おまじない*西加奈子

  • 2018/05/06(日) 07:22:04

おまじない (単行本)
おまじない (単行本)
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西 加奈子
筑摩書房
売り上げランキング: 1,303

大人になって、大丈夫なふりをしていても、
ちゃんと自分の人生のページをめくったら、傷ついてきたことはたくさんある――。
それでも、誰かの何気ないひとことで、世界は救われる。
悩んだり傷ついたり、生きづらさを抱えながらも生きていくすべての人の背中をそっと押す、キラメキの8編。

「あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますように」――西加奈子


「燃やす」 「孫係」 「いちご」 「あねご」 「オーロラ」 「マタニティ」 「ドブロブニク」 「ドラゴン・スープレックス」

さまざまな年代の女性が主人公の物語である。すべて違う人物ではあるのだが、多かれ少なかれ、誰でもに心当たりがあるような悩みを抱えているという点では、普遍的なものであるともいえると思う。人生のさまざまな段階で、女性が感じる生きにくさのようなものが凝縮されて描かれている印象なので、読者もどこかしらに自らを寄せて読めるのではないだろうか。そして、読む人それぞれ、どこかに生きていく上でのヒントが隠されている一冊なのではないかとも思う。

二年半待て*新津きよみ

  • 2018/01/27(土) 18:26:59

二年半待て (徳間文庫)
徳間書店 (2017-08-03)
売り上げランキング: 15,698

婚姻届を出すのは待ってほしい──彼が結婚を決断しない理由は、思いもよらぬものだった(「二年半待て」)。このお味噌汁、変な味。忘れ物も多いし……まさか。手遅れになる前に私がなんとかしないと(「ダブルケア」)。死の目前、なぜか旧姓に戻していた祖母。“エンディングノート”からあぶりだされる驚きの真実とは(「お片づけ」)。人生の分かれ道を舞台にした、大人のどんでん返しミステリー。


就活・婚活・恋活・妊活・保活・離活・終活という、昨今よく使われる言葉にまつわるあれこれである。どの物語にも、なにがしかの裏の事情があり、すんなりハッピーな気持ちで読み終えられるものはほとんどない。そしてそれこそが魅力でもあるのである。胸の奥底がぞわりとする一冊だった。

i *西加奈子 

  • 2017/02/28(火) 18:35:33

i(アイ)
i(アイ)
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西 加奈子
ポプラ社
売り上げランキング: 1,459

「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!


シリアで生まれ、アメリカ人の父と日本人の母の養子となったアイ。両親は惜しみなく愛してくれ、何不自由なく育てられてしあわせだったのだが、幼いころから、何かの被害に遭った人を見るたび、「なぜ自分ではなかったのか」と自問自答し、申し訳ないような思いにとらわれていた。誰かを不幸にしてしあわせになっている自分が、こんなにしあわせで申し訳ない、という屈折した思いは、高校の数学教師の「この世界にアイは存在しません」というひと言――教師の言った「アイ」とは、虚数のことだったのだが――で、さらに深く胸に入り込む。人と違う容姿をしていること、人と違う家庭環境にあること、意識的無意識的にかかわらず異分子として見られること、さまざまなことを考えすぎてしまうアイにとって、この世界は生きづらいことこの上ないのだった。だが、高校で出会ったミナと心を通わせるうちに、少しずつ他者を通して自らの内面を客観的に眺められるようにもなり、大学院生時代に知り合ったユウと恋愛すると、自分の異質さなど意識せずに夢中になれることがあることにも気づく。アイの悩みも喜びも、実は周りの親しい人たちが、いつも大きく見守ってくれているのである。ほんとうのところでアイのことを理解することはできないが、少しでも安らかな気持ちで健やかに生きていかれるように祈らずにはいられなくなる一冊である。

なくし物をお探しの方は二番線へ*二宮敦人

  • 2016/09/17(土) 07:34:39

なくし物をお探しの方は二番線へ 鉄道員・夏目壮太の奮闘 (幻冬舎文庫)
二宮 敦人
幻冬舎 (2016-08-05)
売り上げランキング: 84,982

蛍川鉄道の藤乃沢駅で働く若手駅員・夏目壮太は〝駅の名探偵〟。ある晩、終電を見送った壮太のもとに、ホームレスのヒゲヨシが駆け込んできた。深夜密かに駅で交流していた電車運転士の自殺を止めてくれというのだが、その運転士を知る駅員は一人もいない――。小さな駅を舞台に、知らぬ者同士が出会い、心がつながる。あったか鉄道員ミステリ。


夏目壮太のシリーズ二作目。駅員さんの日常がうかがえ、その仕事の大変さがよく判る。そんな、秒単位で動く忙しさの中でも駅にはさまざまな困りごとが持ち込まれる。柔軟な目のつけどころで謎を解きほぐすのが、藤乃沢駅の駅員・夏目壮太である。乗降客や近隣の人たち、フランスからのお客様まで巻き込んで、今回も日々走り回り考え続ける壮太なのである。シリアスな事件も描かれているのだが、いつもほのぼのとさせられるのは、壮太を始めとする登場人物たちの人柄だろう。次はどんな謎が持ち込まれるのか愉しみなシリーズである。

一番線に謎が到着します*二宮敦人

  • 2016/08/30(火) 18:30:11


郊外を走る蛍川鉄道の藤乃沢駅。若き鉄道員・夏目壮太の日常は、重大な忘れ物や幽霊の噂などで目まぐるしい。半人前だが冷静沈着な壮太は、個性的な同僚たちと次々にトラブルを解決。そんなある日、大雪で車両が孤立。老人や病人も乗せた車内は冷蔵庫のように冷えていく。駅員たちは、雪の中に飛び出すが――。必ず涙する、感動の鉄道員ミステリ。


蛍川鉄道・藤乃沢駅の駅員、夏目壮太の毎日きちんと電車を走らせお客さまを送り届けるという地味な日々に時々ある事件というかトラブルに、駅員一丸となって向かう物語である。そして合間に、「幕間」として、なぜか、就職活動に悩む俊平という大学生の物語が挟み込まれている。壮太たち駅員は、日常業務の合間に、原稿をなくした編集者からの申し出で、必死になって原稿を探したり、駅に出るという幽霊の謎を解き明かしたり、大雪で立ち往生した列車の乗客を救出したりと大忙しである。何かが起きると、壮太は聞き込みをして情報を集め、それをつなぎ合わせて解決へと導くのだが、淡々としながらも熱い心を持っているのが見て取れて魅力的である。そして最後に、幕間の意味もわかり、さらに胸を熱くさせられる。何事も、こつこつとひとつずつ積み上げていくことが大切だと改めて思わされる一冊である。

掟上今日子の婚姻届*西尾維新

  • 2016/07/19(火) 17:06:25

掟上今日子の婚姻届
掟上今日子の婚姻届
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西尾 維新 VOFAN
講談社
売り上げランキング: 2,541

忘却探偵・掟上今日子、「はじめて」の講演会。檀上の今日子さんに投げかけられた危うい恋の質問をきっかけに、冤罪体質の青年・隠館厄介は思わぬプロポーズを受けることとなり……。
美しき忘却探偵は、呪われた結婚を阻止できるのか!?


今日子さんの講演会をきっかけに、厄介くんが巻き込まれた厄介事の顛末である。事件解決に向けた今日子さんと厄介さんの物語に、厄介くんのひとり語りが挟み込まれ、毎度のように飽きもせずに巻き込まれる冤罪事件に関する彼なりの考察も興味深い。さらに今回は、進展があるようでないようでもどかしい二人の距離が、事件解決のための事情があるにしろ、一気に縮まったような展開にも、思わずにんまりしてしまう。厄介くんはそれさえも冷静に分析してしまうので、それが進展しない一因のような気がしなくもないが……。珍しく二日がかりで解かれた事件の謎も、心の闇のなせるわざという感じで、深い業を感じさせられる。次回はどこがどう進展するのか愉しみなシリーズである。

迫りくる自分*似鳥鶏

  • 2016/05/18(水) 18:41:07

迫りくる自分
迫りくる自分
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似鳥 鶏
光文社
売り上げランキング: 655,813

顔も声も自分と瓜二つ。人間性は最低。この出会いは、何をもたらすのか。船橋から東京に戻る総武線快速。本田理司は、併走していた各駅停車の車窓に、自分と同じ顔をした男を見つける。血縁ではなく、服装も髪型も違うのに、まるで鏡を見ているようだった。やがて、二人は偶然再会し、その夜を契機として、世にも不条理な逃走劇が幕を開ける―。


自分と瓜二つの人物に出会った途端、平凡な日常のあちこちにひずみが出始める。そしてとうとう婦女暴行容疑で警察に追われることになる。本田理司は、あの自分とそっくりな男にはめられたと察したが、警察がそれを信じるとは思えずに、逃げ続ける。その過酷さは、身に覚えのない罪で負われる理不尽さゆえに、いや増し、読みながらうんざりもするのであるが、幸運に恵まれ、不運にも苛まれて、なんとかラストにもつれ込むのである。両親が亡くなったときに世話になった叔父夫妻への感謝や、兄や会社の後輩・朴さんへの信頼があったからこそ生き延びられたとも言える気がする。自分から逃げ、自分を追いつめるようで、厭な気分ではあるが、愉しめる一冊だった。

まく子*西加奈子

  • 2016/03/26(土) 09:25:10

まく子 (福音館の単行本)
西加奈子
福音館書店
売り上げランキング: 3,700

小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいた。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちが恐ろしかった。そして、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきたのだ。コズエはとても変だけれど、とてもきれいで、何かになろうとしていなくて、そのままできちんと足りている、そんな感じがした。そして、コズエは「まく」ことが大好きだった。小石、木の実、ホースから流れ出る水、なんだってまきちらした。そして彼女には、秘密があった。彼女の口からその秘密が語られるとき、私たちは思いもかけない大きな優しさに包まれる。信じること、与えること、受け入れること、変わっていくこと、そして死ぬこと……。この世界が、そしてそこで生きる人たちが、きっとずっと愛おしくなる。
西加奈子、直木賞受賞後初の書き下ろし。究極ボーイ・ミーツ・ガールにして、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。


大人になることに嫌悪感を抱き、女子からはもちろん男子からも距離を置きたがる慧が、「まく」ことが好きな転校生・コズエと出会うことで物語は始まる。田舎の温泉街の密度の濃い人間関係の中で成長していくことは、時に逃げられない窮屈な思いと闘うことでもあるのかもしれなくて、その思いが、一風変わったコズエを知ることで、外へ気持ちを向かわせるきっかけにもなっているような気がする。慧にとってだけではなく、ほかの人たちにとっても、コズエやそのオカアサンとの出会いは、あるべくしてあったことなのだろうと思われる。どんな人にもコズエがいてくれたら、と思わされる一冊である。

永い言い訳*西川美和

  • 2015/05/02(土) 18:39:34


長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。


バスの事故で妻・夏子を失った作家・津村啓(本名:衣笠幸夫)と、夏子と一緒だった友人・ゆきの夫と二人の子ども。突然家族を喪った者の反応は一律ではない。悲しみや喪失感の質もまたそれぞれであり、その表し方も然りである。これまでの妻との関係を振り返り、妻の愛を素直に受け取れずひねくれた感情にとらわれる幸夫と、妻を喪った喪失感をまっすぐに表し続けるゆきの夫・陽一。そして、幼いながらに母亡き後の日々をけなげに生きる兄妹。彼らの通常ならば不自然とも言える関わり方の中で、彼らはお互いに助け合い依存し合い、ときには反発し合いながら、ほんの少しずつ自分を取り戻していく。正解などどこにもなく、胸を締めつけられながらも励まされる心地になる一冊である。

同居人*新津きよみ

  • 2015/03/26(木) 20:05:42

同居人 (角川ホラー文庫)同居人 (角川ホラー文庫)
(2003/01)
新津 きよみ

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35歳、デザイナーの麻由美は都内に新築マンションを3800万円で購入する。ローンの繰り上げ返済のためにルームメイトを募り、添乗員・乃理子との同居生活がスタートした。しかし、お互いに「秘密」を抱えているために、ぎくしゃくしはじめる2人の関係。ある日乃理子が部屋に呼び入れた女性が、2人の生活を崩壊へと向かわせた―。嫉妬、虚栄心、独占欲…。女性心理の名手が紡ぎ出す、渾身のホラー・サスペンス。


初めから怖い。冷蔵庫がキーになっていて、実は乃理子が冷蔵庫に不倫相手の妻の……、などと考えてしまったが、それは深読みだったか。だが、見知らぬ他人が住む部屋の同居人になるというだけでもかなり怖い気もする。そして、お互いの疑心暗鬼も手伝って、さらなる恐怖を引き入れてしまうのだから、どうしようもない。タイトルの真の意味がラストになって判るが、そこはまったくのホラーで、叫びだしたくなる。じわじわと怖い一冊である。

サラバ!下*西加奈子

  • 2014/12/28(日) 06:51:47

サラバ! 下サラバ! 下
(2014/10/29)
西 加奈子

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父の出家。母の再婚。サトラコヲモンサマ解体後、世間の耳目を集めてしまった姉の問題行動。大人になった歩にも、異変は起こり続けた。甘え、嫉妬、狡猾さと自己愛の檻に囚われていた彼は、心のなかで叫んだ。お前は、いったい、誰なんだ。


上巻が姉の奇行を糧に歩が自分の立ち位置を測る時代だとすれば、下巻は、圷(今橋)家の激動の時代だとは言え、歩にとっては手痛いから緩やかな下降の時とも言えるように思う。何もかもが思うようにはいかず、頭髪までもが徐々に30代の自分を見離し始め、幼いころから容姿にだけは自信があった歩の自我をさえ崩壊させるのである。下巻の後半では、姉は自分なりの信じるものを見つけて彼女なりに安定に向かっているが、歩自身はそれとは裏腹にこれまでの人生すらガラガラと音を断てて崩れていくような思いから抜け出せない。良かれ悪しかれ姉の存在の大きさを思わされる。そしてカイロへ……。「サラバ!」が歩の心のお守りになったのだと涙が出る思いのラストである。圷(あえてそう言いたい)一家がしあわせでありますようにと願わずにはいられない一冊である。

サラバ!上*西加奈子

  • 2014/12/26(金) 18:41:33

サラバ! 上サラバ! 上
(2014/10/29)
西 加奈子

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西加奈子作家生活10周年記念作品。
1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。
父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。
イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。
後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。


長男・歩の独白の形を取った圷(あくつ)家の物語である。個性的な家族(特に女性)のせいで、気配を消してことさらいい子でいる術を身に着けた歩は、家族の中で、近所の人たちの間で、そして友人たちとの関係で、そこそこうまくやっているのだが、いつも頭の上に奇抜でつかみどころのない姉・貴子の存在がある。それは、家から離れても、どこかで逃れられないものなのだった。海外赴任者の家族として、知らない国で暮らすことが、貴子や歩の生き方にかなりの影響を及ぼしたように見えるが、貴子が解放されたのに比べて、歩にとってはさらに処世術を磨く機会になったようにも思われる。上巻だけで、歩が生まれてから大学生までの長期間が描かれているのだが、下巻ではどこまで行くのだろう。この先の圷家の人たちの行方がとても気になる。不思議に惹きこまれる一冊である。

探偵が腕貫を外すとき*西澤保彦

  • 2014/05/14(水) 18:50:18

探偵が腕貫を外すとき探偵が腕貫を外すとき
(2014/03/13)
西澤 保彦

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安楽椅子探偵の新ヒーローは、正体不明な公務員!

腕貫着用、神出鬼没な謎の公務員探偵が、市民の悩みや事件を鮮やかに解明!
そしてついに女子大生ユリエと……!?
お馴染み刑事コンビも登場、今日も櫃洗市は大騒ぎ!
絶好調「腕貫探偵」シリーズ待望の新作短編集!

【あらすじ】
■贖いの顔
三年連続、四月四日の午後四時に鳩の死骸と人の死に直面した配送員。
これは偶然なのか、必然なのか。そして今年もまた、四月四日がやってくる……。

■秘密
四十年前に不倫相手の女性を殺してしまった。
なぜ、彼女の夫はその罪を被ってくれたのか? 夫の葬儀の日、長年の謎が明かされる。

■どこまでも停められて
妻子と別れ、一人マンションに暮らす男。彼が契約した住人専用駐車場に、
決まって月曜の朝に不特定多数のドライバーに無断駐車されてしまう。その理由は?

■いきちがい
女子大生・ユリエが企画した幼稚園の同窓会の最中に、参加者が殺害された。
不可解な遺留品の謎、犯人は? そして動機は?


腕貫探偵には短編の方が向いているように思う。今回も、絶妙な観察力と推理力で相談者をスッキリさせてくれる腕貫さんであった。そして、ユリエとの今後が期待できるような終わり方なのも、ちょっぴりうれしい。櫃洗市から目が離せないシリーズである。

モラトリアム・シアター produced by 腕貫探偵*西澤保彦

  • 2014/05/04(日) 08:08:49

モラトリアム・シアターproduced by腕貫探偵 (実業之日本社文庫)モラトリアム・シアターproduced by腕貫探偵 (実業之日本社文庫)
(2012/10/05)
西澤 保彦

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学校関係者が連続死。新任講師・住吉ミツヲは混沌とする記憶を抱えたまま事件に巻き込まれていく。彼は同僚の妻を殺してしまったらしいのだが…。封じられた記憶の鍵を握るのは魔性の女性事務員なのか?交錯する時間軸と人間関係に惑うミツヲを救うため、愛くるしい女子高生、ド派手な女大富豪、腕貫着用の公務員―三人の個性派探偵が集結。幻惑の舞台が開演する。


初めからなにかいわくありげな主人公・住吉ミツヲではある。謎の核心に迫ろうとすると、なにやら記憶があいまいになり、自分自身の行動の確かささえ覚束なくなるのである。そこにすべての真実が隠されているのではないかと気になりつつも、物語は進んでいくのであるが……。あまりにも大がかりなドッキリ企画のような展開に戸惑いもあるが、現実離れしすぎていて却ってお見事と言えないこともない。腕貫探偵の登場が少なかったのはいささか残念である。彼には、辻に立つ易者のように、もっと地道に謎解きをしてもらいたいものである、と改めて思った一冊である。

腕貫探偵、残業中*西澤保彦

  • 2014/04/08(火) 18:40:29

腕貫探偵、残業中腕貫探偵、残業中
(2008/04/18)
西澤 保彦

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明晰な推理力をもつ安楽椅子探偵は公務員!

悩める市民の相談ごとが次々に持ち込まれる「市民サーヴィス課臨時出張所」の窓口。そこで対応する職員にして、黒い腕貫を嵌めたその男は、じつに聞き上手。相談者のこみいった個人的事情を聞きだすうちに、奇怪な事件の糸口が…。立て籠もり? 偽装殺人? 詐欺? 轢き逃げ? などなどさまざまな事件も、人間関係をほぐされていくと意外にも…。日常の暗部に恐ろしい罠が待ち受けているのが人生にはちがいないが!? あっけらかんとプライベートな秘密に迫る、嫌味なまでに冷静沈着な腕貫男は神出鬼没なくせに、杓子定規な市民サーヴィス課苦情相談係。そんな腕貫男を慕うエキセントリックな彼女は食いしん坊。オフタイムの腕貫のもとへ難題を持ち込むのだが…。軽妙な筆致でユーモラスに描く、西澤ワールド炸裂の連作ミステリ六編。


「体験のあと」 「雪のなかの、ひとりとふたり」 「夢の通い路」 「青い空が落ちる」 「流血ロミオ」 「人生、いろいろ。」

腕貫探偵、今回は腕貫をはめていない。なぜなら、就業時間後、プライベートタイムだからである。だが、普通のスーツを着ていようが、腕貫をしていなかろうが、彼は厄介事を相談され、ものの見事に解決へと導いてしまうのである。大学生のガールフレンド(?)とのデートの最中であってさえ。相談されやすい体質でグルメ、だが、およそ感情の起伏というものが感じられないこの男は一体何者なのか。ますます興味をそそられるシリーズである。