虚栄*久坂部羊

  • 2015/12/05(土) 17:15:58

虚栄
虚栄
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久坂部 羊
KADOKAWA/角川書店 (2015-10-02)
売り上げランキング: 13,799

凶悪化がん治療国家プロジェクト「G4」の発足に、外科医・雪野は期待を抱いた。手術、抗がん剤、放射線治療、免疫療法。四グループの邂逅は陰謀に満ちた覇権争いに発展。がん医療の最先端をサスペンスフルに描く!


有名人が次々と凶悪がんで亡くなる事例がマスコミをにぎわした。そんな折、国は、診療科を跨いだがん撲滅に力を注ごうと、プロジェクト「G4」を起ち上げた。だが、いざ蓋を開けてみれば、それぞれの診療科の覇権争いに終始し、しかも、医者たち自身が、次々にがんに侵されていく。いざ自分ががんになったときの対応や、診療科同士はもちろん、科内での出世競争は、見ていて哀れさえも感じられる。これが医療の現実だとしたら、かなり厭だが、似たり寄ったりのことはあるのだろうと想像できてしまうところがまたなんとも言えない思いである。極端な描き方をされている部分もあるとは思うが、興味深く、486ページというボリュームを感じさせない一冊だった。

芥川症*久坂部羊

  • 2014/07/19(土) 16:45:26

芥川症芥川症
(2014/06/20)
久坂部 羊

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あの名作が、現代の病院によみがえる――文豪驚愕の医療小説! 医師と芸術家の不気味な交流を描き出す「極楽変」。入院患者の心に宿るエゴを看護師の視点で風刺する「クモの意図」。高額な手術を受けた患者と支援者が引き起す悲劇「他生門」。介護現場における親子の妄執を写し出す「バナナ粥」……芥川龍之介の代表作に想を得て、毒とユーモアに満ちた文体で生老病死の歪みを抉る超異色の七篇。


「病院の中」 「他生門」 「耳」 「クモの意図」 「極楽変」 「バナナ粥」 「或利口の一生」

タイトルから想像に難くないが、各章のタイトルも見事に芥川作品をもじっていて、しかも内容もそれぞれの作品を思い起こさせる仕掛けに富んでいる。神の領域に限りなく近く思われる医学の世界も、人間の営みの一部であると、可笑し味や悲哀とともに再認識させられる一冊でもある。

嗤う名医*久坂部羊

  • 2014/04/29(火) 16:48:36

嗤う名医嗤う名医
(2014/02/26)
久坂部 羊

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“嫁”の介護に不満を持つ老人(「寝たきりの殺意」)。豊胸手術に失敗した、不運続きの女(「シリコン」)。患者の甘えを一切許さない天才的外科医(「至高の名医」)。頭蓋骨の形で、人の美醜を判断する男(「愛ドクロ」)。ストレスを全て抱え込む、循環器内科医(「名医の微笑」)。相手の嘘やごまかしを見抜く内科医(「嘘はキライ」)。本当のことなんて、言えるわけない。真の病名、患者への不満、手術の失敗。現役医師による、可笑しくて怖いミステリー。


小説だと思えば笑ってしまうような内容だったりもするのだが、これが現役の医師が書いたものとなると、また別な感情も湧いてくる。つい笑ってしまうようなことや、まさかそんなこと、と思われるような事例も、実は現場では頻繁に起こっているのかもしれないと、背筋がうすら寒くなりもするのである。うっかり病気にもなれないと健康を大事に思わせてくれる一冊でもある。

悪医*久坂部羊

  • 2013/12/08(日) 21:12:38

悪医悪医
(2013/11/07)
久坂部 羊

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現役の医師でもあり作家でもある著者が、満を持して取り組んだ「悪い医者とは?」を問いかける感動の医療長編小説。
がん治療の拠点病院で、52歳の胃がん患者の小仲辰はがんが再発したあと、外科医の森川良生医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。
「私にすれば、死ねと言われたのも同然」と、小仲は衝撃のあまり診察室を飛び出す。
小仲は大学病院でのセカンドオピニオンを断られ、抗がん剤を専門とする腫瘍内科、免疫細胞療法のクリニック、そしてホスピスへ。
それぞれの場所で小仲はどんな医師と出会うのか。
一方、森川は現在の医療体制のもと、患者同士のいさかい、診療での「えこひいき」問題など忙殺されるなか、診療を中断した小仲のことを忘れることができず、末期がん患者にどのように対したらよいのか思い悩む日々がつづく。
患者と医師の間の溝ははたして埋められるのか。
がん治療に対する医師の本音と患者の希望は軋轢を生み、物語は運命のラストへと向かう。
ひくにひけない命という一線を、患者と医師双方の切迫した事情が迫真のドラマを生み出す問題作。


重く壮絶な物語だった。当事者にならない限り、ほんとうには理解できないであろう患者の想いと、そんな患者を数多く担当する医師の想い。立場の違い、知識の違いなどによって、互いに理解し合えないことも多い。どのように病気と向き合うか、どのように患者に寄り添うかを、それぞれが問われているようにも思われる。さまざま考えさせられ、重苦しい気分になるが、考えることは無駄ではないとも思わされる一冊である。

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無痛*久坂部羊

  • 2006/11/08(水) 21:05:14

☆☆☆☆・

無痛 無痛
久坂部 羊 (2006/04)
幻冬舎

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見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま施設を脱走した十四歳少女、そして刑事たちに立ちはだかる刑法39条―。神戸市内の閑静な住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な一家四人残虐殺害事件が起こった。凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、LLサイズの靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことができなかった。そして八カ月後、精神障害児童施設に収容されている十四歳の少女が、あの事件の犯人は自分だと告白した、が…。
罪なき罰と、罰なき罪。悪いのは誰だ?


冒頭から目を背けたくなるような凄惨な場面である。教師一家が惨殺され、その死体は 妻が投稿し 掲載された夫自慢の新聞記事になぞらえるように並べられていた。そしてSサイズの帽子とLLサイズの靴跡という妙にアンバランスな遺留品。
この事件のあと、遠く近く取り巻くようにしてさまざまな事や人や要素が出合い 繋がり 形を現してくる。しかし、事件と犯人という形として現れてはいても、どこか釈然としないのは 心神喪失者の犯罪は罪としない という刑法39条の故なのだろうか。
外見を見るだけで症状が判るという医師・為頼と白神の歩く道の違い、心理療法士・菜見子を取り巻く人間関係、自らを教師一家殺人事件の犯人だと言うサトミ、白神医師を無条件で信頼し恩を感じる無痛症のイバラ。
消化できない数々の想いを渦巻かせて、読者は次々に起こる残虐な事件を止めることもできずに見ているしかない。ラストには希望の光も見えるかに思えるが、実は何も解決していないのかもしれないと思わせる翳りも見える。胸に重い一冊である。

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廃用身*久坂部羊

  • 2006/07/06(木) 17:36:35

☆☆☆・・

廃用身 廃用身
久坂部 羊 (2003/05)
幻冬舎

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悪魔による老人虐待か、それとも奇跡の療法か!?
すぐ、そこまで来ている現実を予言する、衝撃のミステリ。

「グロテスク」に対して、これほど真摯に取り組んだ作品はない。
文学が忘れかけていた異様で危険な手応えが、ここにはある。
――春日武彦氏(精神科医)絶賛!

現役医師作家の恐るべきデビュー作。

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「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語である。医師・漆原糾(うるしはらただす)は、神戸で老人医療にあたっていた。心身ともに不自由な生活を送る老人たちと日々、接する彼は、〈より良い介護とは何か〉をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。漆原が医学的な効果を信じて老人患者に勧めるそれは、動かなくなった廃用身を切断(Amputation)するものだった。患者たちの同意を得て、つぎつぎに実践する漆原。が、やがてそれをマスコミがかぎつけ、当然、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道する。はたして漆原は悪魔なのか?それとも医療と老人と介護者に福音をもたらす奇跡の使者なのか?人間の誠実と残酷、理性と醜悪、情熱と逸脱を、迫真のリアリティで描ききった超問題作!
  ――帯より


正直なところ 読み始めるのに、かなり躊躇いがあった。タイトルからしてすでに覚悟なしには読めそうもない。
そして、覚悟して読み始めたが、やはり老人医療の現場の壮絶さには想像を越えるものがあった。
作品の構成もあたかもドキュメンタリーのような作りになっており、読み初めてしばらくは そこここに違和感を覚えながらも この医師が著者自身かと思ったほどである。後半に編集者註をつけたことでリアル感も客観性も増すことになり効果的である。が、結局何が真実だったのかは最後まで判らない。漆原医師の真実も、老人たちの真実も、介護者たちの真実も。どれもが ただ並べられているだけで、そこから真実を見極めるのは難しすぎる。それをさせることが著者の意図するところなのかもしれないが。
ひとつ確かなのは、介護の未来が明るくはないことだろう。20年後にご自身が生きているかどうかさえ怪しいお年寄りの政治家たちに任せておける余裕はない、ということである。

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破裂*久坂部羊

  • 2005/02/26(土) 13:32:15

☆☆☆☆・



医療の現場の理不尽を追求し、世に問おうとするジャーナリスト松野。
彼に協力し、医療の現場での「痛恨の症例」を取材する麻酔科医江崎。
教授選を前に苛立ち、手術ミスを犯し訴訟を起こされる心臓外科医香村。
そして、厚労省のマキャベリと呼ばれる男、佐久間。

日本の長寿社会は本当にしあわせなのか?
という大き過ぎる命題に挑む佐久間の傍若無人さが空恐ろしい。
しかし、手段の強引さを別にすれば、≪PPP(ぴんぴんポックリ)論≫には賛同する人も多いのではないかと思われる。

病院にかかるのが恐ろしくなるような一冊であることは間違いない。

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