あきない世傳金と銀 二早瀬篇*高田郁

  • 2017/05/06(土) 18:42:11

あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)
高田 郁
角川春樹事務所 (2016-08-09)
売り上げランキング: 1,948

学者の娘として生まれ、今は大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公する主人公・幸。十四歳の幸に、店主徳兵衛の後添いに、との話が持ち上がった。店主は放蕩三昧で、五鈴屋は危機に瀕している。番頭の治兵衛は幸に逃げ道を教える一方で、「幸は運命に翻弄される弱い女子とは違う。どないな運命でも切り拓いて勝ち進んでいく女子だす」と伝える。果たして、「鍋の底を磨き続ける女衆」として生きるのか、それとも「五鈴屋のご寮さん」となるのか。あきない戦国時代とも呼べる厳しい時代に、幸はどのような道を選ぶのか。話題沸騰のシリーズ第二弾!


とんでもない放蕩者の四代目徳兵衛の後添えになった幸の巻である。なにくれと幸に目をかけてくれた番頭の治兵衛が卒中風で半身不随になり五鈴屋を去ったり、次男惣次の才覚で成功した一夜限りの誓文払いの店前現銀売りの売り上げを徳次郎が猫糞しようとしたり、その結果、使用人が何人も愛想をつかして暇乞いをしたため人手が足りなくて大忙しだったりと、ただならぬ事件も多い回である。そして、ラストは、こうなればいいのになぁと、なんとなく思っていた通りになり、いよいよわくわくするのである。続編を早く読みたい。幸のさらなる手腕が愉しみなシリーズである。

インスタント・ジャーニー*田丸雅智

  • 2017/03/25(土) 18:28:58

インスタント・ジャーニー
田丸雅智
実業之日本社
売り上げランキング: 31,783

たった五分で世界一周、読んだら旅に出たくなる。
パリに東京、ペルーに○○――物語は魂の旅。
電車で、車で、飛行機で……カバンに一冊入れておきたい!
ショートショート界の新鋭による傑作「トラベル」小品集。

ホーム列車/ペルーの土地売り/ポートピア/生地屋のオーロラ/理屈をこねる/
シャルトルの蝶/火の地/風の町/東京/Blue Blend/虚無感/
マトリョーシカな女たち/花屋敷/Star-fish/帰省瓶/竜宮の血統/砂寮/
セーヌの恋人


想像の斜め上をいく短い物語がたくさん並んでいて、気軽に読めるのに満足感は高い。クスリと笑ってしまったり、なるほどと感心させられたり、テイストもさまざまだし、世界のあちこちが舞台になっているので、それも愉しい。お得な一冊である。

あきない世傳金と銀―源流編*高田郁

  • 2017/03/23(木) 19:22:08

あきない世傳 金と銀 源流篇 (時代小説文庫)
髙田郁
角川春樹事務所 (2016-02-12)
売り上げランキング: 2,602

物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道か―大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!


主人公の幸が七歳のときから物語は始まる。幼いころから、読み書きに興味を持ち、なんとかして知恵をつけたいものだと思っていたのだが、飢饉による窮乏で大阪の呉服商・五鈴屋に奉公に出ることになるのである。学びたがり屋の幸が、慣れない商家で辛い思いをしながら成長していくという話なのかと思って読み進めたのだが、さにあらず。同じ女衆にいじめられるわけでもなく、幸の興味をさりげなく応援してくれる人もいたりして、あれこれ助けられながらしっかりやっている。ただ、商いも順風満帆とは言えないようだし、現当主の悪癖や、兄弟たちとのすれちがいもあったりと問題を抱えているのである。今篇では、五鈴屋崩壊の危機とも言える事態になり、五鈴屋の要石とも言われている番頭の治兵衛がどうやら妙案を思いついたところで終わっている。なるほどそういう道筋になるのか、とわくわくするようなラストである。続きが愉しみな一冊である。

涙香迷宮*竹本健治

  • 2017/03/16(木) 18:27:19

涙香迷宮
涙香迷宮
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竹本 健治
講談社
売り上げランキング: 19,016

明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰!
いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。
そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。
日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。


囲碁の世界のことには全く疎いこともあり、序盤は、この先読み続けられるだろうかと危ぶんだが、中盤以降は、解かれていく謎への興味でページをめくる手が止まらなくなった。囲碁棋士・牧場智久が、たまたま遭遇した殺人事件と、黒岩涙香が残したいろは歌に込められた暗号の解読、さらに、大型台風で閉じ込められた涙香ゆかりの場で自身が命を狙われるという、緊張感が高まるシチュエーションが相まって、ドキドキハラハラさせられるが、いろは歌を解読が進むにつれて、殺人事件との関係も解き明かされてくるという仕掛けが絶妙である。数々並べられたいろは歌も見事で、それだけでも一冊の作品になりそうである。牧場智久の頭脳に感銘を受ける一冊である。

ディスリスペクトの迎撃*竹内真

  • 2016/07/11(月) 19:37:43

ディスリスペクトの迎撃 (創元推理文庫)
竹内 真
東京創元社
売り上げランキング: 567,326

銀座にある文壇バー『ミューズ』の常連客、大御所ミステリー作家のサンゴ先生こと辻堂珊瑚朗。彼は不思議な事件について鮮やかに推理する、名探偵でもあった! ライバル作家が持ち込んだ、チェスセットに仕掛けられた謎を解く「チェスセットの暗号」、サンゴ先生原作のドラマをめぐって起きた、奇想天外な“誘拐"の解決に乗り出す「ポー・トースターの誘拐」など、五つの事件を収録。『ミューズ』のボーイ・了の視点から、サンゴ先生の華麗な活躍を描く、安楽椅子探偵ミステリー第2弾。


サンゴ先生シリーズの二作目。登場人物のキャラクタや、人間関係が呑み込めているので、ストーリーがすんなり頭に入ってきた。毎度毎度のサンゴ先生と藤沢敬五先生のライバル心むき出しのやりとりは、苦笑を禁じ得ないながらも、実は互いを尊重し合っているのが見て取れ、しかも、要所要所でヒントを与え合ったりもしているので、微笑ましくも思えてくる。仕掛けられる謎も、熱烈なファンがきっかけだったり、批判的な読者がきっかけだったりと、バラエティに富んでいて飽きさせない。文壇バーという場所ならではの駆け引きもあって、次が愉しみなシリーズである。

ショートショート診療所*田丸雅智

  • 2016/06/01(水) 18:49:40

ショートショート診療所
田丸雅智
キノブックス
売り上げランキング: 346,629

不思議な医者、奇妙な病院、不可解な薬、珍奇な病名…。新世代ショートショートの旗手が、「医」のテーマパークへご案内。日常をほんの少し踏み外したら、そこはもう―たった5分で味わえる、非日常。


病気、診療所つながりのショートショートの数々である。耳からなら聞きなれていても、文字にすると摩訶不思議な病名や治療法になってしまう。よく効くが、最後の最後にひと捻りあり、ぞくっとさせられたり、ぎょっとさせられたりもする。さくっと読めるが、なかなか奥が深い一冊である。

お奉行様のフカ退治*田中啓文

  • 2016/05/09(月) 17:14:53

お奉行様のフカ退治 (集英社文庫)
田中 啓文
集英社 (2015-12-17)
売り上げランキング: 288,754

大坂の川に巨大なフカが現れた!折しも水練稽古の真っ最中だった西町奉行所の面々は大あわて。頼みの綱は人間離れの体格を誇る奉行の大邉久右衛門だが、実はまったくのカナヅチだったことがわかり―(表題作)。奸計もくろむ乾物問屋が仕組んだ料理対決。久右衛門の肝煎りで指名された料理人が、あっと驚く人物で―(「ニシンを磨け」)他、美味なる全3編を収録した食いだおれ時代小説第6弾。


今回も、お奉行様である大邉久右衛門は、よく呑みよく食べる。そして、久右衛門が食べるにふさわしい美味なるものがたくさん出てくるのでよだれが溢れそうになる。ことに、今回は、村越の母の作った鰊の昆布巻きが絶品である(食べていないが)。飲んだり食べたりしているだけのように見える久右衛門だが、結局はきちんと事件を解決してしまうのは今回もお見事である。人格者とは言い難いし、上司としては、部下は苦労が多いかもしれないが、人間的には情が深くて魅力的な久右衛門である。いつまでも続いてほしいシリーズである。

シチュエーションパズルの攻防*竹内真

  • 2016/05/06(金) 19:02:32


大学入学を機に、叔母がママを務める銀座の文壇バーでアルバイトをすることになった了。その店は、人気ミステリー作家・辻堂珊瑚朗先生ご贔屓の店だった。普段は店のホステスにちょっかいを出しながら、バーボンと葉巻を楽しむサンゴ先生だが、ひとたび不思議な謎に出合うと、鮮やかな推理をさりげなく披露する。ミステリー作家は本当に名探偵なのか?文壇バーで毎夜繰り広げられる推理ゲームと、サンゴ先生の名推理。気鋭の作家が初めて挑戦する、安楽椅子探偵ミステリー連作集。


ミステリ作家の辻堂珊瑚朗、通称サンゴ先生が、安楽椅子探偵よろしく日常の謎を解き明かす物語である。サンゴ先生のおかげで、すっかり文壇バーと化している叔母の店「ミューズ」でアルバイトすることになった了が目撃し、話を聴いた出来事を語る趣向である。ただ、謎そのものは興味深いのだが、サンゴ先生のキャラクタがありがちな印象なのが、いささか残念な気がしてしまう。もう少しバーにいるときとのギャップを見せてくれると、深みを感じられて好ましく思えるかもしれない、と勝手に思ったりもするのである。対して、叔母のミーコさんは、なにやら含むところが多そうで、魅力的である。気軽に愉しめる一冊とは言えそうである。

ホラベンチャー!*竹内真

  • 2016/04/18(月) 17:06:32

ホラベンチャー!
ホラベンチャー!
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竹内 真
双葉社
売り上げランキング: 506,055

開祖が吹いたホラ話で山を高くした褒美に、殿様から姓を賜ったという洞山家。その末裔である洞山真作は、30歳、現在無職。法事で帰省中に親戚たちに煽られ、ついベンチャー起業を宣言してしまう。でまかせだったのに「大言壮語は洞山の男の甲斐性」と、やんやの喝采を浴び、勢いのまま起業という荒波に漕ぎだすことに…。一族に語り継がれてきた数々の昔話を胸に、真作は幾多の困難に立ち向かっていくが―。戦国から平成まで縦横無尽なホラ話。痛快!エンターテイメント起業小説。


初めは、真作のダメダメ物語かと思ったが、どこまでがホラでどこからが真実かも判然としない洞山一族に伝わる先祖の逸話を織り込みながら、現在の真作のいい加減さやホラ話から、なんとなく前向きな話になり、実際に起業してしまう奮闘ぶりには思わず身を乗り出し、だがやはり、詰めの甘さの真作らしさに苦笑し、ホラ話ゆえの自由な発想に拍手しながら、真作が少しずつものになっていくのを眺めるのはとても愉しかった。きっとこれからも詰めの甘さで失敗することもあろうとおもうが、思わず応援したくなる一冊である。

日替わりオフィス*田丸雅智

  • 2016/03/25(金) 19:24:09

日替わりオフィス
日替わりオフィス
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田丸 雅智
幻冬舎
売り上げランキング: 401,588

「働くこと」をテーマにした、1話5分で読めるショートショートを18編集めた小説。
仕事が出来すぎる同僚の秘密が暴かれる「アイデア、売ります」、自分では生きていると思っているのに、周囲の人からは気付かれない「客観死」、モテすぎる女性社員たちがこぞって飲む「奉公酒」など、シリアスな仕事の状況や緊張感のある人間関係をくすっと笑える読後感が味わえます。


働くこと、とひと口に言っても、著者の手にかかると、とんでもないことになることもある。というか、ほぼとんでもないことになっている。だが、実際の社会から突拍子もなくかけ離れているかと言われると、そうでない部分も多々あったりするので、却って周りを見回して背筋がぞくっとしたりもするのである。いつの間にか少しずれた世界に取り込まれていきそうな一冊である。

甘いお菓子は食べません*田中兆子

  • 2016/03/18(金) 07:06:14

甘いお菓子は食べません
田中 兆子
新潮社
売り上げランキング: 45,727

欲望に蓋をして生きていくつもりだった。けれど――。第10回R-18文学賞大賞受賞作。アルコール依存から脱することのみを目的に生きる女。「きみとはもうセックスしたくない」と夫から宣言された女。母になるか否かを考え続ける女。もっと愛したい、もっともっと愛されたい、なのに――40代を漂う彼女たちが見つけた、すべて剥がれ落ちた果ての欲望の正体とは。女の危うさと哀しみを迫力の筆致であぶり出した、連作短編集。


「結婚について私たちが語ること、語らないこと」 「花車」 「母にならなくてもいい」 「残欠」 「熊沢亜里紗、公園でへらべったくなってみました」 「べしみ」

ここまで極端ではなくても、身近にあってもおかしくないようなシチュエーションではある物語たちである。リストラされたり親を亡くしたり、自分はこの先どうなっていくのだろうかと、ふと不安に駆られる年代が40代なのかもしれない。いくばくかの焦りと、諦め、そしてまだ尽きぬ欲望が、人生の第二段階に入ろうとする女たちを翻弄しているようである。好き嫌いは分かれるかもしれない。装丁が内容をよく表している一冊である。

死んでいない者*滝口悠生

  • 2016/03/14(月) 13:04:26

死んでいない者
死んでいない者
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滝口 悠生
文藝春秋
売り上げランキング: 2,591

秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。一人ひとりが死に思いをはせ、互いを思い、家族の記憶が広がっていく。生の断片が重なり合って永遠の時間が立ち上がる奇跡の一夜。第154回芥川賞受賞。


通夜に集まった家族や親せきの言動や胸の裡を描きながら、在りし日の個人像を浮かび上がらせていく物語かと思って読んだのだが、初めの内こそ、それらしい印象もあったが、次第に、どれが誰の子か孫かも判らなくうなりそうな、未成年の者たちの飲酒風景が多く描かれ、気分が悪くなった。興味深い題材だったので、もっと深く各自の心情を掘り下げて見せてくれたら、とても面白いものになったのではないかと、残念な思いではある。個人的には、いささか期待外れの一冊だった。

言い訳だらけの人生*平安寿子

  • 2016/01/20(水) 17:06:09

言い訳だらけの人生
言い訳だらけの人生
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平 安寿子
光文社
売り上げランキング: 162,291

五十にして天命を知る? 中学時代にあれに嵌まった男に贈るバイブル的小説!
五十歳を目前にした男三人。
家庭の危機、会社の不安、やり場のない不満。
あるじいさんの死から秘密の場所で遊んだ記憶を呼び起こした三人は、中学生時代に嵌まったアニメ・漫画から得た、ささやかな挟持を思い出すのだが……。


中学の同級生と、たまたまひと夏を一緒に過ごした近所の二つ年下の少年。五十歳を目前にして、あの夏のひとときの舞台を提供してくれた徳市じいさんの弔いをするために久しぶりに三人で集まることになるのである。それぞれ現在の境遇も家族構成も、家族のなかでの処遇も違う男たちだが、その昔、ガンダムにはまり、他愛のないことで大笑いし、転げまわって遊んだ日々は、忘れがたいものとして胸の中にあり続けているのである。男と女の行動原理の違いなども、面白おかしく描かれていて、家庭の円満には忍耐や駆け引きがどれほど大切かも教えてくれる。なんだかんだ言い訳をしたり愚痴ったりしても、胸のなかに宝物があれば、また一歩前へと進めるのだろう。厳しいながらほのぼのとさせてくれる一冊である。

夢巻*田丸雅智

  • 2015/10/27(火) 16:56:41

夢巻
夢巻
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田丸 雅智
出版芸術社
売り上げランキング: 200,365

星新一の流れを受け継ぐ新世代ショートショート作家の旗手、初の単行本!
田丸ワールド全開の、ちょっと不思議な20編。


日常から題材を取ったショートショートの数々である。日常のひとコマとは言え、視点や想像力、そして創造力によって、ほのぼのとしたり、ぞくっとしたりとテイストはさまざまなので、次が愉しみでどんどんページが進んでしまう。結構好みかもしれない一冊である。

イルカは笑う*田中啓文

  • 2015/10/18(日) 16:38:44

イルカは笑う (河出文庫)
田中 啓文
河出書房新社
売り上げランキング: 3,492

最後の地球人と地球の支配者イルカの邂逅「イルカは笑う」、倒産した日本国が遺した大いなる希望「ガラスの地球を救え!」、ゾンビ対料理人「屍者の定食」、失われた奇跡の歌声が響く「歌姫のくちびる」…感動・恐怖・笑い・脱力、ときに壮大、ときに身近な12の名短編。日本人よ、これが田中啓文だ!


表題作のほか、「ガラスの地球を救え」 「本能寺の大変」 「屍者の定食」 「血の汗流せ」 「みんな俺であれ」 「集団自殺と百二十億頭のイノシシ」 「あの言葉」 「悟りの化け物」 「まごころを君に」 「歌姫のくちびる」 「あるいはマンボウでいっぱいの海」

SF&ホラーテイストといういささか苦手なジャンルではあり、グロテスク極まりない描写には一瞬立ち止まらざるを得なかったが、それでも田中啓文ここにあり、という物語であふれている。近未来のものは特に、捻りが効いていて、背筋がぞっとするほどである。元ネタを知っていても知らなくても愉しめ怖がれる一冊である。