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バスクル新宿*大崎梢

  • 2021/11/13(土) 16:28:46


たくさんの人々が行き交うバスターミナル「バスクル新宿」。
それぞれの目的地を持つ人々がひととき同じ時間を過ごし、同じ事件に巻き込まれてーー
「メフィスト」掲載の連作短編集が待望の書籍化!


1 バスターミナルでコーヒーを
2 チケットの向こうに
3 犬と猫と鹿
4 パーキングエリアの夜は更けて
5 君を運ぶ

全国のあちこちへ人を運んでくれる高速バスと、バスタ新宿を思わせるターミナルが舞台である。ひとりの男の子をキーとして、全体がゆるく繋がる連作でもあり、最終話で、それまでの各話を振り返りながら、もう一度味わえる。往く人、帰る人、さまざまな事情を抱えた人たちが一時集まり、その事情と共にそれぞれのバスに乗り込んで、到着までの時間を過ごす。当たり前のようだが、考えてみると不思議な空気感が漂うような気がする。そんなバスの中で生まれた小さな連帯感や、ターミナルでの出会いや会話。そんなひとつひとつが、かけがえなく愛おしいものに感じられる読後である。何かと物騒な世の中ではあるが、高速バスの旅をしてみたくなる一冊でもある。

めぐりんと私。*大崎梢

  • 2021/08/10(火) 16:23:10


悩みを抱える〝私"たちが出会ったのは
移動図書館「めぐりん」とささやかな謎だった。
本と人々をつなぐハートフル図書館ミステリ連作集!

三千冊の本を載せて走る移動図書館「本バスめぐりん」との出会いは、屈託を抱えた利用者たちの心を解きほぐしていく。家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった規子の、本と共に歩んできた半生を描く「本は峠を越えて」や、十八年前になくしたはずの本が見つかったことを引き金に当時の出来事が明るみに出る「昼下がりの見つけもの」など5編を収録。めぐりんが本と人々を繋ぐ移動図書館ミステリ、シリーズ第二弾。


「本は峠を越えて」 「昼下がりの見つけもの」 「リボン、レース、ときどきミステリ」 「団地ラプンツェル」 「未来に向かって」

本バスめぐりんシリーズ二作目である。種川市の移動図書館・めぐりん号に乗ってくるのは、以前と変わらず、テルさんとウメちゃん。いろんな場所で、いろんな人たちと、本を通して知り合い、知恵を出し合い、利用者さんたちのちょっとした謎の答えをみつけたり、もやもやを解きほぐしたりしながら、交流の輪も広げている。厳しい経済状態のなか、明るい未来も見えていて、希望が持てる。本はいいなぁ、と改めてありがたく思うシリーズである。

もしかしてひょっとして*大崎梢

  • 2021/02/27(土) 07:50:03


トラブルやたくらみに巻き込まれて、お人好しが右往左往。誤解も悪意も呑み込んで、奇妙な謎を解き明かせ!にぎやかでアイディアに満ちた、6つの短編ミステリ。大崎梢の傑作集!


「小暑」 「体育館フォーメーション」 「都忘れの理由」 「灰色のエルミー」 「かもしれない」 「山分けの夜」

テイストの違う物語たちだが、どれもにそこはかとない哀しみが紛れ込んでいるような気がして、胸がきゅんと切なくなる。ちょっとした違和感や、気持ちのすれ違い、そんなことは日常に数えきれないほどあるが、解きほぐそうとする思いは熱い。人と人とが関わり合うということの難しさと愛おしさがじんわりと感じられる一冊だった。

さよなら願いごと*大崎梢

  • 2020/07/17(金) 16:33:45


夏休み。琴美の家に、子供たちの謎を解決してくれる青年がやってきた。祥子は想い人から、思いもよらぬ相談を持ちかけられる。沙也香は、それとは知らず、大人たちの「不都合な真実」を掘り起こす。それぞれの謎を追いかけた、それぞれの夏休み。悪意が自分に向けられるとは、想像もしていなかった。意外なつながり、意外な真相。鮮やかに紡がれた長編ミステリ!


読み始めてしばらくは、子ども探偵団にやさしいお兄さんが協力してくれて謎を解くような物語かとおもったが、扱われている題材はかなりシビアなもので、章ごとに、別の場所で違う人たちが、同じ出来事に疑問を抱き、それぞれが調べを進めていく中で、章を追うごとに少しずつすべての人や調査の結果がつながり、さまざまな角度からひとつの事実を明らかにするのである。登場人物が多いので、後半で再度登場する人物がどういう人だったか、時々思い出せなくなることもあったが、物語の流れで、何とか思い出せたりもした。物事の表と裏や、同じ出来事でも、立場や見る角度によってあまりに違って見えることの恐ろしさなど、考えさせられることもいろいろあった。さまざまな誤解も解けたし、新しいつながりも生まれて、まずはよかったと言える後味の一冊だった。

彼方のゴールド*大崎梢

  • 2019/11/24(日) 16:26:54

彼方のゴールド
彼方のゴールド
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大崎 梢
文藝春秋
売り上げランキング: 16,745

野球もサッカーも知らずスポーツ雑誌に配属された明日香には、ある競技に纏わる苦い思い出が……。人気の出版社お仕事小説第三弾。


自分自身、スポーツには全くと言っていいほど疎いので、読み始めてすぐはどうなることかと思ったが、明日香がGold編集部やスポーツ選手への取材に慣れていくにつれて、一緒に歩むように集中できるようになっていくのが愉しかった。子どもの頃の体験や記憶も絡めて物語は進み、さまざまなスポーツ、さまざまな状況の選手に取材し、次第にスポーツに熱意を抱いていく明日香が輝いて見える。少しずつ自分の中に引き出しが増え、人脈も増えて、通り一遍ではない取材ができる帰社になれそうな兆しが見えて頼もしくもある。個人個人のスポーツとの関わり方もそれぞれで、その背景に思いを致すのもまた興味深い。何かに燃えてみたいと思わされる一冊でもあった。

宝の地図をみつけたら*大崎梢

  • 2019/07/07(日) 16:46:23

宝の地図をみつけたら (幻冬舎文庫)
大崎 梢
幻冬舎 (2019-04-10)
売り上げランキング: 207,387

小学生の頃、祖母からこっそり手に入れた 「金塊が眠る幻の村」の地図。それは晶良と 伯斗の友情の証、そして秘密の冒険の始まり だった。「探しに行かないか、昔みたいにふ たりで」。渋々と宝探しを再開する晶良だっ たが、直後、伯斗の消息が途絶えてしまう。 代わりに"お宝"を狙うヤバイ連中が次々に現 れて……! ? 手に汗握る"埋蔵金"ミステリー!


著者の作品なので、もっとほのぼのとした宝探しの物語かと思って読み始めた。途中までは、そんな感じでなくはなかったものの、その後の急展開には目を瞠るものがある。夢を追っていたのに、突然現実に引き戻されたようであり、スリルとサスペンスとハードボイルドが入り交じった展開に驚くばかりである。山の中での道なき道の追跡や逃走。ほんの些細な気配で敵か味方かを判断し、一瞬で足の向く先を決めなければならない緊迫感。命の危険さえはらむ展開にハラハラドキドキが止まらない。宝の山を目前にした人間の本性と、それでも信頼できる人間関係の貴重さを教えてくれる一冊でもあった。

ドアを開けたら*大崎梢

  • 2018/12/15(土) 18:38:30

ドアを開けたら
ドアを開けたら
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大崎梢
祥伝社
売り上げランキング: 272,488

鶴川佑作は横須賀のマンションに住む、独身の五十四歳。借りた雑誌を返すため、同じ階の住人・串本を訪ねた。だが、インターフォンを押しても返事がなく、鍵もかかっていない。心配になり家に上がると、来客があった痕跡を残して串本が事切れていた。翌日いっぱいまで遺体が発見されては困る事情を抱える佑作は、通報もせずに逃げ出すが、その様子を佐々木紘人と名乗る高校生に撮影され、脅迫を受けることに。翌朝、考えを改め、通報する覚悟を決めた佑作が紘人とともに部屋を訪れると、今度は遺体が消えていた…… 知人を訪ねただけなのに……最悪の五日間の幕が開く! 著者渾身の本格長編ミステリー!


もっとほのぼのとした物語かと思ったら、ドアを開けたら死体があって……、という目を覆いたくなる始まりだった。同じマンションの串本が倒れており、テーブルには飲みかけの紅茶が入った花柄のティーカップが二客。だが、発見者の祐作は、ごくごく個人的な思惑から見て見ないふりをしてしまった。しかし、高校生の少年・紘人に、部屋の出入りを動画に撮られ、なりゆきで、一緒に探偵まがいの行動をとることになるのだった。病死なのか、殺人なのか。殺人だとしたら犯人は誰なのか。探っていくうちに、さまざまな要因が絡んできて、どんどん話がややこしくなる。とはいえ、祐作と紘人が諦めずに調べ回らなければ、串本の汚名は雪がれることがなかったのだと思うと、何やら運命めいたものも感じられる。たった五日間の出来事とは思えないほど、たくさんの事々が詰まっているが、最後はほっと息がつけてよかった。無闇にドアを開けるのが怖くなる一冊かもしれない。

横濱エトランゼ*大崎梢

  • 2017/09/21(木) 07:00:00

横濱エトランゼ
横濱エトランゼ
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大崎 梢
講談社
売り上げランキング: 29,363

高校3年生の千紗は、横浜のタウン誌「ハマペコ」編集部でアルバイト中。
初恋の相手、善正と働きたかったからだ。用事で元町の洋装店へ行った千紗は、
そこのマダムが以前あった元町百段をよく利用していたと聞く。
けれども善正によると元町百段は、マダムが生まれる前に崩壊したという。
マダムは幻を見ていた? それともわざと嘘をついた?
「元町ロンリネス」「山手ラビリンス」など珠玉の連作短編集。


タイトルの通り舞台は横浜。推薦で進路が決まった高校三年生の千紗が、幼いころ世話になったご近所さんで、ずっと気になっている善正が勤めるタウン誌の編集部でアルバイトをしながら、投書や取材中などに巡り合ったご当地にまつわる謎を解き明かしていく物語である。とは言え、解き明かすのは、千紗が相談を持ち掛ける善正であり、やさしいのかつれないのかわからない態度ながら、豊富な知識と推理力で、謎を解くカギを見つけ出し、やさしく解きほぐしてしまうのである。横浜の魅力も存分に味わえ、ほろ苦いような甘酸っぱいような恋の進展にも興味を惹かれ、それぞれの謎の主人公である人たちの歴史にも胸を熱くする。横浜に行ってみたくなる一冊である。

本バスめぐりん。*大崎梢

  • 2017/02/09(木) 16:47:44

本バスめぐりん。
本バスめぐりん。
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大崎 梢
東京創元社
売り上げランキング: 129,490

都会を走る移動図書館「本バスめぐりん」。乗り込むのは六十代後半の新人運転手・テルさんと、図書館司書・ウメちゃんの、年の差四十のでこぼこコンビだ。団地、公園、ビジネス街など巡回先には、利用者とふしぎな謎がめぐりんの到着を待ちかまえていて……。テルさんのとまどいとウメちゃんの元気、そしてたくさんの本を詰め込んで、本バスめぐりんは今日も走る。本屋、出版社などさまざまな「本の現場」を描く著者の次なる現場は、移動図書館! 本を愛するすべての人に贈る、ハートフル・ミステリ。


「テルさん、ウメちゃん」 「気立てがよくて賢くて」 「ランチタイム・フェイバリット」 「道を照らす花」 「降っても晴れても」

二週間に一度、図書館から遠い地域を回る本バスの相性は「めぐりん」。行くたびに愉しみに待ち構えていてくれる常連さんがいて、初めて顔を見せてくれる人もいる。それぞれのステーションでのちょっとした謎や不思議を、70歳手前の新米運転手のテルさんと、張り切りすぎて時に空回りしてしまう若い司書のウメちゃんが、お馴染みさんたちとともに解き明かし、笑顔の輪を増やしていくのである。それにつれて人の輪も少しずつ広がっていくのが見ていてうれしくなる。本に関わる人と人とのあれこれに心が和む一冊である。

スクープの卵*大崎梢

  • 2016/12/03(土) 18:54:37

スクープのたまご
スクープのたまご
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大崎 梢
文藝春秋
売り上げランキング: 156,414

人の家の不幸に群がって、あなたは恥ずかしくないんですか?週刊誌は、空振りやムダの積み重ねで出来ている。手を抜いたら、あっという間に記事の質が堕ちる。未解決の殺人事件にアイドルのスキャンダル写真―ビビリながら、日本の最前線をかけめぐる日向子24歳!


1話 「取材のいろは」  2話「タレコミの精度」  3話「昼も夜も朝も」  4話「あなたに聞きたい」  5話「そっと潜って」  最終話「正義ではなく」

入社二年目の日向子が週刊千石の編集部に配属され、スクープをものにしようと奮闘する連作短編集である。しかも、全編を通して、ひとつの事件を追うことになり、ひと粒で二度おいしいお得感が嬉しい。学生にしか見えない外見が取材時に役立つこともあり、不発だとがっかりした取材先から、後々重要な情報が寄せられることもあり、苦労も多いが報われることもあるのだった。人の家庭に遠慮会釈なく踏み込んで暴き出す週刊誌のえげつなさを嫌っていた日向子も、少しずつその内情を理解し、仕事にやりがいを感じるようになっていく。一見頼りなさそうに見えて、実は上司にも同僚にも期待されている日向子の奮闘ぶりが可愛らしくて、つい応援したくなる。もっともっと日向子の成長を追いかけ続けたい。シリーズ化してほしい一冊である。

よっつ屋根の下*大崎梢

  • 2016/10/25(火) 16:27:31

よっつ屋根の下
よっつ屋根の下
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大崎 梢
光文社
売り上げランキング: 261,384

勤め先の大病院の不祥事隠蔽を批判し、犬吠の地方病院に飛ばされた父。製薬会社に関係の深い実家を気にして、父についていこうとしない母。都会暮らしが好きなのに、父をひとりにできなくて、ついていったぼく。お母さんを責めないで!と言いながら、密かに自分を責めていた妹。たとえ自分は離れても、いつまでもそこにあってほしい、ぼくたちの「家」。それは、わがままだろうか。家族でいるのが大変な時代の、親子四人の物語。


もしも父が病院に楯突いて左遷されなかったとしたら、平山家は絵に描いたようなセレブな暮らしを続け、子どもたちも何も深く考えることなくぬくぬくと育っていったのだろう。それはそれで、それぞれ温厚な大人になってしあわせだったかもしれないとは思う。でもそうはならなかった。父とぼくは海風吹きすさぶ銚子へ引っ越し、母と妹は白金のマンションに残り、それぞれの思いを胸に抱えたまま離れて暮らすことになったのだった。離れてみなければ判らなかった家族のこと。調子に来なければ知ることもなかったあれこれ。そんなすべてが心と躰を育み、思い描きもしなかった未来へと繋がっていくのである。それぞれの場所で培った人間関係も宝物のようである。このままバラバラになってしまうかと思われた平山家だが、よっつ屋根の下でそれぞれ生きていくとしても、戻る場所はひとつだと思えたことで、さらに絆が深まったように思う。人を思いやる気持ちの大切さがじんわり伝わる一冊である。

誰にも探せない*大崎梢

  • 2016/04/24(日) 17:13:47

誰にも探せない
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大崎 梢
幻冬舎 (2016-02-25)
売り上げランキング: 599,277

疎遠になった幼馴染みの伯斗が数年ぶりに晶良の前に現れた。幼い頃に夢中になった「埋蔵金が眠る幻の村」を探そうと言う。かつて祖母からこっそり手に入れた幻の村の地図。それは晶良と伯斗の友情の証、二人だけの秘密の冒険だった。今になって一体なぜ?わだかまりを感じながらも、半信半疑で再び幻の村を目指そうとした矢先、伯斗の消息が途絶えてしまう。さらに“お宝”を狙う連中が晶良に迫り…。幻の村とは?伯斗の目的は本当に埋蔵金だったのか?


祖母が子どもの頃、友達にもらったという六川村というなくなってしまった村の地図。その村には穴山梅雪の埋蔵金が眠るという。幼馴染の晶良と伯斗も夢中になって探したが、村の在処さえ見つけることはできず、いつしか伯斗とも疎遠になってしまった。そんな折、突然晶良の前に伯斗が現れたことで、物語は始まる。道なき山中を追いつ追われつするきびしいことにもなり、死人も出るほどの大ごとなのだが、どういうわけか――良いのか悪いのかは別として――その辺りの恐ろしさは感じられない。晶良も伯斗も無事に帰れると信じていられるのは、彼らのおばあさんたちの力なのかもしれない。誰が敵で誰が味方か、ぐちゃぐちゃに入り交じり、人間不信にも陥りそうになるが、根っこのところが揺るがないのがいいところでもある。幻の六川村、いつか見つかってほしい気もするが、このまま永遠に幻でいてほしい気もする。人の欲の恐ろしさがいちばんの害悪だと思わされる一冊でもある。

空色の小鳥*大崎梢

  • 2015/10/11(日) 13:39:00

空色の小鳥
空色の小鳥
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大崎梢
祥伝社
売り上げランキング: 260,453

「おまえはちがうから。この家から出ていくことを考えろ」三年前に急逝した兄・雄一と最後に交わした言葉。兄は微笑を浮かべていた。大企業のオーナーである西尾木家に後妻の連れ子として入ったものの、疎外感の中で暮らしてきた弟の敏也は、いまだにその真意が分からずにいた。ある日、偶然兄に内縁関係の妻子がいることを知った敏也は、妻・千秋が末期癌であることを突き止める。千秋の死後、六歳になる娘の結希を引き取ることにした敏也。だがなぜか、兄を溺愛したワンマン社長の父や一族には、そのことを一切知らせずに暮らし始めた……。敏也の真意とは? 静かな感動が胸を打つ著者渾身の家族小説!


著者には珍しい黒い思惑の渦巻く物語という印象で始まり、実際裏では打算にまみれた目論見が進行していきはするのだが、表に見える事象は実にほのぼのとあたたかく、愛と慈しみにあふれたものである。主人公の敏也と結希の関わりも打算だけでは成り立たない温か味にあふれているし、汐野や亜沙子の人柄も好感が持てる。血縁がすべての義父に憤りを覚えたりもしたが、ラストでそれも覆る。読み通してみれば著者らしい一冊だったと言える。

だいじな本のみつけ方*大崎梢

  • 2014/11/14(金) 18:42:01

だいじな本のみつけ方 (BOOK WITH YOU)だいじな本のみつけ方 (BOOK WITH YOU)
(2014/10/16)
大崎 梢

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大好きな作家の最新刊。発売を楽しみにしていたある日、中学二年生の野々香は、学校の手洗い場の角で忘れ物の本をみつける。好奇心から書店のカバーを外してみると、それは、まだ発売されていないはずの最新刊だった!野々香と、クラスの図書委員・高峯秀臣は、本の持ち主の正体と、どうやって手に入れたかを探り始める―。大切な本との出会いをめぐって巻き起こる、賑やかでやさしい物語。


中学生たちが主役の物語である。小学校との交流とか、中学生ならではのこともたくさんあるが、要は本好きさんが主役ということで、同級生の叔父の新人作家や書店員さん、元ラジオアナウンサーの読み聞かせ名人、みんなの本好き加減が溢れ出ていて微笑ましい。本に関する謎解きと、野々香と秀臣の可愛い言い合いがアクセントになっていて、気軽に愉しめる一冊である。

忘れ物が届きます*大崎梢

  • 2014/06/13(金) 18:35:00

忘れ物が届きます忘れ物が届きます
(2014/04/18)
大崎 梢

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想い出の中に取り残されていた謎をめぐる、ミステリー珠玉集。

あの事件は、結局誰が犯人で、どう解決されて、彼や彼女はどうかかわっていたのだろう──。
知らされていなかった真相が、時を経て、意外なきっかけから解き明かされる。
多彩な趣向が味わえる、五つのミステリー。


「沙羅の実」 「君の歌」 「雪の糸」 「おとなりの」 「野バラの庭へ」

外側は穏やかに見えて、内側が静かに青く燃えているような印象の物語たちである。思い出のなかのふとした疑問、解かれないままになっている謎。時が経って、風化しようとするそれらに、再び目を向け、解きほぐしていく。知りたいような、そっとしておきたいような、でもやはり知りたくてたまらなくて、身を乗り出してしまうような読書タイムだった。「君の歌」と「おとなりの」は知っている気がするのだが、アンソロジーかなにかに入っていただろうか。ちょっぴり切なく、人の思いやりを感じられる一冊である。