あきない世傳金と銀 四 貫流編*高田郁

  • 2018/01/25(木) 20:47:27

あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫)
高田郁
角川春樹事務所 (2017-08-09)
売り上げランキング: 3,383

江戸時代中期、長く続いた不況を脱し、景気にも明るい兆しが見え始めた。大坂天満の呉服商、五鈴屋でも、五代目店主の惣次とその女房幸が、力を合わせて順調に商いを広げていた。だが、徐々に幸の商才を疎むようになった惣次は、ある事件をきっかけに著しく誇りを傷つけられ、店主の地位を放り出して姿を消す。二度と戻らない、という惣次の決意を知ったお家さんの富久は、意外な決断を下す。果たしてその決断は五鈴屋を、そして幸を、どのような運命へと誘うのか。大人気シリーズ第四弾!


あとからあとから厄介事が持ち上がる五鈴屋であるが、今回は、惣次が失踪したり、お家さんが亡くなったりと、別れが多い。だが、三男・智蔵が戻って五鈴屋を継ぐことになり、幸の運命もまたまた大きく変わることになる。初めからこうなることになっていたのだとも思えるが、これまでのあれこれがなければ、こうなることもなかったのだろう。壁が立ちはだかる度に、妙案を思いつく幸であり、それがことごとく当たってきたが、最後の最後にまたしても難題が。ただ、今回の難題は、五鈴屋にとっていいことになりそうな予感もあるので、次作が愉しみである。長く続いてほしいシリーズである。

宇宙探偵ノーグレイ*田中啓文

  • 2017/12/30(土) 16:50:57

宇宙探偵ノーグレイ (河出文庫)
田中 啓文
河出書房新社
売り上げランキング: 52,618

怪獣惑星で発生した人気怪獣の密室殺人。罪を犯すことが不可能な天国惑星で起きた連続殺人。全住民が脚本どおりの生活をおくる演劇惑星で生じた劇中殺人…極秘に事件を解決するために招かれるは、宇宙探偵ノーグレイ!名探偵は五度死ぬ?奇想天外な結末が待つ、宇宙ミステリ作品集。


「怪獣惑星キンゴジ」 「天国惑星パライゾ」 「輪廻惑星テンショウ」 「芝居惑星エンゲッキ」 「猿の惑星チキュウ」

宇宙探偵ノーグレイは、のっぴきならない事情(たいていの場合は多額の借金)によって報酬に目がくらみ、宇宙で起きた事件を操作するために、さまざまな星へと出かけていく。そして、その都度、まあ何とか真相を突き止めはするのだが、生きて帰ることはできずに結末を迎えることになるのである。優秀なんだか間抜けなんだかよくわからない探偵ではある。毎度死んでいるのに、次の話しではまた何事もなかったかのように同じことを繰り返しているのは、最後の章のあれがヒントになっているのだろうか。地球だけでも充分にややこしいのに、宇宙規模でこれ以上ややこしくなるのは御免こうむりたいと思う一冊でもある。

芸能人 ショート・ショート・コレクション*田丸雅智

  • 2017/12/12(火) 16:49:06

芸能人ショートショート・コレクション
田丸 雅智
角川春樹事務所
売り上げランキング: 121,888

これはフィクション! ?ノンフィクション! ?
ショートショート作家・田丸雅智が出会った、
芸能人10名との摩訶不思議な10の物語!
テレビやラジオ、雑誌やネットなどでも大活躍の有名芸能人10名をモチーフに、
ショートショートの旗手・田丸雅智が描く、1話5分で読めちゃうストーリー! !


著者と交友のある芸能人を題材にした、虚実ないまぜの小さな物語が並んでいる。(たぶん)実際のエピソードから、なだらかに空想の世界に入り込むのが本書の醍醐味だが、個人的な好みを言わせてもらえば、現実なのか妄想なのか、もう少し悩ませてくれるようなエピソードが盛り込まれていると、もっとのめり込めたような気がする。もうひと工夫あってもいいかな、と思わされる一冊ではあった。

浮世奉行と三悪人*田中啓文

  • 2017/11/28(火) 16:34:24

浮世奉行と三悪人 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2017-05-19)
売り上げランキング: 172,407

武士を捨てて竹光作りを生業とする雀丸。ある日、三人の武士にボッコボコにされている老人を救い出す。庶民の揉めごとを裁く横町奉行だというこの老人は、あろうことか雀丸に跡を継いでくれと言い出した。危険な目に遭っても「三すくみ」という助っ人が馳せ参じるから大丈夫とも。ところが現れたのは悪徳商人に女ヤクザ、破戒僧という面々で―江戸期の大坂を舞台に描く、抱腹絶倒の時代小説。


江戸を舞台にした新しいシリーズのはじまりである。なんだかぼんやりしていて頼りなげな竹光職人の雀丸が、横町奉行の甲右衛門に見込まれて、後を継いでほしいと懇願される。まだ年若く、経験も貫禄もない雀丸は、何度も断るが、厄介事が持ち込まれるたびに、何やかんや言って雀丸に裁きを任せ、のっぴきならない状況に追い詰めていくのである。当の雀丸も、押しつけられた裁きをなんとかこなしてしまうものだから、どんどん逃げられなくなっていく。登場人物の個性と、持ち込まれる厄介事をどう解決するかという興味で、あとをひく一冊である。

ショートショート・BAR*田丸雅智

  • 2017/08/19(土) 18:50:49

ショートショート・BAR
田丸 雅智
光文社
売り上げランキング: 454,648

お洒落なBAR、ゴールドコースト、甲子園……巧みな舞台設定と絶妙なテンポが癖になる!

行きつけのBARで勧められた奇妙なお酒。アルコール度数マイナス14%……? 不思議なお酒の秘密とは?――「マイナ酒」 1話5分で非日常の世界に酔いしれる! 新世代ショートショートの旗手による、極上の傑作21編!


トニーさんというマスターの営むお洒落なBAR、ゴールドコースト、甲子園、という三つの舞台で繰り広げられる出来事の数々である。それぞれの場所の物語は、少しずつリンクし、続けて読むと何となく別の物語も見えてくるような雰囲気も漂わせていて、愉しめる。ブラックなものは少なく、ラストが明日につながるものが多かった印象もある。隙間時間でも愉しめる一冊である。

あきない世傳金と銀 三 奔流編*高田郁

  • 2017/07/14(金) 18:27:47

あきない世傳 金と銀〈3〉奔流篇 (時代小説文庫)
髙田 郁
角川春樹事務所 (2017-02-14)
売り上げランキング: 3,492

大坂天満の呉服商「五鈴屋」の女衆だった幸は、その聡明さを買われ、店主・四代目徳兵衛の後添いに迎えられるものの、夫を不慮の事故で失い、十七歳で寡婦となる。四代目の弟の惣次は「幸を娶ることを条件に、五代目を継ぐ」と宣言。果たして幸は如何なる決断を下し、どのように商いとかかわっていくのか。また、商い戦国時代とも評される困難な時代にあって、五鈴屋はどのような手立てで商いを広げていくのか。奔流に呑み込まれたかのような幸、そして五鈴屋の運命は?大好評シリーズ、待望の第三弾!


幸の身がどうなるのかと気を揉んだが、今作では、納まるところに納まり、いよいよこれから本領発揮、というところである。後添えとなった五代目徳兵衛の惣次は、商売に関してはやり手であることに間違いはないのだが、その本質がまだいまひとつ呑み込めずにいるのも確かである。幸の功を立ててくれればいいのだが、なかなかそう上手くはいきそうもない。五鈴屋のこれからが少し見えてきたように思えたのだが、その惣次のやりようで台無しにしかねない状況である。ここを、幸がどう切り抜けていくのか、この先が愉しみなシリーズである。

あきない世傳金と銀 二早瀬篇*高田郁

  • 2017/05/06(土) 18:42:11

あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)
高田 郁
角川春樹事務所 (2016-08-09)
売り上げランキング: 1,948

学者の娘として生まれ、今は大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公する主人公・幸。十四歳の幸に、店主徳兵衛の後添いに、との話が持ち上がった。店主は放蕩三昧で、五鈴屋は危機に瀕している。番頭の治兵衛は幸に逃げ道を教える一方で、「幸は運命に翻弄される弱い女子とは違う。どないな運命でも切り拓いて勝ち進んでいく女子だす」と伝える。果たして、「鍋の底を磨き続ける女衆」として生きるのか、それとも「五鈴屋のご寮さん」となるのか。あきない戦国時代とも呼べる厳しい時代に、幸はどのような道を選ぶのか。話題沸騰のシリーズ第二弾!


とんでもない放蕩者の四代目徳兵衛の後添えになった幸の巻である。なにくれと幸に目をかけてくれた番頭の治兵衛が卒中風で半身不随になり五鈴屋を去ったり、次男惣次の才覚で成功した一夜限りの誓文払いの店前現銀売りの売り上げを徳次郎が猫糞しようとしたり、その結果、使用人が何人も愛想をつかして暇乞いをしたため人手が足りなくて大忙しだったりと、ただならぬ事件も多い回である。そして、ラストは、こうなればいいのになぁと、なんとなく思っていた通りになり、いよいよわくわくするのである。続編を早く読みたい。幸のさらなる手腕が愉しみなシリーズである。

インスタント・ジャーニー*田丸雅智

  • 2017/03/25(土) 18:28:58

インスタント・ジャーニー
田丸雅智
実業之日本社
売り上げランキング: 31,783

たった五分で世界一周、読んだら旅に出たくなる。
パリに東京、ペルーに○○――物語は魂の旅。
電車で、車で、飛行機で……カバンに一冊入れておきたい!
ショートショート界の新鋭による傑作「トラベル」小品集。

ホーム列車/ペルーの土地売り/ポートピア/生地屋のオーロラ/理屈をこねる/
シャルトルの蝶/火の地/風の町/東京/Blue Blend/虚無感/
マトリョーシカな女たち/花屋敷/Star-fish/帰省瓶/竜宮の血統/砂寮/
セーヌの恋人


想像の斜め上をいく短い物語がたくさん並んでいて、気軽に読めるのに満足感は高い。クスリと笑ってしまったり、なるほどと感心させられたり、テイストもさまざまだし、世界のあちこちが舞台になっているので、それも愉しい。お得な一冊である。

あきない世傳金と銀―源流編*高田郁

  • 2017/03/23(木) 19:22:08

あきない世傳 金と銀 源流篇 (時代小説文庫)
髙田郁
角川春樹事務所 (2016-02-12)
売り上げランキング: 2,602

物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道か―大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!


主人公の幸が七歳のときから物語は始まる。幼いころから、読み書きに興味を持ち、なんとかして知恵をつけたいものだと思っていたのだが、飢饉による窮乏で大阪の呉服商・五鈴屋に奉公に出ることになるのである。学びたがり屋の幸が、慣れない商家で辛い思いをしながら成長していくという話なのかと思って読み進めたのだが、さにあらず。同じ女衆にいじめられるわけでもなく、幸の興味をさりげなく応援してくれる人もいたりして、あれこれ助けられながらしっかりやっている。ただ、商いも順風満帆とは言えないようだし、現当主の悪癖や、兄弟たちとのすれちがいもあったりと問題を抱えているのである。今篇では、五鈴屋崩壊の危機とも言える事態になり、五鈴屋の要石とも言われている番頭の治兵衛がどうやら妙案を思いついたところで終わっている。なるほどそういう道筋になるのか、とわくわくするようなラストである。続きが愉しみな一冊である。

涙香迷宮*竹本健治

  • 2017/03/16(木) 18:27:19

涙香迷宮
涙香迷宮
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竹本 健治
講談社
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明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!
いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。
そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。
日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。


囲碁の世界のことには全く疎いこともあり、序盤は、この先読み続けられるだろうかと危ぶんだが、中盤以降は、解かれていく謎への興味でページをめくる手が止まらなくなった。囲碁棋士・牧場智久が、たまたま遭遇した殺人事件と、黒岩涙香が残したいろは歌に込められた暗号の解読、さらに、大型台風で閉じ込められた涙香ゆかりの場で自身が命を狙われるという、緊張感が高まるシチュエーションが相まって、ドキドキハラハラさせられるが、いろは歌を解読が進むにつれて、殺人事件との関係も解き明かされてくるという仕掛けが絶妙である。数々並べられたいろは歌も見事で、それだけでも一冊の作品になりそうである。牧場智久の頭脳に感銘を受ける一冊である。

ディスリスペクトの迎撃*竹内真

  • 2016/07/11(月) 19:37:43

ディスリスペクトの迎撃 (創元推理文庫)
竹内 真
東京創元社
売り上げランキング: 567,326

銀座にある文壇バー『ミューズ』の常連客、大御所ミステリー作家のサンゴ先生こと辻堂珊瑚朗。彼は不思議な事件について鮮やかに推理する、名探偵でもあった! ライバル作家が持ち込んだ、チェスセットに仕掛けられた謎を解く「チェスセットの暗号」、サンゴ先生原作のドラマをめぐって起きた、奇想天外な“誘拐"の解決に乗り出す「ポー・トースターの誘拐」など、五つの事件を収録。『ミューズ』のボーイ・了の視点から、サンゴ先生の華麗な活躍を描く、安楽椅子探偵ミステリー第2弾。


サンゴ先生シリーズの二作目。登場人物のキャラクタや、人間関係が呑み込めているので、ストーリーがすんなり頭に入ってきた。毎度毎度のサンゴ先生と藤沢敬五先生のライバル心むき出しのやりとりは、苦笑を禁じ得ないながらも、実は互いを尊重し合っているのが見て取れ、しかも、要所要所でヒントを与え合ったりもしているので、微笑ましくも思えてくる。仕掛けられる謎も、熱烈なファンがきっかけだったり、批判的な読者がきっかけだったりと、バラエティに富んでいて飽きさせない。文壇バーという場所ならではの駆け引きもあって、次が愉しみなシリーズである。

ショートショート診療所*田丸雅智

  • 2016/06/01(水) 18:49:40

ショートショート診療所
田丸雅智
キノブックス
売り上げランキング: 346,629

不思議な医者、奇妙な病院、不可解な薬、珍奇な病名…。新世代ショートショートの旗手が、「医」のテーマパークへご案内。日常をほんの少し踏み外したら、そこはもう―たった5分で味わえる、非日常。


病気、診療所つながりのショートショートの数々である。耳からなら聞きなれていても、文字にすると摩訶不思議な病名や治療法になってしまう。よく効くが、最後の最後にひと捻りあり、ぞくっとさせられたり、ぎょっとさせられたりもする。さくっと読めるが、なかなか奥が深い一冊である。

お奉行様のフカ退治*田中啓文

  • 2016/05/09(月) 17:14:53

お奉行様のフカ退治 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2015-12-17)
売り上げランキング: 288,754

大坂の川に巨大なフカが現れた!折しも水練稽古の真っ最中だった西町奉行所の面々は大あわて。頼みの綱は人間離れの体格を誇る奉行の大邉久右衛門だが、実はまったくのカナヅチだったことがわかり―(表題作)。奸計もくろむ乾物問屋が仕組んだ料理対決。久右衛門の肝煎りで指名された料理人が、あっと驚く人物で―(「ニシンを磨け」)他、美味なる全3編を収録した食いだおれ時代小説第6弾。


今回も、お奉行様である大邉久右衛門は、よく呑みよく食べる。そして、久右衛門が食べるにふさわしい美味なるものがたくさん出てくるのでよだれが溢れそうになる。ことに、今回は、村越の母の作った鰊の昆布巻きが絶品である(食べていないが)。飲んだり食べたりしているだけのように見える久右衛門だが、結局はきちんと事件を解決してしまうのは今回もお見事である。人格者とは言い難いし、上司としては、部下は苦労が多いかもしれないが、人間的には情が深くて魅力的な久右衛門である。いつまでも続いてほしいシリーズである。

シチュエーションパズルの攻防*竹内真

  • 2016/05/06(金) 19:02:32


大学入学を機に、叔母がママを務める銀座の文壇バーでアルバイトをすることになった了。その店は、人気ミステリー作家・辻堂珊瑚朗先生ご贔屓の店だった。普段は店のホステスにちょっかいを出しながら、バーボンと葉巻を楽しむサンゴ先生だが、ひとたび不思議な謎に出合うと、鮮やかな推理をさりげなく披露する。ミステリー作家は本当に名探偵なのか?文壇バーで毎夜繰り広げられる推理ゲームと、サンゴ先生の名推理。気鋭の作家が初めて挑戦する、安楽椅子探偵ミステリー連作集。


ミステリ作家の辻堂珊瑚朗、通称サンゴ先生が、安楽椅子探偵よろしく日常の謎を解き明かす物語である。サンゴ先生のおかげで、すっかり文壇バーと化している叔母の店「ミューズ」でアルバイトすることになった了が目撃し、話を聴いた出来事を語る趣向である。ただ、謎そのものは興味深いのだが、サンゴ先生のキャラクタがありがちな印象なのが、いささか残念な気がしてしまう。もう少しバーにいるときとのギャップを見せてくれると、深みを感じられて好ましく思えるかもしれない、と勝手に思ったりもするのである。対して、叔母のミーコさんは、なにやら含むところが多そうで、魅力的である。気軽に愉しめる一冊とは言えそうである。

ホラベンチャー!*竹内真

  • 2016/04/18(月) 17:06:32

ホラベンチャー!
ホラベンチャー!
posted with amazlet at 16.04.18
竹内 真
双葉社
売り上げランキング: 506,055

開祖が吹いたホラ話で山を高くした褒美に、殿様から姓を賜ったという洞山家。その末裔である洞山真作は、30歳、現在無職。法事で帰省中に親戚たちに煽られ、ついベンチャー起業を宣言してしまう。でまかせだったのに「大言壮語は洞山の男の甲斐性」と、やんやの喝采を浴び、勢いのまま起業という荒波に漕ぎだすことに…。一族に語り継がれてきた数々の昔話を胸に、真作は幾多の困難に立ち向かっていくが―。戦国から平成まで縦横無尽なホラ話。痛快!エンターテイメント起業小説。


初めは、真作のダメダメ物語かと思ったが、どこまでがホラでどこからが真実かも判然としない洞山一族に伝わる先祖の逸話を織り込みながら、現在の真作のいい加減さやホラ話から、なんとなく前向きな話になり、実際に起業してしまう奮闘ぶりには思わず身を乗り出し、だがやはり、詰めの甘さの真作らしさに苦笑し、ホラ話ゆえの自由な発想に拍手しながら、真作が少しずつものになっていくのを眺めるのはとても愉しかった。きっとこれからも詰めの甘さで失敗することもあろうとおもうが、思わず応援したくなる一冊である。