fc2ブログ

七回死んだ男*西澤保彦

  • 2011/06/21(火) 17:06:45

七回死んだ男 (講談社文庫)七回死んだ男 (講談社文庫)
(1998/10/07)
西澤 保彦

商品詳細を見る

どうしても殺人が防げない!?不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう、渕上零治郎(ふちがみれいじろう)老人――。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは!時空の不条理を核にした、本格長編パズラー。


ときどき何の前触れもなく同じ一日を九回繰り返す高校一年の大庭久太郎(ヒサタロウ、通称キュータロー)が、相続争いのごたごたの最中に殺された祖父を救うべく原因を探り、因果を断ち切ろうと奮闘する物語である。なにをどう変えても殺されてしまう祖父は、久太郎の語群奮闘振りを知ることもなく毎回死んでしまうのである。なんという不条理であることか。そしてまた、その周ごとに変わる犯人や、兄弟姉妹・従姉妹や従兄弟たち、使用人や秘書の関係性の変化も興味深く目が離せない。同じ一日の繰り返しにこれほど興味をかきたてられるとは思いもよらないことである。そして最後にたどり着いた真実の思いがけなさにも驚きである。文句なく面白い一冊だった。

ゆれる*西川美和

  • 2007/02/27(火) 17:19:20

☆☆☆・・

ゆれる ゆれる
西川 美和 (2006/06)
ポプラ社

この商品の詳細を見る

東京でカメラマンとして活躍する弟。実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。対照的な兄弟、だが二人は互いを尊敬していた、あの事件が起こるまでは…。
監督デビュー作『蛇イチゴ』で映画賞を総ナメにした俊英・西川美和が4年ぶりに挑んだ完全オリジナル作品を、自らが小説化。


ひとつの章が ひとりの人物の「かたり」という形式で、数人の関係者の視点から描かれている。
智恵子が釣り橋から転落死したことが事件としてあるのだが、事件そのものを描いた物語ではなく、ごく近い血縁関係のありようが描かれた物語である。
父と息子、兄と弟、という近すぎる関係性のなかで少しずつ育っていたひずみが、あるきっかけを捉えて発露する。そののちの物語でもある。
人間関係の揺れ、歪な心の揺れ、自分という者の存在意義の揺れ、さまざまな揺れが釣り橋の揺れの危うさに見事に象徴され、そこで終わりとも始まりとも言える事件が起こったことが、ますます象徴めいている。