かんかん橋の向こう側*あさのあつこ

  • 2016/05/04(水) 17:03:14

かんかん橋の向こう側
あさの あつこ
KADOKAWA/角川書店 (2016-03-02)
売り上げランキング: 608,209

夫が急逝し残された食堂『ののや』を守る決意の奈央と、彼女を理解しようと努めながらもぎこちない母娘関係しか築けない18歳の真子。そんな母娘を温かく見守る常連客で、今夜も店は賑やかだった。そこへ、真子が痴漢と間違えたよそ者の青年、東山が店に現れる。『ののや』をモデルにした小説をネットで読んで、店のファンになったという東山だが、何か秘密を抱えているようだった。常連客の一人、野々村は妻の遺品を整理をしていて偶然、鍵のかかった箱を見つける。何とか開錠したその箱には、若かった頃の妻の秘密が隠されていた……。奈央を支えなければ…、でもこの町を出て自由に生きてみたい! 大学進学を来春に控え、心迷う真子はその気持ちを奈央に伝えきれずにいた。「人は帰る場所があるから、旅立つことができる」――小さな食堂を舞台に、人々の温かな絆とそこで成長した少女の旅立ちを描いた傑作長編!


シリーズものとは思わずに、二作目から読んでしまったが、何の支障もなく物語の世界に入り込むことができた。なさぬ仲の真子と奈央さんの、ぎこちなさはあるものの、芯のところで想い合っている様は、時にじれったさもあるものの、しっかりした絆を感じさせられる。「ののや」の常連客たちの、亡き大将を慕う気持ちと、残された妻である奈央さんとひとり娘の真子ちゃんを見守るまなざしも、親しみと愛にあふれていて心地好い。とんだ捕り物や、淡い恋心もいい味付けになっている。大学生になった真子の恋の行方や、ののやのこれからも見てみたいシリーズである。

殺人鬼の献立表 Team・HK*あさのあつこ

  • 2015/12/01(火) 18:40:28

殺人鬼の献立表: Team・HK (文芸書)
あさの あつこ
徳間書店
売り上げランキング: 252,457

幸せになりたかったら、窓を磨きなさい。ハウスキーピング会社で働き始めた引っ込み思案で平凡な主婦・美菜子が見つけたものとは…。著者と等身大の主婦・美菜子が主人公。仕事を通じて、とてつもない美男で変人のベストセラー作家・那須河闘一や、それぞれ事情を抱えた会社のメンバー、社長の日向たちの信頼を得て、生き生きと暮らしていた美菜子の日々に、殺人事件が起こる!?


とにかく登場人物のキャラがいい。主役の美菜子の変化も好ましいし、Team・HKのスタッフたちも、性格は違えどそれぞれ心温かく仕事熱心で好感が持てる。そして、チョウ人気&チョウベストセラー&高額納税作家でオネエの那須河闘一である。これ以上のぶっ飛びキャラもないと思うが、それがまたいい味を出していて、スパイスとして言うことなしである。恐ろしいタイトルではあるが、ハートウォーミングな一冊である。

花宴*あさのあつこ

  • 2012/08/14(火) 14:02:45

花宴花宴
(2012/07/06)
あさのあつこ

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小太刀の名手である紀江は、藤倉勝之進を婿に迎えるが、かつて思いを寄せていた三和十之介への募る思いを消し去ることはできなかった。やがて、父の死をきっかけに夫が自分を避け始めるが、それは自らの業の深さゆえと自分を責めるしかなかった。しかし、ある朝、何者かに斬られ、血まみれとなった勝之進が告げたのは、藩内に蠢く禍々しい策謀の真実だった! 今さらながら夫への献身を誓い、小太刀を手にした紀江だが……。男女の悲哀を描く、感動の時代小説。


時代小説とは言え、男女の心の機微は現代と何ら変わることはない。ただ背景にあるものが、家を背負い、名を、誇りを背負って、現代とは比べるべくもなく過酷で真剣であり、命さえをも張ったものであるというだけである。そして、それこそが望まぬ擦れ違いや不幸を生むことになるのも確かなことなのである。本作では、不幸を嘆くだけではなく、それを上回る大きく包み込むような愛が感動を呼ぶ。だが、犠牲にされたものもまた多いのである。切なく哀しく、そして愛にあふれた一冊である。

弥勒の月*あさのあつこ

  • 2012/03/09(金) 19:28:12

弥勒の月 (文芸)弥勒の月 (文芸)
(2006/02/22)
あさの あつこ

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小間物問屋「遠野屋」の若おかみ・おりんの溺死体が見つかった。安寧の世に満たされず、心に虚空を抱える若き同心・信次郎は、妻の亡骸を前にした遠野屋主人・清之介の立ち振る舞いに違和感を覚える。―この男はただの商人ではない。闇の道を惑いながら歩く男たちの葛藤が炙り出す真実とは。


逆順に読んできた遠野屋シリーズの、これが一作目である。清之介の新妻おりんの死の真相を暴くのが大きな柱だが、同心・信次郎と遠野屋清之介との出会いの物語でもある。すでに読んだ二作に比べ、清之介の気配の鋭さもまだいなし切れていないように見受けられるのは気のせいだろうか。信次郎と、岡っ引きの伊佐治親分との関係は一作目から変わらないようである。二作目、三作目でおりんの死の裏に隠された事情が気になっていたが、これほど寝の深い狂気に満ちたものだったとは、想像のほかであった。おりんも、清之介も、母のおしのもあまりにも哀しすぎる。最後に配された、おりんと清之介の出会いの場面が涙を誘う。最新作『東雲の途』ではどんな展開が待っているのか、愉しみなシリーズである。

夜叉桜*あさのあつこ

  • 2012/02/15(水) 18:59:54

夜叉桜夜叉桜
(2007/09/21)
あさの あつこ

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「生きるという、ただそれだけのことが何故にこうも不自由なのかと、思うことがございます」江戸の町で、女郎が次々と殺されていく。誰が、何のために?切れ者ゆえに世にいらだつ若き同心・信次郎は、被害者の一人が挿していた簪が、元暗殺者の小間物問屋主人・清之介の店『遠野屋』で売られていたことを知る。因縁ある二人が交差したとき、市井の人々が各々隠し抱えていた過去が徐々に明かされていく。生き抜く哀しさを、人は歓びに変えることが出来るのか。


遠野屋清之介シリーズ――と言っていいのか、同心・信次郎シリーズと言うべきか――、読むのがすっかり逆順になってしまったが、これが二作目である。『木練柿』で黒田屋の事件と言っていたのがこれであったのだ。おぞましい一連の事件である。人間の成せる業とは思えない血も涙もないやり口ではあるが、裏には紛れもない人間の懊悩が蠢いているのである。信次郎と清之介がまみえる際の緊張感、岡っ引きの伊佐次の思い入れや穏やかさ、清之介の迷いや希望といったものが、複雑に絡み合って、興味深い一枚の織物になっていくようである。人の心の闇を見せつけられたような一冊でもある。

木練柿*あさのあつこ

  • 2012/01/25(水) 21:27:19

木練柿(こねりがき)木練柿(こねりがき)
(2009/10/17)
あさの あつこ

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あの男には力がある。人を惹き付け、呼び寄せ、使いこなす、それができる男だ。娘は、男から刀を受け取り、抱き込みながら何を思い定めたのだろう。もう後戻りはできない。月の下でおりんは「お覚悟を」と囁いた。刀を捨てた商人遠野屋清之介。執拗に事件を追う同心木暮信次郎と岡っ引伊佐治。時代小説に新しい風を吹きこんだ『弥勒の月』『夜叉桜』に続く待望のシリーズ登場。


刀を捨て、覚悟を持って商人の娘婿になり、小間物問屋の主となった清之介と、彼にまつわる人々との物語。清之介の穏やかな商人としての現在の姿と、時折垣間見える仔細あり気な前身とのギャップが、読者にとっては清之介の魅力にもなっている。同心・木暮戸の駆け引きや、岡っ引き・伊佐治とのやり取りの機微も興味深い。清之介のことをもっと知りたくなる一冊である。

朝のこどもの玩具箱*あさのあつこ

  • 2010/10/11(月) 18:25:55

朝のこどもの玩具箱(おもちゃばこ)朝のこどもの玩具箱(おもちゃばこ)
(2009/06)
あさの あつこ

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父を亡くし、若い継母とふたり年を越す高校生。目が覚めたら魔法のしっぽが生えていたイジメられっ子。頑固な老女の説得を押し付けられた気弱な女子職員。人類の存亡をかけ森の再生目指し宇宙に飛び立つ少年たち。青春小説、ファンタジー、SFと幅広く活躍する著者ならではの色とりどりの六篇がぎゅっと詰まった小説の玩具箱。


「謹賀新年」 「ぼくの神さま」 「がんじっこ」 「孫の恋愛」 「しっぽ」 「この大樹の傍らで」

まさに玩具箱のように、さまざまテイストの物語が詰まった一冊である。どきどきはらはらさせられたり、じんわりと目頭が熱くなったり、胸にあたたかいものが満ちてきたり、切なく残酷だったり。少しずつあさのあつこ風味を味わえるのがうれしい。

夢うつつ*あさのあつこ

  • 2010/05/04(火) 16:37:24

夢うつつ夢うつつ
(2009/08/28)
あさの あつこ

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霧で視界が見えない中,異界を走るようにタクシーで帰宅の途に着いた。が,その運転手は死んだはずの幼馴染だった…。ごく普通の日常生活の一場面から,一転して現実と空想が交錯する物語が展開される,書き下ろし連作短編集。


  プロローグ
  くじら坂で
  まぁちゃんの白い花
  レンゲ畑の空
  森くん
  どっちだ?
  生姜湯のお味は?


著者の日常に起こったあれこれがエッセイとしてまず語られ、後半で、その出来事が下敷きにされた、タイトルの物語が語られる、という一風変わった趣向の一冊。
著者の素顔を垣間見られるしあわせと、物語が生まれる過程をほんの少し覗けるしあわせを併せて愉しめる。

ランナー*あさのあつこ

  • 2009/04/10(金) 17:29:08

ランナーランナー
(2007/06)
あさの あつこ

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『バッテリー』を凌駕する、新たなる代表作!

この文体、この勢い、あさのワールドのまっただ中!
そしていつもの数倍、心に迫ってくる圧倒的なエンディング。
『バッテリー』を軽く超えちゃったね!
ーー金原瑞人氏(翻訳家・法政大学教授)

この作品は、現代の『走れメロス』だ。
かすかにでも、信じられる愛があるならば、碧李よ走れ。「メロス」となれ。
ーー茂木健一郎氏(脳科学者)

〈あらすじ〉
「おれは走れないんじゃない、走らないだけだ、そう信じたくて、逃げちまったんだ」
長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の加納碧李(ルビ:あおい)は、複雑な境遇の妹を案じ、陸上部を退部することを決意した。
だがそれは、たった一度レースに負けただけで走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳だった。
走ることから、逃げた。逃げたままでは前に進めない。
碧李は、再びスタートラインを目指そうとする----。

〈著者のコメント〉
 長距離走は、否応なく自分と向き合ってしまうスポーツです。走ること以外には何もいらない、たった一つの肉体としての自分がいる。そんな少年を描いてみたいと思ったんです。そしてその周りにいる様々な人間たちを描いてみたい。子供と大人、男と女、様々な人間が抱えるドラ
マを書きたいと思ったんです。(「パピルス」13号インタビューより)


陸上競技の物語だということは、タイトルから容易に想像することができる。爽やかなスポ根ものなのだろうと思って読み始めたが、軽やかに走るどころではない難題が、主人公の高校生・加納碧李(あおい)にはのしかかっているのだった。
いちばん悪いのは、もちろん浮気をしたあげく出て行った父親・謙吾である。そして、残されたものたちは、それぞれに苦悩を抱えて日々をすごしているのだ。幼い妹・杏樹でさえも。それなのに、後半に出てくる謙吾がいかにも平然としているように見えるのが、いささか気に入らないところである。
碧李の周りの見守る目のあたたかさが、物語を救っている。

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金色の野辺に唄う*あさのあつこ

  • 2009/02/11(水) 16:32:00

金色の野辺に唄う金色の野辺に唄う
(2008/05/31)
あさの あつこ

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山陰の静かな山あいの町で、九十を超えた老女・松恵が息をひきとろうとしていた。看取るのは、松恵の曾孫で絵心を持つ中学生・東真、松恵の孫に嫁いだ元 OL・美代子、近所の花屋店員・史明、松恵の娘で稀な美貌を授かり持った奈緒子。四人ともかつて松恵に受け止められ、救われた過去があった―。屈託や業を抱えながらも、誰かと繋がり共に生き抜いていくことの喜びを、晩秋の美しい風景の中に力強く描き出した連作短編集。


あたたかく、誰にでも好かれた松恵ばあちゃんが天寿を全うし、眠るように息をひきとろうとするとき、寄り添っていたのは、曾孫の東真(あずま)であった。彼が五歳のときに描いた焔のような柿の絵を、松恵は大好きなのだった。
松恵の死の周りに集う人たちそれぞれの、さまざまな時代での視点で、松恵とそれぞれのことが思い出され語られる様は、薄紙をのりしろで丁寧に貼りあわせて一枚の絵巻にするようでもある。
勘違いばかりで生きてしまったと、最期のときにたとえ思ったとしても、それはきっとしあわせな勘違いだったのだろう。人は、一生のうちにさまざまな人に影響を与え、与えられるが、その人の一生は、その人ひとりのものであるのだ。それぞれが、自分の思うように悼むのである。それは、旅立つもののためでもあると同時に、生きている自分のためでもあるのだろう。

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ぬばたま*あさのあつこ

  • 2008/10/06(月) 18:13:45

ぬばたまぬばたま
(2008/01)
あさの あつこ

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あの夏の日、山へ入らなければ、ぼくたちの運命は変わらなかっただろうか。けれど、彼は山に呼ばれてしもうた…。死にゆく者の無念と生きぬく者の苦しみ。山々を舞台に描いた、怖ろしくも哀しい4つの物語。


四つの寂れゆく故郷と緑と山と、その場所に根源を持つ人の物語。
人間の弱さや悪意、秘めておきたい暗部などが、自ずから暴かれていくような不穏さが漂っている。山という神とも魔ともつかないものが棲みついていそうな場所を舞台にしたからこそのおどろおどろしさでもある。
「山に呼ばれる」という科学的には根拠がないであろうことも、理屈抜きで受け容れてしまえそうな雰囲気に満たされていて恐ろしい。

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十二の嘘と十二の真実*あさのあつこ

  • 2008/04/22(火) 21:13:10

十二の嘘と十二の真実十二の嘘と十二の真実
(2007/10)
あさの あつこ

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美しい后と侍女ツル、王国に悲劇をもたらしたのは。物語は小さな街に住む謎の老女と交錯し…。中世の王国の物語と現代の恐怖譚のつづれ織り。怖いけれど哀しい、おぞましいけれど面白い異色作。


表題作のほか、「崖の上」

ツルという名を持つ女は、あるときは赤子のままで死に、ある国では后に侍女として仕え、あるときはひとり暮らしの老女として物語に現れる。
交互に語られる后の物語と老女の物語は、一見ときもところもまったく別の物語なのだが、いつしかするりと同化し、ひとつの物語になっていくような心地にさせられる。
まるで人間の内なる醜さ、弱さがツルの身を借りて人間自身を責めているようでもある。なんとも不思議な一冊だった。

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ありふれた風景画*あさのあつこ

  • 2007/06/29(金) 18:30:01

☆☆☆☆・

ありふれた風景画 ありふれた風景画
あさの あつこ (2006/08)
文藝春秋

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十代って残酷な年代だ。出会いも別れも生々しく、儚い。ウリをやっていると噂される琉璃。美貌の持ち主で特異な能力をもつ周子。傷つき、もがきながら、生きる少女たちの一年間を描くみずみずしい青春小説。


高遠琉璃も綾目周子も多くの女子高校生とは少し違う。(どう違うかは読んでいただくとして)この年代にとってほかと異質であることは仲間と認められないということであり、琉璃も周子も生き難い日々を送っている。そんなときに二人は出会い、互いの中にまっすぐなものを見て惹かれていく。まるで磁石が引かれ合っているかのように、吸い寄せられるように。
言葉がなくても、そこに互いを感じられるだけで満ち足りるひととき。「綾目さんにだけは絶対に嘘をつかないと思います」という琉璃の想いがあまりにもまっすぐで泣ける。
そして、現実にはどうしても好きになれないカラスだが、タロウはカラス故にカッコよかった。

福音の少年*あさのあつこ

  • 2006/09/08(金) 18:25:10

☆☆☆・・

福音の少年 福音の少年
あさの あつこ (2005/07/20)
角川書店

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「私のこと、あなたにだけは忘れてほしくない」

十六歳の永見明帆は、同級生の藍子とつきあっていても冷えた感情を自覚するだけ。唯一、彼が心に留める存在は藍子と同じアパートに住む彼女の幼なじみ、柏木陽だった。藍子の様子がおかしい?そう気づいたある日、母親とけんかした陽が突然泊めてくれ、と訪ねてくる。その夜半、陽のアパートが火事で全焼、藍子も焼死体で発見される。だが、それは単なる事故ではなかった。真相を探り始めた彼らに近づく、謎の存在。自分の心の奥底にある負の部分に搦め捕られそうになる、二人の少年。十代という若さにこそ存在する心の闇を昇華した、著者渾身の問題作。
  ――帯より


東京からやってきて、夜の闇の中で アサヒ・コーポの焼け跡に立つ男と二人の少年とが出会うところから物語は始まる。男は誰で 何のためにその場所へきたのか、そして少年たちは・・・。

少年たちの裡に秘めるものの言いようもない重さに、普通ではない能力――たとえば恩田陸の常野の人々のような、あるいはこの著者の白兎のような――を持つ者たちなのかと思ったりもしたのだが、そうではなく、十代のちょっと鋭い若者特有のものだと後になってわかる。それにしては、特定の種類の人にしか興味を示さない程度は尋常ではないようにも思うのだが。
居場所を探る少年たちやアサヒ・コーポとともに滅んだ少女の、そして 残された命がいくばくもない男の、抱える闇が 彼らを導き引き合わせたのだろうか。
タイトルの「福音」とは何を意味するのだろう。読み解くのがなかなか難しい物語でもある。

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地に埋もれて*あさのあつこ

  • 2006/07/07(金) 16:52:33

☆☆☆・・

地に埋もれて 地に埋もれて
あさの あつこ (2006/03)
講談社

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月明かりの夜、藤花の下、
わたしは土の中から引き戻された。
夢なのか、それとも幻なのか・・・・・。
黄泉と現が交差する、生と死のミステリー。

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人は何度も再生できる。
自分の力で生き直すことができる。
あなたへ――この思いが届きますように。 あさのあつこ
  ――帯より


帯にはホラー・ファンタジーと謳われている。たしかにシチュエィションは現実には有り得ないような背筋が凍るようなものかもしれないが、ホラーというのとも少し違うような気がする。
『透明な旅路と』の白兎の物語である。死の世界と現の世界の橋渡しをする彼が、またもや役目を担って現われる。
生きているのに 自分の生きる意味をわからずにいる人は、死んでも死んだことをわからずにさまよっているのだと言う。その魂をあちらに逝けるようにするのが白兎の役目なのである。むやみやたらに死に引きずり込むわけではない。
生きるべき人はしっかり生きられるようにするのもまた彼なのである。
不倫の果てにひとり死なされ、相手に埋められた優枝が白兎に掘り出されるところからはじまるこの物語は、悪夢のようにはじまるが、安らかな夢のように終わるのである。
白兎は次には誰の元へ現われるのだろうか。

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