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沈黙のパレード*東野圭吾

  • 2019/02/02(土) 20:54:38

沈黙のパレード
沈黙のパレード
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東野 圭吾
文藝春秋 (2018-10-11)
売り上げランキング: 841

突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。


アメリカから帰ってきた湯川先生の性格が(陽性に)変わったように見えるのは、ドラマの配役に引きずられたからだろうか。以前の湯川先生が懐かしいような気持になってしまうのは、身勝手なのだろう。今回は、事件の謎解きに協力するのを渋るどころか、むしろ警察よりも積極的に深入りしており、常に先を行ってさえいる。そして、真相がわかったと安堵する間もなく、湯川先生の新たな推理によって、眠っていた真実が掘り起こされ、なるほどと思わされるのである。物語自体は面白かったのだが、殺されるきっかけとなった被害者とその恋人の行いが、なんとも身勝手な気がして、いささかもやもや感が残るのは残念である。ただ、自分が知っていて、真実だと思っていることがすべてではない、というところには、とても納得できた。早く次の展開が知りたくてページを繰る手が止まらなかったことは確かな一冊である。

魔力の胎動*東野圭吾

  • 2018/07/29(日) 20:19:23

魔力の胎動
魔力の胎動
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東野 圭吾
KADOKAWA (2018-03-23)
売り上げランキング: 3,093

自然現象を見事に言い当てる、彼女の不思議な“力”はいったい何なのか――。彼女によって、悩める人たちが救われて行く……。東野圭吾が価値観を覆した衝撃のミステリ『ラプラスの魔女』の前日譚。


『ラプラスの魔女』の前日譚ということだが、羽原円華にはまだ謎の部分が多いし、父の羽原博士の研究にも、もっと掘り下げる要素があるように思えるので、続編もあるのだろうという印象である。円華の能力には、生まれつき備わった特殊能力というだけではない何かがあるはずである。彼女にぴったり張り付いている秘書とボディーガードの存在のこともある。ただ、今作では、円華の能力を借りなければ解決できないことがほとんどであり、彼女の年齢やキャラクタも相まって、円華への興味が尽きないのである。さらに、彼女といいコンビになれそうな、工藤那由他(京太)に内在する鬱屈まで解きほぐしてしまうという、人間味も垣間見られ、今後の展開もぜひ見てみたいと思わされる一冊だった。

平凡な革命家の食卓*樋口有介

  • 2018/07/24(火) 16:21:05

平凡な革命家の食卓
平凡な革命家の食卓
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樋口 有介
祥伝社
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地味な市議の死。外傷や嘔吐物は一切なし。医師の診断も心不全。
なんとか殺人に〈格上げ〉できないものか。
本庁への栄転を目論む卯月枝衣子警部補29歳。
彼女の出来心が、〈事件性なし〉の孕む闇を暴く!?
軽妙に、見事に、人間の業の深さに迫る新感覚ミステリー!


単なる病死で決着するはずの市議の死から、さまざまな人間模様が見えてくる。家族それぞれの存在や思惑、近所の住人の生き様やそこに住む必然性、そして捜査する警察官の野望や日頃の鬱憤まで。ありふれたものに見えた一件の死亡案件に、これほど濃密な要素が絡み合っていることに、驚くしかない。考えてみれば、どんな人間も、その人にとっては人生の主役。多かれ少なかれ、ドラマティックな要素を抱え込んでいるのが当然なのかもしれない。そして、二転三転する事件の真実の先にあるラストに至ってさえ、なお本当の真相には迫っていないのではないかという疑いを抱かせる。心情的にはすっかりそちらに持っていかれている。巧みで興味深い一冊である。

犯人のいない殺人の夜*東野圭吾

  • 2018/02/15(木) 16:23:28

犯人のいない殺人の夜 (光文社文庫)
東野 圭吾
光文社
売り上げランキング: 12,220

親友が死んだ。枯れ葉のように校舎の屋上からひらひら落ちて。刑事たちが自殺の可能性を考えていることは俺にもわかった。しかし…。高校を舞台にした好短編「小さな故意の物語」。犯人がいないのに殺人があった。でも犯人はいる…。さまざまな欲望が交錯した一夜の殺人事件を描いた表題作。人間心理のドラマと、ミステリーの醍醐味を味わう傑作七編。


表題作のほか、「小さな故意の物語」 「闇の中の二人」 「踊り子」 「エンドレス・ナイト」 「白い凶器」 「さよならコーチ」

1985年から1988年というデビュー間もない頃に発表された作品である。テーマ、仕掛け、構成、心情、キャラクタなど、すでにこの頃からクオリティが高くて素晴らしい。短い物語の奥に、さまざまなことを想像させられる一冊である。

マスカレード・ナイト*東野圭吾

  • 2017/11/23(木) 20:24:45

マスカレード・ナイト
東野 圭吾
集英社 (2017-09-15)
売り上げランキング: 560

若い女性が殺害された不可解な事件。警視庁に届いた一通の密告状。
犯人は、コルテシア東京のカウントダウンパーティに姿を現す!? あのホテルウーマンと刑事のコンビ、再び――。


マスカレードシリーズの最新作である。カウントダウンの仮装パーティ(通称マスカレード・ナイト)に、犯人が現れるという密告を受け、新田は今回もまたフロントクラークになりきって、ホテル・コルテシア東京に潜入することになる。山岸尚美はコンシェルジュに昇格し、その実力を発揮している。今回、氏原という堅物フロントマンが新田のお目付け役になり、新田がフロント業務をほとんどさせてもらえないのが、いささか物足りない。数名のいわくありげな宿泊客をマークしつつ、裏では着々と捜査を進め、ホテル業務もそれなりにこなしながらその日を待つ間、実にさまざまなことが起こり、すべてが伏線のように見えてしまう。後半になり、そのひとつひとつの謎が解かれるにつれて、いよいよ犯人が判らなくなってくる。その先の展開をわくわくしながら読み進んだのだが、犯人が判ってからの独白部分が、いささか冗長な印象なのが残念である。全体的にはとても面白かったのだが、東野作品であるが故に、ラストにもうひと工夫あったらなぁと、ついつい思ってしまう一冊でもある。

あなたの隣にいる孤独*樋口有介

  • 2017/10/17(火) 19:00:34

あなたの隣にいる孤独
樋口 有介
文藝春秋
売り上げランキング: 118,490

14歳の玲菜(れな)には戸籍がない。母親は〈あの人〉から逃げるために出生届を出さなかった。母と二人、町から町へひっそりと移り住み、ここ川越にも二年。一人で勉強している玲菜のために教科書を探してくれるリサイクルショップの主人、秋吉とその孫の牧生とも顔見知りになったある日、突然「あの人に見つかった」という電話を最後に、母は消息を絶つ。学校とも、社会ともつながりのない少女を一人残して…。


戸籍がなく、学校にも通えず、追手を逃れるために数年で引っ越すことを繰り返して14歳まで育った玲菜が主人公である。リサイクルショップで買った一年遅れの高校の教科書で自習し、いつか戸籍を手に入れて本物の高校生になることを夢見ながら、フェイクの制服を身に着けてJKカフェでアルバイトをしている。そんなある日、母からの切羽詰まった電話で、「あの人」に見つかったから帰ってくるなと言われ、行き場をなくした玲菜は、教科書や必要なものを買っているリサイクルショップに世話になることになる。この店の店主の秋吉も、たまたま手伝っていた義理の息子の周東も、ひと癖もふた癖もありそうな人たちなのだが、何かと助けになってくれ、玲菜の事情を探り当てることになる。前半は、母娘と追手のスリリングな物語かと思いきや、話は思わぬ方向に展開し、どうなるのかと思っていたのだが、母から連絡があったあたりから、なんとなく雰囲気がだれてきたような感じもある。面白くないわけではないのだが、いろんな要素を突き詰めきれていないような印象なのは、ちょっぴり残念である。考えさせられる点は多々あった一冊である。

素敵な日本人*東野圭吾

  • 2017/05/23(火) 20:32:47

素敵な日本人 東野圭吾短編集
東野 圭吾
光文社 (2017-03-30)
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登場する人物がどこか知人に似ていたり、あなた自身にも経験のあるトラブルだったり、つい思い浮かべてしまう妄想の具現化だったり、読み心地はさまざま。ぜひ、ゆっくり読んでください。豊饒で多彩な短編ミステリーが、日常の倦怠をほぐします。


「正月の決意」 「十年目のバレンタインデー」 「今夜は一人で雛祭り」 「君の瞳に」乾杯」 「レンタルベビー」 「壊れた時計」 「サファイヤの奇跡」 「クリスマスミステリ」 「水晶の数珠」

九つの短い物語。一遍は短いのだが、興味深い要素がぎっしり詰まっている印象である。ラスト近くのどんでん返し、視点の転換、などなど、嬉しい裏切りが詰まっている。そして、胸があたたかいもので満たされもするし、しばらく余韻に浸っていたくなったりもする。気軽に読めるが、贅沢な一冊である。

いつか来た町*東直子

  • 2017/05/12(金) 18:27:54

いつか来た町
いつか来た町
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東 直子
PHP研究所
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町を好きになることは、恋をすることに似ている――。
風が運んできた香り、ふと目にした風景、耳に入ってきた会話、あの日の舌の記憶……。歌壇を牽引する一人であり、心の琴線に触れる言葉を紡いできた著者が、25の町の表情を五感で綴った随想集。まるで、著者と一緒に町を歩いているような気持ちになれる珠玉の25篇を収録する。
本書に登場するのは、山形/松山/名古屋/遠野/下北沢/京都/大森/入谷/紀伊田辺/神保町/立川/仙台/銀座/吉祥寺/池袋/表参道/新宿/御茶ノ水/江古田/有明/青森/パリ/高幡不動/横浜/福岡。
歌人ならではの独特の視点で切り取られた何気ない日常のひとコマは、あたたかく、せつなく、時に妖しく感じられ、あなたの知らない“もうひとつ町の顔"を見せてくれるはず。


なによりまず、それぞれの町の紹介の仕方が特徴的である。直接的に表すのではなく、町の由来や風物などに事寄せて語るうちに自然にどこの町かが判っていくという趣向である。なるほど、と思わされることも多く、それだけでも次の町のことが愉しみになる。さらに、語られるエピソードが、著者の子どもの頃の思い出だったり、過去の体験だったリ、感じたことだったりするのだが、そのどれもが趣に富んでいて惹きこまれる。著者の目線でその街を歩いている心地になれる一冊である。

雪煙チェイス*東野圭吾

  • 2017/04/21(金) 18:48:54

雪煙チェイス (実業之日本社文庫)
東野圭吾
実業之日本社 (2016-11-29)
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殺人の容疑をかけられた大学生の脇坂竜実。彼のアリバイを証明できる唯一の人物―正体不明の美人スノーボーダーを捜しに、竜実は日本屈指のスキー場に向かった。それを追うのは「本庁より先に捕らえろ」と命じられた所轄の刑事・小杉。村の人々も巻き込み、広大なゲレンデを舞台に予測不能のチェイスが始まる!どんでん返し連続の痛快ノンストップ・サスペンス。


著者お得意のスキー場が舞台である。ただ、前作のような、スキーやスノーボードのテクニックの描写はほとんどなく、スキー場が舞台である必要性は、ウェアやゴーグルで、目当ての人物が探しづらくなるということくらいだろうか。殺人事件の容疑者と目された大学生・脇坂の追われている切迫感はほとんど感じられず、その結末もいかにもあっさりしすぎな印象である。所轄刑事の小杉のある意味開き直った粋な計らいが目に留まるくらいか。期待が高い分だけいささか拍子抜けした感じではあるが、気楽に愉しめる一冊ではあるかもしれない。

恋のゴンドラ*東野圭吾

  • 2017/01/28(土) 13:26:56

恋のゴンドラ
恋のゴンドラ
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東野 圭吾
実業之日本社 (2016-11-01)
売り上げランキング: 1,414

真冬に集う男女8人の運命は? あの東野圭吾が“恋愛"という永遠のミステリーに真っ向から挑む。衝撃の結末から目を逸らすな!


恋の駆け引きは、ある意味ミステリかもしれない。スノボやスキー、雪山の描写はさすがと思わされるし、個性の違う複数の男女が絡む展開は、はらはらさせられることもあるが、わざわざこれを東野さんが書かなくてもよかったかも、とは思ってしまう。まあ気楽に愉しみました、という感じの一冊ではある。

危険なビーナス*東野圭吾

  • 2016/11/17(木) 09:34:37

危険なビーナス
危険なビーナス
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東野 圭吾
講談社 (2016-08-26)
売り上げランキング: 1,658

弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。


複雑な家庭環境下で育ち、いまは疎遠になっている異父兄弟(伯朗と明人)の関係、かつては飛ぶ鳥を落とす勢いだった資産家の当主の危篤、遺産相続、伯朗の実の父で売れない画家だった故・一清の最後の絵、母の死の真相、いきなり現れた明人の妻・楓に知らされた明人の失踪。とても偶然とは思えないさまざまな要素がどこでどう収束していくのか興味津々で読み進んだ。進めば進むほど楓の存在が胡散臭さを増し、何の疑いも抱かずに信じきっているように見える伯朗にも疑問を抱く。さらに、サヴァン症候群という要素も加わり、物語の行方はなおさら複雑になっていく。当然、どう決着をつけてくれるのかと期待が高まるが、テレビドラマのような信じられない裏技でねじ伏せられた感が無きにしも非ずである。面白くなかったわけでは決してないのだが、もう少し要素を絞って深く描いてほしかったとも思ってしまう。著者に対する期待が大きすぎるということもあるのだろうとは思うが……。エンターテインメントとしては、愉しめる一冊だったとは言える。

亀と観覧車*樋口有介

  • 2016/08/02(火) 07:30:03

亀と観覧車
亀と観覧車
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樋口 有介
中央公論新社
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ホテルの清掃員として働きながら夜間高校に通う涼子、16歳。家には、怪我で働けなくなった父、鬱病になった母がいて、生活保護を受けている。
ある日、クラスメイトからセレブばかりが集う「クラブ」に行かないかと誘われる。
守らねばならないものなど何もなく、家にも帰りたくない。
ちょっとだけ人生を変えてみようと足を踏み入れた「クラブ」には、小説家だという初老の男がいた。
生きることを放棄しかけている親を受け入れ、人と関わらず生きる日々を夢見てきた涼子は、自らの人生に希望を見出すことができるのだろうか――。


涼子の境遇には、同情すべき点がありすぎて、その健気さには胸が痛む。もし現実にこんなことがあったとしたら、絶対に平穏ではいられないだろうとは思うし、涼子にとってはさらに苦難が待ち受けることになるだろうとは容易に想像できるが、物語のなかでは、スズコではなくリョウコのままで、心穏やかに暮らしてくれたらいいのに、と願わずにいられない。流れる空気は、薄暗く湿ったものだが、胸のなかにはあたたかな思いが満ちているように思われる。大切にすること、されることの意味を考えさせられる一冊でもある。

ウインクで乾杯*東野圭吾

  • 2016/06/24(金) 20:16:59

ウインクで乾杯 (ノン・ポシェット)
東野 圭吾
祥伝社
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パーティ・コンパニオン小田香子は恐怖のあまり声も出なかった。仕事先のホテルの客室で、同僚牧村絵里が、毒入りビールを飲んで死んでいた。現場は完全な密室、警察は自殺だというが…。やがて絵里の親友由加利が自室で扼殺され、香子にまで見えざる魔の手が迫ってきた…。誰が、なぜ、何のために…。ミステリー界の若き旗手が放つ長編本格推理の傑作。


四半世紀近く前に書かれた作品である。細かいところで時代を感じさせられる部分もないことはないが、そのまま現代に置き換えても充分通用するところがさすがである。バラバラに散らばっているいくつものピースが、いつの間にか納まるべき場所にぴたりと納まり、真実という景色が少しずつ姿を現していく過程は、わくわくする。芝田と香子のこれからも気になる一冊である。

バタフライ*平山瑞穂

  • 2016/02/24(水) 07:28:19

バタフライ
バタフライ
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平山 瑞穂
幻冬舎 (2015-12-17)
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交差するはずのなかった、それぞれのままならぬ人生。
小さな勇気が奇跡の連鎖を起こす、書き下ろし群像ミステリー。

尾岸七海(13)は母の再婚相手に身体を求められていた。「この男を本当に殺したい」。島薗元治(74)は妻に先立たれ、時間を持て余している。「若い奴は全くなってない」。永淵亨(32)はネットカフェで暮らし、所持金は1887円。「もう死ぬしかないのか」。山添択(13)は級友にゴミ扱いされて不登校に。「居場所はゲームの中だけだ」。設楽伸之(43)は二代目社長として右往左往している。「天国の父に笑われてしまう」……。全く接点のなかった、困難に直面する一人ひとりの日常。誰かの優しさが見知らぬ人を救う、たった一日の奇跡の物語。


改めて、たった一日のできごとだと思うと、呆然とする。もともと何の関係もなかった人たちが、ふとした偶然から――意識的に、あるいは無意識に――関わり合い、その日一日の様相を変えていくのは、劇的であるようにも思えるが、考えてみると、誰の毎日にも必ず起こっていることなのだと気づかされる。タイトルはバタフライ効果を想起することが狙いだと思われるが、そう言うには、いささか繋がり方が偶然過ぎるところがなくもない気はする。ほんの些細な――出会いとも言えない――かかわりによって、流れというのはこうも簡単に変わっていくのかと驚かされる一冊である。

少女の時間*樋口有介

  • 2016/02/10(水) 20:38:04

少女の時間 (創元クライム・クラブ)
樋口 有介
東京創元社
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月刊EYESの小高直海経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前、東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、二年前の事件との関連性は果たして? 美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか──。“永遠の38歳"の青春と推理を軽やかに贈る、最新長編。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、ファン必読の書。


柚木草平、相変わらず女性にマメである。というか、女難の相が出ているとも、個性的な女性に囲まれる宿命にあるとも言えるかもしれない。ともかく、女性の方から近づいてくるのだから、避けようがない、といった風でもある。だが、ひとたび事件が絡むと、目のつけどころは的確であり、――そうは見えないが――意外にフットワークも軽く、見事な推理で真実に近づいていく。警察にはなかなかできない融通の利く調査で、真相にたどり着いたとしても、罪を問う義務はない。今回も、その先どうなるのかは想像するしかない。それがまた人間臭くていい。娘・加奈子との関係がこの先どうなっていくのかも気になるシリーズである。