銀杏手ならい*西條奈加

  • 2018/01/09(火) 16:34:45

銀杏手ならい
銀杏手ならい
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西條奈加
祥伝社
売り上げランキング: 373,611

小日向水道町にある、いちょうの大樹が看板の『銀杏堂』は、嶋村夫婦が二十五年に亘って切り盛りしてきた手習指南所。子を生せず、その家に出戻ることになった一人娘の萌は、隠居を決め込む父・承仙の跡を継ぎ、母・美津の手助けを得ながら筆子たちに読み書き算盤を教えることに。だが、親たちは女師匠と侮り、子供たちは反抗を繰り返す。彼らのことを思って為すことも、願い通りに届かない。そんなある日、手習所の前に捨てられていた赤ん坊をその胸に抱いた時、萌はその子を引き取る決心を固めるが……。子供たちに一対一で向き合い、寄り添う若き手習師匠の格闘の日々を、濃やかな筆致で鮮やかに描き出す珠玉の時代小説!


三年子をなせず、婚家から出された萌は、父の手習指南所を任されたが、心の痛みから、なかなか一心に打ち込むことができずにいた。だが、ひとりひとりの筆子の事情や、懸命に生きている彼らに近しく接するうちに、次第に自らも力を得ることができ、子どもたちと真正面から向き合うようになっていく。それには、我が子として育てることにした、自分と同じ境遇の捨て子・美弥の存在がことのほか大きいようである。初めは胡散臭く思っていた師匠仲間の椎葉たちとの会話の中からヒントを得て、子どもたちの抱える問題を解決に向かわせる様子も、機転と知恵と思いやりの気持ちが伝わってきて好ましい。心温まる一冊である。

GOSICK BLUE*桜庭一樹

  • 2018/01/07(日) 16:42:35

GOSICK BLUE
GOSICK BLUE
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桜庭 一樹
KADOKAWA/角川書店
売り上げランキング: 72,779

遠い海を越え、ついに辿り着いた新大陸で巻き込まれたのは、新世界の成功を象徴する高層タワーで起きた爆破事件! そのとき、タワー最上階のヴィクトリカと、地下の一弥は――! ?大人気ミステリ新シリーズ、第二弾!


シリーズ第二弾だが、時はいささか遡り、ヴィクトリカと一弥が新大陸に移民としてやって来た当日に巻き込まれた顛末の物語である。どうやら、ここがすべての出発点ということになりそうである。先行きが案じられる一日目であるが、貴重な人間関係が結べたということもできるのかもしれない。三作目からは落ち着くところに落ち着くのだろうか。気になるシリーズである。

GOSICK RED*桜庭一樹

  • 2018/01/05(金) 16:33:08

GOSICK RED (単行本)
GOSICK RED (単行本)
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桜庭 一樹
KADOKAWA/角川書店
売り上げランキング: 59,355

時は1930年代初頭、ニューヨーク。超頭脳“知恵の泉”を持つ少女ヴィクトリカは探偵事務所を構え、久城一弥は新聞社で働いている。街は好景気に沸き、禁酒法下の退廃が人々を闇へと誘う。ある日、闇社会からの依頼人がヴィクトリカを訪れ、奇怪な連続殺人の解決を依頼する。一方、一弥は「心の科学で人々の精神的外傷を癒やす」という精神分析医のもとに取材に向かっていた。やがてすべての謎はひとつに繋がり、恐るべき陰謀が姿を現す―。新シリーズスタート!!


アメリカ、しかもまだ混沌としているような時代が舞台なので、いささか敬遠していたのだが、積読本が心細くなって手にしてみた。ファンタジーのようでもあり、コメディのようでもあり、シリアスな事件を扱う探偵ものでもあり、とさまざまな愉しみ方ができるのだが、ヴィクトリカと九城一弥の関係性が、いまひとつすとんと腑に落ち切らないので、のめり込むところまではもう一歩と言った感じである。だが、彼らのことをもっと知りたいという気持ちにはさせられるので、引き続き読んでみようと思わされるシリーズではある。

夏の情婦*佐藤正午

  • 2017/11/22(水) 13:39:37

夏の情婦 (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2017-08-08)
売り上げランキング: 81,569

第一五七回直木賞を『月の満ち欠け』で受賞した著者が、デビュー直後、瑞々しい感性で描いた永遠の恋愛小説集。ネクタイから年上女性との恋愛を追憶する『二十歳』、男と女の脆い関係を過ぎゆく季節の中に再現した『夏の情婦』、高校生の結ばれぬ恋を甘く苦く描く『片恋』、夜の街を彷徨いながら人間関係を映していく『傘を探す』、放蕩のなかでめぐり遭った女性との顛末『恋人』、小説巧者と呼ばれる才能がすでに光り輝く五編を収録。


情事の物語は個人的にはいささか苦手分野である。だが、それぞれの物語の主人公の男性の一人称での語りが、あまりにも淡々としすぎていて、倫理観とか道徳観念とか、その他世間一般の規範からはかなりずれているのに、彼のペースに巻き込まれてしまいそうになるのは不思議な感覚である。熱心なのか、冷めているのか、求めているのか、逃げているのか、その辺りのスタンスも曖昧で、それがなおさらとらえどころのない印象を増している。『傘を探す』では、永遠のスパイラルに巻き込まれたかのような理不尽さと、やはりここでも熱心なのか投げやりなのか判然としない主人公の振舞いに、いつしか絡めとられて、やり切れなくも満たされた心地になるのである。不思議な魅力をたたえる一冊である。

じごくゆきっ*桜庭一樹

  • 2017/10/29(日) 16:30:37

じごくゆきっ
じごくゆきっ
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桜庭 一樹
集英社
売り上げランキング: 179,309

かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物。そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。あまずっぱじょっぱい、青春譚――「じごくゆきっ」。
ぼくのうつくしいユーノは、笑顔で、文句なく幸福そうだった。あのときの彼女は、いまどこにいるんだろうか。ユーノのお母さんの咆哮のような恐ろしい泣き声。僕はユーノにも、その母親にも追い詰められていく――「ロボトミー」。
とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは――「脂肪遊戯」。
7編収録の短編集。


文章はごく淡々としているのに、描かれていることはいずれもどろどろしていたり、身勝手だったリ、屈折していたりと、思わず逃げ出したくなるような事々なのである。淡々と書かれているからこそ、逃げたいのに逃げることのできない心のもがきが増幅されるような気がする。心が悲鳴を上げるとき人が取る行動が、どれほど解決からかけ離れているかということも、改めて思い知らされる。どんよりした読後感を引きずる一冊でもある。

花のようなひと*佐藤正午 牛尾篤・画

  • 2017/10/23(月) 16:41:53

花のようなひと
花のようなひと
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佐藤 正午
岩波書店
売り上げランキング: 435,429

日々の暮らしの中で揺れ動く一瞬。その心象風景を花々に託して、あざやかに描き出す。花のような女性たちに贈る優しさの花束。『PHPカラット』連載に未発表の作品を加えて単行本化。


詩画集のような趣である。花言葉や花の名前など、ときどきの花に、一瞬の心の動きをゆだねているのが、とても効果的で、短い物語が、添えられる絵によってさらに鮮やかに情景を思い浮かべさせる。やさしくてあたたかい一冊である。

君を一人にしないための歌*佐藤青南

  • 2017/10/13(金) 18:33:46

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)
佐藤 青南
大和書房
売り上げランキング: 417,767

中3の夏、全国出場をかけた吹奏楽コンクールで大失敗を犯したことをきっかけに、ドラム演奏をやめた僕――
高校入学から1カ月が過ぎたある日。
七海(ななみ)という見知らぬ女子生徒に強引に誘われ、バンドを組むことになってしまう。
豊富な音楽知識をもつ凛(りん)も加入して、バンド活動が始まるかと思いきや、
ギタリストだけが見つからない!
メンバー募集をかけるが、やってくる人は問題児ばかりで…
なぜかバンドをすぐにやめてしまう! ? いつになったら演奏できるの?
往年のロックの名曲も謎にからむ日常ミステリーの新定番、爆誕!


正直言って、読み始める前の期待値はあまり高くなかった。だが、読み進める内にどんどん惹きこまれ、登場人物たちに親しみを感じるようになっていく。ロックをやっているお気楽な高校生ではなく、それぞれが傷つき、屈託を解決できないままにもがいていたのである。キャラクタもそれぞれに魅力的で、素直に言葉にできないながらも、互いを思いやっていることが伝わってくるのもいい。どんどん三人が好きになる一冊である。

古書カフェすみれ屋と悩める書店員*里見蘭

  • 2017/09/14(木) 16:24:02

古書カフェすみれ屋と悩める書店員 (だいわ文庫)
里見 蘭
大和書房
売り上げランキング: 320,659

「この本、買っていただけませんか?」「それってつまり―いまわたしが話した不可解さの答えがこのなかにあると?」すみれ屋の古書スペースを担当する紙野君がお客様に本を薦めるとき、きっと何かが起こる―。初デートの相手のつれない行動の理由も、見つからない問い合わせ本のタイトルも、恋人が別れを匂わせた原因も、…すべてのヒントと答えは本のなかにある!?日常ミステリー第2弾!大切な一歩を踏み出す誰かを応援する、スウィート&ビターな4つのミステリー!


「ほろ酔い姉さんの初恋」 「書店員の本懐」 「サンドイッチ・ラプソディ」 「彼女の流儀で」

おいしそうな料理と、読みたくなる本が魅力のシリーズである。すみれ屋も順調に人気店になってきているようで、今回は新人のほまりさんも加わって、ちょっぴりにぎやかになったすみれ屋である。お料理はどれもおいしそうで、紙野くんが薦める本にもいずれも興味をそそられる。お客さんの悩みを聞いて、たちどころに推理を巡らせ、的確な本を薦めて謎を解き明かしてしまう紙野くんは、相変わらず素敵である。お客さんたちも、みんながおいしい料理を愛し、じっくり味わいながら愉しんでいる様子で、好感が持てる。謎を解きほぐすのは、やはり人のことを想うまごころなのだろうと思わされる一冊である。

僕と先生*坂木司

  • 2017/08/09(水) 07:08:25

僕と先生
僕と先生
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坂木 司
双葉社
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大学の推理小説研究会に入ったけれどこわがりな僕と、ミステリ大好きでしっかりした中学生の先生が、日常に潜む謎を解いていく〈先生と僕〉シリーズの最新刊。
社会問題にも目を向け、ちょっぴり大人になった二人の活躍をどうぞお楽しみに!


一話 レディバード  二話 優しい人  三話 差別と区別  四話 ないだけじゃない  五話 秋の肖像  指先の理由

一作目のタイトルが『先生と僕』だったので、同じ作品と勘違いしてずっとスルーしてしまっていて、やっと二作目であることに気づいて読んだのだが、気づいてよかった。大学生の二葉は、相変わらずお人好しで怖いものが大の苦手。中学生の隼人は、二葉をワトソン代わりにして、アームチェアディテクティブ――時に現場にも赴くが――ぶりに磨きをかけている。今作では、薬指だけにテントウムシのネイルアートがある女性が、ところどころに登場し、キーになっている。ある意味、問題提起的な役割とも言えようか。なにが善でなにが悪か、ある行動の奥にどんな気持ちが隠れているのか、ということを、考えるきっかけにもなるのである。日常の謎を解きながら、さまざまな人間模様も愉しめるシリーズである。

校長、お電話です!*佐川光晴

  • 2017/07/10(月) 07:22:34

校長、お電話です!
校長、お電話です!
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佐川 光晴
双葉社
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シバロクこと柴山緑郎は、問題が頻発していた中学の校長として赴任。
母校でもある学校を建て直すべく奮起した矢先、休職中の教師が自殺未遂を起こす。
校内からはタバコの吸い殻…。これらの問題を引き起こしたのは、元官僚の教育評論家である前校長の振舞いだった。
学校現場を、一人の校長の目を通してリアルに描きだした物語。


事務職員・福良さんの「校長、お電話です!」というひと言から展開する、新任校長・柴山緑郎(通称シバロク)の奮闘の日々の物語である。
市長の肝煎りで民間から着任した前任校長の元教育評論家・野田欣也の対応に対する不満が爆発して荒れ放題だった百瀬中を立て直すために送り込まれたのがシバロクである。着任早々、たまりにたまった厄介事が押し寄せ、問題が次々に明るみに出るが、名校長の誉れ高かった亡父に言われた言葉が折々によみがえり、偶然の成り行きにも味方されて、ひとつひとつ着実に解決していくのである。私生活も絶妙に織り交ぜ、ついつい手に汗握って応援したくなってしまう。娘や友人の支えもあり、スーパーマンではないシバロクが奮闘する姿は、見ていて気持ちが好い。何事も人間関係と誠意が大切だと改めて感じさせてくれる一冊だった。

青年のための読書クラブ*桜庭一樹

  • 2017/06/18(日) 14:12:52

青年のための読書クラブ
桜庭 一樹
新潮社
売り上げランキング: 129,253

東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の〈クラブ誌〉があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた――。今もっとも注目の奇才が放つ、史上最強にアヴァンギャルドな“桜の園”の100年間。


お嬢様学校の誉れ高い聖マリアナ学園が舞台の物語なのだが、学園物語という言葉から連想されるのとはいささか趣を異にする世界が繰り広げられている。そもそも、聖マリアナ学園の成り立ち方からして尋常とは言えず、すでにそこには異端の匂いが色濃く漂っているのである。だが、女の園の常としての偶像崇拝的な恋愛ごっこや、二大勢力の学内戦争などは、これでもかというほど盛り込まれており、その二大潮流から外れたところに存在する「読書クラブ」こそがこの物語の本流であるというところが、もっとも聖マリアナ学園らしいとも言えるのである。詰まるところ、本作は、読書クラブ員たちが代々秘密裏に書き綴ってきた「読書クラブ誌」そのものなのである。赤レンガの部室棟の倒壊とともに姿を消した読書クラブだが、中野の某所で密かに生き続けているラストシーンで思わずにんまりしてしまう。著者らしい一冊だった。

猫の傀儡*西條奈加

  • 2017/06/14(水) 18:15:08

猫の傀儡(くぐつ)
猫の傀儡(くぐつ)
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西條 奈加
光文社
売り上げランキング: 105,566

人を遣い、人を操り、猫のために働かせる。それが傀儡師だ。

傀儡師となった野良猫・ミスジは、売れない狂言作者の阿次郎を操って、寄せられる悶着に対処していく。やがて一匹とひとりの前に立ち現れる、先代傀儡師失踪の真相とは――? 当代屈指の実力派が猫愛もたっぷりに描く、傑作時代“猫"ミステリー! !


表題作のほか、「白黒仔猫」 「十市と赤」 「三日月の仇」 「ふたり順松」 「三年宵待ち」 「猫町大捕り物」

ひと言で言えば、猫が人を操って事件を解決に導く物語である。猫界では傀儡師は代々受け継がれ、傀儡としてふさわしい人間を、上手い具合に誘導して事件に関わらせ、それとなく道筋をつけて解決へと導くのである。傀儡にされた人間はそうとは知らず、自らの意志で謎を解きほぐした気になっているのだが、ふと気づくといつも同じ猫がそこにいるという寸法である。なんだか痛快である。天敵でもある烏との人情話もあり、現傀儡師のミスジの賢さと機転も見事である。シリーズになればいいなあと思う一冊である。

月の満ち欠け*佐藤正午

  • 2017/06/07(水) 16:32:20

月の満ち欠け
月の満ち欠け
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佐藤 正午
岩波書店
売り上げランキング: 8,106

新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。


月が満ちては欠け、欠けてはまた満ちるように、魂も何度でも生まれ変わることができるかもしれないという「一理」を核に物語は進む。強すぎる思いを残して、思いがけず命を落とすことになった瑠璃は、何度でも生まれ変わってアキヒコと出会おうとする。そのたびに、そのときどきの周りの人たちを巻き込み、惑わせ、心の平静を失わせるのだが、そんなことに頓着しないところに、思いの強さが表れているとも言えるのかもしれない。現実問題、巻き込まれた人たちにとってはいい迷惑とも言えるのだが……。起きていること自体は、恐ろしくもあるのだが、ホラーテイストを感じさせない物語の運びになっていて、ラストの場面に向かってひたすら進んでいく印象である。瑠璃とアキヒコにとっては、めでたしめでたしだと言えよう。前世の記憶、というところに興味をひかれる一冊ではある。

ストレンジ・シチュエーション 行動心理捜査官・楯岡絵麻*佐藤青南

  • 2017/05/20(土) 16:49:56


相手のしぐさから真実を読み取る自供率100%の取調官、通称エンマ様のシリーズ最新刊!

本駒込署のトイレで宮出巡査が拳銃自殺をした。
一方、強盗殺人事件の現場に向かった絵麻と西野だったが、被害者夫婦の血痕がついた衣類が宮出の自宅から発見された。
宮出の単独犯として事件は解決したかに見えたが、宮出の同期・綿貫刑事は自殺を断固否定する。
絵麻は宮出の犯行方法のずさんさに違和感を覚え――。
ほか、女子大生失踪事件やアイドル殺害事件、大手企業の長女誘拐事件など、全4話を収録。シリーズ第5弾です。


楯岡絵麻・西野コンビは、もう不動のものになったと言っていいだろう。二人の掛け合いを見ているだけでも微苦笑が浮かんでくる。微笑ましいと言われれば、ご本人たちは心外かもしれないが、なかなかいいコンビネーションである。絵麻の、容疑者の心の動きを見極める目の確かさも相変わらず鋭く、言い当てられた時の容疑者の反応も、なるほどとうなずける。ただ、取調室での尋問の際の行動パターンはそう多くはなさそうなので、そろそろネタが尽きた感は否めない気もしてしまう。まだ続くとしたら、まったく別の状況での行動捜査を見てみたい。自分の無意識の行動について、改めて考えさせられるシリーズでもある。

みやこさわぎ*西條奈加

  • 2017/02/21(火) 13:18:52

みやこさわぎ (お蔦さんの神楽坂日記)
西條 奈加
東京創元社
売り上げランキング: 107,686

高校生になった滝本望は、いまも祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。芸者時代の名前からお蔦さんと呼ばれる祖母は、料理は孫に任せきりだしとても気が強いけれど、ご近所衆から頼られる人気者だ。そのお蔦さんが踊りの稽古をみている、若手芸妓・都姐さんが寿退職することになった。幸せな時期のはずなのに、「これ以上迷惑はかけられない」と都姐さんの表情は冴えなくて…(「みやこさわぎ」)。神楽坂で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する!粋と人情と、望が作る美味しい料理がたっぷり味わえるシリーズ第三弾。


神楽坂という独特の趣のある街の人たちの日々の暮らしが見えてくるのが愉しいシリーズである。そんな街の人たちの日常に何気なく紛れ込む謎に経験と想像力で、思いやりのある答えを導き出すのがお蔦さんなのである。高校生になった孫の望(のぞむ)の料理の腕もますます上がっているようで、登場する料理の数々も魅力的である。神楽坂の裏路地に迷い込んでみたくなるシリーズである。