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平日*石田千

  • 2011/02/18(金) 16:53:03

平日平日
(2009/10)
石田 千

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百の視点で写した街の顔、裏の表情、朝と昼と夕暮れ。東京の名所と穴場を文章で撮った本。


「反射する平日/上野」 「とどまる平日/十条」 「尻ふる平日/早稲田」 「飛ばない平日/羽田」 「迷える平日/吉祥寺」 「決起の平日/泉岳寺」 「甘い平日/大手町」 「島の平日/平和島」 「指さきの平日/円山町」 「渦まく平日/柴又」 「聖なる平日/バス観光」

本作で取り上げられている街はどこも人でにぎわう場所である。だが、有名な観光地であるほど休日とは違う顔をしている平日の街である。賑わいもどこかのんびりしているような気がする(平和島はたぶん違うと思うが)。そんな平日の人の中にまぎれて、著者は辺りを人々を観察し、ぼんやりし、味わい、立ち尽くし、面白がり、ひとりぼっちになっている。視線の先にあるものを――そしてさらにその先を――読者は著者とともに眺める心地になる。なんでもない人が、場所が、できごとが、石田千という人のからだをひとめぐりすると特別ななにかになり、文字になって並んでいるのがとても愉しい。平日を旅する一冊である。

きんぴらふねふね*石田千

  • 2009/07/21(火) 17:12:02

きんぴらふねふねきんぴらふねふね
(2009/05/26)
石田 千

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懐かしい酢入りの自家製ドレッシングを思い出す春。夏の西瓜割り、秋空の下の駅弁、冬の風邪に大蒜……。四季の生活に根ざした身近で大切な「食」の習慣と記憶たち。最新エッセイ集。


著者のエッセイに出てくる食べものは、決して気張ったものではなくさりげないのだが、どれもおいしそうで、つい真似してみたい心地にさせられる。そのときどきの心や躰のありようが、口にする食べものに反映されるのも、わかりやすくておもしろい。
著者独特の、まずは主語を明らかにしない語り口によって、あるときは嬉々として、またあるときはいささか尖って読み手に伝わるのもいい趣である。

店じまい*石田千

  • 2008/11/23(日) 16:42:56

店じまい店じまい
(2008/09)
石田 千

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どこにでもあった、あの風景
 手芸屋、文房具店、銭湯、自転車屋......あなたの町にもきっとあった、あの店この店。本書は、日常のふとした瞬間に顔を出す懐かしい不在の光景を、瑞々しい感性と言葉でつづったエッセイ集。
 「聖橋口の改札を出てすぐ、立ち食いそばやからの店つづきあたりで、待ちあわせることが多い。ここのマスターのハイボールは、天下一品だぜ。そう誘われ、連れていってもらったバーも、そのならびにあった。[......]一階はカウンターだけ、天井のひくい二階にはテーブルがあった。顔なじみのひとと行くときは、一階に肩をならべ、そうでないときは、注文してからあがった。のぼる手間を遠慮して、コップ持って行きますというと、いいからあがってな。あごをしゃくりあげられた。」
 個性的な店主たちとのやりとりや、おっかない店番の犬、店に着くまでの散歩道--それぞれが短編小説さながらの記憶のかけらたちは、気がつけば、読者にとってもまた、何度も立ち返ることのできる場所となる。「ひとそろいの湯」「ふとんやの犬」「われない割れもの」「願かけどうふ」「提灯千秋楽」「あかい鼻緒」他、全二十七編。


さりげない日常語りに織り込まれた「店じまい」のうちそとの景色のあれこれである。もちろん仕舞われるのだからさみしさはあるのだが、しんみり振り返って思いを致すというよりも、「店じまい」の顛末やその後に励まされるように見つめる著者の目が感じられて、清々しい。
出会ったばかりの店じまいは残念でもあるが、仕舞われる前に出会えたしあわせでもあるのかもしれない。

山のぼりおり*石田千

  • 2008/09/11(木) 09:25:30

山のぼりおり山のぼりおり
(2008/03/20)
石田 千

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のぼっておりた十の山。「山と渓谷」の連載に書き下ろしを加えた石田千初、「登山」エッセイ集。写真家・坂本真典のモノクローム作品収録。


山登り初心者の著者が、のぼっておりた十の山の土のこと、風のこと、木々のこと、きのこのこと、山小屋や山道で出会った人たちのこと、山のいろいろが著者の言葉で描かれている。所々に現れる独特の所有格を省いた文章は、気づかなかったことを気づかされてはっとしたり、ぱぁっと景色が開けたりする心地がして気持ちが好い。
挟み込まれているモノクロームの写真に、想像力をかきたてられる。

しろい虹*石田千

  • 2008/02/17(日) 16:37:12

しろい虹しろい虹
(2008/01/26)
石田 千

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なにげない日々の暮らしの中で、見慣れていたはずの色彩が鮮やかに映える瞬間がある。
言葉を越えた思いが、色と形をともなって心の中で輪舞する......

アカダイダイ、キイロニミドリ、アオアイムラサキ......

虹の七色は、集まるとなぜ白いのか。無色から紡がれる色とりどりの思いが、端正な文体に凝縮する、新感覚エッセイ。


ふと気づくと、著者のエッセイには反省が多い。できなかったあれこれや、見ないことにして放りっぱなしにしたことごと、風邪を理由に何もせずに家にこもっていたことなど・・・。
それなのにどういうわけか、後ろ向きな気持ちは感じられない。反省しつつも日々の細かなことを大切に見つめる目と、よく噛んできちんと自らの中で消化させる姿勢の気持ち好さがそうさせるのかもしれない。

部屋にて*石田千

  • 2007/07/28(土) 16:34:51

☆☆☆☆・

部屋にて 部屋にて
石田 千 (2007/06)
角川書店

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死んでさえ、まるきりのひとりぼっちは難しい。触れるものすべてにひそむ記憶や痛み。日々のつらなりのなかに浮かび消えゆくもの。部屋という小さな迷宮に身をおき、日常の物語に深々と視線をすえた24の話を収録。


タイトルは『部屋にて』であり、「部屋のこと」が書かれているわけではない。自身が部屋にいて目に視えることごと、心にみえるあれこれが綴られている。過去に置いてきた誰かや何か、過去から連なっている想いや行い。著者の胸の中をのぞきこんだような一冊である。

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屋上がえり*石田千

  • 2007/06/01(金) 18:48:39

☆☆☆☆・

屋上がえり 屋上がえり
石田 千 (2006/11)
筑摩書房

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ナントカと煙は高いところが好き? 屋上を見つけると、とりあえずのぼってみたくなる。百貨店、病院、古書店、母校…。広々とした視界の中で湧き出る小さな想いを描き出す、不思議な味の一冊。


にぎやかな屋上、さみしい屋上、華やかな屋上、雑然とした屋上、哀しい屋上、広々とした屋上、見下ろされる屋上・・・・・。
ひと口に屋上と言っても、実にさまざまな表情があるものだと知らされる。屋上そのものの佇まいはもちろんのこと、そこからの眺めや周りの建物の看板や窓まどの様子など、著者の目が見たままが綴られているのだが、読者が目の前に見せられるのは、たしかに著者の体内を一巡して出てきた何かなのである。
そしておしまいの一節が印象深い。

初恋は、実らないからつまらない。失恋は、つぎのさよならの下ごしらえだから、さばさば乗り越えるのがおもしろい。
万物おしまいよりいづる。そういう国の、屋上にいる。

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ぽっぺん*石田千

  • 2007/04/11(水) 13:48:10

☆☆☆☆・

ぽっぺん ぽっぺん
石田 千 (2007/01/30)
新潮社

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うれしかった言葉。その場しのぎについた嘘。こどものころ見えた光景。おとなになってわかった優しさ…。ひとつ読んで、ぽこん。ふたつ読んで、ぺこん。ちょっと古風で、あたらしい、不思議なエッセイ集。


紹介文の「ちょっと古風で、あたらしい」というのが、これほどお似合いのエッセイストさんもいないのでは・・・と思う。
背伸びせず、飾らず、身の丈で そしてご自身の目線で物事をとらえ、視線をめぐらせてゆく様がとても心地好い。気さくでありながら 必要以上にこちら側に踏み込んでこない。距離感をきちんとわきまえた方なのだろうというのが感じられるのも心地好さの一因かもしれない。
土鍋をもっともっと活用したくなった。

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踏切趣味*石田千

  • 2007/03/10(土) 16:30:29

☆☆☆・・

踏切趣味 踏切趣味
石田 千 (2005/02/08)
筑摩書房

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急いでわたる子ども、荷物を運ぶ主婦、たたずむ老人。周辺の居酒屋に集うひとびと。大好きな踏切をめざして都内を西から東へ、時には鎌倉、山形まで。線路上で交差する一瞬の光をとらえ、つづり、句を詠む。なつかしくも鮮烈なエッセイ集。


踏み切りのある風景をさまざまな場所で切り取り、<金町>という俳号をお持ちだという筆者の句を添えて描かれている。
にぎやかな町はにぎやかないまを、寂れた町は寂れたいまを、目に映るものをそのままページのこちら側へ開いて見せてもらったような気分を味わえる。
ためらいのない言い切り形の文章が小気味よい。

月と菓子パン*石田千

  • 2007/02/28(水) 17:13:13

☆☆☆☆・

月と菓子パン 月と菓子パン
石田 千 (2004/04/24)
晶文社

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気がつけば30代の半ば、東京での一人暮らし。通勤の途中で出会う、町に生きる人、季節にやってくる渡り鳥、四季をめぐって咲き競う花。誰もが見ているはずの日常の、ほんのひとときを綴る、新東京点描エッセイ。


角田光代さんの『酔って言いたい夜もある』で対談されていたので興味を持って借りた一冊。
なにげない日常のひとコマを さりげないまなざしで切り取ったエッセイのひとつひとつと、山本容子さんの表紙絵が寄り添うようによく似合っている。
忙しい日々を過ごし、つい早足で急ぎたくなる 自分が住む町の小路のそこここに、流さない視線をしばし遊ばせて作者が目にしたあれこれがやさしい。
たまにしか食べられない上等なものではなく、いつでもそこにある黄色いクリームの菓子パンのような、どこか懐かしく しっくり身に馴染むエッセイである。

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