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4ページミステリー*蒼井上鷹

  • 2021/06/06(日) 18:25:02


傑作ショートショートミステリー集「4ページミステリー」シリーズ第三弾。飛行機の手荷物検査で、鞄のなかにピストルが入っていると係員に呼び止められてしまう。それは人から預かったチョコレート菓子だと言い張るが、私にはある目的が…。「あまい検査」など全61編を収録。原稿用紙5枚に込められたどんでん返しは、予測不可能!


ひとつの話が4ページに納まっているので、ちょっとした隙間時間にも少しずつ愉しめる。中には、もっと長かったら、より深く突っ込めるのに、と残念に思うものもなくはなかったが、ほとんどは、お見事である。しかも、そうきたか、と裏をかかれた気分にさせられるものもあり、盲点を突かれるものあり、こちらの想像に任されるものありと、バラエティに富んでいて飽きさせない。気軽に愉しめる一冊である。

殺しのコツ、教えます*蒼井上鷹

  • 2019/04/18(木) 16:33:22

殺しのコツ、教えます (双葉文庫)
蒼井 上鷹
双葉社 (2019-02-14)
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ローンの返済も殺人も、無理なく実行できるものが望ましい―と語る推理作家の世古先生は、新たなトリックを生み出すため日夜実験を重ねていた。そんな時、馴染みの居酒屋に勤める青年・ガクが「ぶっ殺したくなるくらいヤなやつがいる」と言い出す。ガクのリクエストに応えて、古今東西の名作ミステリーを駆使しながら世古先生が繰りひろげる斬新なトリック談義。果たして完全犯罪は可能なのか!?ブラックユーモア・ミステリーの快作!


推理作家の世古先生が、居酒屋のバイトのガクくんに乞われて、完全犯罪のトリックを講義するという趣向である。世古先生の知識は豊富だが、時々抜けているところもあって、すごいんだかすごくないんだかよくわからないのが、一興である。ガクくんも、トリックに疎いようでいて、時々鋭い推理を展開してくれたりするので、世古先生も気が抜けない。さらには、居酒屋で披露したトリックが独り歩きしたような事件が起こったり、先生自身がだまし討ちにあったりもして、展開から目が離せなくなるのである。すごいようなすごくないような、鋭いような間が抜けているような、不思議な面白さの一冊である。

お隣さんは、名探偵 アーバン歌川の奇妙な日常*蒼井上鷹

  • 2016/09/10(土) 18:31:23

お隣さんは、名探偵  アーバン歌川の奇妙な日常 (角川文庫)
蒼井 上鷹
KADOKAWA/角川書店 (2016-04-23)
売り上げランキング: 67,993

緑豊かな郊外に建つマンション“アーバンハイツ歌川”。住人の静かな日常は、「大家さんのペットを捜しています」とチャイムを鳴らす訪問者により、一変する。事故のため、お笑い芸人の道を諦めた青年、結婚詐欺容疑で妻が失踪中の男、美貌の教育カウンセラー…いつも笑顔のあやさんは、さりげない世間話から、住人たちの意外な“秘密”を見抜いてしまう。ありふれた日常がガラリと変わって見える、痛快な連作ユーモア・ミステリ。


第一話 読み聞かせ  第二話 『KOKORO』の奥に  第三話 最後の晩餐  第四話 舞台を回す  第五話 ドアは知っていた

アーバンハイツ歌川、大家を始め、住人すべてが何らかの事情を抱えて、怪しいことこの上ない。それぞれの思惑が、別の人の事情と絡み合って、余計にややこしくなることもある。マンションの一部を改築してシェアハウスにしようと目論む大家に、住人を立ち退かせる説得を頼まれた小柄なおばあちゃんの平本さん(やはりここの住人である)が、大家の父親が大事にしている蜥蜴を探すという名目で、各部屋を訪ね、それぞれの事情を探るうちに、なにやら別の問題を解決してしまう。しかもその結果、自発的に立ち退くことになるのである。そこに至る過程が、ときには無理やりな感じはするのだが、それさえ自然でお見事である。きょうの平本さんはちょっとキャラが違うけれどどうしちゃったの?と思うと、それもしっかり作戦の内だったりするのである。憎めないおばあちゃんである。しかも立ち退いた住人たちの行方を知れば、あまりにも完璧で、思わず笑ってしまう。平本さんの井戸端会議的探偵術をもっと見たくなる一冊である。

動物珈琲店ブレーメンの事件簿*蒼井上鷹

  • 2015/07/15(水) 19:00:55

動物珈琲店(ペットカフェ)ブレーメンの事件簿 (実業之日本社文庫)
蒼井 上鷹
実業之日本社 (2015-06-04)
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平井瞳が営む喫茶店は家庭的な雰囲気を売りにしてきたが、ある事件をきっかけにペットも入れるように店の改装を決心、名前も一新することに。その名も“動物珈琲店ブレーメン”。店は常連たちが連れてくるペットで大賑わいとなるが、奇妙な事件もいっしょにやってきて…。ペットカフェを舞台に、犬も猫も大活躍のユーモアミステリー!


「犬が電話をかけてきた」 「この猫の名前はいくつある?」 「宗像さんの福の神」 「ノラが家出するわけがない」 「幕を引くには早すぎる」 「猫は秘密を嗅ぎつける」

タイトルを見ると、なんだか近頃よくある感じのほのぼのほっこり系のカフェミステリのようだが、そこは著者の作品である。もちろん動物は出てくるし、犬や猫がキーになってもいるし、彼らが解決に導いてくれることさえあり、この町の人たちを結びつけるほのぼのとした存在であったりもするのだが、そんな中に、ぴりっとブラックな要素が練りこまれていることがあって、ああやっぱり、と安心したりもするのである。ただのハートウォーミングでは終わらない。事件は、はっきり犯罪と言えるものもあれば、かなりシリアスなものもあり、くすっと笑ってしまうものもありで、バラエティに富んでいて愉しめる。ただ、動物に比べて人間のキャラクタがちょっぴり弱かった気がしなくもない。もっと読みたい一冊である。

4ページミステリー 60の奇妙な事件*蒼井上鷹

  • 2015/04/03(金) 19:07:47

4ページミステリー 60の奇妙な事件 (双葉文庫)4ページミステリー 60の奇妙な事件 (双葉文庫)
(2015/03/12)
蒼井 上鷹

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バーで出会った男は荒れていた。なんでも、妻の浮気が判ったという。それを聞いた私の同伴者は、男に語り始めた。「あなたを見て、以前の自分を思い出したもので―」その意外な結末とは。(「遅すぎた忠告」)一編わずか4ページでも、面白さは長編並み!?巧みな謎と鮮やかな推理がぎっしり詰め込まれた、傑作ショートショート・ミステリー集の第2弾。60作収録で読み応え抜群の一冊!


見事に4ページのミステリの数々である。だがどれもたった4ページとは思えないほどエッセンスのぎゅうっと詰まった物語である。起承転結の結の部分の裏切られ感はかなりのものである。たった一文でいままで見えていた景色ががらっと反転することもしばしばである。いつでもどこでも手軽に読めるのに、内容にも裏切られない一冊である。

「幽霊」が隣で聞いている*蒼井上鷹

  • 2013/12/01(日) 17:02:12

「幽霊」が隣で聞いている「幽霊」が隣で聞いている
(2013/10/29)
蒼井上鷹

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毎日通う喫茶店でも顔を覚えられず、隣に座っていても大事な話を始められてしまうほどの存在感。だがそんな彼の周囲で、不可思議な事件が起こり始める。友人が失踪し、その友人から借りた自転車が盗まれたかと思ったら、部屋からミイラ化した遺体が見つかったのだ!ややこしい事件と絡まる糸を、解くことはできるのか!「幽霊」のように陰から事件を追いかける小仏さん!?そして驚愕の結末を見よ!


世界一影の薄い男・小仏さんが探偵役となって、町内(?)で次々に起こる不可解な出来事を解きほぐし、答へと導いてしまう物語である。わかってみれば、なんと狭い人間関係で起こった事件か、と思わずにいられない。にもかかわらず、事件の内容そのものは、かなり悪質でもあり、ときには場当たり的でもあるのである。しかもこのラスト。えーーーっ!?とまずは驚くが、そう言えば、と次から次へと腑に落ちていく。なるほどぉ…。著者らしい一冊である。

あなたの猫、お預かりします*青井上鷹

  • 2013/07/01(月) 16:49:49

あなたの猫、お預かりします (実業之日本社文庫)あなたの猫、お預かりします (実業之日本社文庫)
(2013/06/05)
蒼井 上鷹

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家賃未払いでアパートを追い出されそうになっている大伴。友人の安部と結託し、自分の飼い猫を利用して一儲けしようと企んだのだが、その驚きの手口と仰天の結末は…表題作ほか、喫茶店“フラット&シャープ”に集うペット好きの人々が遭遇した奇妙な事件の数々。ペットも読者もハマる、仕掛け満載のユーモア・ミステリー、いきなり文庫で登場!!


表題作のほか、「ホトドッグが好きな犬」 「メダカたちは見ていた」 「鳥の気も知らないで」 「うちの猫を責めないで」 「いつも犬がそばにいた」 「帰ってきたペットたち」

生き物つながりでもあり、喫茶店の常連客つながりでもある連作ミステリ短編集である。主役(?)が物言えぬ生き物というのがまず面白い。そしてそこに生き物好きの人々が複雑に、しかも勝手に絡んでくるものだから、話がますますややこしくなったりして笑ってしまう。登場人物たちがみんな生き物嫌いだったら、絶対に成立しない一冊である。

バツリスト*蒼井上鷹

  • 2011/06/26(日) 09:51:13

バツリストバツリスト
(2010/12/01)
蒼井上鷹

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「次の“バツ”は、こいつに決定していいと思うのですが」
自殺した息子が遺した一冊のノート。そこには息子を死に追いやった人物たちの名が記されていた。嶋津は復讐に乗り出すが、老体にむち打つ彼に協力者が現れて…。
連中を罰したい。


自殺した息子が残したノートにあった、名前を×印で消された人物たち。生前息子を苦しめた者たちである。嶋津は彼らの名を「バツリスト」としてまとめ、復讐をはじめるのだった。そこに現れた思わぬ協力者たちは、嶋津の復讐を「バツる」と言い、自分たちのことをバツる者=「バツリスト」と呼ぶようになった。
冒頭に配された手紙に、著者のことゆえ何か仕掛けがあるのだろうと思いながら読むが、なにかからくりがありそうだということ以外はわからず、その後の展開もそういうものかと受け入れて読み進むと、やはりあるところで様相はがらりと転換するのだった。読みはじめる前からそれを期待してはいるのだが、やはりいつも驚かされる。著者の掌の中でころがされているような一冊である。

4ページミステリー*蒼井上鷹

  • 2011/06/25(土) 11:21:12

4ページミステリー (双葉文庫)4ページミステリー (双葉文庫)
(2010/12/15)
蒼井 上鷹

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こんなにしっかりしたアイディアを原稿用紙五枚ぽっちにしちゃうなんてもったいない。と内外から言われ続ける、『小説推理』の名物連載「2000字ミステリー」。でも、短いからこその、この面白さ!?5年も続く当連載をギュッとまとめたこの1冊で、ぜひともお確かめを。オール4ページ、全部で60本。冒頭の「最後のメッセージ」は本格ミステリ作家クラブ編のアンソロジーにも収録された上作。


著者のピリリとスパイスの効いたブラックミステリを60話もたてつづけに読めるなんて、贅沢な話である。しかも一話はわずか4ページ。ちょっとしたすきま時間にも構えずに読みはじめられるのが嬉しい。ラストでがらりと様相を変える流れは何度読んでもそうきたか、と思わされる。ぎゅぎゅっと詰まった一冊である。

人生相談始めました*蒼井上鷹

  • 2011/03/10(木) 09:04:46

人生相談始めました人生相談始めました
(2010/11/27)
蒼井 上鷹

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モーさんの店は小さなショットバーで、繁華街から少し外れた雑居ビルの2階にある。バーテンダーという職業柄、常連客の身の上話の相手になることが多いモーさん。いつしかなしくずし的に「人生相談業」を始めるはめになったのだが、そのアドバイスがおかしな波紋を巻き起こしていくことに…。持ち込まれた相談の数々に、バーのマスターが出す答えとは?ちょっぴり苦い読後感が後を引く、連作ユーモア・ミステリー。


 第一話 妻が新型インフルエンザ恐怖症になってしまって困っています
 第二話 貸したお金を返してもらえず困っています
 第三話 カレシがいるのに他にも気になる男の人ができてしまいました
 第四話 子供が何を考えているのかさっぱり判りません
 第五話 キャバクラのコとつきあいたいんです
 第六話 ネットでデマを流され、迷惑しています
 第七話 妻が子供を産んでから、すっかり太ってしまいました
 最終話 前の恋人から貰ったものを捨てずに使っていたら、今の恋人と喧嘩になりました

目次を眺めただけで、モーさんが相談事にどんな回答を出すのか興味津々である。回答は、亡き父の日記を参考に、モーさん自身のアレンジを加えてなされるのだが、これが名回答というよりも迷回答と言った方が当たっていることが多いので、相談者やモーさん自身にもさまざまな波紋を広げる。そしてまたその波紋が連作中のそこかしこに漂っているのである。ブラックと言うほどには強烈ではないが、ちょっぴりバランスを崩すだけでとんでもないことになりそうな緊張感をはらんだユーモアに満たされた一冊である。

11人のトラップミス*蒼井上鷹

  • 2010/10/16(土) 16:46:44

11人のトラップミス (FUTABA NOVELS)11人のトラップミス (FUTABA NOVELS)
(2010/05/18)
蒼井 上鷹

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叔父の家に借金を頼みに行ったら、叔父の妻を殺すと脅迫する、犯人からの身代金要求電話を代わりに受けちゃって……「トラップミス」などなど、あいかわらず間の悪い、不運な男がどしどし登場し、蒼井節は今回も健在! 短編5本、間にショートショート6本、充実のミステリー・イレブン!


「イエローカード」 「トラップミス」 「ハンド」 「オウンゴール」 「インターセプト」「アシスト」 「フリーキック」 「ヘディング」 「ロスタイム」 「レッドカード」 「マノン」

サッカー用語になぞらえられたタイトルからわかるように、11の物語はなにかしらサッカーに関連する事柄が登場する。がしかし、サッカーファンが喜ぶようななにかが書かれているわけではまったくなく、著者の私用とでもいうような理由から選ばれたテーマなのである。ということになっている。蒼井作品、相変わらず回りくどく面倒である。11の物語の内容はどれもシリアスなのだが、なんとなく間抜けな感じがしてしまうのはそれぞれの主人公のキャラクターによるものだろうか。ともかく、間の悪い男たちの一冊である。

堂場警部補の挑戦*蒼井上鷹

  • 2010/05/11(火) 13:32:13

堂場警部補の挑戦 (創元推理文庫)堂場警部補の挑戦 (創元推理文庫)
(2010/02/28)
蒼井 上鷹

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玄関のチャイムが鳴った時、まだ死体は寝袋に入れられ寝室の床の上に横たわっていた。液晶画面を見ると、緑色のジャージを着た若い男が映っていた。「おはようございます、ドーバです。電話でパントマイムのレッスンをお願いしていた―」招かれざる客の闖入により、すべてがややこしい方向へ転がり始める「堂場刑事の多難な休日」など、当代一のへそ曲がり作家による力作四編。


  第一話  堂場警部補とこぼれたミルク
  第二話  堂場巡査部長最大の事件
  第三話  堂場刑事の多難な休日
  第四話  堂場Ⅳ/切実


なんと言おうか、まったく蒼井上鷹である。ひとことで言ってしまえば、面倒臭い構成である。一冊の本のなかで道に迷い、立ち眩んでうんざりしている自分がいる。そしてまたそれを高みから見下ろして愉しんでいる自分もいるのである。へそ曲がりに振り回されるのが愉しい一冊なのである。

これから自首します*蒼井上鷹

  • 2009/10/14(水) 19:29:48

これから自首します (ノン・ノベル)これから自首します (ノン・ノベル)
(2009/05/14)
蒼井 上鷹

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自称映画監督の勝馬に幼馴染みの小鹿が告白した。殺人を犯し自首すると約束していた友人が急に翻意したのでかっとなったという。しかし、殺した相手というのが、かつて犯罪をおかしてもいないのに自首騒ぎを起こしたいわく付きの人物。今回の自首騒ぎにも何かいわくがありそうで…。勝馬には勝馬で正直者の小鹿に自首されては困る事情があった!?前代未聞の“自首”ミステリ誕生。


自首をめぐるあれこれの物語である。自首しようとする本人と、その周りの人たちの利害がもつれ合い、真剣にあれこれ画策する姿が、必死であるほど傍目で見ると可笑しくさえある。
映画のための「エピソード候補」として書かれたものを、あるときはなぞるように、あるときは証明するように現実の物語が進んでいくので、ときどきすべてが映画のシナリオのように思えてきて、自分がどちらの世界にいるのか判然としなくなるのも面白さのひとつの要素かもしれない。
結局何ひとつ解決していないので、釈然としない心地もするが、それも著者の意図だろうか。

ホームズのいない町*蒼井上鷹

  • 2009/01/18(日) 19:52:24

ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (双葉ノベルス)ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS) (双葉ノベルス)
(2008/03/19)
蒼井 上鷹

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そんじょそこらにホームズのように名推理ができる人はいません。登場人物が不完全な推測をし合い、勝手に誤解をして、いつもおかしな展開に。妻とのロマンスのために庭を掘ってほしくない男と、庭のお金を掘り返したい男の思惑が交錯する「第二の空き地の冒険」など短編七編と、関連する掌編が六編入った、傑作ミステリー集。


「六本のナポレオン」 「被害者は二人」 「あやしい一輪車乗り」 「ペット探偵帰る」 「第二の空き地の冒険」 「赤い○」 「五つも時計を持つ男」 「吐く人」 「四つのサイン入り本」 「銀星ちゃんがいっぱい」 「まだらのひもで三㎏」 「覆面の依頼人」 「もう一本の緋色の糸」

短編掌編合わせて十三の連作集。
物語ごとに事件や主役を換えながら、少しずつリンクして次の作品へとつないでいるが、全体を通してみてみれば、謎解きも見事に一本になっていて、二度も三度も愉しい一冊である。
決まった探偵役がいるわけでもなく、登場人物がそのときどきにあてずっぽうやら推理やらで謎を解くのだが、ときには見当違いだったりもして、シリアスなのかコミカルなのかも判らなくなることがある。幾筋にも分かれた道筋が、ラストに向かってひとつになっていくときに胸が高鳴るのだった。

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まだ殺してやらない*蒼井上鷹

  • 2008/07/06(日) 17:32:28

まだ殺してやらない (講談社ノベルス ア AF-01) (講談社ノベルス アAF- 1)まだ殺してやらない (講談社ノベルス ア AF-01) (講談社ノベルス アAF- 1)
(2008/06/06)
蒼井 上鷹

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最愛の妻を殺されたノンフィクション作家・瀧野和一は、その悲しみと怒りから自ら調査に乗り出す。やがて有力容疑者が逮捕されるが、同じような手口の残忍な事件が発生。そして瀧野に犯人からのメッセージが…。


「カツミ」というキーワードで括られた一連の猟奇的殺人が解決しないなか、妻を残忍に殺された瀧野は、妻の事件も「カツミ」の仕業ではないかと自分でも調べ始めるが、「カツミ」事件の被害者の証言から無関係とされる。そして真犯人が逮捕され、「カツミ」事件は結末を迎えた。だが、その後また似たような手口で瀧野の身近な人物が殺害されるのだった。
犯人の動機は?目的は瀧野をじわじわと苦しめることなのか?
たくさんの謎を抱えたまま、藤樹探偵社の新米探偵米本が捜査に加わることになり、瀧野のそばであれこれと動き回ることになる。

宅Q便の配達人が「カツミ」だろうと目星をつけたが、あまりにあっけなく逮捕されてしまい、その後の犯行の説明がつかなくなってしまった。真犯人もその動機も意外としか言いようのないものであり、そこに行き着くまでの登場人物たちの駆け引きや、推理が著者らしいミスディレクションに満ちている。
タイトルの意味は最後に判り、犯人のその後は【メフィスト番外地】に誘導されるのだが、これをやりたかったために書かれた物語のような気もしてしまい、かえってマイナスポイントかもしれない。

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