデスは手を汚さない*小峰元

  • 2004/09/24(金) 19:48:50

☆☆・・・
アルキメデスは手を汚さない

昭和48年度江戸川乱歩賞受賞作品。

東野圭吾さんが初めて読んだミステリーだというので読んでみた。なるほど、この場面があそこのヒントになったのだな、という風に読めて愉しかった。主人公は高校生たちである。昭和48年の高校生といえば まさに自分と同年代なのだが、私はこんなにはっきりと何かを考えていなかったような気がする。しかももっと護られた子どもだっただろう。この高校生の考えたトリックは、考え抜かれているようでいて偶然に期待するところもあるような気はする。事の重大さを自覚している気配があまりしないせいだろうか。
手を汚さずに物事を成そうとするのがそもそもの間違いなのだという落ちも ちょっとこじつけっぽく感じられてしまうのは 素直さが足りないからだろうか。