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香港の甘い豆腐*大島真寿美

  • 2008/08/09(土) 16:33:48

香港の甘い豆腐香港の甘い豆腐
(2004/10)
大島 真寿美

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出生の秘密が、私を香港へと運んだ。孤独を初めて抱きしめた十七歳の物語。

ひとりが気持ちよかった。やっと、ひとりになれた。親や友だちから解き放たれた地。風はぶっきらぼうだけど、いじわるじゃない-。出生の秘密が、私を香港へと運んだ。たおやかで、ガッツな青春の物語。


生まれたときから父はいないと思って生きてきた十七歳の彩美(アヤミ)は、高校生活にも人生にも倦んでいた。そんなある日突然、母に香港に連れて行かれたのだった。そこに彩美の父がいるという。
香港の雑多で喧騒にあふれた街や人々に、初めは嫌悪感さえ覚えた彩美だったが、ぶっきらぼうななかのあたたかさを知るにつれ、次第に愛着を抱き、離れがたくもなるのだった。
人間同士の繋がりとか、覚悟とか、境遇とか、運命とか、パワーに満ちた香港という街でひとりになったときに吸収したものは、彩美がこれから生きていくためのまさに栄養になったようである。
彩美と母との親子関係には独特のものがあるが、彩美の母とその母である祖母との親子関係もまた不思議で魅力的だった。

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やがて目覚めない朝が来る*大島真寿美

  • 2008/04/01(火) 17:15:40

やがて目覚めない朝が来るやがて目覚めない朝が来る
(2007/11)
大島 真寿美

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やさしく、うつくしい時間を、私たちは共にしている…。少女は魅力的な大人たちに囲まれて、大人になっていく。すべてを包み込んで穏やかに流れていく時間と人生のきらめきを描き出す、今、最注目の著者の最高傑作。


存在感のある大女優だったにもかかわらず若くして突然引退し、それきり人々の前に現れる事のなかった蕗さんを祖母に持つ有加が語る、蕗さんと蕗さんの生きてきた道程と彼女を取り巻き 崇拝し 見守りつづけた人々の物語である。
タイトルからも判るように、誰にも分け隔てなく訪れる「死」が描かれているのだが、それはとりもなおさず決して平らかなだけではない「生」の物語であることがとてもよくわかる。
重く大きなテーマを扱いながらも、馥郁とした薔薇の香りと清しい風に運ばれてきたような、さらさらとした質感を持つ物語である。

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チョコリエッタ*大島真寿美

  • 2008/02/18(月) 18:48:26

チョコリエッタチョコリエッタ
(2003/03)
大島 真寿美

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誰も呼ばない本当の名前、私はチョコリエッタ。がらんとしたモノクロームの記憶がやわらかに色づき、のびのびと芽吹きだすまで―私が或る一匹の犬だった季節はそうして終わった。珠玉の青春小説。


チョコリエッタ/宮永知世子の物語。
子どものころ、父が運転する車で両親と山へ行く途中で事故に遭い、母を亡くし、父の妹の霧湖ちゃんを母代わりに育って、いまは高校二年生。
姉妹のように一緒に育ってきた犬のジュリエッタもこのあいだ死んでしまった。
進路指導のアンケートには本気で「犬になりたい」と書いた。

自分の境遇を嘆き暮らしているわけでもなく、何かに反抗するわけでもない。どこへいけばいいのか、ここに居ていいのか、何を見ればいいのか、どう見られればいいのか・・・。自分の置き所がつかめずに靄のなかで道に迷うようなひとつの若い季節を見ているような気持ちになる一冊である。
切なくて、哀しくて、愛おしくて、しんしんと泣きたくなる。

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青いリボン*大島真寿美

  • 2007/12/21(金) 17:17:41


青いリボン青いリボン
(2006/11)
大島 真寿美

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依子の両親は家庭内別居中。さらに、母親の長期出張が決まり、依子は親友・梢の家に下宿することに……。大家族の梢の家は、核家族の依子にとってはまるで外国。女子高生同士の友情と信頼の中に、家族とはなにかを問う、ふしぎな浮遊感ただようお話。


主人公は高校二年生の依子。小さい頃から家庭内別居状態の両親の間で育ってきたために、一家団欒を味わうこともなくある意味自分を抑えて生きてきた。父の転勤と母の上海出張を機に友人の梢の家の居候となってみて、我が家と梢一家の違いに目が眩むような日々を過ごす依子だった。
学校では学校の顔しか知らず、級友たちそれぞれにもそれぞれ違った家庭があるのだと改めて感じ、違う家庭にも違うなりの悩みがあるのだということにも気づくのだった。
ひんやりするようであたたかく、あたたかいようでときにきりっと冷たい不思議な感触の一冊だった。

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ふじこさん*大島真寿美

  • 2007/07/18(水) 18:54:28

☆☆☆☆・

ふじこさん ふじこさん
大島 真寿美 (2007/06/21)
講談社

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離婚寸前の父と母にはさまれ、何も楽しいことのない毎日を送るリサの前に現れたふじこさんは、乱暴できれいで、あっけらかんとしていて、今まで見たことのない、へんな大人だった…。幻のデビュー作を含む、著者会心の短編集。


表題作のほか、「夕暮れカメラ」「春の手品師」

どの作品も、自分の身の置き所をきちんと見つけられずに不安を抱える少女が主人公である。秋に近い夏の終わりの夕暮れ時のようなさみしさが全編にただよっている。そんななかで、それぞれの作品中の少女たちは、別居中の父の恋人だとか 自分の遺影を求めるおばあさんだとか 街角で出会った不思議な手品師だとかのなかに無意識に自分の探しているものを見つけようとしているのかもしれない。
不幸せなわけではないがなにか居心地の悪い 揺れる季節(年頃)が絶妙に描かれている。
どれもよかったが「春の手品師」が特に好きだった。

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虹色天気雨*大島真寿美

  • 2007/05/21(月) 07:14:35

☆☆☆☆・

虹色天気雨 虹色天気雨
大島 真寿美 (2006/10/20)
小学館

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早朝に電話でたたき起こされ、中学校からの幼なじみである奈津のひとり娘・美月を預かることになった市子。小さな美月から、奈津の夫・憲吾は行方不明であり、奈津は憲吾を探しに出かけたことを知らされる。2日後、奈津は戻ってきたが、思い当たる場所をすべて回ったが憲吾は見つからなかったと語る。市子と奈津は、ひとりではどうにも頼りないところのある憲吾の失踪には、絶対に他の女性が関係していると推測する。これまで長い付き合いだった市子と奈津、出会ったころにはこんなことが起こるなんて想像もつかなかったけれど、大人になったいま、誰かを失ってもその傷はいつか癒えることを知っている。chr(10) 読むと幼なじみに会いたくなる、女性どうしの友情を描いた作品。


物語を貫くのは、中学のころから続く女同士の友情なのだろう。が、それだけではなく、市子やまりが 奈津の娘・美月(冒頭では10歳)を見守る親とは違う立場の目線や、美月が親世代に対して見せるかなり客観的な理解と それとは逆の幼さに触れながら考えさせられることごと。女三人を取り囲む人間関係の頼もしさと煩わしさ。などなど、さまざまな要素を絡み合わせながら、彼女たちがお互いやお互いの人間関係を尊重し合いつつそれぞれの道を生きていく様が淡々と描かれていて好感が持てる。
いまある自分を育みつつあった幼いころを知っている友人たちと、大人になっても尊重し合える関係であり続けられることの宝物のような貴重さを思わせてくれる一冊だった。

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ほどけるとける*大島真寿美

  • 2006/08/27(日) 17:13:45

☆☆☆・・

ほどけるとける ほどけるとける
大島 真寿美 (2006/07)
角川書店

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平和な気持ちになりたくて、女の子特有の仲良しごっこの世界を抜け出した18歳の美和。夢も希望も自信も失って、祖父が経営する銭湯でバイトをしながら、どうにも先が見えない日々を過ごしていたのだが…。あなたの疲れた心を、そうっとあたためる、やわらかな成長の物語。


思うところがあって高校を中退したはずだったのに、いまとなっては何で辞めたのかもわからなくなり、何をしたいのか どこへ行きたいのか どうすればそれが見つかるのかも皆目見当もつかず、祖父が経営する大和湯の受付で流されるように日々を送る美和が語る 大和湯に来る客や業者たち 中学生の弟とのとりとめのない交流記である。 だが、そんなとりとめのなさのなかにも美和の心にとまるあれこれがあり、少しずつ何かを蓄えて前に進んでゆく美和を見ていると、じんわりと あたたかさが胸に広がるのである。

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水の繭*大島真寿美

  • 2006/08/16(水) 07:18:30

☆☆☆・・

水の繭 水の繭
大島 真寿美 (2002/07)
角川書店

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人間は、こんなにもひとりぽっちでこんなにもやわらかい
ちぢこまった心が優しく息を吹き返す――
かつてなくみずみずしい物語の語り手が誕生した!!

母と兄、そして父までも、わたしをおいていなくなった。 もう家族じゃない――。
とめどない孤独をぬぐいきれず、気だるい日常を送っていたとうこのもとに、ある日ひょこり転がりこんできた従妹の瑠璃。 心にぽっかり穴を抱えながらも、とらわれない豊かな個性をもった人たちとのめぐりあい、つながりあいを通じて、かじかんだ気持ちがしだいにほころんでいく、少女とひと夏の物語。
  ――帯より


子どもの頃 両親が離婚し、母は 双子の兄・りくだけを連れて出て行った。 それから10年、父もあっけなく亡くなり、とうこはただただ茫然とするほか何もできずに日々を送っているのだった。 そんなとき、元々家出癖があり、行方知れずだった従妹の瑠璃が現われ、とうこの暮らしに騒々しいが活き活きとした風が送り込まれる。 
自分だけをおいてみんなどこかへ行ってしまう、というたまらない孤独感に閉じ篭められていたとうこだったが、ひとつひとつ事を起こしていくうちに、長年 冷たく凝り固まっていたものが少しずつほどけていくのを感じるのだった。

とうこと瑠璃、そして りく。 みんながひどく孤独で、でもその孤独感の現わし方がそれぞれ異なっている。 一見、たのしげな瑠璃が、もしかするといちばん孤独なのかもしれない、とも思える。 手を伸ばせばお互いの手に触れられる距離にいながら、手を伸ばすことを怖れ 躊躇っていては いつまでもひとりぽっちなのだろう。

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かなしみの場所*大島真寿美

  • 2005/11/18(金) 17:51:16

☆☆☆☆・



物語の主人公・果那は 離婚後、梅屋という元々は骨董や家具などを商っていたが今ではちょっとしたアクセサリだとか雑貨だとかを置いたりもしている店に、ちょっとした作品を置いてもらっている。
自宅では眠れなくなってしまった果那なのだが、この梅屋の奥の三畳間では 引きずりこまれるように眠りに落ちることができるので度々ここで眠らせてもらっている。
果那は眠る時にはいつも とても長くはっきりした寝言を言う癖があり、どうもこれは幼い頃に誘拐されたことが胸の中でわだかまっているからのように思うのだった。この誘拐の顛末を父母や伯母はなぜか語ろうとしないので、この謎が解けたときにはさぞやすっきりするだろう、と思っているのだが・・・・・。
果那にしろ、梅屋の姪で店を手伝っているみなみさんにしろそれぞれ複雑な関係を抱えていて深い悩みも多かろうと思われるのだが、なんとはなしにほんわりと周りを温めるような空気を持っているように思えて こちらまで胸のなかがほっこりとしてくる。折に触れ登場する近所の和菓子屋・錦紅堂の和菓子も実に美味しそうに描かれていて口のなかが甘くなってくるようだ。
タイトルが『かなしみの場所』であるのが、なにやら切ない。

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宙の家(ソラノイエ)*大島真寿美

  • 2005/09/03(土) 17:21:00

☆☆☆・・



 文學界新人賞受賞ですっきりデビュー。
 大島真寿美心からのファースト!

 冬。
 しずかに進む萩乃おばあちゃんの死。
 夏。
 ゆっくり溶けはじめる波貴くんの心の氷。
 16歳の雛子(ひなこ)が凝視する二つの生は、
 もう一つ先のファンタジー。
               (帯より)


表題作のほか『空気』
けれどこの二作は、ふたつでひとつなのだろう。分かち難く、なくてはならない。

ある冬の日、雪がひどく降りだし、学校が早く終わった雛子は いつもの通り一刻も早く眠ろうと真っ直ぐに家に帰った。そしてそこで出会ったのは、いつもの通りのおばあちゃん・萩乃の通信不能になった姿だった。
雛子の家はマンションの11階・1105室。宙に浮かぶ家である。
ここに引っ越してきたのは雛子が幼稚園のとき。おじいちゃんが亡くなり、おばあちゃんを引き取ることになり、母のお腹には弟の真人がいるというときだった。そして今、父は九州に単身赴任している。

『宙の家』では萩乃の、『空気』では真人の友だちの郁丸くんの兄・波貴くんの そして雛子自身の生について考えさせられることになる。
誰もはっきりと答えを与えてはくれないが、きっと人は自分で自分の生を抱えて生きるしかないからなのだろう。どんなに近しい人でも、その生を抱えることはできないのだ。たとえ僅かながらでもふれあうことができたとしても。

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