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さくら草*永井するみ

  • 2006/08/28(月) 19:42:46

☆☆☆☆・

さくら草 さくら草
永井 するみ (2006/05/27)
東京創元社

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プリムローズ殺人事件――
殺害された少女たちが身にまとっていたのは、ローティーンに絶大な人気を誇るジュニアブランド、プリムローズの服だった。
清純で高級感のあるデザインは、プリムローズを身につけた少女の写真を売買する男たちをも生み出す。
亡くなった少女たちに果たして何が?

ブランドを守ろうとするゼネラルマネージャー、女性刑事、そして少女の母親、事件に揺り動かされる女たちを描く、著者渾身の長編ミステリ。


少女向けブランド・プリムローズの服を着た少女が連続して殺された。 当初は、プリムローズの服を着ている少女を好む≪プリロリ≫とよばれるロリータ男が犯人ではないかと目されるが、プリムローズを取り巻く人々にも疑いがないわけではないのだった。 そして、俵坂と理恵の刑事コンビが捜査を続けていくうちに ある関連性が浮かび上がる。

他との差別化を計ったジュニアブランド・プリムローズの服に 着る者として、娘に着せる親として、服を作るものとして、ブランドを守る者として、たくさんの女たち 娘たちが溺れていく様子が、どこか新興宗教にのめりこむ者たちと似ているのが恐ろしくもある。
そして、その服をデザインする者と、ブランドを確固たるものにしようと心血を注ぐ者の熱さの違いがもたらすジレンマ、恋心、思いのほかの世間の注目、商戦などが、巧に織り合わされて描き出されていて見事である。

唇のあとに続くすべてのこと*永井するみ

  • 2006/08/08(火) 19:36:23

☆☆☆・・

唇のあとに続くすべてのこと 唇のあとに続くすべてのこと
永井 するみ (2003/01/21)
光文社

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結婚前、不倫関係にあった上司の葬儀に出たことがきっかけで再会した、かつての同僚と逢瀬を重ねる菜津。その上司の死について、他殺の可能性があると警察が尋ねてきたとき、平穏な日常が姿を変え始める…。恋愛サスペンス。


こういう不倫はとても後味が悪くてやはり厭わしい。 菜津は、職場の尊敬する大先輩・岸を 煩わしいことを心配せずに気楽に大人の付き合いができる男として選び、岸が自分に予想外の執着を見せるやいなや うんざりして結婚に逃げたのだ。 それなのに、そのときの大人としての自分の責任は棚に上げて、また新しい恋などはじめている。 まるでどうにもならないことのように。 菜津と良平のひとり娘・梨沙を除いて、登場人物の誰ひとりとして好きになれなかった。

防風林*永井するみ

  • 2006/07/19(水) 20:09:15

☆☆☆☆・

防風林 防風林
永井 するみ (2002/01)
講談社

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記憶が嘘をついたのか
冬の大地に埋めたはずの事件。
赤いコートの女が、封印された過去へ男を誘う。
気鋭の長編サスペンス!

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札幌を離れて17年経った今、再びここで暮らすことを決意して戻ってきた。
雪が深い。この一帯は原生林に近い混交林が続いている。雪を冠した木立の向こうに、楡の巨木が見えている。
あるべきものがそこにある。たったそれだけのことが、実に大きな慰めに、あるいは励ましになる。――(本文より)


芝園周治は、東京の大学へ進み そのまま東京の企業に就職したが、その会社が倒産するという不運に見舞われ十七年ぶりに故郷の札幌に帰ってきた。ガンに冒され 余命幾ばくもない母を見舞った病院で偶然再会したのは 元向かいの家に住んでいたアオイだった。彼女は 周治の母の最後の望みを叶えてあげようと持ちかける。それは、周治の母が帯広から逃げるように札幌に引っ越してくることになった原因となった男を探すことだった。

母の若いころの不貞の秘密を暴く物語かと思いきや、根っこは思いのほか深く、幼かった周治にとって あまりに衝撃的な出来事へと時間を遡ることになるのだった。

同じことを体験したと思っていても、受け取り方は人それぞれだろう。そして、あまりに衝撃的なことに出会うと、その記憶そのものまで封じ込めてしまおうとするのが人間なのかもしれない。そうなるともはや、同じ体験をしたとも言えなくなってしまうのである。
真相はあまりに哀しいが、まだ終わってはいないのかもしれない。

ビネツ*永井するみ

  • 2006/07/16(日) 21:38:36

☆☆☆・・

ビネツ ビネツ
永井 するみ (2005/05)
小学館

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美熱
――「エステはセックスに似ている。 痛い、だけど気持ちがいいからやめないで、というあの感じ」

青山の高級エステサロンを舞台に、美容業界にかかわる人間たちの表と裏を克明に描き出した<美的ミステリー>

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青山の高級エステサロン『ヴィーナスの手』。 サロンオーナーの安芸津京子にヘッドハントされた麻美は、その手の特性から<神の手>の再来ともてはやされる。 このサロンにはかつてサリという神の手を持つエステティシャンがいたが、六年前に何者かに殺害されていた。 京子と夫の健康食品会社社長・弘庸、様々な思惑でサロンに通う客たち、弘庸と前妻の息子・柊也などの愛憎が複雑に絡み合いながら物語りは展開するが――。
  ――帯より


今回の舞台はエステティックサロンである。 主役はエステティシャン。
ミステリとして読むには多少物足りなさを感じなくもないが、エステサロンの舞台裏を覗くには格好の物語である。アロママッサージの心地好さがページを通して伝わってくるようで、ついうっとりしてしまいそうになった。
人間関係の複雑さや愛憎の描かれ方も、あれほどのことをしてしまうにしては通り一遍である気はするが、女心と口コミの噂の伝播の速さと恐ろしさは背筋が寒くなるようだった。

和倉麻美のマッサージを一度受けてみたい。

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大いなる聴衆*永井するみ

  • 2006/07/15(土) 17:36:31

☆☆☆・・

大いなる聴衆 大いなる聴衆
永井 するみ (2000/08)
新潮社

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脅迫状にはただ一言。
「ハンマークラヴィーアを弾け。
 しかも、完璧に」――。
予測不能! 驚愕の展開!

誘拐犯の目的は、カネではない?
突然変更されたプログラム。 紛糾する音楽祭。
苦悩するピアニスト。 2回目の本番が近づく・・・・・。
『ハンマークラヴィーア』、
このベートーヴェンの長大な難曲のどこかに、謎を解く鍵が――?
札幌とロンドンを舞台に、華麗に展開する音楽ミステリー。
  ――帯より


T芸術大学在学中から群を抜いて将来を嘱望されていた安積界(あずみかい)は、娘に自分の腎臓を移植しながらも結局娘を失い、移殖手術の前に娘に捧げるように弾いて聴衆を魅了したベートーヴェンの難曲『ハンマークラヴィーア』をそれきり封印した。
そしていま、札幌音楽祭でコンサートを開くことになった界は、直前になって演奏曲目を変更し、長いこと封印していた『ハンマークラヴィーア』を弾くのだった。 
何故? 準備も万端でないのに 何のために?

界の現在の本拠地であるロンドンと、音楽祭が行われる札幌と、二元中継さながらに物語りは進み、思ってもいなかった過去の事情が明らかにされてゆく。

音楽を演奏するものと、聴衆としてそれを享受する者。
その厳然たる線引きと、安積界、さらには師匠である東畑英世の音楽以外への鈍感さが招いた結果がこの事件だったのかもしれない。
界が自らの音楽性を取り戻したあとも、彼の無神経な鈍感さは修正されることはないように思われる。 また同じようなことが起こらないとは言い切れない気がする。

天使などいない*永井するみ

  • 2006/07/09(日) 17:12:42

☆☆☆・・

天使などいない 天使などいない
永井 するみ (2001/04)
光文社

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全ての女性に贈る傑作ミステリー!
「こんなことになると分かっていたら・・・・・」
嫉妬、思い込み、勘違いが思わぬ事件を呼び起こす!
9つの物語のどこかに、あなたがいる

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この短篇集には等身大の女性たちの物語が詰まっている。嫉妬、思い込み、仕事への情熱、癒しを求める心・・・・・それらが、彼女たちも気づかぬうちに不吉な暗雲を呼び、平穏な暮らしに亀裂が走り、事件が発生する。日常の背後に秘められた恐ろしい秘密の数々・・・・・。この日本のどこかで、今日もこんな事件が起きているのかも知れない。
――千街昌之氏(ミステリー評論家)
  ――帯より


別れてほしい・耳たぶ・十三月・レター・銀の墨・マリーゴールド・落花・振り返りもしない、の九篇。
どれも女性が主役で、被害者は彼女の近くにいる人である。どの物語のどの事件にも 表面に現れた目に見えることからは判らない ほんの少し複雑な理由があり、ほんの少し捻れた想いがある。ふとしたことからそれに気づき真相に迫るのは、彼女たちが自分を救うためでもあり、被害者と加害者をも救うことになっているように思える。
短篇でも怖さはじわじわと押し寄せてくるが、やはり長篇の方が読み応えはあるかもしれない。

樹縛*永井するみ

  • 2006/07/05(水) 07:12:20

☆☆☆・・

樹縛 樹縛
永井 するみ (1998/04)
新潮社

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行方不明の姉が白骨体で発見された。動揺する坂本直里に持ち込まれた、新築マンションでのシックハウス症候群という仕事上のトラブル。秋田と木場を舞台に、「杉」という木の背後に広がる人間の闇を描く。

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十二年間行方不明だった姉が、白骨体で発見された――
動揺する坂本直理に持ち込まれた、仕事上のトラブル。
杉を使った建材のために、新築マンションでアレルギー症状が広まっているというのだ。研究者としてその原因を追及する直理が「行き当たってしまった」真相とは・・・・・。


今回の舞台は秋田杉の産地である。そして、その秋田杉が建材として使われている東京が第二の舞台になっている。
物語は二つの方向から語られてゆく。一方は、東京のマンションで広まったスギ花粉症様のアレルギー症状の原因を突き止めようとして姉・結理の死の真相に近づいてしまう直理の立場から、もう一方は、共同経営者の修造が結理と心中したとされている八田の立場から語られる。そして、それが次第に一点へと収束していくのである。
直理を除いて 登場人物の誰もが某かの秘密を抱え、他の人の秘密に薄々感づきながらもそ知らぬ振りをしつづけてきた。そのあれもこれもが 杉によって暴かれたような感がある。タイトルの絶妙さを読後に改めて思う。

ボランティア・スピリット*永井するみ

  • 2006/07/03(月) 13:06:36

☆☆☆☆・

ボランティア・スピリット ボランティア・スピリット
永井 するみ (2002/08)
光文社

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地方都市・K市の市民センターで開かれている外国人労働者向けの日本語教室を舞台に展開される様々な人間模様を、ミステリータッチで描いた連作集。盗難疑惑などの社会の縮図ともいえる事件を通して、人間の心の底を抉り出す。


共用費500円だけを集めて市民センターで開かれている 外国人向け日本語教室を舞台にする九つの連作短編集。
表題作のほか、冬枯れの木・雨・誰に恋すればいい?・きれいな手・ジャスミンの花・夜に辿る道・そばにいて・言葉にならない。

どの物語にも日本語教室の教師や生徒たちにまつわる小さな謎があり、謎解きがなされるのだが、ミステリとだけいってしまうにはもったいないような気がする。スパイスとしてミステリの風味もある心の隙間の物語、といったところだろうか。
外国人に日本語を教える教師たちはボランティアなので、それなりの気持ちを持って仕事に当たっているのだろうと思われるが、ふとした心の隙間に 闇というほど濃くはないが翳りのようなものをみることができるのだ。それは何かというと、外国人、特にアジアの人たちを無意識に下に見ているということ。そこから派生するあれこれが小さな事件 あるいは事件とも呼べない出来事になって当事者や周囲の人たちの心にささくれを作る。そしてそんな様子にこちらも胸が痛くなる。
著者の題材の選び方はとても興味深い。この作品では日本語教室であり、また別の作品では 幼児教室であり 米作りの現場である。そしてどの作品でもその題材が見事に生かされているように思う。

歪んだ匣*永井するみ

  • 2006/06/30(金) 17:17:29

☆☆☆・・

歪んだ匣 歪んだ匣
永井 するみ (2000/07)
祥伝社

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「金だ。早く。あるだけ出せ」土曜の午後、オフィス・ビル一階のカフェ〈ウプスラ〉に強盗が出現。その場に居合わせたのはバイトの青年城野龍だけだった。犯人はレジ内の現金をせしめて遁走。だが、その時確かに店内にいたはずの親子連れの客が姿を消し、龍は店長たちから自作自演の犯行を疑われてしまった。嫌疑を晴らすため、龍は唯一の証言者の消息を追う。やがてたずね当てた親子――ミユキとタクの話から、龍は事件の皮肉な真相を知ることに・・・・・。(第六話 ダブル・オリーブ)
事故、盗難、横領、ケンカ、そして殺人・・・・・都心に聳える二十八階建ての最先端(インテリジェント)ビル内で次々に起こる怪事件。期待の俊才が、日常の職場にひそむ恐怖と危険を描く都会(アーバン)ミステリーの異色連作!
  ――見返しより


神谷町に建つ二十八階建てのビルに入っている会社や店などを一話ずつ舞台にする九つの連作。
 
 第一話 重すぎて 25F スタリオン・コーポレーション
 第二話 D・I・D 15F キリシュ・コンピュータ
 第三話 歪んだ月 BF フィットネスクラブ**
 第四話 ドラッグストア 8F 秋平建設
 第五話 ブラックボックス 11F 片倉食品
 第六話 ダブル・オリーブ 27F エル・デコ社
 第七話 幻の味 13F ディッカーズ社
 第八話 ウーマン 23F バラステア・インク
 第九話 蝶のごとく 1F ホール

面白い試みである。同じビルにある会社で働くと言っても、お互いに関わりなどほとんどないと言っていい。そんななかで次々と事件が起きていく。そして、わずかながらも関わりを持つ人たちが現われてきたりもする。
都会に聳え建つインテリジェントビルで働く、というただひとつの共通点によって繋がる物語たちであり、舞台はほとんどこのビルの中なのだが、なにやら社会全体の縮図にも見えてくるから不思議である。

俯いていたつもりはない*永井するみ

  • 2006/06/22(木) 12:55:10

☆☆☆☆・

俯いていたつもりはない 俯いていたつもりはない
永井 するみ (2004/09/17)
光文社

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あのとき、身を切る思いで彼と別れたのに。16年後、彼女の前に男は現れた-。確かな自分を求めて揺れ動く、現代の女性を描く恋愛ミステリー。『小説宝石』連載「あの日、僕らがいた場所」を改題して単行本化。


白金で幼児教室・ラウンドテイルを営む丸尾志乃・緋沙子親子。
志乃は戸籍上の父親のいない緋沙子を産み育て、ラウンドテイルを守ってきたが、近ごろは緋沙子が主になって運営するようになっていた。
そんな折、通ってくる子どもたちのひとり 希央の母・凛子が行方不明になり、他殺死体で見つかるという事件が起き、それぞれがそれぞれの思惑で疑ったり、疑いを晴らしたかったりして事件の周りを探り始めるのだったが...。

大人たちの愛の世界、大人が子どもに向ける愛と期待、そして子どもたちの純粋で無邪気な世界。
どれが良いとか悪いとかではなく、並べて描かれているが故に 大人が失くしてきたものを思い知らされるような気がしてしまう。そして、純粋で無邪気であるだけでなく、子どもが思いのほか大人を気遣い、深く何かを見つめていることにも気づかされるのである。
緋沙子も凛子も、心に負って癒されることのない傷を 子どもの存在によってどれほど楽にさせられたことだろう。
凛子の死の真相は些か安易過ぎる気もしなくもないが、最後には これからにとっての良し悪しは別として「そうだったのか」と涙ぐみそうになる展開もある。
永井するみさん。この空気感は好きかもしれない。

希望*永井するみ

  • 2006/05/30(火) 12:40:35

☆☆☆・・

希望 希望
永井 するみ (2003/12/10)
文藝春秋

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五年前に老人を次々と殺害した少年が、少年院から戻ってきた。
母親や刑事、カウンセラー、被害者の孫たちを巻き込んで、やがて起きる新たな事件――。
著者会心の長篇エンタテインメント

目を覚ませ!!
自分は何をしたのか?

「家内がやつに殺されて、何が一番つらかったか分かりますか。
あのとき、やつが子供だったことです。
孫の健司と同じ中学生だった。
憎んだ、恨んだ、殺してやりたいと思った。
しかしね、子供のやったことなんだ」(本文より)
  ――帯より


1998年。一見なんの繋がりもない老女が立て続けに3人殺されるという事件が起こった。捜査により予想外の手がかりから見つかった犯人は中学生の美少年だった。
五年後。あのときの犯人・熱田友樹が少年院を出る日が迫るにつれて精神状態が不安定になった母親の陽子は、手記を出すときに世話になった雑誌記者の林に大学の同級生だったカウンセラーの成瀬環を紹介されてカウンセリングを受けていた。
友樹は、帰ってくると 情報処理関係の専門学校に通い、口数は少ないながらも穏やかに過ごしているように見えた。が、それを許さない何者かによってインターネット上に顔写真をさらされたり、携帯メールで友樹についての情報を流されたり、専門学校でも陰で噂されたりと 気の休まることはなかった。
そしてそんな折、友樹が さらには陽子が何者かに殴打され怪我を負う。

幼少少年時代に連続殺人という罪を犯した友樹の心の闇を探ることに焦点を当てた作品ではない。友樹が犯した罪によって派生する様々なこと、影響される様々な人やものごと、抉り出され曝け出される深奥に蹲る何か、が描かれた作品である。友樹ひとりに焦点を当てるよりもはるかに取りとめがなく 重苦しく 後味が悪い。
友樹の犯したとり返しのつかない犯罪さえもが その後に起こることの端緒でしかなかったように思えて、人間の心に潜む闇の深さに戦かされた。
そして、最後までその端緒となった友樹の心の内を覗き見ることができなかったことがさらに恐ろしくもある。この物語ではなにひとつ解決されていないのだということを改めて思い知らされる。

枯れ蔵*永井するみ

  • 2006/05/17(水) 17:46:48

☆☆☆・・
 


第1回 新潮ミステリー倶楽部賞受賞

食品会社のOLを巻き込んだ「平静の米騒動」とは?
「コメ」が現代を炙りだすバイオテック・ミステリー!


日本ミステリーが初めて本格的に農業の世界に足を踏み入れた。新潮ミステリー倶楽部賞の第一回目の受賞者である永井するみは今、二重の意味でパイオニアになろうとしているのだ。“米作り”という素材は果たしてどんなふうに料理され、ミステリーという器に盛られたのか――その鮮やかなる手さばきをとくとご覧あれ。  香山二三郎氏激賞!!
  ――帯より


農業がどんなふうにミステリになるのだろうか と、興味津々で読み始めたのだが、プロローグのショッキングな場面にいきなり面食らう。しかしこれこそが核心だったのである。
有機無農薬の米作り名人、というその世界では神さまのような人を重要な登場人物として配したのが見事である。米作りとその行いの相矛盾することのもどかしさと憤りが物語にただミステリとしてだけではない奥行きを与えたような気がする。

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