FC2ブログ

ドミノ in 上海*恩田陸

  • 2020/06/12(金) 16:34:23


イグアナが料理されれば盗賊団が上海に押し寄せ、そこに無双の甘党が上陸。風水師が二色に塗り分けられ、ホラー映画の巨匠がむせび泣くと秘宝『蝙蝠』の争奪戦が始まった!革ジャンの美青年がカプチーノをオーダー、一瞬で10万ドルが吹き飛んだら、上海猛牛号で渋滞をすりぬけ、まぁとにかく寿司喰寧。歯が命のイケメン警察署長が独走し、青年が霊感に覚醒したとき、パンダが街を蹂躙する!張り巡らされた魔術に酔いしれよ!圧巻のエンタテインメント。


読み始めて一瞬で、映像が頭に浮かび、ハラハラドキドキわくわくが止まらなくなるドタバタ活劇である。いくつもの要素が、まったく無関係のはずの人々を、偶然に結び付け、まるでドミノ倒しのように、思わぬ展開に転がっていく。どれ一つでも要素が欠けたり、時間がずれたりしていたら、まったく別の展開になっていただろうと思われるが、それがまたわくわく感を増すのである。映像化するには、莫大な資金が要りそうではあるが、観てみたいものだと思わされる一冊だった。

99%の誘拐*岡嶋二人

  • 2020/05/27(水) 19:04:06


末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作。


時を隔てて起こった二件の誘拐事件。どちらも、犯人からの細かい指示によって、捜査が撹乱され、まんまと身代金を奪われてしまい、犯人逮捕にも至らないという共通点がある。しかも、どちらにもかかわりのある人物が複数いるのである。一件目は、フェリーを使い、二件目はコンピュータのプログラムを駆使して、捜査陣をけむに巻いている。初出はなんと1988年だという。当時の警察には、まだまだ不得意な領域だったのだろう。現代で起こったとしても、かなり厄介なことになりそうな印象である。次にどう出るか、という興味は尽きず、ハラハラドキドキしながら読み進むことができるのだが、誘拐事件という負の連鎖故か、読後にもやもやしたものが残るのは否めないのが残念ではある。それを置けば、愉しめる一冊だった。

祝祭と予感*恩田陸

  • 2020/02/18(火) 16:17:22


大ベストセラー『蜜蜂と遠雷』、待望のスピンオフ短編小説集!大好きな仲間たちの、知らなかった秘密。入賞者ツアーのはざま亜夜とマサルとなぜか塵が二人のピアノの恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。芳ヶ江国際ピアノコンクールの審査員ナサニエルと三枝子の若き日の衝撃的な出会いとその後を描いた「獅子と芍薬」。作曲家・菱沼忠明が課題曲「春と修羅」を作るきっかけになった忘れ得ぬ教え子の追憶「袈裟と鞦韆」。ジュリアード音楽院プレ・カレッジ時代のマサルの意外な一面「竪琴と葦笛」。楽器選びに悩むヴィオラ奏者・奏へ天啓を伝える「鈴蘭と階段」。巨匠ホフマンが幼い塵と初めて出会った永遠のような瞬間「伝説と予感」。全6編。


短編集なのに、一遍一遍があまりにも濃密で、くらっとする。音楽の世界のただなかに放り出されたような、この圧倒的な臨場感はなんだろう。読み進めながらどんどん鼓動が速くなり、何度も呑み込まれてしまいそうになる。この素晴らしい世界を作る彼らの息遣いまで聞こえてきそうな一冊だった。

珈琲店タレーランの事件簿6 コーヒーカップいっぱいの愛*岡崎琢磨

  • 2020/02/04(火) 16:24:10


狭心症を発症し、突然倒れてしまった珈琲店“タレーラン”のオーナー・藻川又次。すっかり弱気になった彼は、バリスタである又姪の切間美星にとある依頼をする。四年前に亡くなった愛する妻・千恵が、生前一週間も家出するほど激怒した理由を突き止めてほしいと。美星は常連客のアオヤマとともに、大叔父の願いを聞き届けるべく調査を開始したが…。千恵の行動を追い、舞台は天橋立に!


いつも割と狭い範囲が舞台となり、タレーラン自体も裏路地の奥にひっそりとたたずむ店なのだが、今作は、まるでトラベルミステリのように、天橋立と浜松とを行ったり来たりすることになる。藻川氏」は狭心症で手術を待つ見だし、途中美星さん自身も何者かに襲われて軽いとはいえ怪我をする。その前には、ひとりこっそり姿を消し、ほんの一時行方知れずになりもする。ただならぬ展開ではある。しかも、久しぶりに会う藻川さんの孫の小原ちゃんと行動を共にすることにもなり、あれこれ番狂わせが起こる。美星さんの頑固で強い一面も垣間見られ、ラストには、思い切った展開もあって、次がまた楽しみである。相変わらずおいしいコーヒーが飲みたくなるシリーズである。

きょうの私は、どうかしている*越智月子

  • 2020/02/01(土) 12:36:40


性、仕事、家族との関係性——。様々な局面で四十歳を目前にした未婚女性たちが、日常のなかで一瞬垣間見せる「ぶれ」のようなものをリアルかつ澄んだ筆致でとらえた連作短編集です。
白石一文氏に「あなたは小説を書かなくてはいけない人」と明言されたことをきっかけに短編を書き始めた注目の新人、越智月子氏のデビュー作。月刊「きらら」での読み切り連載に書き下ろしを加えた十一編、それぞれの作品が幽かな繋がりを持った連作短編集です。恋愛、仕事、家族との関係性——。越智氏が澄んだ筆致でとらえるのは、四十歳を目前にした未婚女性たちが、日常のなかで一瞬垣間見せる「ぶれ」のようなもの。仕事は頑張っている。でも、肌は徐々に若い頃のハリを失い、恋愛はいつも、なぜか思い通りにはいかない。きょうの私は、どうかしている——すべての現代女性が感じたことのある気持ちを鮮やかに描いた、今、もっともリアルな1冊。


四十歳を目前にした女性たちの、独身ゆえの世間の中での不安定感、一時の安定を通り過ぎたふたたびの不安定、親の老いをじわじわと感じ始める恐ろしさ、などなどの、なんとはなしに心をぞわぞわさせる事々に翻弄されつつ、それでも日々を生きていかなければならない息苦しさと、何もかもを投げ出したくなる時に逃げ込む場所が繊細に描かれている。平静な気持ちでは読めない一冊でもあるかもしれない。

歩道橋シネマ*恩田陸

  • 2020/01/27(月) 16:39:45


とある強盗殺人事件の不可解な証言を集めるうちに、戦慄の真相に辿り着いて……(「ありふれた事件」)。幼なじみのバレエダンサーとの再会を通じて才能の美しさ、酷薄さを流麗な筆致で描く「春の祭典」。
密かに都市伝説となった歩道橋を訪れた「私」が記憶と、現実と、世界の裂け目を目撃する表題作ほか、まさにセンスオブワンダーな、小説の粋を全て詰め込んだ珠玉の一冊。



とても短い物語集である。さっと読めるのだが、どれも不思議な余韻があって、しばらく引っ張られるような心地になる。平穏な日常の中に潜む恐怖に似たなにかが、ふと振り向いた隙間から覗いているような、一瞬背筋が凍るようなものもあれば、目を閉じた途端に異次元へ運ばれ、目を開けるとほんの一瞬だったというような印象のものもある。短すぎて消化不良なものもなくはなかったが、概ね楽しい読書タイムをくれる一冊だった。

約束された移動*小川洋子

  • 2020/01/13(月) 16:44:36


ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。
Bからの無言の合図を受け取る客室係……「約束された移動」。
ダイアナ妃に魅了され、ダイアナ妃の服に真似た服を手作りし身にまとうバーバラと孫娘を描く……「ダイアナとバーバラ」。
今日こそプロポーズをしようと出掛けた先で、見知らぬ老女に右腕をつかまれ、占領されたまま移動する羽目になった僕……「寄生」など、“移動する"物語6篇、傑作短篇集。



さまざまなテイストの物語が集まっている。だが、これらを「移動」に注目してまとめたのは、著者ならではではの感性ではないだろうか。どの物語の主人公も、自分なりのこだわりを持っていて、それは、一般の人に比べても確固としている風に見える。世間との折り合いよりも、自分の中の規則に従って生きる人たちが描かれていて、傍から見ると不自由そうにも見えるのだが、それこそが彼らにとってのしあわせなのだろう、とも思われる。普段気づかない方向からの視点で愉しめる一冊でもある。

罪の轍*奥田英朗

  • 2019/12/24(火) 20:48:37


刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞く――。世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。


587ページという大作である。だが、終始飽きさせず、次の展開を知りたくてページを繰る手が止まらなくなる。帯の惹句を見ただけで、あの事件がモチーフなのだろうということは判るが、大枠は別として、細部はまったく別の物語である。そして、何より興味深いのは、早い段階から真犯人と目されながら、さっぱり捉えどころのない宇野寛治のことである。罪の意識があるのかないのか、嘘をつくつもりがあるのかないのか、善悪の判断がつくのか憑かないのか、知能犯なのか莫迦なのか。寛治の行動のひとつひとつが、どれをとってもちぐはぐで、ひとつの人格に収まり切らない印象なのである。それゆえになおさら、寛治のことを知りたくて、先を急ぎたくなるのである。舞台となった時代背景も現在とはかなり違うので、今なら到底許されないだろう差別的な言葉も多用されるが、その時代の混沌をよく表しているとも思える。やりきれないことだらけの事件だが、通い合った情も確かにあったのだと、ほんの少し救われた気もする。とても重いが興味深い一冊だった。

小箱*小川洋子

  • 2019/11/26(火) 16:44:08

小箱
小箱
posted with amazlet at 19.11.26
小川 洋子
朝日新聞出版
売り上げランキング: 4,153

死んだ子どもたちの魂は、小箱の中で成長している。死者が運んでくれる幸せ。
世の淵で、冥福を祈る「おくりびと」を静謐に愛おしく描く傑作。


元幼稚園の園舎に住む主人公は、死んだ子供たちの未来を入れたガラスの小箱の管理人でもある。産院は爆破され、新しい子どもはもう生まれては来ない。子どもを失った親は、その未来を小箱の中に思い描いて祈るのである。元歯科医が削り出す竪琴に、元美容師によって遺髪の弦が張られ、耳飾りとして音楽を奏でる。誰もが思いを込めたやり方で、それぞれの祈りを祈っている。とても静かで濃やかで、この上なく穏やかな心持にさせられはするのだが、その実、奥底では胸をかきむしりたくなるような何かに掻き立てられ、居ても立ってもいられなくなりそうでもある。心を鎮めながら、狂おしく苛んでいる、そんな印象の一冊である。

彼方のゴールド*大崎梢

  • 2019/11/24(日) 16:26:54

彼方のゴールド
彼方のゴールド
posted with amazlet at 19.11.24
大崎 梢
文藝春秋
売り上げランキング: 16,745

野球もサッカーも知らずスポーツ雑誌に配属された明日香には、ある競技に纏わる苦い思い出が……。人気の出版社お仕事小説第三弾。


自分自身、スポーツには全くと言っていいほど疎いので、読み始めてすぐはどうなることかと思ったが、明日香がGold編集部やスポーツ選手への取材に慣れていくにつれて、一緒に歩むように集中できるようになっていくのが愉しかった。子どもの頃の体験や記憶も絡めて物語は進み、さまざまなスポーツ、さまざまな状況の選手に取材し、次第にスポーツに熱意を抱いていく明日香が輝いて見える。少しずつ自分の中に引き出しが増え、人脈も増えて、通り一遍ではない取材ができる帰社になれそうな兆しが見えて頼もしくもある。個人個人のスポーツとの関わり方もそれぞれで、その背景に思いを致すのもまた興味深い。何かに燃えてみたいと思わされる一冊でもあった。

楽園の真下*荻原浩

  • 2019/11/08(金) 18:43:06

楽園の真下
楽園の真下
posted with amazlet at 19.11.08
荻原 浩
文藝春秋
売り上げランキング: 30,412

日本でいちばん天国に近い島といわれる「志手島」は、本土からは船で19時間、イルカやクジラの泳ぐコーラルブルーの海に囲まれ、亜熱帯の緑深い森に包まれている。
そんな楽園で、ギネス級かもしれない17センチの巨大カマキリが発見された。『びっくりな動物図鑑』を執筆中だったフリーライターの藤間達海は、取材のため現地を訪れるが、 志手島には楽園とは別の姿があった。
2年間で12人が、自殺と思しき水死体で発見されており、ネットでは「自殺の新名所」と話題になって「死出島」と呼ばれていたのだ。
かつて妻を自殺で失った藤間は、なぜ人間は自ら命を絶とうとするのかを考え続けており、志手島にはその取材も兼ねて赴いていた。
やがて島で取材を続ける藤間の身の回りでも不審死が……。


タイトルからは想像できない凄まじさである。ゆるりゆるりとした島時間で過ごす島の人たちだが、ここ二年で12人もの自殺者が出るというのは尋常ではない。しかも、涙人湖(るにんこ)という沼のような湖が、決まってその現場なのである。フリーライターの藤間は、17㎝の大カマキリの情報を追って、志手島にやってきたのだが、志手島野生生物研究センターの秋村准教授とともに調査するうちに、とんでもないことが起こっている気配に、調査にも本腰が入る。次々に明らかになる知られざる事実に愕然とし、そんな暇もないほど緊迫した状況になる。島民のゆるりゆるり体質が恨めしくも感じられる。後半は、アクションホラーと言ってもいいような様相を呈し、頭がなかなか起こっていることを受け入れてくれないが、死と隣り合わせであることだけは確信できる。ラストは、一件落着でめでたしめでたし、かと思いきや、またまた不安の種が蒔かれてしまった。実写化されたとしても見たくない一冊である。

ひと*小野寺史宜

  • 2019/10/28(月) 16:42:41

ひと
ひと
posted with amazlet at 19.10.28
小野寺 史宜
祥伝社
売り上げランキング: 5,148

母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、交通事故死した調理師の父。女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の
僕を東京の大学に進ませてくれた母。――その母が急死した。柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。仕事を探さなければと思いつつ、動き出せ
ない日々が続いた。そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の総菜屋で、買おうとしていた
最後に残った五十円コロッケを見知らぬお婆さんに譲った。それが運命を変えるとも知らずに……。

そんな君を見ている人が、きっといる――。


主人公・聖輔の境遇は、劇的だが、それを除いて、物語は淡々と描かれている。人の縁に恵まれ、自らの判断にも助けられながら、さまざまなものを捨てながらも、それ以上のものを得て生きている聖輔の日々が愛おしくなる。誰かに見せるためでなくても、自分を律し、他人のことを慮って生きている姿に、とても好感が持てる。日々は淡々と過ぎていくように見えるが、確実に何かが積み重ねられているのだと感じられる。もっと他人に頼ればいいのに、と思ってしまうが、それができないところが聖輔であり、それだからこそ今、そしてこれからがあるのかもしれない。頼り合え、支えあえる存在がずっと一緒にいてくれることを願いたくなる一冊である。

道然寺さんの双子探偵 揺れる少年*岡崎琢磨

  • 2019/08/27(火) 09:50:47

道然寺さんの双子探偵 揺れる少年 (朝日文庫)
岡崎 琢磨
朝日新聞出版 (2019-05-13)
売り上げランキング: 420,665

福岡の夕筑市にある寺院・道然寺で暮らす中学3年生のランとレン。
人の善意を信じるランと悪意を敏感にかぎ取るレン、正反対の視点を持つ双子が活躍するシリーズ第2弾。
熊本地震から逃れ、転校してきた少年の秘めた思いが引き起こした事件の謎を解き明かす。


複雑な境遇にある双子のレンとランが、身近な問題を解きほぐす物語の二作目である。置き去りにされていた赤ん坊のリンが加わったことで、誰かに守られること、そして誰かを守ることをより意識するようになったように見える。そんな折に、熊本地震で家を失って転校してきた志垣雄哉に関して心配事が出現し、レンがこの頃仲良くしている蓬莱司が深くかかわっていることがわかる。何とかしようともくろむ二人(特にラン)だったが、事態はそれほど単純なものではなかったのである。人の心のなかというのは、表からはうかがい知れないほど複雑で、良かれと思ってしたことが裏目に出ることも少なくない。人と人との関わりの難しさを、中学生のランとレンのみならず、保護者的な立場の僧侶である一海も、改めて認識させられたことだろう。そして、難しくはあるが、誠意をもってあたれば、思いは通じる、というのもまた真理であるような気がする。少しずつ成長していく双子と、一海さんのこれからも、見守り続けたいシリーズである。

アロワナを愛した容疑者*大倉崇裕

  • 2019/07/29(月) 16:45:35

アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係
大倉 崇裕
講談社
売り上げランキング: 64,927

連ドラ化もされた大人気「警視庁いきもの係」シリーズ、待望の第5弾!
「タカを愛した容疑者」「アロワナを愛した容疑者」「ランを愛した容疑者」の3作品を収録。

さらに「アロワナを愛した容疑者」では、大好評「福家警部補」シリーズの主役・福家警部補と警視庁いきもの係の薄、須藤が夢の共演! このコラボは見逃せない!!


登場人物像が、すっかりドラマに引きずられている。映像のパワーはものすごい。もうたぶん、著者ご自身も、その設定で書いていらっしゃるのではないかという気もしてしまう。薄巡査は、相変わらず天然の頓珍漢ぶりを発揮し、須藤はずいぶん彼女の扱いに慣れ、ほとんどのことには動じなくなっているのがおかしくて、つい苦笑してしまうが、信頼関係も築けていてなかなかいい凸凹コンビである。薄巡査にそのつもりがあるのかないのかはよくわからないが、結果として事件を解決に導いているので、「いきもの係」の知名度も信頼度も少しずつ増してきているのが読者としてもうれしいところである。次はどんな生き物が登場するか、愉しみでもあるシリーズである。

宝の地図をみつけたら*大崎梢

  • 2019/07/07(日) 16:46:23

宝の地図をみつけたら (幻冬舎文庫)
大崎 梢
幻冬舎 (2019-04-10)
売り上げランキング: 207,387

小学生の頃、祖母からこっそり手に入れた 「金塊が眠る幻の村」の地図。それは晶良と 伯斗の友情の証、そして秘密の冒険の始まり だった。「探しに行かないか、昔みたいにふ たりで」。渋々と宝探しを再開する晶良だっ たが、直後、伯斗の消息が途絶えてしまう。 代わりに"お宝"を狙うヤバイ連中が次々に現 れて……! ? 手に汗握る"埋蔵金"ミステリー!


著者の作品なので、もっとほのぼのとした宝探しの物語かと思って読み始めた。途中までは、そんな感じでなくはなかったものの、その後の急展開には目を瞠るものがある。夢を追っていたのに、突然現実に引き戻されたようであり、スリルとサスペンスとハードボイルドが入り交じった展開に驚くばかりである。山の中での道なき道の追跡や逃走。ほんの些細な気配で敵か味方かを判断し、一瞬で足の向く先を決めなければならない緊迫感。命の危険さえはらむ展開にハラハラドキドキが止まらない。宝の山を目前にした人間の本性と、それでも信頼できる人間関係の貴重さを教えてくれる一冊でもあった。