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我らが少女A*高村薫

  • 2020/03/24(火) 16:41:14


一人の少女がいた――
合田、痛恨の未解決事件

12年前、クリスマスの早朝。
東京郊外の野川公園で写生中の元中学美術教師が殺害された。
犯人はいまだ逮捕されず、当時の捜査責任者合田の胸に、後悔と未練がくすぶり続ける。
「俺は一体どこで、何を見落としたのか」
そこへ、思いも寄らない新証言が――
動き出す時間が世界の姿を変えていく人々の記憶の片々が織りなす物語の結晶


著者の作品はあまり読んだことがなく、合田シリーズも初読みである。だが、初めてにして、あっという間に惹きこまれてしまった。12年前の水彩画教師殺人事件の周りにいた人々の、そのころの在りようと、12年経って、年齢も立場もそれぞれ変わった現在になったからこそ、新たに思い出される当時のあれこれ。捜査中には目も止めなかった人々の動きの中にある真実。などなど何もかもが、本作の魅力のひとつでもある武蔵野の自然の描写の細やかさとともに、凍える冬の朝の川霧の向こうに隠され、もどかしい思いに駆られるしかないのである。どうやら事件の核心にいるようであり、さまざまな意味でだれからも注目されていたにもかかわらず、それから12年後に同棲相手に殺され、話すこともかなわなくなり、いつからか少女Aと呼ばれるようになった上田朱美の胸の裡こそが、最後までいちばんよくわからなくてもどかしい。起こったことそのものよりも、そこに行きつくまでの感情の動きに、どうしようもなく興味をそそられる一冊だった。

あきない世傳金と銀 七 碧流篇*高田郁

  • 2020/03/15(日) 16:35:46


大坂天満の呉服商「五鈴屋」の七代目店主となった幸は、亡夫との約束でもあった江戸に念願の店を出した。商いを確かなものにするために必要なのは、身近なものをよく観察し、小さな機会を逃さない「蟻の眼」。そして、大きな時代の流れを読み解き、商いに繋げる「鶚の目」。それを胸に刻み、懸命に知恵を絞る幸と奉公人たちだが―。ものの考え方も、着物に対する好みも大坂とはまるで異なる江戸で、果たして幸たちは「買うての幸い、売っての幸せ」を実現できるのか。待望のシリーズ第七弾!


もう七冊目になるのか、と感慨深い思いでいっぱいになるが、幸は相変わらず前に進み続け、したがって物語も進み続ける。次はどんな難題が降りかかり、どんな風に切り抜けていくのか、毎回胸躍らせて愉しんでいる。今回も、いままでにない企みに奔走し、「買うてのさいわい、売っての幸せ」を守り通して活路を見出す、幸と五鈴屋の面々の姿に胸打たれる。ラストでは、思いがけない人との思いがけないつながりも明らかになり、思わず涙を誘われた。さて次はどんなものを見せてくれるのか、愉しみなシリーズである。

虹にすわる*瀧羽麻子

  • 2019/12/14(土) 16:32:15


――職人気質の先輩と、芸術家肌の後輩。
性格も能力も正反対のアラサー男子が、“10年前の夢"を叶えることにした。――

椅子作りの才能があるのに、実家のじいちゃんと修理屋をしている徳井。
椅子への情熱を持て余し、大手工房を飛び出して、徳井のもとへやってきた魚住。
違うタイプのふたりが、学生時代の約束にしたがって、小さな工房を始める。
不器用なふたりは、友情でも恋でも仕事でもギクシャク……。
それでも、お互いの能力を誰よりも認め、お互いの存在を誰よりも求めていた。
正反対のふたりだから、かなえられるものがある! 夢を失いかけたふたりが、つまづきながらも、同じ未来に向かって歩き始める。


ここに辿り着くまでのいきさつに決着はついていないような、未消化な部分がないとは言えないが、この先に続く物語ではある。世間一般の常識に当てはまらない生き方をしてきた二人が、それぞれの夢をかなえようと、いままさに動き出したという感じである。これまでのことや、これからの人間関係も含めて、続編があるのかもしれないと思わせる一冊でもある。ぜひ続きを読んでみたい。

あきない世傳金と銀 六*高田郁

  • 2019/09/02(月) 19:11:32

あきない世傳 金と銀(六) 本流篇 (時代小説文庫)
髙田郁
角川春樹事務所 (2019-02-14)
売り上げランキング: 2,254

大坂天満の呉服商「五鈴屋」は、天災や大不況など度重なる危機を乗り越え、
江戸進出に向けて慎重に準備を進めていた。
その最中、六代目店主の智蔵が病に倒れてしまう。
女房の幸は、智蔵との約束を果たすべく立ち上がった。
「女名前禁止」の掟のもと、幸は如何にして五鈴屋の暖簾を守り抜くのか。
果たして、商習慣もひとの気質もまるで違う江戸で「買うての幸い、売っての幸せ」を根付かせたい、
との願いは叶えられるのか。新たな展開とともに商いの本流に迫る、大人気シリーズ待望の第六弾!


今回もまたまた試練の連続である。幸に安寧が訪れることはないのだろうか。とはいえ、壁が高ければ高いほど、五鈴屋や、その関係者たちの結束が固くなり、ひょんなところからアイディアが湧きだすのはいつものこと。このところは、それがより効率的になってきたようにも思われる。店内の誰もが、幸をご寮さんとして認め、敬っている証だろう。本作では、夫で六代目の智蔵が急な病に倒れて儚くなり、幸が女名前で中継ぎとしての七代目を継ぎ、江戸店を開店させるところまでの物語であり、前途洋々、華やかな雰囲気でラストを迎えたが、江戸でもそう順風満帆にはいかないことだろう。どんな試練が待っているのか、次も愉しみなシリーズである。

上流階級 冨久丸百貨店外商部Ⅱ*高殿円

  • 2019/08/30(金) 19:15:55

上流階級 富久丸百貨店外商部II
高殿 円
光文社
売り上げランキング: 160,272

仕事ができて何が悪い! 人気作家が描く、闘う女の人生エンターテインメント!
ひょんなことから芦屋の高級マンションをシェアして暮らす、富久丸百貨店外商員の鮫島静緒と桝家修平。バツイチ独女で仕事に燃える静緒とゲイでセレブな修平は、月のノルマ2000万円!?に奮闘しながら、今日もお客様に究極のサービスを売る!


今回もまたまた面白かった。百貨店の外商部という普段覗くことのない仕事の裏側を多少なりとも知ることができ、外商部員たちが関わる上流階級の暮らしぶりも、ちょっぴり垣間見られて、興味津々である。ただ、どんな階層、どんな職業にあっても、それなりの苦労はつきものなのだということもよく判る。だれもが、自分の置かれた場所で、精いっぱい頑張っているのだ。ある者は劣等感を、またある者は社会的に弱い立場を、そしてまた別のある者は恩義を、活力の源として。静緒と桝家の同居生活がこの先どうなっていくのか、葉鳥さんの影響力がどこまで及ぶのかも興味深いし、静緒が企画した特別催事の成否と、冨久丸百貨店の変化にも注目したい。次も愉しみにしたいシリーズである。

その日、朱音は空を飛んだ*武田綾乃

  • 2019/08/28(水) 10:40:21

その日、朱音は空を飛んだ
武田 綾乃
幻冬舎 (2018-11-22)
売り上げランキング: 81,129

学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。彼女の自殺の原因は―そもそも本当に自殺だったのか。ネットに流れる自殺現場の動画を撮ったのは誰?映っていたのは誰?いじめはあったのか、遺書はあったのか。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする、高校生たちの静かな怒り妬み欲望…。少女の死が浮き彫りにした、箱庭の中で生きる子供たちの本当の顔。ヒエラルキー、マウンティング、役割分担、キャラ設定…。青春小説界の新鋭が描き切った「わたしたちの」物語。


タイトルの朱音は、プロローグですでに屋上から飛んでしまう。その後は、章ごとに視点を変えて、クラスメイトたちが語り手になる。各章の冒頭には、事件の後に行われたアンケートが配されている。読み進めるごとに、少しずつ謎が解消され、最後に朱音が飛んだ本当の理由が明らかにされる物語だろうと思いながら読んだのだが、それだけではなく、語り手各人の胸の裡に隠し持ったものの手強さを知らされることにもなる。誰が悪いのか、誰が悪くないのかを突き止めることはまったくの無駄で、アンケートなどほぼ何の役にも立たないことがよくわかる。ひとことで総括でき、万人が納得できる理由などどこにもないのだろう。高校という狭い世界のなかだからこそ余計に凝縮された、人間の怖さが沁み出してくるようでもある。ちょっと人間が信じられなくなるような一冊でもある。それでも彼女たちは、ごく普通の大人になるのだろうな、と思うと、なおさら怖い。

マタタビ町は猫びより*田丸雅智

  • 2019/08/10(土) 18:31:51

マタタビ町は猫びより
田丸 雅智
辰巳出版
売り上げランキング: 84,306

1話5分で楽しく読める! ショートショート"猫"の不思議な世界15編。
謎の猫の案内に導かれて、「短い短い物語」の魅力がいっぱいにつまった夢の世界で遊んで楽しめる一冊です。


ネコ・猫・ねこのショートショートである。ちょっぴり近未来っぽくもあり、猫もさまざまであるが、人のそばにいるのは、いつでもどこでも変わらないようである。次はどんな猫が出てくるか、愉しみに読める一冊である。

上流階級 冨久丸百貨店外商部*高殿円

  • 2019/08/06(火) 18:50:55


芦屋にある老舗百貨店で働くアラフォーの鮫島静緒は高校卒のたたき上げ契約社員。仕事が認められ、晴れて正社員になったとたん、男性しかいない外商部に配属される。実はカリスマ外商員・葉鳥の退職を控え、後任者を探すべく、全店舗から選りすぐりのメンバーが集められたのだ。一筋縄ではいかない同僚たちとともに、数十万、数百万、数千万円の商品を売る外商の世界に戸惑いつつも、静緒はお客様のところに今日も足を運ぶ――。


静緒は脳内ではすっかり竹内結子である。なので、本作の描写とはいささか違うのだが、すでにそこに違和感はない。異色の経歴を持つたたき上げ外商部員である静緒が、外商のプロになれるのか、というお仕事ものがたりであり、成長物語でもあるのだが、生い立ちや経歴、そして性癖など、それぞれに並々ならぬものを抱える人たちとのつきあい方指南としてもおもしろい。上流階級の暮らしや、だからこその大変さもほんの少し垣間見られる気がするのも、興味を掻き立ててくれる。続編も愉しみなシリーズである。

オバペディア*田丸雅智

  • 2019/07/01(月) 18:49:44

オバペディア
オバペディア
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田丸 雅智
潮出版社 (2019-05-07)
売り上げランキング: 197,062

田丸雅智史上初の試みが実現!
読者から募ったアイデアを田丸雅智が小説化。1話5分で読める奇想天外のショートショート集。
予測不可能な結末の物語、全18篇!


読者からアイディアを募ったというだけあって、さまざまなテイストで飽きさせない。ちょっぴりブラックなものや、ほろりとさせられるもの、さらには近い未来に実現してしまうかもしれないと思えるものまで、色とりどりで、一話ずつはあっという間に読めてしまうので、気軽に愉しめる一冊である。

えびかに合戦 浮世奉行と三悪人*田中啓文

  • 2019/06/10(月) 13:09:03

えびかに合戦 浮世奉行と三悪人 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2018-12-18)
売り上げランキング: 100,415

横町奉行の仕事に追いまくられ、貧乏暮らしがつづく竹光屋雀丸に、とてつもない儲け話が転がり込んだ!? 一方、市中では蟹そっくりの老婆を探す怪しげな一団が現れ……(表題作)。駿河国で売り出し中の博徒、清水次郎長の刀が盗まれた。禍を招くという曰くつきの刀なのだが、流れ流れて大坂の町に辿り着き……(「犬雲・にゃん竜の巻」)。謎と笑いがてんこもりの全3話収録の痛快時代小説第4弾!


三悪人も、もはや悪人とは思えず、雀丸もすっかり横町奉行が板についたこの頃である。とはいえ、相も変わらず、竹光作りの注文よりも面倒ごとの方がよっぽど多いのも事実である。今回も、エビとカニとの取り違えにはじまり、曰く付きの名刀と清水の次郎長などの面々との複雑極まる一連の出来事で、頭も身体も休まる暇がない。しかも、何が何だかドタバタするうちに、しっかりとあっちにもこっちにもけりをつけてしまうところが雀丸の力量というものである。本人たちは至極まじめにやっているようだが、傍から見ているとどたばたコメディにしか見えないのが本作の醍醐味。次も大いに期待したいシリーズである。

漫才刑事(デカ)*田中啓文

  • 2019/04/23(火) 16:46:14

漫才刑事 (実業之日本社文庫)
田中 啓文
実業之日本社 (2016-10-06)
売り上げランキング: 500,107

昼は刑事、夜は漫才師。
事件はお笑いの現場で起きている! かつてない警察小説、誕生!

腰元(こしもと)興行所属の若手漫才コンビ「くるぶよ」のボケ担当・“くるくるのケン“。
彼が大阪府警難波署の刑事・高山一郎であることは相方の“ぶよぶよのブン“にも言えない秘密だ。
お笑い劇場で起こる数々の事件にも、刑事であることは伏せ事件解決に協力する。
しかしある日、同僚の交通課巡査・城崎ゆう子に正体がばれ…爆笑間違いなしの警察&芸人小説!


爆笑、というよりも、ついニヤニヤしてしまう、と言った方がいいかもしれない。昼は刑事、夜は漫才師というあり得ない二足の草鞋を履いた高山一郎が、芸人界の厄介事に巻き込まれつつ、現場で起きた事件の謎を解いて、芸人としてヒントを与えたり、お笑い界にも警察にもばれないように綱渡り的に奮闘する姿が、それだけで文句なく笑える。だが、それだけでなく、それぞれの仕事に、どちらも手を抜かずにきっちりと情熱をもって向かう高山の姿勢に感動すら覚えるのである。ニヤニヤ笑ってじんわり泣ける一冊でもある。

おとぎカンパニー*田丸雅智

  • 2019/04/20(土) 16:27:09

おとぎカンパニー
おとぎカンパニー
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田丸雅智
光文社
売り上げランキング: 128,134

新人OLが会社で見つけた不思議な鏡。こっそり訪れ、「鏡よ鏡、同期で一番仕事ができるのは、だぁれ?」と話しかけると……。
誰もが読んだことのあるグリム童話を、現代ショートショートの名手が、独自の視点で大胆アレンジ!
「赤ずきん」、「ヘンゼルとグレーテル」、「小人と靴屋」、「ジャックと豆の木」など、著者初の全編書下ろし14編!
1話5分であなたをユーモア溢れる夢の世界に誘う、珠玉のショートショート集!


まさに大胆アレンジではあるが、元の物語の姿は失われておらず、程よくブラックで愉しめる。大人向けの童話、といった趣の一冊である。

力士探偵 シャーロック山*田中啓文

  • 2019/03/31(日) 16:30:44

力士探偵シャーロック山 (実業之日本社文庫)
田中 啓文
実業之日本社 (2018-10-04)
売り上げランキング: 297,776

力士には向かない職業!?
角界に迷探偵現る!

銅煎部屋で唯一の三役力士・斜麓山(しゃろくやま)は
大のミステリー好きで稽古よりも本の続きが大事。
自分は相撲取りではなく探偵なのだと言いはり、
付け人の輪斗山(わとさん)は悩まされ通しだ。
しかし、彼らの周辺でなぜかシャーロック・ホームズの名作ばりの事件が続発。
はじめて本物の事件を解決しようと乗り出す斜麓山だが、思わず勇み足を!?
爆笑の本格ミステリー。

また相撲界激震!?
まわしを締めた名探偵ホームズ土俵入り?
得意技は猫だましとアリバイ崩し!?

【目次】
第一話 薄毛連盟
第二話 まだらのまわし
第三話 バスターミナル池の犬


あまりにもあり得ない設定過ぎて、かえって入り込みやすい。主人公の斜麓山は、相撲にまったく興味がないのになぜか力士になり、しかも稽古もあまりせずにミステリ小説ばかり読んでいるくせに、結構強いところがなんとも言えずうらやましい。とはいえ、これからはこれほど極端ではなくても、似たような力士が出てくるかもしれないなどと、思ってしまったりもする。親方と斜麓山の間でいちばん苦労させられる付け人の輪斗山には同情するが、この二人のコンビだからこそ面白くもあるのである。このコンビ、もっと見たいものである。文句なく愉しめる一冊だった。

花だより みをつくし料理帖特別巻*高田郁

  • 2019/03/01(金) 16:32:29

花だより みをつくし料理帖 特別巻
髙田郁
角川春樹事務所 (2018-09-02)
売り上げランキング: 1,800

澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。
店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。
澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。
あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋(しゅう)燕(えん)」。
澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。
シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!


どの物語も、人の心情の機微が、さりげないながらも濃やかに描かれていて、しばしば熱いものがこみ上げてきた。平穏無事とは言えないかもしれないが、これまでの波乱万丈さに比べれば、さまざまなことに目途が立ち、苦難があっても立ち向かっていけるだろうと、ある程度安心してみていられる気がする。なにより、人との縁を大切にして、日々を丁寧に暮らしていけば、ほかのことは何とでもなりそうである。本当にこれで最後かと思うと寂しくて仕方がないが、充分に愉しませていただいたシリーズである。

戒名探偵卒塔婆くん*高殿円

  • 2019/02/06(水) 13:29:01

戒名探偵 卒塔婆くん
戒名探偵 卒塔婆くん
posted with amazlet at 19.02.06
高殿 円
KADOKAWA (2018-11-02)
売り上げランキング: 13,119

「僕に解読できない戒名はない」前代未聞の戒名ミステリー!

のほほんと生きる金満寺の次男・春馬は
金に汚く横暴な住職代行の兄に寺の無理難題をふっかけられがち。
今日も今日とて、古い墓石の身元を探している。
手がかりは石に刻まれたたった数文字の戒名だけ!?
しかし、春馬には同じ高校に通う『戒名探偵』――外場(そとば)薫という切り札があった。
なぜか仏教に異様に詳しい彼は、この日も墓石の写真を見ただけで
すらすらと身元を言い当てるのだ。

有力檀家のルーツ探しに、仏教界びっくりドッキリイメージアップ大作戦!
謎が謎を呼ぶ、巨大コンテンツメーカー創始者の生前戒名を巡る骨肉の遺産争い……

知れば知るほど面白い仏教の世界の謎を、外場=卒塔婆くんが解き明かす!


麻布の寺の次男坊・金満春馬と戒名や仏教に異様に詳しい同級生の外場くんとの(ほとんど一方的な)掛け合いが面白い。元ヤンの兄で、金満時の住職代行の兄・哲彦に、頻繁に突きつけられるミッションの解決も興味深いが、外場くんの謎めいた実態も興味深い。そして、戦争から戦後にかけての生き方と人生の仕舞い方という大命題も重くなり過ぎずに描かれていて、胸に沁みる。友情なんてものにはてんで無関心に見える外場くんも、意外に居心地よさそうでほほえましい。このコンビにはもっと活躍してほしいと思わされる一冊である。