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いわいごと*畠中恵

  • 2021/04/24(土) 12:16:36


なかなか縁談がまとまらず、周囲をやきもきさせる麻之助。そんな彼の元に新たな縁談が三つも! 果たしてその行方は……!?


タイトルからして、麻之助にやっと春が来るのかと思いきや、なかなかすんなりとは事は運ばない。相変わらず支配町の厄介事は押し寄せてくるし、今回は、支配町以外の厄介事まで飛び込んできて、珍しくまじめに働く日々なのである。さらには、その副産物とでもいう縁談が三つもやってきて、しかもそれがどれも問題がありそうな話で、その調べまで自分でしなければならないことに。踏んだり蹴ったりのようだが、そのおかげで、やっと最後には本当に嫁を取ることができたので、めでたしめでたしではあった。これからの麻之助夫婦の活躍に期待ができるシリーズである。

口福のレシピ*原田ひ香

  • 2021/01/20(水) 16:32:45


フリーのSE兼料理研究家として働く留希子の実家は、江戸時代から続く古い家柄で、老舗料理学校「品川料理学園」を経営している。大学こそ親の希望があって栄養学を専攻したが、幼い頃から後継者の道が決まっている雰囲気や、昔からの教則本を使う学園の方針への抵抗が留希子にはあった。卒業後は、製品開発会社にSEとして就職した。しかし、料理をすることは好きだった。SNSでの発信をきっかけに雑誌からも仕事の依頼が来るようになり、料理研究家としての認知度を上げていた。
忙しい女たちを助けたいと、留希子は令和元年になるゴールデンウィークに向けた簡単で美味しい献立レシピの企画を立ち上げた。しかし、あるレシピをめぐり、問題が起きる。留希子にとってはすっかり身についた我が家の味だったが、そこには品川家の大切な歴史が刻まれていた。
一方、昭和二年、品川料理教習所の台所では、女中奉公に来て半年のしずえが西洋野菜のセロリーと格闘していた。
料理学校の歴史をつなぐレシピを巡る、胃も心も温まる家族小説。


二つの時代を行きつ戻りつしながら描かれる、一族の物語である。だが、それだけではなく、それぞれの時代に生きている女性の日々の様子や胸の裡の葛藤が、丁寧に描かれていてとても生き生きしている。時代によって常識も移り変わり、現代の尺度では測れないことごともあるが、その時代に生きた人の手で書かれたものに触れると、まるで隣にいるかのように伝わってきて、現代を生きて抱える悩みにも寄り添ってくれるようにも感じられて胸が熱くなる。おいしいもののことを考えるとき、人はだれしもやさしくなるのだと思わされる一冊でもあった。

一橋桐子(76)の犯罪日記*原田ひ香

  • 2021/01/06(水) 16:50:12


万引、偽札、闇金、詐欺、誘拐、殺人。どれが一番長く刑務所に入れるの?老親の面倒を見てきた桐子は、気づけば結婚もせず、76歳になっていた。両親をおくり、わずかな年金と清掃のパートで細々と暮らしているが、貯金はない。同居していた親友のトモは病気で先に逝ってしまった。唯一の家族であり親友だったのに…。このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。絶望を抱えながら過ごしていたある日、テレビで驚きの映像が目に入る。収容された高齢受刑者が、刑務所で介護されている姿を。これだ!光明を見出した桐子は、「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。



タイトルからは、ものすごく悲惨な物語を想像したが、いざ読み始めてみると、歳を重ねて、さまざまなものごとを失ったり、思うようにいかないことが増えて、切なくはあるが、地道に堅実に生きている一人の女性の物語であるとわかってくる。交流範囲も、意外なことにそれなりに広く、自分では何もかもに絶望していると思っていても、実は周りの人たちを助け、助けられていることには、なかなか気づけないものである。桐子さんが格好良く見えてきさえするのである。胸がじんとする一冊だった。

ハグとナガラ*原田マハ

  • 2020/12/14(月) 16:35:54


どこでもいい。いつでもいい。 一緒に行こう。旅に出よう。 人生を、もっと足掻こうーー。
恋も仕事も失い、絶望していたハグ。突然「一緒に旅に出よう」と大学時代の親友ナガラからメールが届いた。以来、ふたりは季節ごとに旅に出ることに。
ともに秘湯に入り、名物を堪能し、 花や月を愛でに日本全国駆け巡る、 女ふたりの気ままな旅。 気がつけば、四十路になり、五十代も始まり……。
人生の成功者になれなくても、自分らしく人生の寄り道を楽しむのもいい。心に灯がともる六つの旅物語。 文庫オリジナル短編集です!


誰にでも当てはまるシチュエーションではないかもしれないが、心の通い合った友人との交流が、日々の疲れをしばし忘れさせてくれ、あしたを迎える活力になってくれるという物語である。二人にとってその手段は、メールであり、旅なのだ。歳を重ねるにつれ、自分自身にも親にも、若いころには想像もしなかった事態が現実のこととなり、日々何かに追い立てられるように走り続け、疲れ果ててへたり込みそうになる時、ふと届いた友からの何気ない便りが、ふっと緊張を和らげてくれることもあるだろう。読んでいるこちらまで、強張っていた肩の力が抜けて、ふと涙をこぼしてしまうような、胸に迫る一冊だった。

いちねんかん*畠中恵

  • 2020/11/20(金) 07:40:25


ついに、病弱若だんなの後継ぎ修業が本格始動! 試練続きの一年の幕開けだ。江戸の大店長崎屋の主夫妻が旅に出かけ、父から店を託された若だんなは大張り切り。しかし、盗人に狙われたり、奉公人となった妖が騒ぎを起こしたり、相変わらずのてんやわんや。おまけに江戸に疫病が大流行! 長崎屋に疫病神と疫鬼が押しかけてくるし、若だんなは無事に長崎屋と皆を守れるの~? 波乱万丈なシリーズ最新刊。


シリーズ19作目。若だんな・一太郎が健康になる気配は全くないが、両親が一年も留守の間、気を張って店を守る姿が健気で泣けてくる。妖たちも、常に増して気合が入っており、いつも以上に若だんなの役に立っているのも涙ぐましい。若だんなだけでなく、妖たちも、なんだかんだで成長しているのかもしれない。仁吉と佐助の兄やたちの助けなしには、もちろん成り立たないのだが、なんとか店を守って両親の帰宅を迎えた一太郎が、ほっとしすぎて長く寝込まないことを祈るばかりである。いつまでも続いてほしいシリーズである。

あしたの華姫*畠中恵

  • 2020/08/09(日) 18:39:40


百万の人々が暮らす江戸でも随一の盛り場、両国。その地回りの親分山越に息子がいたと発覚し、にわかに跡目争いが持ち上がった。娘のお夏も、頭の座を狙う陰謀に巻き込まれ…。お夏を守るよう命じられたヘタレの芸人月草が、“まこと”を見通す姫様人形お華と、西へ東へ駆け回る!


待ちに待った第二弾である。一見頼りなさそうな月草と、追っかけも多く華やかな木偶人形の華姫、そして、両国の地回りの山越親分と娘のお夏との関係も相変わらずだが、月草が山越親分に使われる頻度は増している気もする。そして、華姫なしには何もできない月草なのも相変わらずで、ついつい忘れてしまいがちだが、華姫が話すことは、腹話術師である月草の言葉なのだということもまた真実なのである。今回は、13歳になったお夏の婿取り=山越親分の跡目は誰か、というのが大きなテーマになっていて、それに絡んでさまざまな厄介事が起こるが、お夏に婿取りはまだ早いし、跡目候補に関しても、山越の胸の中では、筋道はできているような気もするのである。続編でたぶんその辺りがもっと明らかにされるのでは、とひそかに思っている。いろいろと愉しみな要素の多いシリーズである。

<あの絵>の前で*原田マハ

  • 2020/07/12(日) 19:10:57


どこかの街の美術館で小さな奇跡が今日も、きっと起こっている。人生の脇道に佇む人々が“あの絵”と出会い再び歩き出す姿を描く。アート小説の名手による極上の小説集。


 「ハッピー・バースデー」 <ドービニーの庭> ゴッホ ひろしま美術館
 「窓辺の小鳥たち」 <鳥籠> ピカソ 大原美術館
 「檸檬」 <砂糖壺、梨とテーブルクロス> セザンヌ ポーラ美術館
 「豊穣」 <オイゲニア・プリマフェージの肖像>  クリムト 豊田市美術館
 「聖夜」 <> 東山魁夷 白馬の森 長野県信濃美術館
 「さざなみ」 <睡蓮> モネ 地中美術館

もっと絵が前面に出た物語かと思ったが、さにあらず。絵がなければ始まらない物語ではあるのだが、美術に疎い人でも、美術館に行ったことがない人でも、思わず美術館に足を運んで、その絵のまえに立ってみたくなるような、心の奥底にほんのりと明かりがともるような、満ち足りて穏やかでしあわせにしてくれるような、やさしいストーリーなので、いつの間にか惹きこまれている自分に気づくのである。何度も熱いものがこみ上げてくる。心が豊かになるような一冊だった。 

猫君*畠中恵

  • 2020/06/01(月) 12:32:19


花のお江戸に隠された、猫又の陣地六つ。花陣・姫陣・祭陣・武陣・黄金陣・学陣。各陣の新米猫又は、将軍様の庇そうと様々な試練が課せられて―。お江戸猫又ファンタジー。


猫は20年以上生きるとしっぽが二股に割れて、猫又という妖になるという。茶虎の雄猫みかんは、飼い主のお香を亡くし、間もなくして猫又になり、江戸に六つある陣のうち祭陣の新入り猫又になり、ほどなく江戸城中にある猫又の学校とも言える猫宿で他の陣の新米猫又たちと共に学ぶことになった。そこで起きるさまざまな厄介事や、身に降りかかる難問を仲間たちとともに日々乗り越えて、次第に生きる術を身に着けていくのだが――。20年以上生きた老猫であるにもかかわらず、幼い猫のように愛らしい新米猫又たちが、個性にあふれていて魅力的である。自然と役割分担ができていくところが、人間社会を見ているようで面白い。諍いがあったり、張り合ったり、助け合ったりと、少しずつきずなを深めていくのも微笑ましく、それを見守る師匠たちのまなざしのあたたかさにも胸が熱くなる。もっともっと続きを知りたくなる一冊である。

22年目の告白――私が殺人犯です――*浜口倫太郎

  • 2020/05/22(金) 16:30:59


編集者・川北未南子の前に突如現れた美青年・曾根崎雅人。彼から預かった原稿は、時効となった連続殺人事件の犯行を告白したものだった。その残忍な犯行記録『私が殺人犯です』はたちまちベストセラーとなり、曾根崎は熱狂を煽るかのように世間を挑発し続ける。社会の禁忌に挑む小説版『22年目の告白』。


映画ありきの小説だとは知らずに読み始めたのだが、小説としても充分愉しめる。殺人にまだ時効があった時代だからこその、刑事たちの無念や無力感、犯人のスリルと自己主張、そしてラストのカタルシスが成立する物語である。途中から、薄々犯人はあの人物では、と思ってはいたが、動機が想像できず半信半疑でいたのだが、そういうことだったのか。とは言え、そこまで強い衝動に結び付くのかどうかは、いささか疑問に思わなくもなかった。全体を通しての緊迫感と、人の思いの強さがひしひしと伝わる一冊だった。

あるべき場所*原田宗典

  • 2020/04/26(日) 13:37:40


横断歩道に落ちていたミョウガ、消えたカミソリの刃、失われた指先、かんぬきを掛ける男。何でもない日常の事物にふと目をとめると、そこから世界は変容し始める。そんな違和感を描いた表題作「あるべき場所」。友人がタイから持ち帰ったいわくつきのナイフ。それを手にした者は誰を殺すのか。人間の心理に潜む恐怖をえぐる「飢えたナイフ」など、奇妙な味わいの5編を収めた短編集。


さまざまな物事があるべき場所にない、あるいは、あるべきではない場所にある違和感。だがそれは、気づくことなく見過ごしてしまえば、なんということもないことなのかもしれないが、ひとたび気になってしまうと、居ても立ってもいられなくなる。その絶妙さが興味深い。他も、ほんのりホラーテイストだったりもするが、実際にあってもおかしくないような、些細だが、見逃せないあれこれが詰まっていて、贅沢な一冊である。

メガバンク絶体絶命*波多野聖

  • 2020/04/24(金) 16:32:25


日本最大のメガバンクを喰らい尽くす、魔の「T計画」が発動!TEFG銀行は絶体絶命の危機に陥った。総務部長としてこの難局に挑む二瓶正平。そして、頭取の椅子を捨て相場師として生きていた桂光義が、義と理想のために起つ。史上最大の頭脳戦がここに始まった。経済の巨龍・中国の影。謀略vs.戦略。マネーを知り尽くす著者にしか描けなかった、痛快無比の金融エンターテインメント。


シリーズものとは知らず、前作での経緯などは全くわからなかったが、それでも興味深く読めた。銀行の、買収・合併・統合を巡る内部の権力争いの厭らしさや、バンカーとしての情熱、機を見ることの重要性などなど。さらには、銀行とは全く関係のないところで起こった事件による恨みの根深さが与えた影響などなど。さまざまな要素が詰め込まれてはいるものの、散漫になることなくきっちり回収されていて見事である。ぜひ前作も読んでみたいと思わせる一冊だった。

まずはこれ食べて*原田ひ香

  • 2020/03/29(日) 14:00:30


アラサーの池内胡雪は、大学の友人たちと起業したベンチャー企業で働き、多忙な毎日を送っている。不規則な生活のせいで食事はおろそかになり、社内も散らかり放題で殺伐とした雰囲気だ。そんな状況を改善しようと、社長の提案で会社に家政婦を雇うことに。やってきた家政婦の筧みのりは、無愛想だが完璧な家事を行い、いつも心がほっとする料理を振る舞ってくれる。筧の食事を通じて、胡雪たち社員はだんだんと自分の生活を見つめ直すが…。人生の酸いも甘いもとことん味わう滋味溢れる連作短編集。


丁寧に作った日々の食事。それこそが、疲れた心を解きほぐし、次に向かう活力を生み出してくれる。そんな食卓を整えてくれる家政婦を雇った小さなベンチャー企業の物語である。お料理がどれもおいしそうなのは言うまでもないのだが、その丁寧さとは裏腹に、家政婦の筧みのりにも、会社のメンバーたちそれぞれにも抱えている屈託があり、その闇がどんどんあらわになっていくのが怖い。一見、とてもうまくいっているように見えているものごとも、ほんの少し踏み込めば、そこにはどろどろしたものが渦巻いていて、一触即発とでもいうような状態なのである。いままで気づかないふりをしてきたあれこれが、筧の作る心も身体も温まる料理を食べることによって、自らを取り戻しつつあるメンバーたちの表に現れ始めてしまったのかもしれない。しかしまた、その食事によって、しっかりと自らを取り戻してみれば、これから進むべき道もわかってくるというもので、この先の明るさを願わずにはいられない一冊である。

虫たちの家*原田ひ香

  • 2020/03/06(金) 12:06:33


九州の孤島にあるグループホーム「虫たちの家」は、インターネットで傷ついた女性たちがひっそりと社会から逃げるように共同生活をしている。新しくトラブルを抱える母娘を受け容れ、ミツバチとアゲハと名付けられる。古参のテントウムシは、奔放なアゲハが村の青年たちに近づいていることを知り、自分の居場所を守らなければと、「家」の禁忌を犯してしまう。『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』で注目の作家が描く、女たちの希望の物語。


紹介文には、希望の物語、とあるが、傷ついた女性たちが希望を持ててよかったと、無条件には喜べない。偏見はいつまでたってもどこにいてもつきまとい、そこから完全に逃れることは一生ありそうにない。それをわかったうえでの制限付きの希望が見えるだけのような気もする。もっと言えば、本作の主題は、傷ついた女性の希望の復活、というよりも、氷室美鈴個人の真実探求の物語だったような印象である。折々に挿みこまれる抑圧された異国の暮らしと、現在の彼女たちの置かれた状況が一本につながるとき、視点が一変してさまざまなことが腑に落ちるが、それで何かが解決されるわけではないので、思ったほどのカタルシスは得られない。しかも、わき役的な登場人物の扱いが、いささか軽く、ラストを急いだ感じがしてしまう。とはいえ、読書中は次に何が明らかにされるのかというスリルを楽しめる一冊だった。

わが殿 下*畠中恵

  • 2020/03/02(月) 12:55:01


新銅山の開掘、面扶持の断行、藩校の開設、類を見ない大型船の造船…。七郎右衛門は、幾度も窮地に陥りながらも、利忠の期待に応え続ける。だが、家柄もなく、殿の信頼を一身に集め、旧態依然とした大野藩の改革を続ける七郎右衛門には、見えざる敵の悪意が向けられていた。そんな中、黒船の襲来により、日本中に激震が走る。時代は移り変わろうとしていた―。新時代を生き抜くヒントがここにある!


七郎右衛門、相変わらず殿の打ち出の小槌に日々勤めている。何か事が起こり、窮地に立たされるほど、己の裡にあるものが閃きとともに表出し、突拍子もない策として形になるような印象である。常に次の手を考えているという証だろう。利忠公との信頼関係も、さらに深まり、公はもはや完全に七郎右衛門を信頼し、それ故、新しいものごとに向かって無茶をすることにもなる。止まるということを知らない殿である。だが、年月は容赦がなく、誰もが年を取る。悲しい別れも幾たびも経験することになるのである。殿と七右衛門と彦助との最後の穏やかなひとときには胸を熱くさせられるた。江戸が終わって明治の代になるとともに、感覚的には親しみを覚えるが、地続きには武士の時代の波乱があったことを、不思議な感慨をもって実感できるようになった気もしている。充実の上下巻だった。

わが殿 上*畠中恵

  • 2020/02/27(木) 16:22:01


合戦が始まる。敵の名は、借金。
幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、大野藩も例外ではなかった。
藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
四歳年下の殿の人柄と才覚に惚れきった七郎右衛門は、己の生涯を懸けて利忠と向き合い、時には反発しながらも、大野藩の再生に奔走する。

『しゃばけ』『まんまこと』の著者が初めて実在の人物をモチーフに描いた、痛快新感覚歴史小説!


八十石の内山家の長男・七郎右衛門は、どういうわけか、四歳年下の殿・利忠公に見込まれたようで、藩の借金対策に取り立てられる。ほかの人が考えつかないような奇策をもって、事をひとつ解決すると、さらに追い打ちをかけるような出来事が起こり、またまたとんでもない役目を言いつかるのである。周りには嫌味を言われ、敵視されたりもして、休む間もない七郎右衛門だが、どういうわけか、いつも何とか事を成し、さらに苦労を呼び込むことになる。利忠公の人を見る目の確かさも興味深く、七郎右衛門の苦労がいつか報われることを願いながら応援してしまう。下巻を読むのが愉しみな一冊である。