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女神のサラダ*瀧羽麻子

  • 2021/03/19(金) 12:41:00


土の匂い、太陽の光、作物が繋ぐ人との絆。いいじゃない、農業。全国各地のさまざまな年代の農業に関わる女性を描いた八つの短編集。


お仕事ものがたり農業女子編。そして、それだけではない愛と慈しみにあふれた物語である。勘違いや思いこみ、偏見や無知。そんなあれこれに縛られて不自由だった自分が、人とコミュニケーションをとり、関わっていくことで、相手の思いと自分の思いを互いにやり取りできるようになっていく。ちょっとした誤解は、ほんとうにあちこちに転がっていて、放っておくかおかないかで、人生そのものの見え方までが変わってしまうこともある。殻を破れば道は開けるかもしれないと、勇気づけられる一冊でもある。

あきない世傳金と銀 九 淵泉篇*高田郁

  • 2021/02/02(火) 07:11:55


大坂から江戸に出店して四年目、まさにこれから、という矢先、呉服太物商の五鈴屋は、店主幸の妹、結により厳しい事態に追い込まれる。形彫師の機転によりその危機を脱したかと思いきや、今度は商いの存亡にかかわる最大の困難が待ち受けていた。だが、五鈴屋の主従は絶望の淵に突き落とされながらも、こんこんと湧き上がる泉のように知恵を絞り、新たなる夢を育んでいく。商道を究めることを縦糸に、折々の人間模様を緯糸に、織りなされていく江戸時代中期の商家の物語。話題沸騰の大人気シリーズ第九弾!!


どうしてこうも苦難に見舞われなくてはならないのだろう。五鈴屋は、今回もさまざまな苦境に立たされることになる。その最たるものは、幸の妹・結の行いであることは間違いないだろう。これでもかというほど、五鈴屋を追い詰めていくが、どこかで何か胸の内に秘めた企てがあるのではないかと、希望を探してしまうのも確かである。そうであってくれたらどれほどいいだろうか。とはいえ、幸も手をこまねいているだけではない。新しい商いのアイデアが形になりつつあり、明るい光も見えている。どうぞこのままうまくいきますように、と強く祈りたくなる一冊であり、さらに次が愉しみなシリーズである。

政略結婚*高殿円

  • 2020/12/03(木) 18:35:24


加賀藩主前田斉広の三女・勇は、加賀大聖寺藩主前田利之の次男・利極と結婚。やがて家を支える存在になる勇だが―(「てんさいの君」)。
加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。日本で初めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオン・ガールになった女性は、文明開化後をどう生きるのか―(「プリンセス・クタニ」)。
瀟洒豪壮な洋館に生まれ育った花音子の生活は、昭和恐慌によって激変。新宿のレビュー劇場に立つことになった花音子は一躍スターダムにのし上がるが―(「華族女優」)。
不思議な縁でつながる、三つの時代を生き抜いた女性たち。聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らをドラマチックに描き出した、壮大な大河ロマン!


江戸時代の加賀藩の姫君から始まり、明治大正、昭和と続く、系譜が、大きな流れとして大元にあり、そこにまつわる女性たちの生きざまが描かれている。時代ごとに常識や価値観も変化し、しあわせの形や、女たちの在りようも変わってくるが、彼女たちの芯にある強さは、時代が流れても変わらないという印象である。降りかかる運命に、打ちひしがれることなく、一歩でも前へ、と進んでいく姿は、置かれた状況が違っても、共通している。ストーリーは、タイトルから想像するのとはいささか異なってはいたが、どの時代の主人公も思わず応援したくなる物語である。それにしても、なんとも波乱万丈な一生を送られた女性たちだこと、と思わされる一冊ではある。

あなたのご希望の条件は*瀧羽麻子

  • 2020/11/16(月) 13:09:26


人生の選択肢はひとつじゃない。それぞれが選ぶ道とは―?千葉香澄は、転職エージェントに勤める四十歳のキャリアアドバイザー。「転職した先輩からすすめられて」「営業以外ならなんでも」「勤め先が倒産して」「あこがれの会社に再挑戦したい」…さまざまなきっかけで転職を考えている人々に相応しい求人を、ちょっぴり頭の固いAI「ソフィア」を活用しながら紹介するのが仕事だ。ときには悩みを打ち明けられたり、あらためて再考を促したりもする。十人十色の仕事観や人生模様にふれるうち、自分自身の仕事や人生も見つめ直すことに―。


転職エージェンシーにスポットを当てたお仕事小説。転職の相談に来る人たちの、それぞれの事情や転職を決めるまでのいきさつが興味深いのはもちろん、相談を受ける側の担当者・千葉香澄の抱える事情も興味深い。ただ、個人的には、別れた元夫のことが、禁忌になりすぎている印象は多少あって、本人も周りも、もう少しさっぱりした気分になってもいいのではないかという気はしなくもない。そこを於けば、香澄の自身の仕事に対するモチベーションや、転職希望者とかかわる中での葛藤など、魅力はたくさんあって、愉しい時間を過ごせる一冊だった。

我らが少女A*高村薫

  • 2020/03/24(火) 16:41:14


一人の少女がいた――
合田、痛恨の未解決事件

12年前、クリスマスの早朝。
東京郊外の野川公園で写生中の元中学美術教師が殺害された。
犯人はいまだ逮捕されず、当時の捜査責任者合田の胸に、後悔と未練がくすぶり続ける。
「俺は一体どこで、何を見落としたのか」
そこへ、思いも寄らない新証言が――
動き出す時間が世界の姿を変えていく人々の記憶の片々が織りなす物語の結晶


著者の作品はあまり読んだことがなく、合田シリーズも初読みである。だが、初めてにして、あっという間に惹きこまれてしまった。12年前の水彩画教師殺人事件の周りにいた人々の、そのころの在りようと、12年経って、年齢も立場もそれぞれ変わった現在になったからこそ、新たに思い出される当時のあれこれ。捜査中には目も止めなかった人々の動きの中にある真実。などなど何もかもが、本作の魅力のひとつでもある武蔵野の自然の描写の細やかさとともに、凍える冬の朝の川霧の向こうに隠され、もどかしい思いに駆られるしかないのである。どうやら事件の核心にいるようであり、さまざまな意味でだれからも注目されていたにもかかわらず、それから12年後に同棲相手に殺され、話すこともかなわなくなり、いつからか少女Aと呼ばれるようになった上田朱美の胸の裡こそが、最後までいちばんよくわからなくてもどかしい。起こったことそのものよりも、そこに行きつくまでの感情の動きに、どうしようもなく興味をそそられる一冊だった。

あきない世傳金と銀 七 碧流篇*高田郁

  • 2020/03/15(日) 16:35:46


大坂天満の呉服商「五鈴屋」の七代目店主となった幸は、亡夫との約束でもあった江戸に念願の店を出した。商いを確かなものにするために必要なのは、身近なものをよく観察し、小さな機会を逃さない「蟻の眼」。そして、大きな時代の流れを読み解き、商いに繋げる「鶚の目」。それを胸に刻み、懸命に知恵を絞る幸と奉公人たちだが―。ものの考え方も、着物に対する好みも大坂とはまるで異なる江戸で、果たして幸たちは「買うての幸い、売っての幸せ」を実現できるのか。待望のシリーズ第七弾!


もう七冊目になるのか、と感慨深い思いでいっぱいになるが、幸は相変わらず前に進み続け、したがって物語も進み続ける。次はどんな難題が降りかかり、どんな風に切り抜けていくのか、毎回胸躍らせて愉しんでいる。今回も、いままでにない企みに奔走し、「買うてのさいわい、売っての幸せ」を守り通して活路を見出す、幸と五鈴屋の面々の姿に胸打たれる。ラストでは、思いがけない人との思いがけないつながりも明らかになり、思わず涙を誘われた。さて次はどんなものを見せてくれるのか、愉しみなシリーズである。

虹にすわる*瀧羽麻子

  • 2019/12/14(土) 16:32:15


――職人気質の先輩と、芸術家肌の後輩。
性格も能力も正反対のアラサー男子が、“10年前の夢"を叶えることにした。――

椅子作りの才能があるのに、実家のじいちゃんと修理屋をしている徳井。
椅子への情熱を持て余し、大手工房を飛び出して、徳井のもとへやってきた魚住。
違うタイプのふたりが、学生時代の約束にしたがって、小さな工房を始める。
不器用なふたりは、友情でも恋でも仕事でもギクシャク……。
それでも、お互いの能力を誰よりも認め、お互いの存在を誰よりも求めていた。
正反対のふたりだから、かなえられるものがある! 夢を失いかけたふたりが、つまづきながらも、同じ未来に向かって歩き始める。


ここに辿り着くまでのいきさつに決着はついていないような、未消化な部分がないとは言えないが、この先に続く物語ではある。世間一般の常識に当てはまらない生き方をしてきた二人が、それぞれの夢をかなえようと、いままさに動き出したという感じである。これまでのことや、これからの人間関係も含めて、続編があるのかもしれないと思わせる一冊でもある。ぜひ続きを読んでみたい。

あきない世傳金と銀 六*高田郁

  • 2019/09/02(月) 19:11:32

あきない世傳 金と銀(六) 本流篇 (時代小説文庫)
髙田郁
角川春樹事務所 (2019-02-14)
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大坂天満の呉服商「五鈴屋」は、天災や大不況など度重なる危機を乗り越え、
江戸進出に向けて慎重に準備を進めていた。
その最中、六代目店主の智蔵が病に倒れてしまう。
女房の幸は、智蔵との約束を果たすべく立ち上がった。
「女名前禁止」の掟のもと、幸は如何にして五鈴屋の暖簾を守り抜くのか。
果たして、商習慣もひとの気質もまるで違う江戸で「買うての幸い、売っての幸せ」を根付かせたい、
との願いは叶えられるのか。新たな展開とともに商いの本流に迫る、大人気シリーズ待望の第六弾!


今回もまたまた試練の連続である。幸に安寧が訪れることはないのだろうか。とはいえ、壁が高ければ高いほど、五鈴屋や、その関係者たちの結束が固くなり、ひょんなところからアイディアが湧きだすのはいつものこと。このところは、それがより効率的になってきたようにも思われる。店内の誰もが、幸をご寮さんとして認め、敬っている証だろう。本作では、夫で六代目の智蔵が急な病に倒れて儚くなり、幸が女名前で中継ぎとしての七代目を継ぎ、江戸店を開店させるところまでの物語であり、前途洋々、華やかな雰囲気でラストを迎えたが、江戸でもそう順風満帆にはいかないことだろう。どんな試練が待っているのか、次も愉しみなシリーズである。

上流階級 冨久丸百貨店外商部Ⅱ*高殿円

  • 2019/08/30(金) 19:15:55

上流階級 富久丸百貨店外商部II
高殿 円
光文社
売り上げランキング: 160,272

仕事ができて何が悪い! 人気作家が描く、闘う女の人生エンターテインメント!
ひょんなことから芦屋の高級マンションをシェアして暮らす、富久丸百貨店外商員の鮫島静緒と桝家修平。バツイチ独女で仕事に燃える静緒とゲイでセレブな修平は、月のノルマ2000万円!?に奮闘しながら、今日もお客様に究極のサービスを売る!


今回もまたまた面白かった。百貨店の外商部という普段覗くことのない仕事の裏側を多少なりとも知ることができ、外商部員たちが関わる上流階級の暮らしぶりも、ちょっぴり垣間見られて、興味津々である。ただ、どんな階層、どんな職業にあっても、それなりの苦労はつきものなのだということもよく判る。だれもが、自分の置かれた場所で、精いっぱい頑張っているのだ。ある者は劣等感を、またある者は社会的に弱い立場を、そしてまた別のある者は恩義を、活力の源として。静緒と桝家の同居生活がこの先どうなっていくのか、葉鳥さんの影響力がどこまで及ぶのかも興味深いし、静緒が企画した特別催事の成否と、冨久丸百貨店の変化にも注目したい。次も愉しみにしたいシリーズである。

その日、朱音は空を飛んだ*武田綾乃

  • 2019/08/28(水) 10:40:21

その日、朱音は空を飛んだ
武田 綾乃
幻冬舎 (2018-11-22)
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学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。彼女の自殺の原因は―そもそも本当に自殺だったのか。ネットに流れる自殺現場の動画を撮ったのは誰?映っていたのは誰?いじめはあったのか、遺書はあったのか。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする、高校生たちの静かな怒り妬み欲望…。少女の死が浮き彫りにした、箱庭の中で生きる子供たちの本当の顔。ヒエラルキー、マウンティング、役割分担、キャラ設定…。青春小説界の新鋭が描き切った「わたしたちの」物語。


タイトルの朱音は、プロローグですでに屋上から飛んでしまう。その後は、章ごとに視点を変えて、クラスメイトたちが語り手になる。各章の冒頭には、事件の後に行われたアンケートが配されている。読み進めるごとに、少しずつ謎が解消され、最後に朱音が飛んだ本当の理由が明らかにされる物語だろうと思いながら読んだのだが、それだけではなく、語り手各人の胸の裡に隠し持ったものの手強さを知らされることにもなる。誰が悪いのか、誰が悪くないのかを突き止めることはまったくの無駄で、アンケートなどほぼ何の役にも立たないことがよくわかる。ひとことで総括でき、万人が納得できる理由などどこにもないのだろう。高校という狭い世界のなかだからこそ余計に凝縮された、人間の怖さが沁み出してくるようでもある。ちょっと人間が信じられなくなるような一冊でもある。それでも彼女たちは、ごく普通の大人になるのだろうな、と思うと、なおさら怖い。

マタタビ町は猫びより*田丸雅智

  • 2019/08/10(土) 18:31:51

マタタビ町は猫びより
田丸 雅智
辰巳出版
売り上げランキング: 84,306

1話5分で楽しく読める! ショートショート"猫"の不思議な世界15編。
謎の猫の案内に導かれて、「短い短い物語」の魅力がいっぱいにつまった夢の世界で遊んで楽しめる一冊です。


ネコ・猫・ねこのショートショートである。ちょっぴり近未来っぽくもあり、猫もさまざまであるが、人のそばにいるのは、いつでもどこでも変わらないようである。次はどんな猫が出てくるか、愉しみに読める一冊である。

上流階級 冨久丸百貨店外商部*高殿円

  • 2019/08/06(火) 18:50:55


芦屋にある老舗百貨店で働くアラフォーの鮫島静緒は高校卒のたたき上げ契約社員。仕事が認められ、晴れて正社員になったとたん、男性しかいない外商部に配属される。実はカリスマ外商員・葉鳥の退職を控え、後任者を探すべく、全店舗から選りすぐりのメンバーが集められたのだ。一筋縄ではいかない同僚たちとともに、数十万、数百万、数千万円の商品を売る外商の世界に戸惑いつつも、静緒はお客様のところに今日も足を運ぶ――。


静緒は脳内ではすっかり竹内結子である。なので、本作の描写とはいささか違うのだが、すでにそこに違和感はない。異色の経歴を持つたたき上げ外商部員である静緒が、外商のプロになれるのか、というお仕事ものがたりであり、成長物語でもあるのだが、生い立ちや経歴、そして性癖など、それぞれに並々ならぬものを抱える人たちとのつきあい方指南としてもおもしろい。上流階級の暮らしや、だからこその大変さもほんの少し垣間見られる気がするのも、興味を掻き立ててくれる。続編も愉しみなシリーズである。

オバペディア*田丸雅智

  • 2019/07/01(月) 18:49:44

オバペディア
オバペディア
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田丸 雅智
潮出版社 (2019-05-07)
売り上げランキング: 197,062

田丸雅智史上初の試みが実現!
読者から募ったアイデアを田丸雅智が小説化。1話5分で読める奇想天外のショートショート集。
予測不可能な結末の物語、全18篇!


読者からアイディアを募ったというだけあって、さまざまなテイストで飽きさせない。ちょっぴりブラックなものや、ほろりとさせられるもの、さらには近い未来に実現してしまうかもしれないと思えるものまで、色とりどりで、一話ずつはあっという間に読めてしまうので、気軽に愉しめる一冊である。

えびかに合戦 浮世奉行と三悪人*田中啓文

  • 2019/06/10(月) 13:09:03

えびかに合戦 浮世奉行と三悪人 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2018-12-18)
売り上げランキング: 100,415

横町奉行の仕事に追いまくられ、貧乏暮らしがつづく竹光屋雀丸に、とてつもない儲け話が転がり込んだ!? 一方、市中では蟹そっくりの老婆を探す怪しげな一団が現れ……(表題作)。駿河国で売り出し中の博徒、清水次郎長の刀が盗まれた。禍を招くという曰くつきの刀なのだが、流れ流れて大坂の町に辿り着き……(「犬雲・にゃん竜の巻」)。謎と笑いがてんこもりの全3話収録の痛快時代小説第4弾!


三悪人も、もはや悪人とは思えず、雀丸もすっかり横町奉行が板についたこの頃である。とはいえ、相も変わらず、竹光作りの注文よりも面倒ごとの方がよっぽど多いのも事実である。今回も、エビとカニとの取り違えにはじまり、曰く付きの名刀と清水の次郎長などの面々との複雑極まる一連の出来事で、頭も身体も休まる暇がない。しかも、何が何だかドタバタするうちに、しっかりとあっちにもこっちにもけりをつけてしまうところが雀丸の力量というものである。本人たちは至極まじめにやっているようだが、傍から見ているとどたばたコメディにしか見えないのが本作の醍醐味。次も大いに期待したいシリーズである。

漫才刑事(デカ)*田中啓文

  • 2019/04/23(火) 16:46:14

漫才刑事 (実業之日本社文庫)
田中 啓文
実業之日本社 (2016-10-06)
売り上げランキング: 500,107

昼は刑事、夜は漫才師。
事件はお笑いの現場で起きている! かつてない警察小説、誕生!

腰元(こしもと)興行所属の若手漫才コンビ「くるぶよ」のボケ担当・“くるくるのケン“。
彼が大阪府警難波署の刑事・高山一郎であることは相方の“ぶよぶよのブン“にも言えない秘密だ。
お笑い劇場で起こる数々の事件にも、刑事であることは伏せ事件解決に協力する。
しかしある日、同僚の交通課巡査・城崎ゆう子に正体がばれ…爆笑間違いなしの警察&芸人小説!


爆笑、というよりも、ついニヤニヤしてしまう、と言った方がいいかもしれない。昼は刑事、夜は漫才師というあり得ない二足の草鞋を履いた高山一郎が、芸人界の厄介事に巻き込まれつつ、現場で起きた事件の謎を解いて、芸人としてヒントを与えたり、お笑い界にも警察にもばれないように綱渡り的に奮闘する姿が、それだけで文句なく笑える。だが、それだけでなく、それぞれの仕事に、どちらも手を抜かずにきっちりと情熱をもって向かう高山の姿勢に感動すら覚えるのである。ニヤニヤ笑ってじんわり泣ける一冊でもある。