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毒殺魔の教室*塔山郁

  • 2019/12/06(金) 13:29:24


那由多小学校児童毒殺事件―男子児童が、クラスメイトの男子児童を教室内で毒殺した事件。加害児童は、三日後に同じ毒により服毒自殺を遂げ、動機がはっきりとしないままに事件は幕を閉じた。そのショッキングな事件から30年後、ある人物が当時の事件関係者たちを訪ね歩き始めた。ところが、それぞれの証言や手紙などが語る事件の詳細は、微妙にズレている…。やがて、隠されていた悪意の存在が露わになり始め、思いもよらない事実と、驚愕の真実が明かされていく。『このミステリーがすごい!』大賞2009年、第7回優秀賞受賞作。


三十年前の6年6組で起こった毒殺事件に関する聴き取りが描かれる前半。立場や役割、当事者との関わり方によって、記憶には少しずつずれがある。それが意図的なものなのかそうではないのか。読者はそれも含めて注意深く読み進めることになる。一歩ずつ真相に近づいているのか、いないのか。それさえも判然としない中、僅かずつではあるが、新しい事実もあぶりだされ、割に早い段階で事件の仕組みの大枠は判ってくる。だが、さらに読み進めると、想像以上の企みが隠されていたことも見えてきて、慄然とさせられる。そしてさらにエピローグとして配された小説の抜粋に、混乱させられるのである。一体どういうことなのだろう。薄皮を剥ぐように真実に近づきながら、どんどん遠ざかっているような心地にもなる一冊だった。

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理*塔山郁

  • 2019/11/12(火) 09:37:16


ホテルマンの水尾爽太は、医者から処方された薬を丹念に塗るも足の痒みが治まらず、人知れず悩んでいた。
薬をもらいに薬局に行くと、毒島という女性薬剤師が症状についてあれこれ聞いてくる。
そして眉根を寄せて、医者の診断に疑問を持ち……。
ホテル客室の塗り薬紛失事件に、薬の数が足りないと訴える老人、
痩身剤を安く売る病院など、毒島は薬にまつわる事件や謎を華麗に解決していく!


お仕事小説、薬剤師編、である。しかも薬にまつわるミステリ仕立てで、とても興味深い。薬や薬剤師に関してはまったく知識はないが、それでも興味津々、物語に惹きこまれてしまう。薬剤師の毒島さんのキャラクタと、彼女と親しくなりたいのになかなか思いが伝わらない爽太のキャラクタとが、物語をさらに面白くしているのは間違いない。二人の関係のこれからは、まだまだ簡単には行きそうもないが、もっと続きを、と思わされる一冊である。

無実の君が裁かれる理由*友井羊

  • 2019/10/19(土) 16:38:18

無実の君が裁かれる理由
友井羊
祥伝社
売り上げランキング: 748,578

私が疑いを晴らしてあげる―突然、同級生へのストーカー行為を告発された大学生の牟田幸司。身に覚えはないが、“証拠”を盾に周囲は犯人扱いだ。追い詰められた幸司を救ったのは、冤罪を研究する先輩・紗雪の一言だった。幸司を陥れた“証拠”とは何なのか?調べを進めると、目撃証言や記憶など人間の認知が驚くほど曖昧なものだったことが判明。幸司の疑いは晴れた。真犯人は別にいる、それは誰だ?謎を追う二人の前に、さらなる事件が待ち受けていた!(「無意識は別の顔」)。なぜ冤罪は生まれるのか?人間心理の深奥を暴く!青春&新社会派ミステリー!!


冤罪事件は、身近なところでも案外起こっているのだな、というのがまず初めの印象である。そんな、身の回りで起こる冤罪から、実際に裁かれて刑が確定してしまった冤罪まで、大学生の主人公・牟田が巻きこまれながら、先輩・紗雪のアシスタント的な立ち位置で解き明かしつつ、彼女の抱える屈託をもほぐしていくことになる。人の記憶の不確かさや、思い込みの恐ろしさにも、改めて気づかされる。興味深い一冊だった。

沖縄オバァの小さな偽証 さえこ照ラス*友井羊

  • 2018/09/09(日) 16:35:12

沖縄オバァの小さな偽証 さえこ照ラス
友井羊
光文社
売り上げランキング: 168,257

強気で遣り手の美人弁護士・沙英子と、オジィオバァとすぐ仲良くなる天然気質の事務員・大城。沖縄の法テラスに持ち込まれたトラブルは、この二人が請け負います! 琉球料理と照りつける太陽に彩られた、庶民感覚のリーガル・ミステリー!


「チャクシとユミの離婚相談」 「飲酒運転の刑事弁護」 「沙英子の長期休暇」 「トートーメーの継承問題」 「生活保護受給者の借金問題」 「離島の刑事弁護事案」 「沖縄すば屋の相続問題」

当然のことだが、今回も沖縄らしい料理や方言が満載である。そして、沙英子のぶっきらぼうな物言いも相変わらずで、オジィ、オバァに愛される大城のキャラも全開である。そんな法テラスには、またまた面倒な厄介事が次々に持ち込まれ、しかも身内の事務員の関係者だったりもして、ますますややこしい。大城がさまざまな伝手を頼りに独自に調査した結果に、沙英子が閃き、絡まった糸を解きほぐす様子は、見ていてスカッとする。事務所内には何となくほのぼのとした空気も漂っているようでもあり、これからの展開も愉しみになるシリーズである。

映画化決定*友井羊

  • 2018/03/20(火) 16:37:58

映画化決定
映画化決定
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友井 羊
朝日新聞出版 (2018-01-04)
売り上げランキング: 153,615

放課後の教室でナオトが落とした一冊のノートを拾ったのは、同級生の天才画家監督・ハル。彼女はそこに書かれたマンガのネームを見て、言った。これをわたしに撮らせてほしい。創作者としてぶつかり合いつつ、ナオトは徐々にハルに惹かれていく。しかし―涙とサプライズのせつない青春小説。


そのまま実写化できそうな物語である。全編に映画作りのあれこれがふんだんにあふれているし、ぶつかり合いやのめり込みようも含めて、高校生たちの情熱が漲っている。そして、その裏に流れる切なさが、ただがむしゃらなだけではない悲哀をも表わしていて、涙を誘われること間違いない。ハルとナオト、そして杏奈や乙羽さんたちそれぞれの想い、ナオトが抱える屈託と、ハルの事情。さまざまな要因が絡み合って、象徴的なラストへと向かう。――のだが、それだけで終わらず、その先にひと捻りあるところがミソである。人の心の純粋さや、やさしい嘘の哀しさに想いを致す一冊である。

スイーツレシピで謎解きを*友井羊

  • 2017/03/29(水) 17:06:01


高校生の菓奈は人前で喋るのが苦手。だって、言葉がうまく言えない「吃音」があるから。そんな菓奈が密かに好意を寄せる真雪は、お菓子作りが得意な究極のスイーツ男子。ある日、真雪が保健室登校を続ける「保健室の眠り姫」こと悠姫子のために作ったチョコが紛失して…。鋭い推理をつまりながらも懸命に伝える菓奈。次第に彼女は、大切なものを手に入れていく。スイートな連作ミステリー。


タイトルから、イケメンのスイーツ男子、真雪(まさゆき)くんが探偵役なのかと思いきやさにあらず。吃音のために人とコミュニケーションをとるのが苦手で、なるべく他人と関わらないようにしている女子の菓奈なのである。なぜか保健室登校の一つ年上の美少女・悠姫子さんと、真雪くんと、ある事件に関わったことからなんとなく保健室で話すようになり、それ以後、菓奈に謎解きの依頼が舞い込むようになるのだった。謎解きを別にしても、よだれが溢れるくらいおいしそうなお菓子がたくさん出てきて、それだけでも愉しめる。さらに菓奈のお菓子作りの上達や、お菓子に関わることからの閃き、そして真雪くんへの思いや、人間関係の変化など、見どころ満載の一冊でもある。最後に配された「おまけ」が微笑ましい。

さえこ照ラス*友井羊

  • 2015/06/16(火) 16:48:09

さえこ照ラス
さえこ照ラス
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友井 羊
光文社
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口と態度は悪いが遣り手の美人弁護士、沖縄の空の下で大奮闘!
沖縄本島北部の法テラスに派遣されてきた弁護士・阿礼沙英子。
オジィオバァの方言通訳を命じられた事務員の大城を従え、縁もゆかりもない琉球の地で、厄介な民事事件を率直すぎる発言で一刀両断にします!
異色の法律相談ミステリー。


「オバァの後遺障害認定事案」 「軍用地相続の調停事案」 「モアイの相談」 「誘拐事件の国選弁護」 「ユタの証明」 「親権問題の調停事案」 「オジィとオバァの窃盗事件」

沖縄独特のゆるい時間の流れと、あくまでも凛と自分を崩さない弁護士・沙英子のギャップが面白い。そして、ウチナンチューと沙英子の間で奔走する大城もいい味を出しているし、有能な事務員の西崎さんも素敵である。法テラスに持ち込まれる案件は、沖縄ならではのものもあり、依頼人の名字も沖縄らしくて、沖縄を満喫できる気分である。冷たいようにも見えるが意外に熱血であり、始めたことはきちんと最後までけりをつけないと気が済まない気性もあり、最後はびしっと決めてくれる沙英子にほれぼれする。次もあればいいなと思わせる一冊である。

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん*友井羊

  • 2015/03/08(日) 08:35:30

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2014/11/07)
友井 羊

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東京のとある一角。どこの店も「close」の看板がかかる早朝に、スープ屋「しずく」は、こっそり営業している。フリーペーパー制作の仕事をする理恵はある朝、しずくでポトフを口にした途端に、しずくの虜になった。
職場で起きた盗難事件と対人関係で悩み、食欲も減退していた理恵。店主の麻野に悩みを抱えていることを見抜かれて話すと、麻野は推理を繰り広げ、鮮やかに解決する!


「嘘つきなボン・ファム」 「ヴィーナスは知っている」 「ふくちゃんのダイエット奮闘記」 「日が暮れるまで待って」 「わたしを見過ごさないで」

スープって、想像するだけで、身も心も温めて解いてくれるような気がする。しかもとびきりおいしい日替わりスープが、早朝ひっそりオープンしている静かなお店で食べられたら、幸福感に包まれること間違いない。しかも店主は穏やかで、自然に客の状態に寄り添ってくれるとしたら、これ以上のしあわせはないだろう。いままでほとんど知られていなかったのが不思議なくらいである。少しずつ増えてくる客たちの日常の困りごとを、話を聞くだけで解きほぐし、真実を明らかにしてしまう彼に、つい誰もが自分をさらけ出してしまうのもうなずける。だが、小学生のひとり娘と暮らす店主には、何か胸に仕舞った悲しみがあるようでずっと気になりながら読み進めることになるのだが、最後の物語でそれがわかると、胸の中に切ないあたたかさがじんわり広がるのである。丁寧に作ったスープを飲みたくなる一冊でもある。

ボランティアバスで行こう!*友井羊

  • 2014/07/17(木) 17:02:29

ボランティアバスで行こう!ボランティアバスで行こう!
(2013/04/10)
友井 羊

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『このミステリーがすごい! 』大賞優秀賞受賞作家・友井羊のデビュー第二作目! 著者自身もボランティアとして足を運んだ、震災・被災地をテーマ、舞台にしたミステリー。東北で大地震が発生、日本各地からは自衛隊救助をはじめ募金や物資などの支援や、民間団体がバスをチャーターしてボランティアに参加する“ボランティア・バス"が盛んに行われる。就職活動のアピールポイント作りのため、ボランティア・バスを主催することにした大学生の和磨。父が行方不明になった姉弟と知り合いになった女子高校生の紗月。あることから逃亡するため、無理やり乗り込んだ陣内など、さまざまな人がバスに乗り合わせる。それぞれの目的は果たせるのか。被災地で出会う謎と事件が、バスに奇蹟を起こす。


ボランティアバスに乗り合わせた人たちの物語である。被災地にボランティアに行こうと思い定めるまでの経緯、実際に被災地に行って出会った人や出来事、そしてその事情などなど。ボランティアを通して人が成長する物語だとばかり思って読み進めていた。ある意味それも正解ではあるのだが、さらに時間空間を超えたつながりが仕掛けられていたとは。エピローグで一気にぞくぞくした一冊である。

僕はお父さんを訴えます*友井羊

  • 2014/07/16(水) 16:52:07

僕はお父さんを訴えます (『このミス』大賞シリーズ)僕はお父さんを訴えます (『このミス』大賞シリーズ)
(2012/03/09)
友井 羊

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何者かによる動物虐待で愛犬・リクを失った中学一年生の向井光一は、同級生の原村沙紗と犯人捜しをはじめる。「ある証拠」から決定的な疑惑を入手した光一は、真相を確かめるため司法浪人の久保敦に相談し、犯人を民事裁判で訴えることに。被告はお父さん―母親を喪った光一にとっての、唯一の家族だった。周囲の戸惑いと反対を押して父親を法廷に引き摺り出した光一だったが、やがて裁判は驚くべき真実に突き当たる!2012年第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。


タイトルからして印象的だが、中学一年の光一が実際に父親を訴える物語だと判ってさらに衝撃は増す。推理小説好きのクラスメイトの沙紗(さーしゃ)や弁護士を目指す敦、父と離婚調停中の義母・真季の助けを借りて、裁判に漕ぎつけるのだが、そこで起こったことは、思わず目も耳も塞ぎたくなる事実が明らかにされることだった。たった13歳の少年をここまで追い詰めた父親を許せない思いでいっぱいである。光一がまっすぐ成長して行ってくれることを祈らずにはいられない一冊である。

銀の朝、金の午後*藤堂志津子

  • 2009/08/12(水) 20:14:28

銀の朝、金の午後銀の朝、金の午後
(1996/07)
藤堂 志津子

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一人暮らしをするトヨノ、初代、春子。三人寄れば噂話に花が咲く。ご町内の小さな事件に巻き込まれた彼女たちが繰りひろげる、ちょっとコミカルな物語。好奇心いっぱい、年をとるほど女は元気!


「シングルス」 「元上司」 「女ごころ」 「究極の夢」 「羽振りのよい男」 「謎の女」 「わが子よ・・・・・。」 「待ちあい室」 「尊師」 「従姉キヌ」 「人気者」 「夢か、うつつか」
その浮気に悩まされた夫に七年前に先立たれた69歳の初代、70歳のちんまりと小柄な未亡人・トヨノ、定年まで会社勤めをし、独身をつらぬいてきた65歳の春子。三人が主役の物語である。それぞれに個性があり、「老人」とひと括りにはできない、未だ枯れない好奇心とプライドも持ち合わせている。
彼女たちの日常に起こり、関わり、通り過ぎていくあれこれが、面白く可笑しくそしてちょっぴり哀しくもあり、彼女たちの行動のひとつひとつが、「いずれ我が身」というふうにも思えて親しみ深くもある。
若い世代とはひと味違うが、老人たちには老人たちのパワフルな時間があるのだということを改めて思わされる。