オーダーメイド殺人クラブ*辻村深月

  • 2016/05/13(金) 21:17:38

オーダーメイド殺人クラブ
辻村 深月
集英社
売り上げランキング: 364,499

クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は―。少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。


まったく親しいわけではないが、奥底に似通った感性を感じたクラスメイトの昆虫系男子・徳川に自分を殺すことを依頼したアン。中二という、自分の存在がまだ確立されておらず、些細なことで揺らぐ年頃特有の面倒臭いことこの上なく、しかもひどく狭い人間関係に翻弄されつつ日々を過ごす様子が、息苦しいほどリアルである。そんな中で、アンにとって、自分が殺されるXデーが、生きる希望になっているのも矛盾してはいるが、解る気がしなくもない。徳川と計画を練っていくうちに、彼のことをまったく知らないことに気づいたり、Xデー以後の彼の周りのことに想いを馳せることもできるようになったりするが、それは少しずつ成長している証しでもあるように思われる。そして二人の関わり方も微妙に変わってくる。大人になって振り返れば、小さなコップの中の嵐のようなものであるのだが、あまりに激しく束の間の嵐ではあった。途中、やや中だるみ感はあった印象はあるが、展開から目が離せない一冊だった。

きのうの影踏み*辻村深月

  • 2015/10/27(火) 17:08:27

きのうの影踏み (角川書店単行本)
KADOKAWA / 角川書店 (2015-09-26)
売り上げランキング: 9,630

子どもの頃、流行っていたおまじないは、嫌いな人、消したい人の名前を書いた紙を十円玉と一緒に十日間続けて賽銭箱に投げ込むことだった。ある日、子どもたちは消えた子どもについて相談していて……(「十円参り」)。あるホラー作家が語る謎のファンレターの話を聞きぞっとした。私のところにも少し違う同じような怪しい手紙が届いていたからだ。その手紙の主を追及するうちに次々と怪しいことが連続し……(「手紙の主」)。出産のため里帰りしていた町で聞いた怪しい占い師の噂。ある日、スーパーで見知らぬ老女を見かけた瞬間、その人だと直感し……(「私の町の占い師」)。
怪談専門誌『Mei(冥)』に連載した作品ほか、書き下ろしを収録した全13篇。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに腕をふるった、エンターテインメントが誕生しました。


こういうテイストとは知らずに読み始めたのだが、怪談だったとは。ただ、ホラーは苦手なのだが、本作は、現実に即しているというか、荒唐無稽な理不尽さはなく、実際に身近で起こっているかもしれないと感じられるレベルなので――だからなおさら怖いとも言えるが――親しんで読めた気がする。このホラーは結構好きかも、と思わせてくれる一冊だった。

朝が来る*辻村深月

  • 2015/09/30(水) 16:40:01

朝が来る
朝が来る
posted with amazlet at 15.09.30
辻村 深月
文藝春秋
売り上げランキング: 6,145

「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった…。子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長篇。


栗原夫妻の物語から始まる。結婚し、子を望んでも叶わず、辛い不妊治療を途中で断念し、子どもがいない人生を考え始めたところに、特別養子縁組という制度を知り、産んだが育てることが叶わない母から生後間もない赤ん坊を引き取って実子として育てることを選ぶ。子どもやその親とのちょっとしたトラブルも含め、しあわせに暮らしている栗原家にあるときからかかるようになった無言電話。その先にいたのは、息子・朝斗の生みの親・片倉ひかりだった。その先は、ひかりが子を産み、養子に出し、その後どんな風に生きてきたかが描かれる。ひかりが出産したのは中学生のときであり、栗原家に電話をしたのは二十歳のときなのだが、その六年は、読むのが辛くなるものである。とは言え、あまりにも無知で無防備で後先を考えない行動の結果であることを考えると、同情するばかりでもいられない。結局は行いは自分に返って来るのだろうとも思う。ラストの栗原家の対応は大人すぎる気がしなくもないが、それで朝斗もひかりも救われたに違いない。やるせなさもどかしさとともに、人のあたたかさが胸を打つ一冊である。

にぎやかな落ち葉たち*辻真先

  • 2015/05/10(日) 06:57:39


北関東の山間にたつグループホーム「若葉荘」。世話人は元天才少女小説家。居住者は自在に歳を重ねた高齢者たちと、車椅子暮しながら筋骨隆々の元刑事と、身寄りのない彼の姪。賑やかで穏やかな日々は、その冬いちばんの雪の日、とつぜん破られる。密室に転がった射殺死体の出現によって―ホーム最年少の少女スタッフは、隠された因縁を解き明かし、真相に迫ることができるのか!?半世紀を超える筆歴を持つ日本一やんちゃな巨匠が、稚気と叙情と茶目っ気を縦横に駆使して描く、本格ミステリ長編!


まず、登場人物がそれぞれに個性的で、にもかかわらず親しみやすく、読者もあっという間に若葉荘の雰囲気に馴染めてしまうので、つい入居者の一人になった心地で読んでしまう。最年少、17歳の綾乃は、世話人の寥(りょう)を甲斐甲斐しく手伝いながらも、人一倍屈託を抱えているのが端々に伺えて気になる。仕事熱心とは言いかねる杵谷が解雇もされずに若葉荘にいるのも気にかかる。何かが起きそうだと思っているところに大雪で道路が閉ざされ、殺人事件が起きるのである。過去から続く恨みの気持ちと時のいたずら、そして別の流れが加わったとき、とんでもない力になってしまったのである。何度もそうだったのかと思わされる一冊である。

家族シアター*辻村深月

  • 2015/01/04(日) 06:58:26

家族シアター家族シアター
(2014/10/21)
辻村 深月

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お父さんも、お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも、娘も、息子も、お姉ちゃんも、弟も、妹も、孫だって―。ぶつかり合うのは、近いから。ややこしくも愛おしい、すべての「わが家」の物語。


「「妹」という祝福」 「サイリウム」 「私のディアマンテ」 「タイムカプセルの八年」 「1992年の秋空」 「孫と誕生会」 「タマシイム・マシンの永遠」

姉と妹、母と娘、祖父と孫。家族にもさまざまなつながり方がある。近いがゆえに却って見えないこと、近すぎて気づけないこと。愛の深さをそうと気づかずに鬱陶しく思うこともある。それぞれがそのときどきの精一杯で家族と関わっていたのだと気づくのはいつもはるか先へ行ってふり返る時なのだ。もどかしくて切なくて、じゅわんとあたたかい一冊である。

エヴリシング・フロウズ*津村記久子

  • 2014/11/30(日) 18:38:11

エヴリシング・フロウズエヴリシング・フロウズ
(2014/08/27)
津村 記久子

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クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。
大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。


中学生の物語である。大人から見れば狭い世界でうろうろしているように見える彼らにも、日々さまざまな出会いがあり、感情の揺れがあり、駆け引きがあり、心の通い合いがあるのだと、忘れかけていた気持ちを思い出させてくれる。しかも、それぞれに学校生活以外にも抱えているものがあり、ときには一人で抱えきれないこともある。新学期の出会いがあって現在がある。遠いようで近く、浅過ぎず深すぎない関わり方が、彼らなりの絶妙さでそれぞれの関係を成り立たせているのが素晴らしい。みんなに明るい未来があることを信じたくなる一冊である。

ウエストウイング*津村記久子

  • 2012/12/31(月) 13:33:39

ウエストウイングウエストウイング
(2012/11/07)
津村 記久子

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職場の雑事に追われる事務職のOL・ネゴロ、単調な毎日を送る平凡な20代サラリーマン・フカボリ、進学塾に通う母子家庭の小学生・ヒロシ。職場、将来、成績と、それぞれに思いわずらう三人が、取り壊しの噂もある椿ビルディング西棟の物置き場で、互いの顔も知らぬまま物々交換を始める。ビルの隙間で一息つく日々のなか、隠し部屋の三人には、次から次へと不思議な災難が降りかかる。そして彼らは、図らずも西棟最大の危機に立ち向かうことに…。


想像していたのとは全く違う物語だった。ゆるく生ぬるく始まったネゴロ、フカボリ、ヒロシの、なんの接点もない椿ビルディングでの日々の物語は、それぞれが別の目的で逃避場にしていたビルの隅の物置場を介して、ある日を境に、じわじわと少しずつ緊張感をはらんだものになっていくのだった。自分以外に――姿が見えない――誰かがいるかもしれないということが、張り合いとか期待とか名づけられるほどではないが、微かな心持ちの変化を生むのだった。それは読者にとっても同じで、いつどんな風にそれぞれに素性が明らかになり、交流が始まる――あるいは途切れる――のだろうか、と興味を惹かれながら読むことになる。物置場での見えない交流とは別に、ゆるくて生ぬるいと見えた日常は、実は椿ビルディングを生活の場にしている万人に降りかかる危機の序章だったのだ。ひとつを乗り越えると、そこにはまた新たな危機が立ちはだかり、途方にくれながらもなんとか解決策を手探りするのだが、彼らになんとなく緊迫感がないような気がするのは、椿ビルディングという建物の属性によるものだろうか。どうなることかといちばん気を揉んでいるのは読者かもしれない、とふと思う。ラストまでゆるいが、屋上のユンボが動かなくてよかったと、ほっと胸をなでおろした一冊である。

とにかくうちに帰ります*津村記久子

  • 2012/11/25(日) 08:29:32

とにかくうちに帰りますとにかくうちに帰ります
(2012/02/29)
津村 記久子

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うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。職場のおじさんに文房具を返してもらえない人。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する人。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう人――。それぞれの日々の悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に描く、芥川賞作家の最新小説集。働き、悩み、歩き続ける人たちのための六篇。


「職場の作法」
   ブラックボックス
   ハラスメント、ネグレクト 
   ブラックホール
   小規模なパンデミック
「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」
「とにかくうちに帰ります」

本土から離れた「洲」にある小さな会社が舞台の連作である。私(鳥飼)の目線で、先輩や上司との職場での日常のあれこれが語られるのだが、そのどれもが些細なことでありながら、チクリと胸を刺されたり、それぞれの人の人となりがそれとなくにじみ出ていたりして興味深い。人間ってこうだよなぁ、と思わず深くうなずいてしまったりもする。そして表題作では、ほんとうにほんとうに心から屋根って素晴らしい、と思わされる。凄まじい雨に降りこめられた人たちが、とにかく何をおいても屋根のある家に帰って力を抜けることを祈らずにはいられない。不思議に魅力的な一冊である。

鍵のない夢を見る*辻村深月

  • 2012/09/25(火) 17:20:46

鍵のない夢を見る鍵のない夢を見る
(2012/05/16)
辻村 深月

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普通の町に生きる、ありふれた人々がふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる5篇。現代の地方の姿を鋭く衝く短篇集


「仁志野町の泥棒」 「石蕗南地区の放火」 「美弥谷団地の逃亡者」 「芹葉大学の夢と殺人」 「君本家の誘拐」

普通の町で暮らす、ありふれた人々が主人公だが、語られていることは決して普通とは言えないことばかりである。心の昏い部分をわずかな隙間から偶然垣間見てしまったような、居心地の悪いうしろめたさが後に残る物語である。ラスト近くできゅっと捻られ、物語が様相を変えるのも興味深い。読後どんよりしてしまう一冊でもある。

水底フェスタ*辻村深月

  • 2011/11/10(木) 21:40:58

水底フェスタ水底フェスタ
(2011/08/24)
辻村 深月

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村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き“村を売る”ため協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった―。辻村深月が描く一生に一度の恋。


プライバシーなどあってないような狭い村の暮らしの閉塞感に倦んでいた湧谷広海と、村を捨てて東京でモデルになり映画にも出たのに、どういうわけか帰ってきている織場由貴美は、村を会場とするロックフェス「ムツシロック」の夜に出会う。その日から少しずつ何かが変わっていったのだった。広海の想いと真実を胸に秘めた由貴美の想いは重なることがあるのか。真実に近づくにつれ、やり場のない憤りを覚え、村の代々続く隠蔽体質に虫唾が走る。信じられるのは一体誰なのか。出口のない物語のように思える一冊である。

太陽の坐る場所*辻村深月

  • 2011/07/13(水) 19:59:50

太陽の坐る場所太陽の坐る場所
(2008/12)
辻村 深月

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高校卒業から10年。クラス会に集まった男女の話題は、女優になったクラスメートの「キョウコ」。彼女を次のクラス会へ呼び出そうともくろむが、「キョウコ」と向かい合うことで思い出される、高校時代の「幼く、罪深かった」出来事―。よみがえる「教室の悪意」。28歳、大人になってしまった男女の想いを描き、深い共感を呼び起こす傑作ミステリー。辻村深月の新境地。


地方の高校の同級生の十年後の物語である。高校二年と三年を同じ教室で過ごしたクラスメイトも、卒業後、地元に残った者あり、東京に出た者あり、結婚した者、女優になった者、地元テレビ局のアナウンサーになった者と、さまざまである。毎年クラス会として集まるたびに高校時代の残酷な罪深さを再認識することになるのである。高校時代と現在との印象がどうも合致しない人がいてずっと気になって仕方がなかったのだが、そういうからくりだったのか。そこが腑に落ちると物語りはがらりと様相を変える。その辺りは確かに面白かったが、内容にはさほど目新しさを感じられなくて、いささか残念でもある。映像化が不可能という点では面白い一冊である。

ふちなしのかがみ*辻村深月

  • 2010/01/08(金) 17:14:29

ふちなしのかがみふちなしのかがみ
(2009/07/01)
辻村 深月

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ひややかな恐怖が胸に迫る―青春ミステリの気鋭が初めて封印を破った現代の怪談!おまじないや占い、だれもが知っていた「花子さん」。夢中で話した「学校の七不思議」、おそるおそる試した「コックリさん」。やくそくをやぶったひとは、だぁれ?その向こう側は、決して覗いてはいけない―。


表題作のほか、「踊り場の花子」 「ブランコをこぐ足」 「おとうさん、したいがあるよ」 「八月の天変地異」

現代の怪談という惹句がこの一冊をよく表わしている。ラストに向かうほどに心が騒ぎ、様相が一変する瞬間は、背筋が寒くなる。驚愕のどんでん返しとか、ほのぼのとしたどんでん返し、というのではなく、哀しい大逆転という感じで、読後はやるせなくさせられる物語が多かった。

不安な産声*土屋隆夫

  • 2009/12/03(木) 13:51:48

不安な産声[新装版] (光文社文庫)不安な産声[新装版] (光文社文庫)
(2003/05/13)
土屋 隆夫

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大手薬品メーカー社長宅の庭で、お手伝いが強姦・絞殺された。容疑者として医大教授・久保伸也の名が挙がり、犯行を自供する。名誉も地位もある男がなぜ? しかも、久保にはアリバイがあり殺害動機もなければ証拠もない。担当検事・千草がみた、理解を超える事件の裏に隠された衝撃の真相とは…?斬新な手法を駆使した日本推理小説史上に残る記念碑的作品。


強姦殺人事件の犯人として拘留中の産婦人科医師・久保が担当検事・千草に宛てた上申書、という形体を取る物語である。早い時点で犯行を自供した久保であったが、たまたま殺人事件が起きて間もない現場を通りかかった千草の職業的な勘によって、久保が隠しとおしたかった真の動機を述懐させることに成功したのだが、最後には、真犯人の久保でさえ想像もしなかった驚愕の真実が待ち構えているのである。
人工授精という厳粛な問題をテーマに据え、人の弱さとしたたかさ、幸福の絶頂と裏腹な罪の意識を描いて見事である。読み応えのある一冊だった。

ifの迷宮*柄刀一

  • 2009/11/02(月) 20:22:00

ifの迷宮 (光文社文庫)ifの迷宮 (光文社文庫)
(2003/04/10)
柄刀 一

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とっくに死んだはずの人物の遺伝子が、殺人事件現場から発見されたら!?遺伝子治療や体細胞移植を手がける最先端医療企業SOMONグループ。その中枢を担う宗門家で、顔と手足が焼かれた女性の死体が発見された。現場のDNA鑑定が示したのは、“死者の甦り”という肯きがたい事実だった―。読者を謎の迷宮へ誘う本格推理の真骨頂。


ほんの少し先の時代を舞台にした物語である。出生前診断で退治の遺伝子をチェックすることが、一般的になり、中絶の選択権がゆるやかになっている時代である。そんな時代に、遺伝子治療や体細胞移植をてがける宗門家の周りで殺人事件が起こるのだが、次々と奇妙な事実――とっくに亡くなっているはずの人物の遺伝子が検出されたり、被害者だと思った死体の遺伝子が加害者のものだったり――が判明するのである。
命の問題、人生の問題、幸福の問題・・・。さまざまな問題を投げかけられているような心地で読んだ。何が正しいのか、一概には言えないと思うが、安易に流されていい問題ではないと改めて思わされた。

首都直下地震*柘植久慶

  • 2008/11/12(水) 13:25:18

首都直下地震“震度7” (PHP文庫)首都直下地震“震度7” (PHP文庫)
(2006/01)
柘植 久慶

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「東京大空襲どころじゃない。やられている範囲が桁外れだ!」 深夜の震源地を飛ぶ偵察機の搭乗員が叫んだ。眼下の火災は旋風となって急速に燃え広がり、上空では火柱が1本と化して周囲の空間を焼き尽くしている――。
平成XX年2月冬、東京湾北部を震源とするマグニチュード8.1<震度7強>の猛烈な地震が首都東京を直撃した。耐震性が高いとされた住宅・マンションが倒壊し、道路を塞ぐ大量の自動車事故が導火線となって、炎は際限なく広がっていく。都心では大量の帰宅困難者が発生し、脱出を試みる避難民が次々と炎に飲み込まれる。死者15万人、行方不明者10万人、死傷者の合計は100万人。今まさに時を超えて、関東大震災と同じかそれ以上の災禍が繰り返されようとしている。
本書は、政府の予想数字を遥かに上回る、未曾有の大震災をシュミレートした衝撃の近未来ノベル。東京はこの衝撃<インパクト>に耐えられるか!?
文庫書き下ろし。


真冬の帰宅ラッシュ時、そして夕飯の準備で火を使う時間、しかも、江戸時代までは海だったところを埋め立ててできた地盤の弱い場所を震源とする巨大地震が発生した。場所も季節も時間帯も最悪を選んで起きたような大地震である。
首都東京のさまざまな場所の地震発生直前からその瞬間の状況が実況中継のように描かれていて、震えあがる。関東大震災時と違い、自動車事故やそこから派生する火災によって、幹線道路は防火壁の役割をなさず、それどころか火災をさらに広げる原因にさえなっている。消火活動も救護活動も不可能に近い。
普段からの備えと、心がまえ、そのときの咄嗟の判断力の有無がまさに生死を分けるのだということがよく判る。
自分のこととして、真剣に考えなければならないことだと改めて思わされる。

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