怪盗不思議紳士*我孫子武丸

  • 2018/07/15(日) 07:15:48

怪盗不思議紳士
怪盗不思議紳士
posted with amazlet at 18.07.14
我孫子 武丸
KADOKAWA (2018-03-10)
売り上げランキング: 186,037

少年探偵と、宿敵である怪盗のバトルがいま始まる! 痛快ミステリ活劇。

戦後間もない日本。孤児の瑞樹はひょんなことから探偵・九条響太郎探偵の助手を務めることになる。凶悪な事件を引き起こす謎の強盗集団、怪盗不思議紳士の追跡に協力することになった矢先、衝撃的な事件が起きる!


怪人二十面相と明智小五郎を思わせる、怪盗と名探偵の対決物語である。だが、肝心の名探偵は、物語が始まって間もなく怪盗不思議紳士の手によって暗殺されてしまう。名探偵・九条響太郎の遺志を継いだ助手の瑞樹が、響太郎に思いを寄せる蝶子の手も借り、響太郎の影武者だった大作を響太郎に仕立てて、怪盗不思議紳士と対決することになるのだが、目の前には次々に苦難が立ちはだかる。困難な状況を共にしているうちに、大作が本物の響太郎に見えてきたりすることもあって、次第に信頼関係が深まっていくように見える。真相は明かされないまま事件は解決されるのだが、果たして解決編はあるのだろうか。気になるところである。怪盗不思議紳士と九条響太郎の正々堂々の対決も見てみたいと思わされる一冊である。

高座のホームズ 昭和稲荷町らくご探偵*愛川晶

  • 2018/05/07(月) 16:30:41

高座のホームズ - 昭和稲荷町らくご探偵 (中公文庫)
愛川 晶
中央公論新社 (2018-03-23)
売り上げランキング: 54,581

テレビやラジオで落語が親しまれ、大看板と呼ばれた一流の噺家たちが芸を競った昭和五十年代。その一人、八代目林家正蔵(のちの彦六)の住む稲荷町の長屋には、傷害事件から恋愛沙汰まで、さまざまな謎が持ち込まれ―。なつかしいあの頃の落語界を舞台に、探偵・正蔵が快刀乱麻を断つ!洒脱な落語ミステリー。


これまでのシリーズのひと時代前の物語である。本作の高座のホームズは、八代目林家正蔵師匠で、安楽椅子探偵よろしく、持ち込まれる厄介話を聞いただけで、たちどころに絡み合った糸をほぐしてしまう。そんな名探偵が、次の時代にもちゃんと受け継がれているのが、これまでのシリーズなのだから、妙に納得してしまう。しかも今作では名探偵は実在の噺家なので、興味はさらに募るというものである。ただ、現代なら顰蹙を買うこと間違いないエピソードが盛り込まれており、しかも話の核心的な部分でもあるので、時代が違うとはいえ、いささか気になったことも確かではある。時代を語るには仕方ないと言え、拒否反応をする読者もいるかもしれないという気はする。そこを乗り越えれば、至極面白い一冊だった。

オーパーツ 死を招く至宝*蒼井碧

  • 2018/05/04(金) 16:40:00


貧乏大学生・鳳水月の前に現れた、顔も骨格も分身かのように瓜二つな男・古城深夜。鳳の同級生である彼は、OOPARTS―当時の技術や知識では、制作不可能なはずの古代の工芸品―の、世界を股にかける鑑定士だと高らかに自称した。水晶の髑髏に囲まれた考古学者の遺体、夫婦の死体と密室から消えた黄金のシャトル…謎だらけの遺産に引き寄せられるように起こる、数多の不可解な殺人事件。難攻不落のトリックに、変人鑑定士・古城と巻き込まれた鳳の“分身倹ひ”の運命は?2018年第16回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。


全くの他人でありながら、瓜二つの容貌を持つ古城深夜と鳳水月が、主に古城の主導によって事件に巻き込まれ、謎を解き明かすという趣向である。多分にマニアックな蘊蓄が語られているので、興味がある人には垂涎ものなのだろうが、それ以外の人には、とっつきにくい部分も多いかもしれない。キャラクタもまだ発展途上という印象で、続編があるなら、少しずつこなれていきそうな気はする。個人的にはあまり入り込めない一冊ではあった。

駒子さんは出世なんてしたくなかった*碧野圭

  • 2018/04/15(日) 10:41:05

駒子さんは出世なんてしたくなかった
碧野 圭
キノブックス (2018-02-28)
売り上げランキング: 50,724

水上駒子42歳。出版社で働く管理課課長。専業主夫の夫と高校生の息子あり。平穏な毎日に突然降りかかった昇進辞令。社内をかけめぐる噂と悪口、足を引っ張る年上の部下、女を使うことも厭わない同性ライバル…セクハラ・パワハラの横行する男社会をかいくぐり、駒子はどんな明日をつかむのか!?痛快お仕事小説!


出世欲はさほど強くないものの、出版社の管理課で課長を務める駒子さんが主人公である。家には、専業主婦の夫と息子がいて、日々はとてもうまく回っていると疑わなかったが、社内のセクハラ問題の後始末的な人事異動に始まり、駒子さん自身の昇進と新部署立ち上げという目の回る忙しさに加え、夫がカメラマンの仕事を再開することになって、家庭内にも不協和音が響き始める。あっちもこっちも、うまくいかないことだらけ。とは言いながらも、立ち止まってはいられない。人脈や熱意や、開き直りも駆使しつつ乗り越えていくことになるのである。掛け違った歯車にどこで気づき、どれだけ迅速に修正するかでその後の展開が変わってくるというのが伝わってくる。完璧な人間なんかどこにもいないのだから、頼り頼られながら、一歩ずつ前へ進めばいいのだ、と思わせてくれる一冊でもある。

そのバケツでは水がくめない*飛鳥井千砂

  • 2018/04/08(日) 13:36:15

そのバケツでは水がくめない
飛鳥井千砂
祥伝社
売り上げランキング: 84,040

アパレルメーカー「ビータイド」に勤める佐和理世は、自らが提案した企画が採用され、新ブランド「スウ・サ・フォン」の立ち上げメンバーに選ばれた。そんなある日、カフェに展示されていたバッグのデザインに衝撃を受けた理世は、その作者・小鳥遊美名をメインデザイナーにスカウトする。色白で華奢、独特の雰囲気を纏う美名の魅力とその才能に激しく惹かれる理世。社内でのセクハラ事件をきっかけに二人の距離は一気に縮まるが、やがてその親密さは過剰になっていく…。


理世が主役のお仕事ものがたりという趣で始まる物語である。だが、kotoriこと小鳥遊美名というデザイナーと電撃的に出会い、仕事上のパートナーであり、ともだちでもあるという関係になってから、次第に空気が変わってくる。表面上は穏やかで静かでやわらかいのだが、ちょっとした隙間にふと入り込み、チクリと針の跡を残していくような気分になることがあり、次第に気のせいでは片づけられなくなっていく。真綿で首を絞められるような、じわじわと追い込まれる恐怖がリアルに描かれていて、他人事とは思えないほど怖くなる。距離を置いて眺めれば誤らない判断が、渦中にいると、アリジゴクに引きずり込まれるようにはまってしまう恐ろしさをじわじわ味わわされる一冊である。

はんざい漫才*愛川晶

  • 2018/03/05(月) 13:57:21

はんざい漫才 (文春文庫)
愛川 晶
文藝春秋 (2016-04-08)
売り上げランキング: 531,218

編集者・武上希美子、三十一歳。老舗の寄席・神楽坂倶楽部への出向期間も過ぎ、将来を思い悩んでいるところに、また大事件が発生するが、ショー・マスト・ゴー・オン!シリーズ第三弾の今回は、人気漫才コンビ・ロケット団の三浦昌朗さん作、漫才風解説付。そして、最大のサプライズは「あとがき」のラスト一行にあり!


神楽坂倶楽部シリーズの第三弾は、落語ではなく、漫才と音曲にスポットが当てられている。さらには、協会の会長職をめぐる経緯や、過去の因縁、そして希美子のこれからのことなどが絡み合い、もつれ合って厄介の度合いが増しているのである。だが最後は、義蔵さんの機転もあって、万事うまく事が運んだが、問題がすべて片付いたわけではない。希美子と健太郎のことを始め、数々の疑問は次の作品で解決されるのだろうか。ますます愉しみなシリーズである。

三題噺示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帖*愛川晶

  • 2018/03/01(木) 20:30:34

三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,052,659

怪しい手品師、狙われる老落語家、師匠いわくの山間の宿…。謎に合点し落語で披露、笑いあり涙ありの人気シリーズ第4弾。


前作では、福の助の奇策により、馬春師匠を紅梅亭で独演会を開くという段取りになったので、どんな具合に話が進むのかと愉しみに読んだ。だがそう簡単に馬春師匠の高座の様子が描かれるわけはなく、そこへ行きつくまでには、いくつもの厄介事の謎解きをしなければならないのが本シリーズの常である。もちろんそれも愉しみつつ、気持ちはどんどん高まるのである。しかし、なんということだろう。思ってもいない展開になり、目を瞠るしかない。ここまで来て、「え、そんなぁ……」、という感じである。そして更なるサプライズ。もう振り回されっぱなしである。どこまで愉しませてくれれば気が済むのだ、と言いたくなるシリーズである。

ヘルたん ヘルパー探偵とマドンナの帰還*愛川晶

  • 2018/02/27(火) 18:47:30

ヘルたん - ヘルパー探偵とマドンナの帰還
愛川 晶
中央公論新社
売り上げランキング: 934,802

介護現場のエピソードと本格ミステリのトリックがハイブリッドに融合。本格ミステリの名手が描く介護ミステリ『ヘルたん』の第2弾。 20歳の神原淳は、浅草に住む成瀬老人の自宅で居候しながら、介護ヘルパーの修行をしている。この成瀬老人、じつは伝説と言われたほどの名探偵。その鮮やかなひらめきはいまも健在だが、アルツハイマーが進行し、ときおり記憶がとんでしまう。それでも噂を聞いて集まってくる相談を淳がかわりに引き受け、成瀬の助けを借りながら探偵業に挑戦する。1巻のラストで失踪した、淳のマドンナ・葉月も戻ってくるが、そこで葉月と浅草をつなぐ驚きの事実が明らかに……。ますます目が離せないシリーズ第2弾。


前作のラストで明らかになった両親にまつわることごとを済ませて、再び成瀬の離れに帰ってきた淳である。ヘルパーの仕事も再開させ、少しずつ板についてきて、仕事も順調に増えてきた。だが、葉月先輩の行方は相変わらずわからず、未来さんの知り合いから持ち込まれた謎は、なかなか成瀬に伝える機会を持てないまま、次から次へと厄介ごとに巻き込まれていく。しかもそれが、ことごとくどこかしらで繋がり、さらなる厄介ごとに発展して行ったりもするので、悩ましくもある。成瀬のアルツハイマーの症状も、じりじりと進行しているようだが、いまのところ誰ひとりそのことに気づいてはいない。この先どうなるのか、大いに気になるところである。偶然なのか、周りの思い込みによるところが大きいのか、結果的に謎解きのヒントを与えることになっているのも皮肉ではある。今回も、大きな謎が明らかになったが、さらなる問題も現れたわけで、次が気になって仕方がないシリーズである。

ヘルたん*愛川晶

  • 2018/02/24(土) 18:22:36

ヘルたん
ヘルたん
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愛川 晶
中央公論新社
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元引きこもりの20歳、神原淳は、浅草で一人暮らしをする成瀬老人の居候となる。
そこで出会ったヘルパーは、淳が高校時代に憧れていた不良先輩・中本葉月。
成瀬は実は伝説の名探偵で、現在でも依頼人がやってくる。淳はへルパー講習の
傍ら、探偵見習いも務めることに……。
「高齢者介護」と「本格推理」の絶妙なるフュージョン。新機軸の青春ミステリー。


珍しい取り合わせの探偵小説である。なんと、元引き篭もりの新米ヘルパー・神原淳が、伝説の名探偵・成瀬の家に居候し、探偵見習を始めようというのである。高校時代の憧れの葉月先輩の影響が大きく、彼女がらみの出来事もなんとか解決してしまったり、成瀬の言葉に明示を受け、偶然も手伝って、厄介事を解き明かす淳には、探偵の素質があるのかもしれない。本作ではまだ本格始動とは言えないので、成瀬との関わり方も含め、次作が愉しみな一冊である。

「茶の湯」の密室*愛川晶

  • 2018/02/22(木) 18:24:48

「茶の湯」の密室: 神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 489,201

知り合いの茶会に招かれた山桜亭馬伝の妻亮子。思っていた以上に本格的な席で、緊張が先立つなか、亮子はほんの一瞬、そこにいるはずのない猫を見てしまう。話を聞いた馬伝はその奥にある「謎」を見抜くのだが…五年ぶりに復活した「紅梅亭」シリーズ新ステージ、新たな人物も登場し、物語も謎も充実の開幕!


訳あって前作を飛ばしてしまったので、一気に時が経ち、福の助は真打になって馬伝を名乗っているし、馬春師匠もぼつぼつではあるが高座に復帰している。八ちゃんと亮子夫妻には雄太という息子までできていて、驚かされたものの、ほっと胸をなでおろしもする。だが、高座で落語に絡めて謎解き披露をするという趣向は変わらず、相変わらずはらはらしながら愉しめる。今回は、いささか物騒な謎が多いが、それがなおさらハラハラドキドキ感を増している。早く前作も読まなくちゃ、と思わされる一冊である。

うまや怪談*愛川晶

  • 2018/02/21(水) 13:22:08

うまや怪談 (神田紅梅亭寄席物帳) (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,110,991

高座で「罠」を打ち返し、怪談噺で謎を解き、ついには「あの人」を引っ張り出して…動き出す木彫りのねずみ、落語競演会で仕掛けられた「陰謀」学校での「妙ちきりんな事件」と義兄の結婚問題、そして師匠と十五センチの謎と駐車場で見たもの、これがあんなでそんなことに…。大好評「本格落語」シリーズ第三弾。


今回はなんと福の助が馬春師匠の知恵を借りずに謎を解き明かしてしまう。しかもそれが後々厄介事を引き起こすことになり、さらに思いがけない吉報をもたらすことにもなるのだから、なにが起こるか目が離せない。福の助の察しの良さはもちろん、妻の亮子も段々と落語に絡めて推し量ることができるようになっているのが、噺家のおかみさんとしても頼もしさを感じる。ただ、個人的には馬春師匠の浮気話はどうしても好きになれない。せっかく格好良かったのにがっかりである。それが謎解きの要素のひとつにもなったのだから仕方がないのかもしれないが……。それ以外は、スカッと小気味よく愉しめる一冊だった。

芝浜謎噺 神田紅梅亭寄席物帳*愛川晶

  • 2018/02/17(土) 18:14:03

芝浜謎噺―神田紅梅亭寄席物帳 (ミステリー・リーグ)
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 824,706

あの「芝浜」を、故郷で病気の母に聞かせてやりたい……。
なんとかしてやりたいと弟弟子のために悩む八ちゃんこと寿笑亭福の助。そこへ起こった「紅梅亭ダイヤ消失事件」。ところがこぼれたカルピスが引き金になって、「芝浜」も「ダイヤ」もすべてに合点!
笑いあり、ほろりと泣ける、本格落語ミステリー第二弾!


落語の知識がなくても、落語の薀蓄に耳を傾けたくなり、俄か落語通になった心持ちになれる。しかも、人情話としても泣かせどころが満載。さらに、日常の謎を落語にかけて、しかも高座の上で解き明かし、客席の当事者をぐうの音も出ない状態にさせてしまう技の見事さにやられてしまう。探偵役を務める福の助はもちろん格好いいが、彼にヒントを与える師匠の馬春がさらに格好いい。今回はことにお見事としか言いようがない。何度も泣かされる一冊である。

あかつき球団事務所へようこそ*青井夏海

  • 2018/02/11(日) 18:24:54

([あ]10-1)あかつき球団事務所へようこそ (ポプラ文庫)
青井 夏海
ポプラ社 (2018-01-04)
売り上げランキング: 413,804

会社が倒産し、やさぐれていた美咲が転がり込んだのは「あかつき球団事務所」。おばあさまで構成される異色の女子草野球軍団だった。宿代として、しぶしぶ練習を手伝うはめになるが、それぞれの事情や想いを知るうちに、閉じ込めていた自分の〝夢〟に向き合い始める……


野球が大好きだった女の子が、成長するにつれ、女だからという理由で野球ができる環境から半ば締め出されるようになり、泣く泣く諦めて就職したら、その会社も社員を置き去りにする格好で倒産し、行き場をなくして途方に暮れる。そんな美咲が主人公。あかつき球団という女性限定シニア限定の野球チームに出会い、問答無用で巻きこまれる内に、過去の自分のことをいろいろ考えるようになり、複雑な事情で、わだかまりができてしまった家族との関係も絡ませながら、前向きになれるまでが描かれている。現在の自分の状況の理由を、他者にばかり押しつけていたことに気づいたときの、いままでの世界の曇りが晴れたような気持ちは、とても清々しく、応援したくなる。何かを始めるのに遅すぎることはないということも改めて思い、元気にさせられる。微笑ましくあたたかい心持ちになれる一冊である。

妖盗S79号*泡坂妻夫

  • 2018/02/10(土) 07:47:44

妖盗S79号 (河出文庫)
泡坂 妻夫
河出書房新社
売り上げランキング: 116,267

神出鬼没の怪盗S79号!指輪に名画、名刀に化石まで、古今東西のお宝を、奇想天外な手口で次々と盗み出す。そんな中、世間では、連続猟奇殺人事件も発生中で、大混乱!果たして、警視庁のS79号専従捜査班は怪盗の正体とその真の目的を暴くことができるのか?ユーモラスで見事なトリックが光る傑作、待望の復刊!


妖盗S79号と専従捜査班の東郷と二宮の対決の物語である。あっという間に目的のものを盗み出し、尻尾を掴ませない妖盗S79号の鮮やかさと、妄念とも言える執着ぶりで逮捕に向けて捜査を続ける東郷の懸命ながら滑稽でもある様子の対比が面白さを増している。出てくる人出てくる人、みんなが怪しげなのもなかなかおかしい。ラストの種明かしには、いささか驚かされたが、味のある真実だったと思う。愉しめる一冊である。

道具屋殺人事件――神田紅梅亭寄席物帳*愛川晶

  • 2018/02/04(日) 13:24:20

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ]
愛川 晶
原書房
売り上げランキング: 1,007,204

高座の最中に血染めのナイフがあらわれる、後輩は殺人の疑いをかけられる、妻の知り合いは詐欺容疑……。次から次へと起こる騒動に、二つ目、寿笑亭福の助が巻き込まれながらも大活躍! 落語を演じて謎を解く、一挙両得の本格落語ミステリー!


神田の紅梅亭がらみの厄介事を、二つ目の福の助が妻の亮子の助けや、病を得て館山に引っ込んでいる元師匠の馬春の絶妙なアシストによって解き明かし、落語に寄せて講座で披露するという趣向である。謎解きに至る過程も興味深く、いよいよ事実を明らかにする落語の場面も胸がすく。登場人物たちもみな味のあるキャラで、読み進めるにつれて馴染みになっていく心持ちになる。落語好き、ミステリ好き、どちらもが満足する一冊である。