八月は冷たい城*恩田陸

  • 2017/03/14(火) 18:30:20

八月は冷たい城 (ミステリーランド)
恩田 陸 酒井 駒子
講談社
売り上げランキング: 72,533

夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也(たくや)、大柄でおっとりと話す耕介(こうすけ)、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。


「七月」は女子編、「八月」は男子編、といったところである。男子たちは夏の林間学校の意味をすでに知っていて、ひとりは一度経験もしている。だが、無条件に聞かされている理由を信じているわけではなく、裏に何かあるのでは、という疑問も抱いているのである。加えて、もちろん親の死に向き合うという一大事でもあるので、身構えてしまうのも無理はない。彼らは、この林間学校で、かけがえのないものを失いながらも、何かを悟り、ひとつ大人になったように思われる。それにしても酷な制度だと思わずにはいられない一冊である。

七月に流れる花*恩田陸

  • 2017/02/22(水) 16:30:45

七月に流れる花 (ミステリーランド)
恩田 陸 酒井 駒子
講談社
売り上げランキング: 18,798

坂道と石段と石垣が多い静かな街、夏流(かなし)に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思わず逃げ出したミチルだが、手元には、呼ばれた子どもは必ず行かなければならない、夏の城――夏流城(かなしろ)での林間学校への招待状が残されていた。ミチルは五人の少女とともに、濃い緑色のツタで覆われた古城で共同生活を開始する。城には三つの不思議なルールがあった。鐘が一度鳴ったら、食堂に集合すること。三度鳴ったら、お地蔵様にお参りすること。水路に花が流れたら色と数を報告すること。少女はなぜ城に招かれたのか。長く奇妙な「夏」が始まる。


ミチルが六月という半端な時期に転校してきた理由。転校して間もないのに六人という少ない人数の林間学校に招待された理由。なんとなく思わせぶりな参加者の少女たちの様子。そのすべてが明らかになったとき、深い悲しみと慈しみ、そして命の終わりということを前にした無力さが押し寄せてくる。謎めいた設定と、なにが起こるかワクワクドキドキする雰囲気が、とても著者らしい一冊である。

消滅*恩田陸

  • 2015/12/28(月) 17:03:45

消滅 - VANISHING POINT
消滅 - VANISHING POINT
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恩田 陸
中央公論新社
売り上げランキング: 68,412

202X年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。超巨大台風の接近のため離着陸は混乱、さらには通信障害が発生。そして入国審査で止められた11人(+1匹)が、「別室」に連行される。この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こす人物がいるというのだ。世間から孤絶した空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる!読売新聞好評連載小説、ついに単行本化。


523ページという大作である。だが、そんなことはまったく感じさせる暇もなく、ページを捲るのがもどかしいほど面白かった。新聞連載時は、もどかしい思いをした読者も多いのではないだろうか。物語の大半が、空港の、それも窓のない一室の様子であるにもかかわらず、想像はあちこちに飛んで行き、読者も一体となって、登場人物たちの背景に思いを馳せることになる。早い段階から、テロリストはあの人物だろうと想像はでき、あのアイテムが何か重要なカギになっているだろうことも察せられるのだが、このラストには驚かされた。実際に陰惨なテロが起こりはしないだろうと思ってはいたが、想像を見事に裏切られて、しかもなんと日本人らしい、と苦笑してしまうような行動が広まっていて、裏切られ方の見事さに舌を巻く思いである。どきどきの時間を愉しんだ一冊である。

ブラック・ベルベット*恩田陸

  • 2015/08/05(水) 17:12:53

ブラック・ベルベット
恩田 陸
双葉社
売り上げランキング: 61,255

東西文化の交差点・T共和国。この国で見つかった、全身に黒い苔の生えた死体。入国後に消息を絶った、気鋭の女性科学者。ふたつを結びつけるのは、想像の域を遙かに超えたある事実だった―


『MAZE』 『クレオパトラの夢』に続く、神原恵弥シリーズの三作目。今回の舞台はT共和国である(イスタンブールと都市名を出しているのに……)。独特の異国情緒あふれた舞台設定と、謎の死の病、そして友人に依頼された人探しとその当人の死。そして、かつての高校の同級生三人が顔を合わせるという偶然(?)まで。謎の要素が冒頭から矢継ぎ早に並べられ、どこへ連れていかれるのかいささか不安になる。誰が味方で誰が敵か、ほんとうの目的は何なのか。恵弥の夢見と現実が出会ったとき、するすると絡まりが解けて道筋が見えてくるのである。スリリングでありながら、どこか物憂い雰囲気も漂う一冊である。

EPITAPH東京*恩田陸

  • 2015/04/13(月) 16:46:54

EPITAPH東京EPITAPH東京
(2015/03/06)
恩田 陸

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東日本大震災を経て、東京五輪へ。少しずつ変貌していく「東京」―。その東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている“筆者”は、ある日、自らを吸血鬼だと名乗る謎の人物・吉屋と出会う。吉屋は、筆者に「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。将門の首塚、天皇陵…東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作「エピタフ東京」。吉屋の視点から語られる「drawing」。三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは―。これは、ファンタジーか?ドキュメンタリーか?「過去」「現在」「未来」…一体、いつの物語なのか。ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!!


ジャンル分けが難しい作品である。エッセイかと思えばドキュメンタリーでもあり、ファンタジーでもありながら戯曲でもある。「筆者」を主語にしたエッセイ風の部分は、実際に著者の日常ではないかと思ってしまうほどエッセイのようである。だがその中に、知らず知らずのうちに何百年にもわたって別の躰にやどり続けているという吸血鬼・吉屋の語りにのめり込み、かと思うといつのまにか、とあるマンションの一室に集まって宅配弁当を作りながら仕事を請け負う女たちの物語に惹きこまれている。それはあたかも夢の中で、次々と場面が切り替わるのになぜか辻褄が合ってしまう不思議さのような感覚である。そしてまた、東日本が大きく揺れたあの日に、別のなにかも人知れずほんのわずかずれ、その世界をさまよっているのかもしれないという心地にさせられる一冊でもある。

私と踊って*恩田陸

  • 2013/01/15(火) 07:44:29

私と踊って私と踊って
(2012/12/21)
恩田 陸

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この世の終わりに踊る時も、きっと私を見ていてね。ダンサーの幸福は、踊れること。ダンサーの不幸は、いつか踊れなくなること――稀代の舞踏家ピナ・バウシュをモチーフに、舞台を見る者と見られる者の抜き差しならない関係をロマンティックに描いた表題作をはじめ、ミステリからSF、ショートショート、ホラーまで、物語に愛された作家の脳内を映しだす全十九編の万華鏡。


表題作のほか、「心変わり」 「骰子の七の目」 「忠告」 「弁明」 「少女界曼荼羅」 「協力」 「思い違い」 「台北小夜曲」 「理由」 「死者の季節」 「火星の運河」 「劇場を出て」 「二人でお茶を」 「聖なる氾濫」 「海の泡より生まれて」 「茜さす」 あとがき 「東京の日記」 「交信--表紙」

ホラーは苦手だけれど、こうしてさまざまなテイストの恩田さんのなかにあると、自然に受け入れられるから不思議である。上に記した目次からも察せられると思うが、構成にも遊び心があって、ちょっと愉しい。私事ではあるが、ちょうど体調を崩していたので、短くぎゅっと詰まったこの本は、手軽に著者を愉しめる一冊なのもベストタイミングだった。

夢違*恩田陸

  • 2012/01/11(水) 18:33:48

夢違夢違
(2011/11/11)
恩田 陸

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夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは―。人は何処まで“視る”ことができるのか?物語の地平を変える、恩田陸の新境地。


正夢、悪夢、予知夢、などなど、夢にもさまざまあり、いい夢を見た日はいいことがあるような気がするし、悪夢にうなされて目覚めた朝は不吉な思いに囚われることもある。とらえどころがないからこその夢、という気もするが、本作の世界では夢は可視化でき、医療現場で利用されているのである。そんな世界で起こった子どもたちの集団パニックや神隠し。予知夢を見る女・結衣子が見ていた夢やその死と関係があるのか、いまになってあちこちで目撃情報があるのは彼女になにか伝えたいことがあるのか。夢のようになかなか全貌を現さない真相に興味をそそられ、結衣子や子どもたちの夢と自分の夢が交錯しているような浩章の身に寄り添いながら読み進めるうちに、自分も夢と現の狭間でゆらゆらしているような心地にさせられる。曖昧なものを鮮明にすることについて考えずにはいられない一冊である。

隅の風景*恩田陸

  • 2011/09/03(土) 16:52:25

隅の風景隅の風景
(2011/05)
恩田 陸

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プラハで飲む黄金のビール、高所恐怖症の韓国登山、スモッグの向こうに霞む北京の太陽。出会えるかもしれない物語のかけらを求めて、今日も作家は旅に出る。身体の隅に今も残る旅のイメージをくっきりと映し出す紀行集。


飛行機嫌いの著者が勇を鼓して出かけた海外の国々、そしてもちろん日本のあちこちで、求めて触れたもの、あるいは偶然の出会いによって結びつけられたさまざまな場所や物や事々が語られていて興味深い。不思議な物事に触れるたびに「、この題材でだれかミステリを書いてくれないかしら」とおっしゃるが、そのたびに胸の中で「恩田さん書いてください」と思いながら読んだ。これらの旅のなにかしらがいつの日にか新しい物語のどこかに練りこまれることになるのかもしれないと思うと、心なしかわくわくしてくるのである。しかしよく飲むなぁ、とも思う一冊である。

私の家では何も起こらない*恩田陸

  • 2010/02/25(木) 07:09:25

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)私の家では何も起こらない (幽BOOKS)
(2010/01/06)
恩田 陸

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この家、あたししかいないのに、人がいっぱいいるような気がする・・・・・・
ようこそ、丘の上の幽霊屋敷へ。恩田陸が描く、美しく不穏なゴーストストーリー。
小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。この家は、時がゆっくり流れている。幽霊屋敷と噂されるその家にすむ女流作家は居心地のよいこの家を愛している。
血の海となった台所、床下の収納庫のマリネにされた子どもたち・・・・・・いったいこの家にはどんな記憶が潜んでいるのだろう。幽霊屋敷に魅了された人々の美しくて優雅なゴーストストーリー。恩田陸が描く幽霊屋敷の物語。ラストには驚愕の書き下ろし短編が!


表題作のほか、「私は風の音に耳を澄ます」 「我々は失敗しつつある」 「あたしたちは互いの影を踏む」 「僕の可愛いお気に入り」 「奴らは夜に這ってくる」 「素敵なあなた」 「俺と彼らと彼女たち」 「私の家へようこそ」という連作物語。そして 「付記・われらの時代」

「私」――それが誰であるにしろ――しかいない家のはずなのに、蓮作それぞれにつけられたタイトルの人の多さはどうしたことだろう。そこからしてまず不穏である。物語はとても静かに穏やかに流れていく。語り口調も、激することなどこれっぽっちもなく、極めて落ち着いて淡々としている。それなのにこの身震いするような気配。時間を遡り、進み、気配のわけが解き明かされるが、それは何の解決でもない。積もり積もった人々の気配。その内語られているのがいつなのか、語るのが誰なのかさえあやふやになってくる。これからも必ず同じことがここで繰り返され続けるだろうという、ぞくりとするような予感だけが残る。不穏で不安で、しかしどこかうつくしい一冊である。

訪問者*恩田陸

  • 2009/10/15(木) 17:18:55

訪問者訪問者
(2009/05/14)
恩田 陸

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山中にひっそりとたたずむ古い洋館――。三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、朝霞家の一族が集まっていた。千沙子に育てられた映画監督峠昌彦が急死したためであった。晩餐の席で昌彦の遺言が公開される。「父親が名乗り出たら、著作権継承者とする」孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいる? 一同に疑惑が芽生える中、闇を切り裂く悲鳴が! 冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。数日前、館には「訪問者に気を付けろ」という不気味な警告文が届いていた……。果たして「訪問者」とは誰か? 千沙子と昌彦の死の謎とは? そして、長く不安な一夜が始まるが、その時、来客を告げるベルが鳴った――。嵐に閉ざされた山荘を舞台に、至高のストーリー・テラーが贈る傑作ミステリー!


ホラーの要素もファンタジーの要素もまったくない、ミステリ作品である。舞台は、山奥の閉ざされた山荘、不審な死を遂げた関係者、その死の真実をつまびらかにしようとする探偵役。これだけで本格の匂いがぷんぷんである。だが、著者はそれだけでは終わらせなかった。
物語はほとんど予想通りに進んでいくのだが、要所要所で僅かずつひねられていき、どんどん捻れてくるのである。そしてラスト近くで、捻れが元に戻ったと思わせて、また一気にひねりを加えられるような心地である。
次へ次へと興味が尽きず、ページをめくる手が止められなかった。

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ブラザー・サン シスター・ムーン*恩田陸

  • 2009/03/20(金) 17:03:09

ブラザー・サン シスター・ムーンブラザー・サン シスター・ムーン
(2009/01/23)
恩田 陸

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ねえ、覚えてる? 空から蛇が落ちてきたあの夏の日のことを――
本と映画と音楽……それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。
『夜のピクニック』から4年、恩田陸が贈る、青春小説の新たなスタンダードナンバー誕生!


高校のとき不思議な授業があった。クラスバラバラの三人組である町に放り出され、その住人にインタビューしてレポートを書くというものだった。韮崎綾音と戸崎衛と箱崎一の三人が行った町には誰もいなかった。それが彼らの出会いだった。
韮崎綾音が語る「第一部 あいつと私」 戸崎衛が語る「第二部 青い花」 箱崎一が語る「第三部 陽のあたる場所」からなる一冊である。
期せずして同じ大学に進んだ彼らは、学生時代、いつも三人でつるんでいたわけではなく、それぞれのときを過ごしていた。そして、卒業しそれぞれに職を得て大人になったいま、そんな学生時代を思い返し、現在の自分の萌芽を見つめなおしているようにも思われる。淡々とした語りながら、学生時代特有の、そして彼らにとっても有意義なきらめきが窺われて好ましい。
物語に行き着く場所はないのだが、それもこれもが心地好い一冊だった。

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きのうの世界*恩田陸

  • 2009/03/06(金) 13:39:46

きのうの世界きのうの世界
(2008/09/04)
恩田 陸

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失踪した男は遠く離れた場所で殺されていた 塔と水路の町にある「水無月橋」。霜の降りるような寒い朝、殺人事件が起こる。バス停に捨てられていた地図に残された赤い矢印は……? 恩田陸待望の新刊。


冒頭から惹きこまれる。「あなた」とは誰なのか?そこはどこなのか?なぜその場所なのか?・・・・・、知りたいことが数珠繋ぎのように現れ、読者に先を急がせる。知りたい、すべてを解き明かしたい、という欲求に追い立てられるように読み進むのだが、物語は行きつ戻りつしながら、ほんの少しずつしか核心に迫らないように思われる。このもどかしさも堪らない。
だが途中から、漠然と想い描いている結末とは別の道筋を進むような違和感に包まれ、次第にそれが確信に変わる。自分の想像力の乏しさゆえなのか、著者の逞しすぎる創作力ゆえなのか。著者らしいといえば、これ以上なく著者らしい結末でもある。謎の死に至る事情、という点に関して言えば、知りたい欲求は満たされた。478ページという大作なのだが、ページを繰るのは速かった。

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不連続の世界*恩田陸

  • 2008/11/24(月) 20:27:39

不連続の世界不連続の世界
(2008/07)
恩田 陸

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音楽ディレクター塚崎多聞のフランス人の妻ジャンヌが突然、里帰りし、そのまま音信不通になって、そろそろ1年になろうとしていた…。「月の裏側」の塚崎多聞、再登場。詩情と旅情あふれる、恩田陸版「怖い話」。


「木守り男」 「悪魔を憐れむ歌」 「幻影キネマ」 「砂丘ピクニック」 「夜明けのガスパール」

私の初読み恩田作品で、ちょっと苦手だった『月の裏側』で魅力的だった多聞さんが主人公の短編集である。やはり魅力的な多聞さんである。誰にでも開かれているのに、深いところでは閉じていて手の内を見せない、いささかとらえどころのないような魅力である。そんな彼が、見聞きする不思議でちょっと怖い話に筋道を与える物語たち。
と思っていたら、最後の話で裏表がひっくり返されたような心地である。いままで見えていたものが、裏返ってまったく違った景色のもとに放り出されたような心許なさである。そうだったのか・・・。

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いのちのパレード*恩田陸

  • 2008/05/12(月) 14:04:32

いのちのパレードいのちのパレード
(2007/12/14)
恩田 陸

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<あの黒い表紙、強烈な帯コピー、シンプルかつ洗練されたデザイン。手に取った時の、嬉しいような怖いようなおののきを今でも覚えている。(中略)かつて「幻想と怪奇」というジャンルのくくりでお馴染みであった、奇妙でイマジネーション豊かな短編群には、今なお影響を受け続けている。あの異色作家短篇集のような無国籍で不思議な短編集を作りたい、という思いつきから連載をさせてもらった>(あとがきより)。

恩田ワールドの原点<異色作家短編集>への熱きオマージュ。ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。


表題作のほか、「観光旅行」 「スペインの苔」 「蝶遣いと春、そして夏」 「橋」 「蛇と虹」 「夕飯は七時」 「隙間」 「当籖者」 「かたつむり注意報」 「あなたの善良なる教え子より」 「エンドマークまでご一緒に」 「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」 「SUGOROKU」 「夜想曲」

風味は違うが、それぞれに一風変わった底知れない不気味さを秘めた著者らしい物語たちである。
自分たちが生きているいまこの世界の常識を当てはめて結論を出すことのできない理不尽さやもどかしさがどの物語にも満ちていて、ときに背筋を冷たいものが這い上がってくるような心地にさせられ、またときにはその世界から帰って来たくないような夢心地――かすかな不安は常につきまとうが――を味わわせてくれる。
癖になりそうな一冊である。

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猫と針*恩田陸

  • 2008/05/07(水) 17:16:21

猫と針猫と針
(2008/02)
恩田 陸

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人はその場にいない人の話をする――。友人の葬式の帰り、久々に学生時代の仲間が集まった。一見なごやかな宴だが、やがて漂う不穏な空気。この集まりの本当の意図とは? 閉鎖空間で展開する心理サスペンス会話劇。戯曲執筆の舞台裏を赤裸々に綴る書き下ろしエッセイ「『猫と針』日記」も収録。遂にベールを脱ぐ、恩田陸〈初戯曲〉。


初戯曲とはいえ、きっちりと恩田色が出ていることにまず感心させられる。もやもやとした不穏さが、それだけで場に興味を惹きつける。舞台は拝見していないが、おそらく終始静かに流れていくのだろう。それでいてずきりと胸に刺さるものを登場人物たちに残し、割り切れない何物かを抱えて幕を下ろすのである。どこからが企みなのか、どこまでが真情なのか。葬式帰りの喪服の集団という設定が効果をいや増している。

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